東京都立小笠原高等学校は、東京の都心から南へ約1,000km、世界自然遺産に登録された美しい小笠原諸島の父島にある、日本で最もユニークな高校の一つです。 想像してみてください、教室の窓から見えるのはエメラルドグリーンの海、体育の授業ではウィンドサーフィンに挑戦し、放課後はウミガメの産卵調査に参加する…そんな非日常が日常となる高校生活が、この東京都立小笠原高等学校にはあります。
全校生徒50名弱という少人数だからこそ生まれる、生徒と先生、そして生徒同士の家族のような温かい繋がりが、この学校の大きな魅力です。 都会の喧騒から遠く離れた大自然の中で、仲間たちとかけがえのない3年間を過ごす。それは、学力だけでなく、人間力や自立心を大きく成長させてくれる貴重な経験となるでしょう。
この記事では、そんな東京都立小笠原高等学校のありのままの姿を、進学アドバイザーの視点から詳しくご紹介します。偏差値や進学実績といったデータはもちろん、在校生の声や島での暮らしぶりまで、中学生や保護者の皆さんが本当に知りたい情報を分かりやすくまとめました。まだ見ぬ可能性に満ちた高校選びの参考に、ぜひ最後までご覧ください。
東京都立小笠原高等学校の基本情報
東京都立小笠原高等学校の偏差値・難易度・併願校
東京都立小笠原高等学校の入試は、その特殊な環境から一般的な都立高校とは少し異なります。偏差値はあくまで一つの目安として捉え、学校の特色を深く理解することが合格への鍵となります。
普通科の偏差値は「39」とされています。 しかし、この数字だけで東京都立小笠原高等学校の難易度を測ることはできません。入学を希望する場合、小笠原の自然環境や文化、少人数での学校生活への強い関心と適応力が重視される傾向があります。学力試験に加えて、面接や作文などを通して、入学への熱意や人間性も評価されると考えておくと良いでしょう。
都立高校のため、他の都立高校との併願はできません。そのため、併願校としては、本土にある私立高校を受験する生徒が多いようです。受験を検討する際は、本土と小笠原を結ぶ船の運航スケジュールなども考慮し、計画的に準備を進める必要があります。
東京都立小笠原高等学校に設置されている学科・コース
東京都立小笠原高等学校に設置されているのは「普通科」のみです。 しかし、その学びは決して「普通」ではありません。世界自然遺産という最高のフィールドを活かした、この学校ならではのユニークな教育が展開されています。
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普通科:1年生では基礎学力を徹底し、2年生からは進路希望に応じて「文系」「理系」「教養系」の3つの類型に分かれます。 3年生では多様な選択科目が用意されており、一人ひとりの興味や目標に合わせた学習が可能です。 特に、地域の特性を活かした環境保護に関する学習や、海洋教育が充実しているのが大きな特長です。
東京都立小笠原高等学校の特色・校風
東京都立小笠原高等学校の校風は、「アットホーム」「自主自律」「自然との共生」といった言葉で表現できます。全校生徒が50名弱という環境だからこそ、学年を超えた生徒同士の交流が活発で、先生との距離も非常に近いのが特徴です。
口コミによると校則はほとんどなく、生徒の自主性が尊重されているようです。 服装も自由で、スマホの持ち込みも可能ですが、自由な環境だからこそ、生徒一人ひとりが自分で考えて行動する力が求められます。アルバイトも許可されているようですが、島内の限られた環境なので、学業との両立を考えている場合は事前に確認が必要です。制服はありませんが、式典などで着用する標準服はあります。
宿題の量は標準的ですが、土曜講習や検定講習などが充実しており、希望者は進学や資格取得に向けた手厚いサポートを受けることができます。 生徒たちは、穏やかでマイペースな雰囲気の中にも、島の自然を愛し、将来の夢に向かって主体的に学ぶ姿勢を持った生徒が多いようです。
東京都立小笠原高等学校の部活動・イベント
部活動
東京都立小笠原高等学校では、多くの生徒が部活動に加入しており、中には複数の部を兼部している生徒もいるなど、非常に活気があります。
運動部では、バレーボール部やバスケットボール部、硬式テニス部などが活動しています。 特にバレーボール部は、夏に本土への遠征を行うなど、本格的に活動しています。 文化部で特にユニークなのが「自然保護研究会」です。 海岸の生物調査や外来種の駆除活動など、世界自然遺産の島ならではの活動に取り組んでおり、環境大臣表彰を受けた実績もあります。 他にも音楽部や写真部、イラスト部などがあり、文化祭での発表に向けて日々練習に励んでいます。
イベント
小笠原高等学校の学校行事は、地域との連携が非常に強いのが大きな特徴です。 6月に行われる文化祭「ビーデ祭」は、生徒たちの発表の場であると同時に、島の人々との大切な交流の機会となっています。 10月には、島内の小・中学生と合同で「小中高連合運動会」が開催され、島全体で盛り上がる一大イベントです。
体育の授業の一環としても行われる「ウィンドサーフィン」の大会も、小笠原ならではの行事です。 また、修学旅行では東北地方などを訪れ、島の暮らしとは異なる文化や歴史に触れる貴重な体験をします。 この他にも、兄島での野外活動やロードレース大会など、豊かな自然環境を活かした行事が年間を通して数多く企画されています。
東京都立小笠原高等学校の進学実績
東京都立小笠原高等学校は、少人数ながらも生徒一人ひとりの進路希望に合わせた手厚いサポート体制が整っており、大学進学から専門学校、就職まで多様な進路を実現しています。
近年では、埼玉大学や和歌山大学といった国公立大学への合格実績があります。 私立大学では、日本大学や東海大学、帝京平成大学などへの進学者がいます。また、看護系の専門学校や、観光・海洋分野の専門学校へ進む生徒もいます。
進学実績を支える取り組みとして、入学当初から計画的に行われる進路ガイダンスや、個々の希望に応じた土曜講習・検定講習が挙げられます。 夏休みには本土での進路説明会や学校見学会に参加するなど、情報収集の機会も確保されています。 大学入学共通テストの際は、船で片道24時間かけて本土の試験会場へ向かうなど、進学には島ならではの努力も必要ですが、学校全体で生徒の挑戦を応援する体制が整っています。
東京都立小笠原高等学校の特長・アピールポイント
東京都立小笠原高等学校には、他の高校では決して味わうことのできない、唯一無二の魅力がたくさん詰まっています。
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世界自然遺産が学びのフィールド:教室を一歩出れば、そこは手つかずの自然の宝庫。体育の授業ではウィンドサーフィン、総合的な探究の時間では自然保護活動など、五感で学ぶ体験的な学習が豊富です。
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家族のような人間関係:全校生徒50名弱という規模だからこそ、先生や仲間との間に深く温かい絆が生まれます。一人ひとりに寄り添った、きめ細やかな指導が受けられます。
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充実した土曜講習・検定講習:大学受験対策から各種検定対策、授業の補習まで、生徒の希望に合わせて20以上の講座が開講されるなど、学習サポートが手厚いです。
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地域との強いつながり:小中高連合運動会やビーデ祭(文化祭)など、地域の人々と一体となって創り上げるイベントが多く、社会性を育む機会に恵まれています。
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近代的な施設・設備:校舎は高台にあり地域の防災拠点にもなっています。 夜間照明付きのグラウンドや、地域にも開放されている図書室など、島内有数の設備が整っています。
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グアムの高校との姉妹校提携:グアムのジョージ・ワシントン・ハイスクールと姉妹校提携を結び、国際交流にも力を入れています。
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母島からの生徒のための寮を完備:母島から進学する生徒のために「ぎんねむ寮」という学生寮が用意されており、安心して学校生活を送ることができます。
東京都立小笠原高等学校の口コミ・評判のまとめ
東京都立小笠原高等学校の口コミをまとめると、そのユニークな環境を最大限に楽しんでいる生徒の声が多く見られます。
良い点:
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「とにかく自然が豊か。都会では絶対にできない経験がたくさんできる」
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「生徒数が少ないので、みんな家族みたいに仲が良い。先生との距離も近くて相談しやすい」
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「校則が緩やかで自由な雰囲気。自分のペースで高校生活を送りたい人には最高」
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「ウィンドサーフィンや自然保護活動など、ここでしかできない授業や部活動が楽しい」
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「地域の人たちが温かく見守ってくれる。島全体が学校のよう」
気になる点:
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「本土との行き来が船しかなく、時間がかかるので大変」
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「お店や遊ぶ場所が限られているので、都会的な楽しさを求める人には物足りないかもしれない」
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「全校生徒が少ないので、人間関係が密になりがち。合わないと辛いかもしれない」
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「大学受験の際は、情報収集や予備校通いなどで本土の生徒に比べてハンデを感じることがある」
アクセス・通学
東京都立小笠原高等学校へのアクセスは、他のどの高校とも異なります。
本土から小笠原諸島父島へは、基本的に東京・竹芝桟橋から出航する「おがさわら丸」を利用します。 所要時間は片道約24時間です。
父島の玄関口である二見港船客待合所からは、徒歩で約15分です。 島内の生徒は、徒歩や自転車、村営バスなどを利用して通学しています。母島から進学する生徒は、学校の近くにある「ぎんねむ寮」から通います。 村外から入学する場合は、保護者とともに村内に転居するか、村内在住の親族と同居するなどの条件があるため、事前の確認が必須です。
東京都立小笠原高等学校受験生へのワンポイントアドバイス
東京都立小笠原高等学校を目指す君へ。もし君が、満点の星空の下で夢を語り、イルカのジャンプに歓声を上げ、仲間たちと深く語り合うような高校生活に憧れるなら、これほど素晴らしい学校はありません。この学校が求めているのは、偏差値の高さだけではなく、小笠原の雄大な自然の中で学びたいという強い気持ちと、何事にも主体的に取り組むチャレンジ精神です。
東京都立小笠原高等学校の受験では、自分の言葉で「なぜ小笠原で学びたいのか」「高校で何をしたいのか」を語れることが大切になります。日頃からニュースや本に触れて自分の考えをまとめる練習をしたり、自然環境問題について調べてみたりすると、面接や作文で君自身の魅力を伝えられるはずです。人と違う経験をしたい、自分を大きく成長させたいと願う君の挑戦を、心から応援しています。
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。