東京都立産業技術高等専門学校は、最先端の科学技術を学び、将来の「ものづくりスペシャリスト」を目指す人のための特別な学校です。 一般的な高校が3年制なのに対し、5年間の一貫教育を通して、大学レベルの専門知識と実践的な技術をじっくりと身につけることができるのが最大の特徴です。 中学校を卒業してすぐの段階から、興味のある分野の専門家を目指せるのは、他のどの高校にもない大きな魅力と言えるでしょう。

この学校は「高専」という愛称で呼ばれ、全国に多くの仲間がいます。 その中でも東京都立産業技術高等専門学校は、品川と荒川にキャンパスを持ち、AIやロボット、航空宇宙といった未来を創る8つの多彩なコースが用意されているのが特色です。 大学への進学や、大手企業への就職にも非常に強く、自分の可能性を大きく広げられる環境が整っています。

この記事では、そんな東京都立産業技術高等専門学校がどんな学校なのか、偏差値や難易度、学校生活の様子から進路まで、受験生のみなさんが知りたい情報を、進学アドバイザーとして分かりやすく解説していきます。自分の「好き」や「得意」をとことん追求したいと考えている中学生とその保護者の方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

東京都立産業技術高等専門学校の基本情報

東京都立産業技術高等専門学校は、品川と荒川の2つのキャンパスを持つ公立の高等専門学校です。

項目 内容
正式名称 東京都立産業技術高等専門学校
公立/私立の別 公立
共学/男子校/女子校の別 男女共学
所在地 品川キャンパス: 〒140-0011 東京都品川区東大井1-10-40 <br> 荒川キャンパス: 〒116-8523 東京都荒川区南千住8-17-1
代表電話番号 品川キャンパス: 03-3471-6331 <br> 荒川キャンパス: 03-3801-0145
公式サイト https://www.metro-cit.ac.jp/

東京都立産業技術高等専門学校の偏差値・難易度・併願校

東京都立産業技術高等専門学校、通称「産技高専」は、専門的な知識と技術を学べることから、理系やものづくりに興味がある中学生から高い人気を集めています。

偏差値はコースによって多少異なりますが、おおむね61〜62程度とされており、高い学力が求められます。合格に必要な内申点の目安としては、5段階評価で主要5教科の合計が22〜24程度、9教科の合計では38〜41程度が一つの基準となるでしょう。ただし、これはあくまで目安であり、当日の学力検査の結果も非常に重要です。

産技高専の入試は、国語・数学・英語の3教科で実施されるのが特徴で、都立高校の5教科入試とは異なります。 特に数学と英語は思考力や応用力を問う問題が出題される傾向があるため、過去問などを活用してしっかりと対策を練ることが合格への鍵となります。

主な併願校としては、私立高校が多く選ばれているようです。具体的には、國學院高等学校、日本大学第二高等学校、工学院大学附属高等学校、芝浦工業大学附属高等学校などが挙げられます。東京都立産業技術高等専門学校は都立の学校ですが、高専のため他の都立高校との併願に関するルールが少し特殊です。学力検査選抜に両方出願することは可能ですが、産技高専の合格者となった場合、都立高校を受験することはできないため注意が必要です。

東京都立産業技術高等専門学校に設置されている学科・コース

東京都立産業技術高等専門学校には「ものづくり工学科」という一つの大きな学科があり、その中に社会のニーズに応えるための8つの専門コースが用意されています。 1年生のうちは、全員が混成クラスで数学や物理といった基礎科目と、ものづくりの基本を幅広く学びます。 じっくり自分の適性を見極めたうえで、2年生になるときに希望のコースを選択できるのが大きな特長です。

品川キャンパス

  • 機械システム工学コース: ロボットや自動車など、あらゆる機械を動かす仕組みを学びます。機械いじりが好きな人や、新しいメカニズムを考えるのが得意な人におすすめです。

  • AIスマート工学コース: 今話題のAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)技術を学びます。未来の便利な社会を自分の手で創り出したい人にぴったりです。

  • 電気電子工学コース: スマートフォンから電力供給システムまで、現代社会に欠かせない電気や電子回路の専門家を目指します。電気の力で世の中を動かしたい人におすすめです。

  • 情報システム工学コース: 高度なプログラミング技術や情報セキュリティについて学びます。社会を支える情報システムを開発・運用したい人に向いています。

荒川キャンパス

  • 情報通信工学コース: 5Gなどの高速通信技術や、インターネットの仕組みを学びます。人々のコミュニケーションをより豊かにする技術に興味がある人におすすめです。

  • ロボット工学コース: 人の役に立つロボットの開発を目指し、機械・電気・情報を融合した知識を学びます。自分のアイデアでロボットを動かしたい人に最適です。

  • 航空宇宙工学コース: 飛行機やロケット、人工衛星など、大空や宇宙で活躍する機械の設計・開発を学びます。空や宇宙への憧れを形にしたい人におすすめです。

  • 医療福祉工学コース: 工学の知識を活かして、医療機器や福祉用具を開発します。科学技術で人々を助けたい、社会に貢献したいという優しい心を持った人にぴったりです。

東京都立産業技術高等専門学校の特色・校風

東京都立産業技術高等専門学校は、「自由」と「自主性」を重んじる校風が大きな特色です。 生徒一人ひとりの個性を尊重し、やりたいことをとことん追求できる環境が整っています。

  • 校風キーワード: 自由闊達、探求心、実践重視、スペシャリスト育成

  • 宿題・課題の量: 一般的な高校と比較すると、専門科目に関するレポートや課題は多い傾向にあるようです。 授業で学んだことを自分の力でまとめ、深く理解することが求められるため、計画的に学習を進める力が必要になります。

  • 校則: 校則は非常に緩やかで、制服はなく私服での通学が認められています。 髪型や髪色、ピアスなども基本的には自由で、生徒の自主性に任されている部分が大きいです。 授業に支障が出ない範囲であれば、スマートフォンの使用も認められることが多いようです。

  • 生徒たちの雰囲気: 「ものづくりが好き」「特定の分野を深く学びたい」という共通の目的を持った生徒が集まるため、真面目で探究心が旺盛な雰囲気があります。 互いの興味や知識を尊重し合える、落ち着いた環境で学びたい人には最適な環境と言えるでしょう。

  • アルバイト: アルバイトは原則として許可されていますが、学業との両立が求められます。

  • 制服: 制服はありません。 生徒は各自、自由な服装で学校生活を送っています。実験や実習の際には、安全のために指定の作業着を着用します。

  • 土曜授業: 基本的に土曜授業はありません。

東京都立産業技術高等専門学校の部活動・イベント

部活動

東京都立産業技術高等専門学校の部活動は、高専ならではのユニークな活動が盛んなのが魅力です。 一般的な高校と同様の運動部や文化部も充実しており、多くの生徒が学業と両立しながら活動を楽しんでいます。兼部も可能なため、興味のある活動に複数参加することもできます。

  • 高専ロボコン: 高専の代名詞ともいえるのが「高専ロボコン(アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト)」です。ロボット製作系の部活動が中心となり、毎年異なる競技課題に対して独創的なロボットを設計・製作し、全国の高専生と技術力とアイデアを競い合います。全国大会で活躍することも多く、学校を挙げて応援するなど、非常に盛り上がりを見せます。

  • 鳥人間コンテストを目指す部活: 人力飛行機の設計・製作に挑戦し、夏のびわ湖で開催される「鳥人間コンテスト」への出場を目指す部活動もあります。航空宇宙工学に興味のある生徒を中心に、チーム一丸となって大空への夢を追いかけます。

  • その他: この他にも、自動車を作る部活や人工衛星を開発する部活など、専門知識を活かした活動が数多く存在します。 もちろん、野球、サッカー、バスケットボール、テニスといった運動部や、吹奏楽、写真、美術といった文化部も活発に活動しています。

イベント

産技高専では、生徒が主体となって企画・運営するイベントが多く、クラスや学年の垣根を越えた交流が活発です。

  • 高専祭(文化祭): 各キャンパスで秋に開催される文化祭は「高専祭」と呼ばれ、地域住民も訪れる大きなイベントです。 各コースの研究内容を紹介する展示や、部活動による成果発表、模擬店など、高専ならではの企画が満載です。特に、ロボットのデモンストレーションや体験型の展示は、毎年多くの来場者で賑わいます。

  • 体育祭: クラスやチーム対抗で様々な競技に汗を流す体育祭も、学生たちが中心となって運営されます。 競技だけでなく、応援合戦などにも力が入り、学校全体が一体となって盛り上がります。

  • 修学旅行: 一般的な高校と同様に修学旅行も実施されます。訪問先では、現地の文化に触れるだけでなく、先端技術関連の施設を見学するなど、専門分野への学びを深める機会も設けられることがあります。

  • 海外研修・国際交流: 希望者を対象とした海外研修プログラムも用意されています。 海外の大学や企業を訪問し、現地の学生と交流することで、グローバルな視野を養うことができます。

東京都立産業技術高等専門学校の進学実績

東京都立産業技術高等専門学校の卒業後の進路は、大きく分けて「就職」と「進学」の2つがあり、どちらの道を選んでも非常に高い実績を誇っているのが最大の強みです。

約7割の学生が就職を選択し、残り約3割が進学の道へ進みます。

高専からの進学は、一般的な大学受験とは異なり、主に大学の3年次へ編入学する形をとります。 5年間で大学の教養課程と専門基礎を終えているため、スムーズに大学での高度な学びに移行できるのがメリットです。

主な進学先(大学編入)

  • 国公立大学: 東京大学、東京工業大学、電気通信大学、東京農工大学、千葉大学、横浜国立大学、長岡技術科学大学など、全国の難関国公立大学への編入実績が多数あります。 特に、同じ東京都公立大学法人が運営する東京都立大学へは推薦編入学の枠も設けられています。

  • 私立大学: 早稲田大学、慶應義塾大学、東京理科大学など、難関私立大学への編入実績もあります。

  • 専攻科への進学: さらに専門性を高めたい学生は、学内にある2年制の「専攻科」へ進学することも可能です。専攻科を修了すると、大学卒業と同等の「学士」の学位が取得でき、大学院への進学も可能になります。

主な就職先

就職希望者の就職率は、景気の動向に左右されることなく、ほぼ100%を維持しています。 これは、5年間で培った専門知識と実践的な技術力が、産業界から高く評価されている証です。

キヤノン、東海旅客鉄道(JR東海)、東京電力、日立製作所、三菱電機など、日本を代表する大手企業から多数の求人が寄せられています。 学校で学んだ専門性を直接活かせる技術職として活躍する卒業生がほとんどです。

東京都立産業技術高等専門学校の特長・アピールポイント

東京都立産業技術高等専門学校には、一般的な高校とはひと味違う、ユニークで魅力的な特長がたくさんあります。

  • 5年間の一貫教育: 中学校卒業後、15歳から20歳までの多感な5年間を通して、じっくりと専門分野を学ぶことができます。大学受験に左右されず、興味のある分野の研究に没頭できる時間は、技術者としての大きな土台となります。

  • 大学レベルの専門教育: 高学年になると、大学工学部レベルの高度な専門科目を学びます。 充実した実験・実習設備を使って、理論だけでなく実践的なスキルを徹底的に鍛えることができます。

  • 驚異的に高い就職率: 就職希望者の就職率はほぼ100%を誇ります。 多くの有名企業から求人があり、学校で学んだ専門性を活かして即戦力として活躍することが期待されています。

  • 国公立大学への編入学という選択肢: 卒業後は、多くの国公立大学の3年次に編入学する道が開かれています。高専での学びをさらに深めるために、東京大学や東京工業大学といったトップレベルの大学に進学する卒業生も少なくありません。

  • 1年次にじっくりコース選択が可能: 入学後すぐコースに分かれるのではなく、1年生のうちは共通のカリキュラムで学びます。 機械・電気・情報など、様々な分野の基礎を体験した上で、2年生から自分の本当に進みたいコースを選べるため、ミスマッチが少ないのが魅力です。

  • 自由で自主性を重んじる校風: 校則が非常に緩やかで、服装や髪型も自由です。 生徒の自主性を尊重する雰囲気の中で、のびのびと学校生活を送りながら、自分の好きな研究や活動に打ち込めます。

  • 高専ロボコンをはじめとするユニークな課外活動: テレビでもおなじみの「高専ロボコン」をはじめ、人工衛星の開発や鳥人間コンテストへの挑戦など、高専ならではの刺激的なプロジェクトに参加するチャンスが豊富にあります。

東京都立産業技術高等専門学校の口コミ・評判のまとめ

東京都立産業技術高等専門学校について、在校生や卒業生からは様々な声が寄せられています。学校選びの参考に、良い点と気になる点を公平に見ていきましょう。

良い点

  • 専門知識が深く学べる: 「自分の好きな分野を中学卒業後すぐに、しかも大学レベルまで深く学べるのが最高の環境」「実験設備が充実していて、実践的なスキルが身につく」といった、専門教育の質の高さに対する満足の声が非常に多いです。

  • 就職・進学に圧倒的に強い: 「就職率がほぼ100%で、有名企業からの求人も多いので安心できる」「国公立大学への編入という選択肢があり、将来の可能性が広がる」など、卒業後の進路に対する信頼感は絶大です。

  • 自由な校風: 「私服OKで校則も緩やかなので、自分らしくのびのびと過ごせる」「先生方も学生の自主性を尊重してくれる」といった、自由な雰囲気を評価する声が目立ちます。

  • 同じ興味を持つ仲間との出会い: 「共通の趣味や目標を持つ友達ばかりなので、話が合いやすく、毎日が楽しい」「お互いに高め合える仲間と出会えた」という、人間関係の良さを挙げる口コミも多く見られます。

気になる点

  • 課題やレポートが大変: 「専門的な内容のレポートが多く、提出前はかなり忙しい」「楽して卒業できる学校ではない」という声は少なくありません。高い専門性を身につけるためには、相応の学習量が求められるようです。

  • 留年の可能性がある: 一般的な高校と違い、高専は単位制です。そのため、試験の成績が悪いと進級できず、留年してしまう可能性があります。日々の予習・復習が欠かせません。

  • 女子生徒の比率が低い: 学校全体で見ると、女子生徒の割合はまだ低いのが現状です。 しかし、年々増加傾向にあり、女子生徒同士の仲は良く、男子生徒も優しく接してくれるという声もあります。

  • キャンパス間の距離: 品川と荒川にキャンパスが分かれているため、部活動などで両キャンパスの生徒が交流する際には移動が必要です。

アクセス・通学

東京都立産業技術高等専門学校は、都内に2つのキャンパスがあり、それぞれ交通の便が良い場所に立地しています。

品川キャンパス

  • りんかい線「品川シーサイド駅」B口から 徒歩約4分

  • 京急本線「鮫洲駅」から 徒歩約10分

  • 京急本線「青物横丁駅」から 徒歩約13分

荒川キャンパス

  • JR常磐線・東京メトロ日比谷線・つくばエクスプレス「南千住駅」から 徒歩約15分

  • 東武スカイツリーライン「鐘ヶ淵駅」から 徒歩約18分

  • 東武スカイツリーライン「牛田駅」から 徒歩約20分

  • 京成本線「京成関屋駅」から 徒歩約20分

  • 都営バス「都立産業技術高専荒川キャンパス前」下車 徒歩約1分

両キャンパスともに、都内だけでなく、千葉県や埼玉県、神奈川県など近隣の県から通学している生徒もいます。

東京都立産業技術高等専門学校受験生へのワンポイントアドバイス

東京都立産業技術高等専門学校を目指している皆さん、こんにちは!未来のエンジニア、研究者としての第一歩を、この素晴らしい環境で踏み出そうとしている君たちに、心からのエールを送ります。

この東京都立産業技術高等専門学校は、「ものづくりが大好き」「科学のナゼ?を突き詰めたい」「自分の手で未来を創ってみたい」そんな熱い想いを持つ君にこそ、ぴったりの学校です。5年間という時間を使って、好きなことをとことん探求できる環境は、何物にも代えがたい宝物になるはずです。

受験勉強では、特に数学と理科、そして英語の基礎をしっかりと固めてください。産技高専の入試問題は、単なる暗記ではなく、「なぜそうなるのか」という本質的な理解を問う問題が多く出題されます。 公式や単語を覚えるだけでなく、日頃から「どうして?」「もっと知りたい!」という好奇心を大切に、学習に取り組む姿勢が合格への一番の近道です。東京都立産業技術高等専門学校で、同じ夢を持つ仲間たちと一緒に、未来を創造する楽しさを存分に味わってください。応援しています!

※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。