千葉県立東葛飾高等学校、通称「東葛(とうかつ)」。この名前を聞いて、多くの受験生や保護者の方が「自由な校風の、県内トップクラスの進学校」というイメージを思い浮かべるのではないでしょうか。そのイメージは、間違いなくこの学校の一面を的確に捉えています。

しかし、東葛飾高等学校が持つ本当の魅力は、単に偏差値が高いことや校則が緩やかであることだけではありません。その根底に流れる「自主自律」の精神こそが、生徒一人ひとりの高校生活を、他では決して味わうことのできない、かけがえのない3年間に変える原動力となっています。

この記事では、データや数字だけでは伝わりきらない東葛飾高等学校のリアルな姿を、進学アドバイザーの視点から、皆さんに分かりやすく、そして深くお伝えしていきます。この記事を読み終える頃には、あなたがこの学校でどんな高校生活を送り、どんな未来を描けるのか、きっと鮮明にイメージできるようになっているはずです。

東葛飾高等学校の基本情報

まずは、学校の基本的な情報を確認しておきましょう。進路を考える上での基礎となる大切な情報です。

項目 内容
正式名称 千葉県立東葛飾高等学校
公立/私立の別 公立
共学/男子校/女子校の別 男女共学
所在地 〒277-8570 千葉県柏市旭町3-2-1
代表電話番号 04-7143-4271
公式サイトURL https://cms1.chiba-c.ed.jp/tohkatsu/

東葛飾高等学校の偏差値・難易度・併願校

県内屈指の難関校である東葛飾高等学校。その難易度を、偏差値や入試制度、そして併願校の視点から具体的に見ていきましょう。

偏差値・難易度

  • 普通科: 偏差値 71 (複数の情報源を総合すると、66〜71程度が目安となります)

この偏差値は、千葉県内の公立高校の中で県立千葉高校、県立船橋高校と並ぶトップクラスに位置しており、全国的に見ても非常にレベルの高い難関校であることが分かります。

難易度を具体的にイメージするための補足情報

東葛飾高等学校の入試が特徴的なのは、単に学力検査の点数が高いだけでは測れない、独自の選抜方法にあります。

  • 内申点より「当日の学力」を重視: 千葉県の公立高校入試では、中学3年間の内申点(135点満点)が合否判定に使われます。多くの高校ではこの点数がそのまま、あるいはそれに近い形で加算されますが、東葛飾高校では内申点の評価比率を示す係数に設定されています。これは、内申点が半分(67.5点満点)に圧縮されて計算されることを意味します。さらに、部活動の実績や生徒会活動などによる加点も一切ありません。合格者の内申点目安は135点満点中127点前後と非常に高いですが、それ以上に重要なのが入試当日の得点力です。

  • 合否を分ける「思考力を問う問題」: 東葛飾高校の入試では、5教科500点満点の学力検査に加えて、100点満点の「思考力を問う問題」という独自の検査が課されます。これは、長文を読んで情報を正確に読み解き、論理的に考察し、自分の言葉で表現する力が試される、非常に難易度の高い問題です。この検査は、県立千葉高校や千葉東高校といった他のトップ校でも採用されており、付け焼き刃の知識では太刀打ちできません。まさに、同校が求める「自ら考え、判断する力」を持つ生徒を選抜するための試験と言えるでしょう。

この入試制度は、中学時代の成績もさることながら、「高校に入ってから伸びる、地頭の良さを持った生徒」を求めているという、学校からの明確なメッセージです。

主な併願校

千葉県の公立高校入試では、原則として他の公立高校を併願することはできません。そのため、東葛飾高等学校の受験生は、万が一の場合に備えて、難易度の高い私立高校を併願するケースがほとんどです。

主な併願先としては、以下のような高校が挙げられます。

  • 芝浦工業大学柏高等学校

  • 専修大学松戸高等学校

  • 市川高等学校

  • 昭和学院秀英高等学校

  • 江戸川女子高等学校

これらの高校はいずれも高い人気と実力を誇る進学校であり、東葛飾高校を第一志望とする受験生が、学力レベルを維持しながら安心して受験に臨むための選択肢となっています。

東葛飾高等学校に設置されている学科・コース

東葛飾高等学校には、生徒の多様な興味関心と進路希望に応えるためのコースが設置されています。

  • 普通科

    • ほとんどの生徒が所属する、学校のメインとなる学科です。難関大学への進学を視野に入れた、質の高い授業が展開されます。

  • 医歯薬コース

    • どんなことを学ぶ場所なのか:将来、医師、歯科医師、薬剤師といった医療系の道に進みたい生徒のための専門コースです。大学病院でのインターンシップや、大学教授による講義、現役の医療従事者との座談会など、高校の授業の枠を超えた貴重な体験ができます。

    • どんな生徒におすすめか:医療分野への強い情熱と目的意識を持ち、早期から専門的な知識や倫理観に触れたいと考えている人におすすめです。

この医歯薬コースは、単に受験対策をするだけでなく、医療人としての心構えや適性を高校生のうちからじっくりと考える機会を与えてくれる、非常に特色のあるプログラムです。

東葛飾高等学校の特色・校風

東葛飾高等学校の最も大きな魅力、それは「自主自律」という言葉に集約される独特の校風です。ここでは、中学生の皆さんが最も知りたいであろう、学校生活のリアルな部分を口コミなどを基に詳しく解説します。

キーワード:自由闊達、自主自律、文武両道、生徒主体、個性の尊重

  • 宿題の量は多い?少ない?

    • 口コミを見ると、「他の進学校に比べて宿題や課題の量は少ない」という声が多いようです。これは、生徒を管理するのではなく、生徒一人ひとりが自分に必要な勉強を自分で考えて行うことを尊重しているためです。勉強するかしないかは、完全に自分次第。この自由を活かせるかどうかが、大学進学の結果にも直結します。

  • 校則は厳しい?緩やか?

    • 「校則は無いに等しい」と言われるほど、非常に緩やかです。

    • 服装:県内の公立高校では極めて珍しい「私服校」です。制服はなく、生徒は思い思いの服装で登校します。ファッションを楽しむ生徒もいれば、ジャージでリラックスして過ごす生徒もいます。

    • スマホ:校内での使用は基本的に自由です。生徒の良識に委ねられています。

    • 髪型・化粧・ピアスなど:髪を染めること、化粧、ピアスなども特に禁止されていません。ユーモアを込めて「下駄履きでの登校が唯一の校則」と言われることもあるほどです。

  • 生徒たちの雰囲気は?

    • 「個性的で面白い人が多い」「互いを尊重しあう文化がある」といった声が多数聞かれます。自由な校風のもと、周りの目を気にせず自分の「好き」を追求できる環境だからこそ、多様な才能や個性を持った生徒が集まります。いじめがほとんどないという評判も、この成熟した人間関係から生まれているようです。

  • アルバイトは可能?

    • 可能です。自己管理が前提となります。

  • 制服の評判は?

    • 制服がないため、この点に関する評判はありません。むしろ、「制服がないのが良い」「毎日好きな服が着られて楽しい」というポジティブな意見が目立ちます。一方で、「毎日私服を選ぶのが少し大変」という声も少数ながらあるようです。

  • 土曜授業はある?

    • 正規の授業はありません。しかし、週末を中心に「東葛リベラルアーツ講座」という大学教授や社会の第一線で活躍する専門家を招いた、非常にレベルの高い教養講座が年間50回以上も開講されています。参加は任意ですが、知的好奇心旺盛な多くの生徒が積極的に参加しています。

この学校の雰囲気は、高校というより大学のキャンパスに近いかもしれません。自由が与えられている分、一人ひとりに大きな責任が伴います。この環境は、自らを律し、主体的に行動できる生徒にとっては最高の成長の場となりますが、一方で、細かい指示や管理がないと不安に感じるタイプの生徒には、少し厳しい環境に感じられる可能性もあります。

東葛飾高等学校の部活動・イベント

「勉強も、部活も、行事も、全部本気でやる」。それが東葛生のスタイルです。

部活動

東葛飾高等学校では、非常に多くの生徒が部活動に加入しており、複数の部を兼部している生徒も珍しくありません。運動部・文化部ともに非常に活発で、全国レベルで活躍する部も多数存在します。

  • 特に有名な部活動

    • フェンシング部:関東大会や全国大会の常連で、輝かしい実績を誇る学校の顔とも言える部活動です。高いレベルで競技に打ち込みたい生徒が集まっています。

    • 軽音楽部:数々のコンテストでグランプリや入賞を果たすなど、その実力は県内トップクラスです。文化祭などでのライブは大変な盛り上がりを見せ、多くの生徒が楽しみにしています。

    • サッカー部・バスケットボール部:どちらも強豪として知られ、県大会出場は当たり前という高いレベルで活動しています。

  • 珍しい部活動

    • 東葛には、他ではあまり見られないユニークな部活動もたくさんあります。例えば、「お笑い研究部」「クイズ研究会」「ファンタジィ部」「鉄道研究部」など。生徒の「やりたい」という気持ちを尊重し、多様な活動の場が用意されているのも、この学校ならではの魅力です。

イベント

東葛飾高等学校の学校生活を語る上で絶対に外せないのが、生徒が主体となって作り上げる「三大祭」です。

  • スポーツ祭(5月):3日間にわたって開催される体育祭です。企画・運営のすべてを生徒が行い、クラス対抗で熱い戦いが繰り広げられます。スローガンを掲げ、一体となって盛り上がる様子は圧巻です。

  • 合唱祭(6月〜7月):東葛の合唱祭は、単なる合唱コンクールではありません。各クラスが選曲から衣装のデザイン・制作、ステージ上でのパフォーマンスまで、すべてを自分たちで創り上げます。そのクオリティは非常に高く、「お金を払ってでも見たい」と評されるほど。歌声とパフォーマンスが一体となった芸術的なステージは、見る人に大きな感動を与えます。卒業生が「リベンジ合唱祭」というイベントを開催するほど、生徒たちの心に深く刻まれる行事です。

  • 文化祭「東葛祭」(9月):スポーツ祭、合唱祭の集大成とも言える、学校最大のイベントです。2日間の開催で、例年8000人以上もの来場者で賑わいます。各クラスや部活動が趣向を凝らした展示や発表、パフォーマンスを繰り広げ、校舎全体がとてつもない熱気に包まれます。

  • 修学旅行(2年次10月):行き先や旅程の企画段階から生徒が深く関わるのが東葛流です。近年は北海道へ行き、班別での自主行動を多く取り入れた、自由度の高い旅行が実施されています。多くの生徒にとって、この修学旅行が終わり、いよいよ本格的な受験モードへと切り替える一つの節目となっているようです。

これらの行事は、単なる「お楽しみ」ではありません。「自主自律」の精神を実践し、リーダーシップや協調性、創造力を育む、もう一つの大切な「学びの場」なのです。

東葛飾高等学校の進学実績

自由な校風の中、生徒たちはどのようにして難関大学への道を切り拓いているのでしょうか。最新の進学実績を見ていきましょう。

2025年3月卒業生(311名)は、国公立大学に121名、私立大学にも多数の合格者を出すなど、非常に優れた実績を残しています。特に、現役での進路決定者が増える傾向にあり、国公立大学への現役進学者も93名と大きく増加しています。

2025年度 主要大学合格実績(抜粋)

大学分類 主な大学名 合格者数
最難関国公立大学 東京大学 5名
京都大学 1名
一橋大学 8名
東京科学大学 5名
東北大学 6名
大阪大学 2名
北海道大学 5名
九州大学 1名
主な国公立大学 千葉大学 38名
筑波大学 25名
お茶の水女子大学 3名
横浜国立大学 3名
国公立大学医学部医学科 (奈良県立医科大学など) 2名(現役延べ6名)
早慶上理 早稲田大学 119名
慶應義塾大学 35名
上智大学 97名
東京理科大学 148名
GMARCH 明治大学 161名
立教大学 90名
法政大学 80名
中央大学 51名
青山学院大学 40名
学習院大学 30名
*合格者数は、既卒生を含む延べ人数です。

高い進学実績を支える取り組み

一見、放任主義に見える東葛飾高等学校ですが、生徒の「学びたい」という意欲に応えるためのサポート体制は万全です。

  • 学年ごとの進路指導:1年生では「自己理解」、2年生では「学問研究」、3年生では「進路実現」と、段階に応じたきめ細やかな進路指導計画が組まれています。

  • 進路の日・合格者報告会:卒業生を招いて大学生活や受験体験について聞く機会や、進路について深く考えるための行事が定期的に設けられています。

  • 東葛リベラルアーツ講座:前述の通り、大学レベルの講義に触れることで、学問への興味を深め、進路選択の視野を広げることができます。

この学校の進学実績は、学校側が一方的に与える教育の成果というよりも、生徒が自らの意志でこれらの機会を掴み取り、自由な環境の中で主体的に学んだ結果と言えるでしょう。ただし、その自由さゆえに、自己管理ができないと学力が伸び悩む可能性も指摘されています。高いポテンシャルを秘めた生徒が集まる一方で、浪人して第一志望を目指す生徒も一定数いるのは、この校風の表裏一体の側面かもしれません。

東葛飾高等学校の特長・アピールポイント

他の高校にはない、東葛飾高等学校ならではの強みや魅力を7つのポイントにまとめました。

  • 「自主自律」を体現する究極の自由な校風

    • 制服なし、校則は最小限。生徒を「信頼されるべき個人」として扱い、その自主性と責任感を育む、大学のような環境が最大の特長です。

  • 将来の医療人を育てる専門的な「医歯薬コース」

    • 地域や大学と連携した本格的なプログラムを通じて、医療分野への高い志を持つ生徒を強力にバックアップします。

  • 生徒が主役となって創り上げる熱狂的な学校行事

    • 「三大祭」に代表される学校行事は、企画から運営まで生徒が担います。これは、社会で必要とされる実践的なスキルを学ぶ絶好の機会です。

  • 知的好奇心をとことん追求できる探究学習「自由研究」

    • 40年以上続く伝統的な学習プログラムで、生徒が1年間かけて自ら設定したテーマを研究し、論文にまとめます。探究心と論理的思考力を養う貴重な経験です。

  • 大学レベルの学びを提供する「東葛リベラルアーツ講座」

    • 週末に開かれる任意参加の講座では、学問の最前線に触れることができ、生徒の知的好奇心を刺激し続けます。

  • 全国レベルで活躍する多彩な部活動

    • フェンシング部や軽音楽部をはじめ、多くの部活動が輝かしい実績を上げています。文武両道を高いレベルで実現できる環境が整っています。

  • 当日の思考力を重視する公平な入試制度

    • 内申点の影響が比較的小さく、独自の「思考力を問う問題」が課されるため、地道な努力と思考力に自信がある生徒には大きなチャンスがあります。

東葛飾高等学校の口コミ・評判のまとめ

在校生や卒業生の「生の声」は、学校選びの重要な参考になります。ここでは、様々な口コミを公平にまとめました。

良い点

  • 「とにかく自由で楽しい。校則に縛られず、自分らしくいられるのが最高」という声が圧倒的に多いです。個性が尊重される文化が根付いています。

  • 「学校行事が信じられないくらい盛り上がる。クラスの団結力が強まり、一生の思い出になる」と、行事への満足度は極めて高いです。

  • 「周りのレベルが高く、知的で面白い友人ばかり。毎日が刺激的で、自分も成長できる」と、人間関係の質を評価する声も多数あります。

  • 「部活動が本当に盛ん。勉強と両立しながら、好きなことに打ち込める」と、文武両道を実感している生徒が多いようです。

  • 「自己管理能力が身につく。大学に入ってから、この高校での経験がすごく役立った」という卒業生からの意見も目立ちます。

  • 「いじめの話は全く聞かない。みんな大人で、互いを尊重している」という安心感を挙げる声もあります。

気になる点(注意点)

  • 「自由は諸刃の剣。自分で勉強の計画を立てて実行できないと、あっという間に置いていかれる」という意見は、最も多く聞かれる注意点です。自己管理能力が問われます。

  • 「学校側から勉強しろと強く言われることはない。手厚いサポートを期待している人には向かないかもしれない」という声もあります。あくまで主体は生徒自身です。

  • 「校舎の一部が古い」という施設面に関する指摘が一部で見られます。ただし、近年建て替えられた綺麗な校舎もあります。

  • 「偏差値の割に進学実績が物足りないと感じる人もいる」という意見。これは、生徒の自主性に任せる校風の結果、浪人を選択する生徒も少なくないことの裏返しとも考えられます。

アクセス・通学

東葛飾高等学校は、交通の便が非常に良い場所にあります。

  • 最寄り駅:JR常磐線、東武アーバンパークライン(野田線)の「柏駅」。

  • 駅からのアクセス:柏駅の南口または西口から徒歩約8分〜10分と、駅から非常に近いです。

  • 主な通学エリア:柏市、松戸市、流山市、我孫子市といった東葛飾地域からの通学者が中心です。また、茨城県や埼玉県との県境に近いため、隣接県特例制度を利用してこれらの県から通学している生徒もいます。

東葛飾高等学校受験生へのワンポイントアドバイス

ここまで読んでくれてありがとうございます。最後に、進学アドバイザーとして、東葛飾高等学校を目指すあなたにエールを送ります。

もしあなたが、誰かに指示されるのではなく、自分で「面白い」と思えることを見つけ、とことん探究したいと考えるタイプの生徒なら、東葛飾高等学校は最高の舞台になるでしょう。勉強も、行事も、部活も、すべてがあなた次第。その自由を楽しみ、責任を持って行動できる力こそが、この学校が最も大切にしているものです。東葛飾高等学校での3年間は、きっとあなたを大きく成長させてくれるはずです。

受験勉強においては、5教科の基礎学力を固めるのはもちろんですが、特に「思考力を問う問題」の対策に力を入れてください。これは単なる知識を問う問題ではありません。文章や資料から情報を正確に読み取り、多角的に物事を考え、自分の言葉で論理的に説明する力が求められます。過去問を解くだけでなく、日頃からニュースや本を読んで「なぜだろう?」「自分ならどう考えるか?」と自問自答する習慣が、合格への大きな力になります。東葛飾高等学校は、あなたの「考える力」を見ています。自信を持って、挑戦してください。応援しています!

※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。