岐阜工業高等専門学校、通称「岐阜高専」は、中学校を卒業したその瞬間から、未来の技術者としての道を歩み始めたいと願う君のための、特別な5年制の学び舎です。一般的な3年制の高校とは異なり、ここでは5年間かけてじっくりと、自分の選んだ専門分野の知識と技術をとことん追求することができます。まさに、科学技術に夢を託し、「ものづくり」への情熱を本物の力に変えるための場所なのです。
この選択は、単に高校を選ぶということ以上の意味を持ちます。それは、15歳で自らの専門分野を定め、5年後の輝かしい未来へと続く道を歩み始めるという、大きな決断です。岐阜高専での学びは、卒業後すぐに社会の第一線で活躍する技術者になる道と、さらに高度な研究を目指して有名大学へ編入する道、その両方を開いてくれます。どちらの道を選んでも、ここでの5年間が君の人生にとってかけがえのない財産となることは間違いありません。
「自由な校風って本当?」「5年間の学生生活ってどんな感じ?」「卒業後はどんな未来が待っているの?」――この記事では、そんな君と保護者の皆さんの疑問に一つひとつ丁寧にお答えしていきます。岐阜工業高等専門学校が持つ独特の魅力と、そこで待っている充実した学生生活を、具体的にお伝えしていきましょう。
岐阜工業高等専門学校の基本情報
まずは、学校の基本的な情報を確認しておきましょう。独立行政法人国立高等専門学校機構によって運営される国立の学校であり、安定した教育環境が整っています。
項目 | 内容 |
正式名称 | 独立行政法人国立高等専門学校機構 岐阜工業高等専門学校 |
設置区分 | 国立 |
共学/別学 | 男女共学 |
所在地 | 〒501-0495 岐阜県本巣市上真桑2236番2 |
代表電話番号 | 058-320-1217 (総務課) / 058-320-1260 (入試担当) |
公式サイトURL | https://www.gifu-nct.ac.jp/ |
岐阜工業高等専門学校の偏差値・難易度・併願校
岐阜高専への進学を考える上で、学力的な難易度を正確に把握することは非常に重要です。
偏差値は学科によって若干の差はありますが、おおむねからとされており、岐阜県内でもトップクラスの学力が求められる難関校です。全国の高等専門学校の平均偏差値が約であることからも、岐阜工業高等専門学校のレベルの高さがうかがえます。
この偏差値は、岐阜県内の他の進学校と比較すると、以下のような高校が目安となります。
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公立高校:加納高校(普通科 偏差値67)、恵那高校(理数科 偏差値66)、関高校(普通科 偏差値66)
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私立高校:鶯谷高校(普通科英進Ⅲ類 偏差値67)、美濃加茂高校(普通科蛍雪コース 偏差値65)
偏差値だけでなく、入試の具体的な難易度も見ていきましょう。岐阜高専の一般入試は、全国の国立高専で共通の問題が使用されます。そのため、専門の対策がしやすく、過去問題集なども豊富です。しかし、裏を返せば全国の受験生と競うことになるため、高いレベルでの戦いとなります。ある年度の学力検査では、合格者の平均点が点満点中点と、非常に高い得点率が求められました。また、人気も高く、最高で倍の競争率になったこともあり、生半可な準備では合格を勝ち取ることは難しいでしょう。
合格に必要な内申点の明確な基準は公表されていませんが、特に推薦入試を考えている場合は、中学3年間の学業成績が非常に重要になります。高い内申点は、日々の学習に真面目に取り組んできた証であり、入学後も継続して努力できる生徒であることの証明になるからです。
岐阜高専は国立のため、岐阜県の公立高校との併願はできません。そのため、多くの受験生は滑り止めとして私立高校を併願します。主な併願校としては、偏差値が近い鶯谷高校や美濃加茂高校などが挙げられます。
岐阜工業高等専門学校に設置されている学科・コース
岐阜工業高等専門学校の最大の特長は、中学卒業後すぐに専門分野の学習を始められる点にあります。自分の興味や将来の夢に合わせて、以下の5つの学科から選択します。
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機械工学科
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自動車やロボットなど、あらゆる「ものづくり」の根幹を学ぶ学科です。機械の設計や製作に興味があり、自分の手で新しいものを生み出したい人におすすめです。
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電気情報工学科
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コンピュータ、情報通信、電気エネルギーといった現代社会に不可欠な技術を幅広く学びます。プログラミングやネットワーク、電気の仕組みにワクワクする人にぴったりです。
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電子制御工学科
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ロボットやスマート家電の「頭脳」にあたる部分、つまりハードウェアとソフトウェアの両方を学びます。機械を賢く動かすことに興味がある人、総合的な設計開発がしたい人に向いています。
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環境都市工学科
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自然災害から人々を守るための技術や、快適で環境にやさしい街づくりについて学びます。社会基盤を支え、人々の役に立つ仕事にやりがいを感じる人におすすめです。
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建築学科
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人が過ごす空間を、デザイン性、快適性、安全性の観点から総合的に学びます。岐阜県内の大学・高専で唯一の建築学科で、美しい建物や街並みを創造したいという夢を持つ人に最適です。
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さらに、5年間の本科を卒業した後には、より高度な専門知識を学ぶための2年間の「専攻科(先端融合開発専攻)」も設置されており、大学卒業と同等の「学士」の学位を取得し、大学院へ進学する道も開かれています。
岐阜工業高等専門学校の特色・校風
岐阜高専の校風をキーワードで表すなら、「規律のある自由」そして「自主自立」です。大学に近い雰囲気があり、学生一人ひとりが大人として扱われ、自主性が重んじられます。
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宿題の量と勉強の厳しさ
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口コミを見ると「宿題は少ない」という声がありますが、それは決して楽ができるという意味ではありません。日々の課題は少なくても、授業内容は高度で専門的。定期試験のレベルは非常に高く、自主的に勉強しなければあっという間についていけなくなります。勉強を怠れば留年する可能性も十分にある、自己管理能力が試される環境です。
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校則(スマホ、服装、アルバイトなど)
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校則は一般的な高校と比べると緩やかな傾向にあります。授業中以外であればスマートフォンの使用が認められているなど、自由度の高さが感じられます。服装や頭髪に関する規定も、常識の範囲内であれば厳しく指導されることは少ないようです。アルバイトも許可されており、学業と両立しながら社会経験を積む学生もいます。この自由さは、学生を信頼し、一人の大人として扱うという学校の方針の表れです。
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生徒たちの雰囲気
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「ものづくりが好き」「特定の技術分野をとことん学びたい」という明確な目的意識を持った真面目な生徒が多いです。一方で、高専祭などのイベントには全力で取り組み、大いに盛り上がる活発な一面も持ち合わせています。同じ専門分野に興味を持つ仲間たちと5年間を共にするため、深く、強い絆が育まれるようです。
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制服の評判
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制服はありますが、口コミでは制服のデザインよりも、自由な校風や専門的な学習内容に関する言及が圧倒的に多いのが特徴です。
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土曜授業
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基本的に土曜授業はありません。平日の授業に集中し、週末は部活動や自分の研究、あるいは休息に充てるという大学に近いスタイルです。
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この「自由」な環境は、自ら学ぶ意欲のある学生にとっては最高の環境ですが、受け身の姿勢でいると厳しい結果が待っています。岐阜工業高等専門学校の自由とは、「楽をする自由」ではなく、「自らを高めるために時間を使う自由」なのです。
岐阜工業高等専門学校の部活動・イベント
厳しい勉学の一方で、学生生活を彩る部活動やイベントも非常に充実しています。
部活動
岐阜高専の部活動は、運動部・文化部ともに種類が豊富で、多くの学生が加入し、活発に活動しています。女子学生の活躍も目覚ましく、専用寮が整備されるなど、女子も安心して打ち込める環境が整っています。
高専ならではの大きな特徴は、5年間という長い期間をかけて一つの活動に打ち込めることです。また、1~3年生は高校生と同じ「高体連(高等学校体育連盟)」の大会に、4~5年生は全国の高専生が競う「高専大会」に出場するという、二つのステージが用意されています。
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ロボット研究会
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高専の顔ともいえるクラブです。テレビでおなじみの「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト(NHKロボコン)」への出場を目指し、日々アイデアと技術をぶつけ合っています。過去には全国大会で準優勝した実績もあり、その技術力の高さは折り紙付きです。
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硬式野球部
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1~3年生は「甲子園」、4~5年生は「高専全国大会」と、二つの大きな目標を掲げて活動するユニークな体制をとっています。
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卓球部
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「全国高専体育大会優勝」という高い目標を掲げ、日々練習に励んでいます。初心者から始めても5年間で代表選手になれる可能性があるのが高専の部活動の魅力です。
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特色ある部活動
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その他にも、自作の車両で燃費を競う「エコラン部」や、「宇宙工学研究会」、「LEGO同好会」など、工業高専ならではのユニークなクラブが存在し、学生の探求心を刺激しています。
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イベント
年間を通じて様々なイベントが開催されますが、中でも最大の盛り上がりを見せるのが「高専祭」です。
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高専祭
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毎年10月下旬の土日に開催される学園祭で、地域からも多くの人が訪れる一大イベントです。学生が企画するステージイベントや模擬店、バンド演奏などでキャンパスは熱気に包まれます。
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専門展
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高専祭の目玉企画が、4年生による「専門展」です。これは、各学科の学生が4年間で培った知識と技術のすべてを注ぎ込んで作り上げた成果物を展示・発表する場です。自作のドローンや、空間に絵が描ける3Dペンシステムなど、そのレベルは学園祭の域をはるかに超えています。ある学生が「技術力の総合格闘技」と表現したように、まさに岐阜高専での学びの集大成を体感できる、圧巻の展示です。
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岐阜工業高等専門学校の進学実績
岐阜工業高等専門学校の卒業生は、社会から非常に高い評価を受けており、その進路は大きく「就職」と「進学」の二つに分かれます。卒業生の約半数が就職し、残りの半数が大学編入や専攻科への進学を選びます。
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就職実績
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高専生の強みは、大学工学部レベルの専門知識と豊富な実験・実習経験を兼ね備えている点です。そのため企業からの需要が極めて高く、学生一人あたり10社から30社もの求人が来ることも珍しくありません。学校推薦による就職斡旋が中心で、非常に安定した就職活動が可能です。
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主な就職先は、トヨタ自動車、デンソー、JR東海、中部電力、川崎重工業といった日本を代表する大手メーカーやインフラ企業が名を連ねます。また、国土交通省などの国家公務員や、岐阜県庁などの地方公務員として活躍する卒業生も多数います。
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大学進学実績
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進学を選ぶ学生の多くは、岐阜高専の「専攻科」に進むか、全国の国立大学工学部の3年次に編入学します。
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国公立大学:高専からの編入生の受け入れに積極的な豊橋技術科学大学、長岡技術科学大学、そして地元の岐阜大学が主な進学先です。それに加え、東京大学、大阪大学、東北大学、名古屋工業大学といった難関大学への編入実績も豊富です。
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難関私立大学:高専からの進学は国公立大学が中心ですが、名城大学などへの進学実績もあります。
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高専生は大学編入後も、専門科目については既に学んだ内容が多いため、スムーズに大学の授業に適応し、優秀な成績を収めるケースが多いと大学側からも高く評価されています。
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進学・就職サポート
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進学や資格取得に向けたサポートも手厚く、例えば電気主任技術者などの難関資格取得のための補習授業なども行われています。こうした取り組みが、優れた進路実績を支えています。
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岐阜高専は、「優良企業への就職」と「難関大学への進学」という、二つの輝かしい未来への切符を手にすることができる学校なのです。
岐阜工業高等専門学校の特長・アピールポイント
他の高校にはない、岐阜工業高等専門学校ならではの強みやユニークな取り組みを7つのポイントにまとめました。
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5年間の一貫した専門教育プログラム
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中学卒業から5年間、腰を据えて一つの専門分野を深く学べるカリキュラム。高校と大学の7年間に相当する内容を効率的に学び、高度な専門性を持つ技術者へと成長できます。
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圧倒的な求人倍率と抜群の就職実績
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企業からの絶大な信頼を背景に、学生一人あたり平均10社以上の求人が寄せられます。学校推薦制度により、安定して優良企業への就職を目指せるのは最大の魅力です。
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難関国立大学への確かな編入ルート
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多くの国立大学に3年次編入の道が開かれており、高専での学びを活かしてさらに高度な研究を目指せます。編入後は即戦力として活躍できるため、大学からの評価も非常に高いです。
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学びの集大成「専門展」に代表される実践教育
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座学だけでなく、豊富な実験・実習を通して「使える技術」を徹底的に叩き込みます。その成果は、4年次の「専門展」で披露されるハイレベルな作品群が何よりも雄弁に物語っています。
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学生の自立を促す「規律ある自由」な校風
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校則は緩やかで、学生を大人として扱う大学のような雰囲気。この自由な環境が、厳しい学問に立ち向かうための自己管理能力と自立心を育てます。
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世界に広がる活発な国際交流
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海外の13以上の大学と交流協定を結び、海外インターンシップや短期留学生の受け入れを積極的に行っています。世界レベルの技術や文化に触れる機会が豊富にあります。
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地域社会と連携した実践的な学びの機会
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キャンパスがある本巣市と地域連携協定を結び、地域が抱える課題解決に学生が技術で貢献するプロジェクトも行われています。実践を通して社会に貢献する経験を積むことができます。
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これらの特長が相互に連携し、単なる知識の詰め込みではない、社会で本当に活躍できる実践的・創造的技術者を育てる土壌となっているのです。
岐阜工業高等専門学校の口コミ・評判のまとめ
在校生や卒業生の声から、岐阜工業高等専門学校のリアルな姿を探ってみましょう。良い点と気になる点の両方を公平に紹介します。
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良い点
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「将来の安定感は抜群」:最も多く聞かれるのが、就職に関する圧倒的な安心感です。専門知識を身につけることが、いかに将来の安定につながるかを実感している声が多数あります。
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「好きなことを深く学べるのが楽しい」:自分の興味がある分野を1年生から専門的に学べる環境は、知的好奇心が旺盛な学生にとって最高のようです。実践的な実習が多いことも高く評価されています。
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「先生が親身でフレンドリー」:質問に行けば、専門分野の先生方が優しく、理解できるまで丁寧に教えてくれるという声が多いです。学生との距離が近いのも高専ならではの魅力のようです。
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「高専祭が最高に楽しい」:勉強は大変ですが、高専祭のような行事にはクラス一丸となって全力で取り組み、最高の思い出を作れるという意見も目立ちます。
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気になる点
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「勉強をさぼると即留年」:自由な校風の裏返しとして、自己管理ができないとすぐについていけなくなるという厳しい指摘が数多くあります。「他の普通校と比べると甘くはない」という声は、心に留めておくべきでしょう。
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「目的がないと辛い」:明確な目標がなく「何となく」で入学してしまうと、専門的で高度な授業内容に興味を持てず、苦労するという意見です。本当に工学に興味があるかどうかが、5年間を充実させられるかの分かれ道になります。
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「先生の教え方に差があることも」:高専の教員は、必ずしも教員免許を必要としないため、研究者としては一流でも、教える技術には差があると感じる学生も一部にいるようです。
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「女子が少ない」:学科にもよりますが、全体として男子学生の割合が高いため、女子生徒は少し心細く感じることがあるかもしれません。ただし、女子学生の割合は年々増加傾向にあり、現在では全体の約24%を占め、女子寮も完備されています。
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これらの声から、岐阜高専は「明確な目標を持ち、自らを律して努力できる学生にとっては、最高の成長の場である」ということが言えそうです。
アクセス・通学
岐阜工業高等専門学校は本巣市にあり、岐阜市や大垣市など、県内の様々なエリアから学生が通学しています。最寄り駅からは少し距離があるため、バスや樽見鉄道を利用するのが一般的です。
キャンパスへの主なアクセス方法は以下の通りです。
出発地 | 交通手段 | 降車駅/バス停 | そこからのアクセス |
岐阜駅エリア | 岐阜バス | 「岐阜高専」 | 徒歩0分 (平日のみ運行) |
岐阜バス | 「モレラ岐阜」 | 南へ徒歩約15分 (1.2km) | |
岐阜バス | 「上真桑」 | 北へ徒歩約18分 (1.5km) | |
大垣駅エリア | 樽見鉄道 | 「北方真桑」駅 | 北へ徒歩約15分 (1.2km) |
穂積駅エリア | 岐阜バス | 「糸貫分庁舎・モレラ南口」 | 南へ徒歩約10分 (0.7km) |
JR穂積駅からは、バスで約30分程度の時間がかかります。複数のルートがあるため、自分の家から最も通いやすい方法を見つけることが大切です。オープンキャンパスなどに参加する際に、実際に通学ルートを体験してみることを強くお勧めします。
岐阜工業高等専門学校受験生へのワンポイントアドバイス
ここまで読んでくれてありがとう。最後に、進学アドバイザーとして、岐阜工業高等専門学校を目指す君へ応援メッセージを送ります。
この学校は、「ものづくりが大好きで、早く専門的なことを学びたい!」という強い情熱を持った君にこそ、最高の場所です。プラモデルを組み立てるのが好き、機械の仕組みを考えるのが好き、プログラミングに夢中になる――そんな「好き」という気持ちを、将来世界で通用する「技術」に育ててくれるのが岐阜高専です。もし君が、受け身で勉強するのではなく、自ら進んで課題を見つけ、探求していくことに喜びを感じるタイプなら、ここの自由な環境は君を大きく成長させてくれるでしょう。
受験勉強では、全国の国立高専で共通して出題される過去問題の演習に力を入れてください。特に、理数系の科目は高専での学びの土台となるため、徹底的に基礎を固め、応用問題にも対応できる力をつけておくことが合格への鍵となります。岐阜工業高等専門学校への挑戦は、君の未来を切り拓く大きな一歩です。その情熱を信じ、日々の努力を積み重ねてください。心から応援しています!
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。