福島県立安積高等学校は、1884年(明治17年)の創立から140年以上の輝かしい歴史を誇る、県内屈指の伝統的な進学校です。ただ学力が高いだけでなく、校訓にも掲げられている「開拓者精神」を胸に、生徒一人ひとりが主体的に未来を切り拓く力を育む場所として知られています。
この記事では、偏差値や進学実績といったデータはもちろん、先輩たちのリアルな声をもとに、安積高等学校での学校生活がどのようなものか、その本当の魅力と少し気になる点まで、詳しく紐解いていきます。皆さんが「この学校で学びたい!」と思えるような、活気あふれる安積高校の姿を具体的にお伝えできればと思います。
安積高等学校の基本情報
まずは、学校の基本的な情報を確認しておきましょう。
項目 | 内容 |
正式名称 | 福島県立安積高等学校 |
公立/私立の別 | 公立 |
共学/別学の別 | 男女共学 |
所在地 | 〒963-8034 福島県郡山市島2丁目5-10 |
代表電話番号 | 024-922-4310 |
公式サイトURL | https://asaka-h.fcs.ed.jp/ |
安積高等学校の偏差値・難易度・併願校
安積高校を目指す上で、最も気になるのが学力レベルでしょう。具体的なデータと共に、合格に必要な力の目安を見ていきましょう。
偏差値・難易度
安積高等学校の偏差値は、各種の調査で66から71前後とされており、福島県内の高校では常にトップクラスに位置しています。これは、県内でも最難関レベルであることを意味し、合格には非常に高い学力が求められます。
同じくらいの偏差値の高校としては、福島市の福島高等学校や、いわき市の磐城高等学校などが挙げられます。これらの高校と並び、安積高校は地域の学力トップ層の生徒が集まる学校です。
合格に必要な内申点や学力試験の得点ですが、具体的な基準は公表されていません。しかし、過去の合格者のデータを見ると、入試本番の学力試験(250点満点)で、少なくとも180点以上、できれば190点から200点以上を目指すのが一つの目安となりそうです。特に注目すべきは、5教科のバランスです。特定の科目が突出していても、苦手科目で大きく点数を落としてしまうと合格は難しくなる傾向があります。どの教科も満遍なく高得点を取れる総合力が、安積高校の合格を掴む鍵となります。
主な併願校
福島県の公立高校入試では、基本的に1校しか受験できません。そのため、安積高校を第一志望とする受験生の多くは、万が一の場合に備えて私立高校を併願します。
主な併願先としては、偏差値や大学進学への意識が近い以下の高校が選ばれることが多いようです。
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日本大学東北高等学校(特にⅡ期・Ⅰ期)
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尚志高等学校(特に特別進学科)
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帝京安積高等学校
これらの私立高校もそれぞれ特色ある教育を行っているため、併願校選びの際には、各校のオープンキャンパスなどに参加して、自分に合った学校かしっかりと見極めることが大切です。
安積高等学校に設置されている学科・コース
安積高等学校の学びのスタイルは、その学科構成にも表れています。
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普通科(単位制)
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「単位制」とは、学年で決められた授業を全員が同じように受けるのではなく、必修科目以外は自分の興味や進路希望に合わせて授業を選択できる仕組みです。2年生、3年生と進むにつれて選択の幅が広がり、例えば国公立大学の理系学部を目指すなら数学や理科の発展的な科目を多く履修し、私立大学の文系学部を志望するなら地歴や古典の演習を重点的に学ぶ、といったように自分だけの時間割を作ることが可能です。将来の目標が明確で、その実現のために主体的に学びを設計したい生徒に最適なシステムと言えるでしょう。
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安積高等学校の特色・校風
140年以上の歴史の中で育まれてきた、安積高校ならではの雰囲気や文化について、在校生や卒業生の声を基に詳しく見ていきましょう。
キーワード:自由闊達、文武両道、開拓者精神、自主自律
安積高校の校風を語る上で最もよく使われる言葉が「自由」です。その象徴が、郡山市内の高校では珍しい「私服通学」です。制服がなく、生徒は思い思いの服装で学校生活を送っています。
しかし、この「自由」は「何でもあり」という意味ではありません。むしろ、高いレベルでの「自主自律」が求められる校風と言えます。例えば、スマートフォンの持ち込みは可能ですが、授業中の使用は厳禁で、緊急時以外は昇降口付近でのみ使用が許可されるなど、学習環境を守るためのルールは明確に定められています。アルバイトも原則として禁止されており、学業と部活動に集中することが期待されています。
この「自由と規律」のバランスが、安積高校の独特な雰囲気を作り出しています。生徒たちは、勉強するときは真剣に勉強し、部活や行事に打ち込むときは全力で楽しむ、という切り替えが非常に上手なようです。休み時間に勉強している生徒がいても、それを特別視するような雰囲気はなく、互いの目標を尊重し合える落ち着いた環境があります。
一方で、この自由な環境は、自分を律する強い意志がなければ、逆に取り残されてしまう危険性もはらんでいます。「先生が細かく面倒を見てくれるというよりは、自分から質問に行ったり、主体的に動いたりしないと置いていかれる」という声もあり、まさに「自分次第」で高校生活の充実度が大きく変わる学校です。
宿題や課題の量は「かなり多い」という意見が多数です。毎日のように行われる小テストや、難易度の高い定期考査など、常に高いレベルの学習が求められ、そのプレッシャーは決して小さくありません。
施設面では、近年校舎の改修が進み、きれいな教室も増えていますが、一部のトイレや女子更衣室などが古いという指摘もあります。これは、歴史ある学校ならではの課題点かもしれません。
安積高等学校の部活動・イベント
「文武両道」を掲げる安積高校では、勉強だけでなく部活動や学校行事も非常に盛んです。
部活動
全校生徒の約90%が部活動に加入しており、活気に満ちています。運動部、文化部ともに充実しており、全国レベルで活躍する部も少なくありません。
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運動部
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ラグビー部:全国大会(花園)への出場経験もある強豪です。
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野球部:2001年春の選抜高校野球大会に「21世紀枠」として出場した実績を持ちます。
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ハンドボール部:インターハイ出場経験があります。
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その他、ソフトテニス部や卓球部なども県大会で常に上位の成績を収めています。
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文化部
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物理部・生物部:スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の活動と連動し、大学レベルの研究に取り組んでいます。「スマートフォンはなぜ画面を下にして落ちるのか」といったユニークな研究で、全国高等学校総合文化祭で優秀賞を受賞するなど、輝かしい実績を誇ります。
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應援團(応援団):創部から70年以上の歴史を持つ、安積高校の魂ともいえる存在です。厳しい練習を乗り越え、学校行事や部活動の壮行会で披露される迫力ある演舞は、全校生徒を一つにまとめます。単なる応援活動にとどまらず、学校のリーダーとしての役割も担っています。
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軽音同好会:東北地区の大会でグランプリを受賞し、全国大会に出場するなど、高いレベルで活動しています。
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イベント
安積高校の学校生活を彩る、特色あるイベントを紹介します。
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紫旗祭(しきさい):5年に一度だけ開催される、伝説的な文化祭です。開催年度の生徒たちは、この日のために全力を注ぎ、学校全体が熱気に包まれます。その希少性から、生徒たちの記憶に深く刻まれる特別な行事となっています。
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体育祭:毎年開催され、クラス対抗で様々な競技に挑みます。応援にも熱が入り、クラスの団結力が一気に高まる一日です。
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応援歌練習:4月に行われる新入生向けの伝統行事です。應援團の指導のもと、校歌や応援歌を覚えます。これにより、新入生は「安積高校の一員」としての自覚と誇りを持ち、学校の歴史と伝統を肌で感じることができます。
安積高等学校の進学実績
県内トップクラスの進学校である安積高校は、その名に恥じない優れた大学進学実績を誇ります。
国公立大学、私立大学ともに、全国の難関大学へ多数の合格者を輩出しています。特に、地元の東北大学には毎年多くの生徒が進学しており、大きな目標の一つとなっています。
以下に、近年の主な大学の合格実績(抜粋)をまとめました。
分類 | 主な大学名 | 合格者数の例(過年度実績) |
最難関国公立大学 | 東京大学、京都大学、東北大学、一橋大学 | 東北大学 24名 (2024年), 東京大学 6名 (2019年) |
その他国公立大学 | 北海道大学、筑波大学、千葉大学、新潟大学、山形大学、福島大学など | 多数 |
早慶上理 | 早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学、東京理科大学 | 早稲田大学 27名、慶應義塾大学 8名 (2018年) |
GMARCH | 明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学 | 明治大学 25名、法政大学 32名 (2024年) |
医歯薬系 | 福島県立医科大学(医学部)など | 多数 |
このような高い進学実績を支えているのが、日々の質の高い授業はもちろん、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業に代表される探究活動です。自ら課題を見つけ、仮説を立て、検証し、論文にまとめるという一連のプロセスは、大学での研究や社会に出てからの問題解決に不可欠な思考力を養います。また、長期休暇中の講習や、大学入試を見据えた手厚い進路指導など、生徒の希望進路実現に向けたサポート体制も整っています。
安積高等学校の特長・アピールポイント
他の高校にはない、安積高校ならではの強みや魅力をまとめました。
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国の指定を受けた「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」
大学や研究機関と連携し、最先端の科学に触れる機会が豊富にあります。特に理系の探究活動は全国レベルで、科学の面白さを深く追求したい生徒には最高の環境です。
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生徒の自主性を重んじる「自由な校風」
私服通学に象徴されるように、生徒一人ひとりの個性を尊重する文化が根付いています。自由の中で自らを律し、成長していく3年間は、大きな自信につながります。
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140年を超える歴史と伝統
明治時代から続く歴史は、学校の誇りです。卒業生の強力なネットワークは、在校生の探究活動を支援するなど、今もなお学校を支えています。應援團のような伝統も、強い愛校心を育んでいます。
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文武両道を体現する活発な部活動
約9割の生徒が部活動に所属し、多くの部が全国大会や東北大会で活躍しています。勉強と両立させながら、何かに打ち込む仲間と共に過ごす時間は、かけがえのない財産になります。
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東北大学をはじめとする圧倒的な進学実績
県内トップクラスの学力を誇り、毎年多くの生徒が難関大学への進学という夢を叶えています。高い目標を持つ仲間と切磋琢磨できる環境が、大きな魅力です。
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「開拓者精神」を育む探究学習
「開拓者の時間」と名付けられた独自の探究学習では、生徒が自ら社会課題を見つけ、解決策を探ります。答えのない問いに挑む経験は、これからの社会で生き抜くための本質的な力を育てます。
安積高等学校の口コミ・評判のまとめ
在校生や卒業生から寄せられる、リアルな声を公平にまとめてみました。良い点と気になる点の両方を知ることで、より深く学校を理解できるはずです。
良い点
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「勉強に対する意識が高い生徒が多く、最高の学習環境。休み時間に勉強していても浮くことがない」という声が非常に多いです。互いに高め合える仲間がいることは、最大の魅力のようです。
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「私服で通えるのが嬉しい。校則も厳しすぎず、自由な雰囲気の中で自分らしい高校生活が送れる」と、自由な校風を評価する声が多数あります。
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「部活動が盛んで、勉強と両立しながら全国を目指せる。行事も楽しく、最高の思い出が作れた」という、文武両道の充実感を挙げる声も目立ちます。
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「SSHの活動など、他校ではできない貴重な経験ができる。大学の先生や卒業生から直接指導を受けられる機会もある」と、学習プログラムの質の高さを評価する意見もあります。
気になる点
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「トイレなどの施設が古いのが残念」という声は、複数の口コミで見られます。特に女子生徒からは、数の少なさや清潔さについての不満が聞かれます。
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「自由な校風は、裏を返せば自己責任。自分で計画を立てて勉強できないと、あっという間に落ちこぼれてしまう」という厳しい指摘もあります。手厚いサポートを期待していると、ギャップを感じるかもしれません。
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「課題や小テストが非常に多く、とにかく忙しい。自分の時間がなかなか取れない」と、学習量の多さに圧倒されるという声も少なくありません。
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「先生方の中に、国公立大学への進学を強く勧める雰囲気がある。私立大学を第一志望にしていると、少し肩身が狭く感じることがあった」という意見も見られました。
アクセス・通学
安積高校への通学方法についてです。
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最寄り駅:JR「郡山駅」
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アクセス方法:郡山駅前から福島交通バスを利用するのが一般的です。「麓山経由大槻」や「静団地」などの路線に乗り、「安積高校」バス停で下車、徒歩すぐです。バスの乗車時間は約15分程度ですが、朝の通勤・通学時間帯は道路が混雑することもあります。
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通学エリア:郡山市内全域から多くの生徒が通学しています。また、学区の制限がないため、須賀川市や本宮市、田村市など、JR東北本線や磐越東線・西線の沿線から電車とバスを乗り継いで通学する生徒も珍しくありません。
安積高等学校受験生へのワンポイントアドバイス
これまで安積高等学校の様々な側面を見てきましたが、最後に、進学アドバイザーとして皆さんへの応援メッセージを送ります。
安積高校は、ずばり「自由と責任を両立できる、知的好奇心旺盛な生徒」に特におすすめの学校です。誰かに指示されるのではなく、自分で目標を立てて突き進むのが好きな人、難しい課題に仲間と協力して挑戦することにワクワクする人にとって、これ以上ない環境が待っています。特に、SSHでの探究活動は、科学の面白さをとことん追求したい君の知的好奇心をきっと満たしてくれるはずです。
安積高校の入試を突破するためには、5教科すべてで穴を作らない「総合力」が何よりも重要です。過去の入試問題を徹底的に分析し、苦手分野を一つひとつ着実になくしていく地道な努力が合格への一番の近道。高い目標を持つことは大変ですが、その挑戦の過程で得られる力は、高校入学後も、そしてその先の人生でも必ずあなたの支えになります。開拓者精神で、自分の未来を切り拓いてください。応援しています!
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。