大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎は、関西でもトップクラスの学力を誇るだけでなく、ノーベル賞受賞者である山中伸弥さんをはじめ、各界で活躍する多くの卒業生を輩出している名門校です。しかし、この学校の本当の魅力は、ただ偏差値が高いということだけではありません。その根底には、「自主自律」という確固たる教育理念が息づいています。
生徒一人ひとりの個性を尊重し、その主体性を最大限に引き出す自由な校風。それは、学校が生徒を深く信頼しているからこそ成り立つものです。校則は最小限に、行事は生徒たちの手で創り上げられます。この環境は、自ら考え、行動する力を育むための、最高の舞台と言えるでしょう。
では、生徒が主役となる大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎での高校生活とは、一体どのようなものなのでしょうか。この記事では、その活気と挑戦に満ちた世界を、中学生の皆さんにも分かりやすく、詳しくご紹介していきます。
大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎の基本情報
まずは、学校の基本的な情報を確認しておきましょう。
項目 | 内容 |
正式名称 | 大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎 |
国公私立の別 | 国立 |
共学/別学 | 男女共学 |
所在地 | 〒543-0054 大阪府大阪市天王寺区南河堀町4−88 |
代表電話番号 | 06-6775-6052 (事務室) |
公式サイト | https://f.osaka-kyoiku.ac.jp/tennoji-h/ |
大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎の偏差値・難易度・併願校
大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎を目指す上で、最も気になるのがその難易度でしょう。ここでは、偏差値や併願校について具体的に見ていきます。
偏差値は73前後とされており、大阪府内だけでなく、関西全体でも最難関レベルに位置します。同じくらいの偏差値の高校としては、大阪府立のトップ校である天王寺高校(文理学科)や大手前高校(文理学科)などが挙げられます。このレベルの高校に合格するためには、中学校での成績が極めて優秀であることが大前提となります。具体的な内申点の目安は公表されていませんが、併願者が多い天王寺高校(文理学科)では、満点に近い260点〜270点(270点満点)が必要とされていることから、同等レベルの成績が求められると考えてよいでしょう。
大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎は国立のため、大阪府立高校との併願が可能です。しかし、学力レベルを考えると、主な併願先はトップクラスの私立高校となります。具体的には、男子では洛南高校、西大和学園高校、清風南海高校など、女子では四天王寺高校、洛南高校、西大和学園高校などが主な併願校として考えられます。
ただし、偏差値が近いからといって、教育内容が同じわけではありません。特にこの学校は「自主自律」を重んじる校風が大きな特徴です。手厚い受験指導で合格を目指すというよりは、生徒自身の探究心や自己管理能力を伸ばすことに重きを置いています。学力はもちろんのこと、自ら学ぶ意欲と行動力を持つ生徒にとって、最高の環境が用意されていると言えるでしょう。
大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎に設置されている学科・コース
大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎に設置されているのは、以下の学科のみです。
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普通科:2年生の終わりまで文系・理系のコース分けがなく、全員が同じ科目を学びます。これは、幅広い教養(きょうよう)を身につけることが、将来どんな分野に進んでも役立つという考えに基づいています。3年生で進路に応じた選択科目を選びますが、クラスは文系・理系混合のままです。知的好奇心が旺盛で、自分の可能性をじっくり探したい生徒におすすめです。
この学校のカリキュラムで特筆すべきは、文部科学省からSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定を受け、探究学習に力を入れている点です。特に「科学のもり」や「プルーフ」といった独自の探究プログラムでは、生徒が自ら課題を設定し、研究を進めていきます。これらの活動を通して、大学での研究や社会に出てからも通用する、本質的な思考力と問題解決能力を養うことを目指しています。
大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎の特色・校風
この学校の雰囲気を最もよく表すキーワードは、「自由闊達」そして「自主自律」です。生徒一人ひとりの個性が尊重され、のびのびとした空気が流れています。
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宿題の量:毎日大量の宿題が出るというよりは、日々の授業内容が濃く、一夜漬けの勉強では対応できないテストが出題される傾向があります。そのため、生徒には毎日の予習・復習といった自学自習の習慣が自然と求められます。勉強は「させられる」ものではなく、「自らするもの」という意識が根付いています。
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校則:校則は「ほとんどない」と言われるほど緩やかです。髪を染めることやピアス、アクセサリーの着用も基本的に自由です。服装検査などもなく、スマートフォンの校内での使用も許可されています。これは、学校が生徒を信頼し、個人の判断を尊重していることの表れです。
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生徒たちの雰囲気:全体的に活発で、何事にも全力で取り組む生徒が多いようです。勉強はもちろん、部活動や生徒会活動にも積極的に参加し、充実した学校生活を送っています。多様な個性を持つ生徒たちが集まり、互いに刺激し合える環境です。一方で、非常に活発な雰囲気なので、おとなしいタイプや静かに勉強に集中したい生徒は、少し圧倒されるかもしれないという声もあります。
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アルバイト:校則が非常に自由なため、アルバイトを禁止する明確な規定はないようですが、学業や学校活動との両立を考えると、行っている生徒は少ないと考えられます。詳細は学校に直接確認することをおすすめします。
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制服の評判:制服は男子が伝統的な学ラン、女子が紺色のブレザーです。今風のデザインではありませんが、着こなしは自由で、生徒たちはカーディガンやパーカーなどを合わせて、思い思いにおしゃれを楽しんでいるようです。
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土曜授業:毎週の土曜授業は基本的にありません。ただし、希望者を対象に「スーパーサタデー」という発展的な内容の講習や演習が年に数回開かれており、意欲のある生徒が自主的に参加しています。
この学校の「自由」は、「何もしなくてよい」という意味ではありません。むしろ、自由だからこそ、自分を律し、何をすべきかを常に自分で考え、行動に移す高いレベルの自己管理能力が求められます。この環境こそが、生徒を大きく成長させる最大の要因と言えるでしょう。
大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎の部活動・イベント
勉強だけでなく、部活動や学校行事にも全力で打ち込むのが附天生のスタイルです。ここでは、その活気あふれる活動の一部をご紹介します。
部活動
運動部・文化部ともに約19のクラブや同好会があり、和気あいあいとした雰囲気の中で活発に活動しています。加入率も高く、多くの生徒が学業と両立させています。中には、全国レベルで活躍する部もあり、文武両道を体現しています。
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ワンダーフォーゲル部:活動が非常に盛んで、長期休暇には北アルプスなどの本格的な登山にも挑戦します。自然の中で心身を鍛え、仲間との絆を深めることができる、冒険心あふれる生徒に人気の部です。
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ダンス部:全国大会に出場するなど、高いレベルで活動しています。地域のイベントなどでもパフォーマンスを披露しており、校内でも特に活気のある部の一つです。
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小倉百人一首かるた部:文化部の中でも特に強豪として知られています。冷暖房完備の部室など、恵まれた環境で練習に打ち込むことができ、全国大会での活躍を目指しています。
イベント
大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎の学校行事は、その多くが企画から運営まで生徒主体で行われるのが最大の特徴です。中でも「三大行事」と呼ばれるイベントは、学校生活のハイライトです。
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附高祭(文化祭):夏休み明けに3日間にわたって開催される、学校最大のお祭りです。クラスごとの演劇や、校舎を飾り付ける「デコレーション」、模擬店、有志によるステージ発表など、内容は盛りだくさん。最終日には外部のホールを借りて舞台発表が行われるなど、その規模とクオリティの高さは圧巻です。
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音楽祭(音祭):合唱コンクールを中心とした音楽の祭典です。クラス一丸となって練習に励み、美しいハーモニーを響かせます。
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百粁(ひゃっきろ)徒歩:一昼夜かけて約100kmの道のりを歩き通すという、附高伝統の過酷かつ伝説的な行事です。体力と精神力の限界に挑戦するこの経験は、参加した生徒にとって一生忘れられない思い出となります。
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体育大会:一般的な「運動会」とは一線を画し、長居陸上競技場などの本格的な競技場を使って行われる「競技会・記録会」です。自分の記録に真剣に挑戦する、アスリートさながらの雰囲気が特徴です。
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研修旅行:高校2年次には、屋久島や北海道などを訪れます。単なる観光旅行ではなく、事前学習をしっかりと行った上で、現地の自然や文化、歴史を深く学ぶ体験学習となっています。
大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎の進学実績
関西屈指の進学校である大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎は、その名に違わず、極めて高い大学進学実績を誇ります。生徒たちは自由な校風の中で自ら学ぶ力を養い、難関大学への進学という目標を実現しています。
以下は、2025年度入試における主な大学の合格実績です。
大学群 | 合格者数 | 主な内訳 |
国公立大学 | 82名 | 東京大学 1名、京都大学 14名、大阪大学 6名、神戸大学 7名など |
国公立大学医学部医学科 3名 | ||
難関私立大学 | ||
早稲田・慶應・上智 | 6名 | 早稲田大学 4名、慶應義塾大学 2名 |
関関同立 | 125名 | 同志社大学 42名、関西大学 36名、立命館大学 23名、関西学院大学 24名 |
産近甲龍 | 49名 | 近畿大学 40名など |
私立大学医学部 | 2名 |
特筆すべきは、京都大学、大阪大学、神戸大学といった地元の最難関国立大学への圧倒的な強さです。また、国公立・私立を問わず医学部医学科へも多数の合格者を輩出しており、理系の生徒にとっても非常に魅力的な環境であることがわかります。
このような高い進学実績を支えているのは、手厚い受験対策というよりも、生徒の自主性を促すサポート体制です。希望者が参加する土曜日の「スーパーサタデー」での発展学習、豊富な資料が揃う進路指導室の設置、そして様々な分野で活躍する卒業生(大学生)を招いての進路講演会などがその例です。学校はあくまで生徒が自ら進路を切り拓くための「環境」と「機会」を提供し、生徒たちはそれを活用して自分の目標を達成していくのです。このサイクルが、高い進学実績を生み出す原動力となっています。
大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎の特長・アピールポイント
他の高校にはない、大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎ならではの強みや魅力をまとめました。
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徹底された「自主自律」の文化:学校の根幹をなす理念であり、生徒への深い信頼に基づいた自由な校風が、生徒の主体性と責任感を育みます。
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SSH指定校ならではの高度な探究学習:独自の探究プログラム「科学のもり」などを通じて、知的好奇心をとことん追求できます。国際的な科学交流の機会も豊富です。
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生徒が創り上げる伝説的な学校行事:名物の「百粁徒歩」をはじめ、文化祭や音楽祭などの「三大行事」は、企画から運営まで生徒が主体となって行い、他では得られない達成感と成長を経験できます。
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校則からの解放:髪型や服装、スマートフォンの使用などに関する厳しい校則がほとんどなく、窮屈さを感じさせません。生徒が大人として扱われる、ストレスフリーな環境です。
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幅広い視野を育むカリキュラム:2年生の終わりまで文系・理系のコース分けをしないことで、すべての生徒が幅広い教養を身につけ、自分の適性をじっくり見極めることができます。
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輝かしい卒業生と強力なネットワーク:ノーベル賞受賞者から、政治、経済、学術、文化の各分野で活躍するリーダーまで、多彩な卒業生を輩出しており、その存在は在校生の大きな刺激となっています。
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抜群のアクセス:JR大阪環状線の駅から徒歩すぐという、大阪市内中心部の恵まれた立地も大きな魅力です。関西一円から多くの生徒が通学しています。
大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎の口コミ・評判のまとめ
在校生や卒業生からは、この学校のユニークな環境について、様々な声が寄せられています。良い点と気になる点の両方を公平に見ていきましょう。
良い点
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「人間的に大きく成長できた」という声が非常に多いです。自由な環境の中で自ら考え、行動する経験を通じて、自己管理能力や問題解決能力が身についたと感じる卒業生が多数います。
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「とにかく自由で楽しい」という意見も目立ちます。細かい校則に縛られることなく、のびのびと高校生活を送れる点を高く評価する声が上がっています。
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「行事が最高に盛り上がる」と、生徒主体の学校行事を絶賛する口コミも多数あります。クラスや学年が一丸となって創り上げるイベントは、一生の思い出になると言われています。
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「尊敬できる友人に囲まれる」という点も、この学校の大きな魅力です。多才で個性的な仲間たちから日々刺激を受け、高いレベルで切磋琢磨できる環境です。
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「いじめがない」という声も聞かれます。互いの個性を尊重する雰囲気が根付いているため、安心して学校生活を送れるようです。
気になる点
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「おとなしい人には向かないかもしれない」という意見もあります。非常に活発で、自主性が求められる校風のため、受け身なタイプや静かな環境を好む生徒は、馴染むのに苦労する可能性があるようです。
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「大学受験のサポートは手厚くない」という声は、多くの口コミで共通しています。学校側はあくまで自主性を重んじるため、塾に通わずに難関大学を目指すには相当な自己管理能力が必要です。自由な環境に流されてしまい、学業が疎かになる生徒もいるようです。
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「内部生と高校からの入学生(外部生)との間に壁を感じることがある」という指摘も一部で見られます。大学進学実績は中学からの内部進学者が中心であり、外部生が馴染むのに時間がかかる場合があるとの声です。
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「校舎や施設が少し古い」という意見もあります。歴史のある学校ならではの点ですが、現在、校舎の工事が進められており、改善が期待されます。
アクセス・通学
大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎は、交通の便が非常に良い場所にあります。
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最寄り駅:JR大阪環状線「寺田町駅」南出口から出てすぐ目の前です。雨の日でもほとんど濡れずに通学できます。
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主要駅からのアクセス:大阪の主要ターミナルである「天王寺駅」からJR大阪環状線で1駅、約2分という近さです。天王寺駅にはJR各線、近鉄南大阪線、Osaka Metro御堂筋線・谷町線が乗り入れているため、大阪府内はもちろん、奈良県、兵庫県、京都府など、広いエリアから通学が可能です。通学時間は90分以内が目安とされています。
大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎受験生へのワンポイントアドバイス
ここまで読んで、大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎の魅力に心を惹かれた皆さんに、最後のアドバイスです。
この学校は、ただ勉強ができるだけでなく、「自分の頭で考え、自ら行動を起こしたい」という強い意志を持った生徒に特におすすめです。もしあなたが、誰かに指示されるのを待つのではなく、自ら面白いことを見つけ、仲間を巻き込んで何かを成し遂げたいと考えるタイプなら、これ以上ないほど充実した3年間を送れるでしょう。大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎での学びは、大学受験の先にある、本当の「生きる力」を育んでくれます。
受験勉強においては、知識を暗記するだけでなく、「なぜそうなるのか?」を深く考える習慣を大切にしてください。入試問題も、そうした思考力を問う良問が多いと言われています。大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎という素晴らしい舞台を目指して、日々の勉強を頑張ってください。応援しています!
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。