横浜翠嵐高等学校は、神奈川県、いえ、全国でもトップクラスの進学実績を誇る公立高校です。その名前を聞いて、「勉強が大変そう」「レベルが高すぎる」と感じる人も多いかもしれません。

しかし、ただ偏差値が高いだけの学校なのでしょうか。「翠嵐生」であることの本当の魅力とは何なのでしょう。この学校が掲げる「真のトップリーダー」の育成という目標や、「大平凡主義」という創立以来の精神は、日々の高校生活にどう息づいているのでしょうか。

この記事では、驚異的な大学合格実績の裏側にある、横浜翠嵐高等学校のリアルな学校生活、ユニークな校風、そして生徒たちの本音に迫ります。翠嵐があなたにとって最高の3年間を過ごす場所になるか、一緒に探していきましょう。

横浜翠嵐高等学校の基本情報

まずは、学校の基本的な情報を確認しましょう。1914年に男子校の「県立第二横浜中学校」として創立され、1950年に男女共学の「横浜翠嵐高等学校」となり、100年以上の歴史を持つ伝統校です。

項目 内容
正式名称 神奈川県立横浜翠嵐高等学校
公立/私立の別 公立
共学/別学 男女共学
課程 全日制、定時制
所在地 神奈川県横浜市神奈川区三ツ沢南町1-1
代表電話番号 045-311-4621
公式サイトURL https://www.pen-kanagawa.ed.jp/yokohamasuiran-h/

横浜翠嵐高等学校の偏差値・難易度・併願校

横浜翠嵐高等学校の合格を勝ち取るためには、非常に高い学力が求められます。偏差値だけでなく、内申点や特色検査といった複数の要素で評価されるため、総合的な対策が不可欠です。

最新の偏差値は、各種進学情報サイトで72から74前後とされており、神奈川県内はもとより全国でも最難関レベルに位置します。この数値は、中学校の学年全体でもトップ数パーセントに入る学力が必要であることを示しています。

合格の目安となる内申点(評定)は、135点満点中126点以上が一つの基準とされています。これは、主要5教科はもちろん、副教科においてもほぼオール5に近い成績が求められることを意味します。中学1年生の成績から評価の対象となるため、早期から定期テスト対策や提出物を丁寧に行うことが重要です。

入学者選抜は、第1次選考では「学習の記録(評定)」「学力検査」「特色検査」がそれぞれ「3:7:3」の比率で評価されます。学力検査の比重が高いですが、評定も無視できません。さらに、第2次選考では学力検査の比率が8割に上がりますが、ここでも特色検査が2割を占めます。

この「特色検査」こそが、横浜翠嵐の入試の最大の特徴です。単なる暗記力ではなく、教科横断的な知識を活用して、初見の資料や課題を読み解き、論理的に思考し、表現する力が問われます。合格者の平均点でも6割を下回ることがある難易度の高い検査であり、この対策が合否を大きく左右します。

このような厳しい入試を突破するため、多くの受験生は学習塾の専門コースを利用しています。実際、合格者の9割以上が特定の進学塾の出身者で占められる年もあり、「横浜翠嵐プロジェクト」といった専門対策講座が合格への有力なルートの一つとなっている現実があります。

神奈川県の公立高校入試では、他の公立高校を併願することはできません。そのため、併願校はすべて私立高校となります。多くの受験生は、内申点で合格の確約が得られる「併願確約校」を1校確保した上で、さらに実力相応の難関私立高校にも挑戦する傾向があります。

学校名 コース例 所在地 併願戦略
桐蔭学園高等学校 プログレス、アドバンス 横浜市青葉区 多くの翠嵐受験生が併願する代表的な学校。学力に応じてコースを選択。
山手学院高等学校 特進、進学 横浜市栄区 翠嵐受験生の併願確約校として人気が高い。非常に高い内申基準が求められる。
中央大学附属横浜高等学校 普通 横浜市都筑区 大学附属校としての安定した人気。高いレベルでの文武両道を目指す生徒に選ばれる。
朋優学院高等学校 国公立TG 東京都品川区 都内の難関私立。翠嵐と両方合格を目指す挑戦的な受験生が多い。
慶應義塾高等学校 普通 横浜市港北区 最難関私立。翠嵐と並行して受験するトップ層の男子生徒が挑戦する。
法政大学第二高等学校 普通 川崎市中原区 大学附属校。翠嵐の併願校として安定した選択肢の一つ。

横浜翠嵐高等学校に設置されている学科・コース

横浜翠嵐高等学校に設置されている学科は「普通科」のみです。しかし、「普通科」という一つの括りの中でも、生徒一人ひとりの興味や進路に合わせた学びの道が用意されています。

  • 普通科

    • 1年次では、芸術科目として「音楽」か「美術」のどちらかを選択します。口コミによると、美術クラスの方が課題の量が多い傾向があるようです。この選択が、1年間のクラス編成に影響します。

    • 2年次からは、目標とする進路に合わせて「文系」と「理系」にクラスが分かれます。これにより、それぞれの進路希望に応じた専門的な科目を深く学ぶカリキュラムが始まります。将来、国公立大学や難関私立大学への進学を目指す生徒にとって、非常に重要な選択となります。

横浜翠嵐高等学校の特色・校風

横浜翠嵐の校風は、一言で言えば「自由と知性、そして自己管理」です。生徒の自主性を最大限に尊重する文化と、日本トップレベルの学力を追求する雰囲気が共存しています。

キーワード:自由闊達、文武両道、知的好奇心、自己管理

  • 宿題の量

    • 「多い」と感じる生徒がほとんどのようです。特に数学は進度が非常に速く、高校1年生で数学Cの範囲に触れるなど、予習・復習が欠かせません。ただし、「計画的にこなせば終わらない量ではない」という声もあり、生徒の自己管理能力が試されます。

  • 校則(スマホ、服装など)

    • 校則は比較的緩やかで、「自由」という口コミが多く見られます。髪を染めたり、ピアスを開けていたりする生徒もいるようで、個性が尊重される雰囲気があります。スマートフォンの使用に関しても、厳しい制限はあまり聞かれません。ただし、近年は体育祭などの行事を中心に、以前より指導が厳しくなったと感じる生徒もいるようです。

  • 生徒たちの雰囲気

    • 多くの在校生・卒業生が「一番の魅力は友人」と語るほど、生徒の質が非常に高いのが特徴です。「面白くて頭の良い友人に囲まれて楽しい」という声が多数あり、互いに知的な刺激を受けながら高め合える環境です。いじめの噂はほとんど聞かれず、多様な個性を持つ生徒たちが互いを認め合って過ごしています。

  • アルバイト

    • 原則として禁止されているようです。学業や部活動に専念することが求められる学校の雰囲気からも、アルバイトをしている生徒はほとんどいないと考えられます。

  • 制服の評判

    • 制服は伝統的なスタイルで、男子は黒の学生服(学ラン)、女子は紺のブレザーです。特にデザイン性が高いわけではなく、「ごく標準的」と評されています。男子は中学校の学ランのボタンを付け替えれば、そのまま使用することも可能なようです。

  • 土曜授業

    • 正規の授業はありませんが、希望者制の「土曜講習」が年間を通じて開講されています。大学受験を見据えたハイレベルな講座や、基礎を固める講座など、多彩なメニューが用意されており、多くの生徒が自主的に参加して学力向上に励んでいます。

横浜翠嵐高等学校の部活動・イベント

部活動

横浜翠嵐高等学校では、勉強だけでなく部活動にも力を入れる「文武両道」が実践されています。部活動加入率は9割を超え、多くの生徒が限られた時間の中で熱心に活動しています。学業優先のため、練習時間が制約されたり、2年生の夏で引退したりすることが多いですが、その中でも生徒たちは主体的に活動を運営し、人間的な成長を目指しています。

運動部、文化部ともに非常に種類が豊富です。特に全国レベルでの輝かしい実績が常に求められるわけではなく、自分のペースで楽しみながら高みを目指したい生徒にとって、最適な環境と言えるかもしれません。

  • ピックアップ部活動

    • ダンス部:文化祭のステージ発表は特に人気が高く、多くの観客を魅了します。表現力や協調性を磨く場として活気にあふれています。

    • クイズ研究部:テレビ番組でも活躍するような、知識欲旺盛な生徒が集まります。他校との交流も盛んで、思考力とコミュニケーション能力を同時に鍛えることができます。

    • 山岳部:長期休暇などを利用して本格的な登山に挑みます。自然の中で仲間と協力し、組織的な対応力や判断力を養う、翠嵐ならではの知的なアウトドア活動です。

    • 水泳部:過去には全国大会への出場実績もあります。個人の記録に挑戦しながら、チームとしての一体感も大切に活動しています。

    • 数学研究部、IT研究部、競技かるた部など、知的好奇心を満たすユニークな文化部も多数存在します。

イベント

横浜翠嵐の学校行事は、生徒たちが主体となって企画・運営する「本気」のイベントです。その熱気とクオリティの高さは、学校生活最大の思い出として多くの生徒の心に刻まれています。

  • 翠翔祭(すいしょうさい・文化祭)

    • 毎年6月下旬に開催される文化祭は、定時制と合同で90以上の団体が参加する大規模なものです。飲食系の模擬店から、趣向を凝らしたお化け屋敷やコースターなどのアトラクション、ハイレベルなステージ発表まで、その内容は多岐にわたります。生徒たちの企画力、創造力、そしてエネルギーが爆発する2日間です。

  • 体育祭

    • 9月に行われる体育祭は、翠嵐のもう一つの顔です。誕生日月で分けられた4つの組が、パネル、応援、競技のすべてでプライドをかけて競い合います。特に有名なのが、伝統の「可愛子(かわいこ)」です。これは1年生が中心となって、衣装や振り付けを自分たちで考え、全校生徒の前でダンスパフォーマンスを披露する名物競技。長年男子生徒のみの演目でしたが、近年は男女共に参加可能となり、伝統を守りつつも進化を続けています。昼休みや放課後に練習に励む生徒たちの姿は、まさに青春そのものです。

  • 修学旅行・国際交流

    • 修学旅行のほか、横浜国立大学の留学生との交流会や、大使館訪問など、国際感覚を養うためのプログラムも積極的に実施されています。これらも生徒の国際交流委員会が主体となって企画・運営しており、グローバルな視野を広げる貴重な機会となっています。

横浜翠嵐高等学校の進学実績

横浜翠嵐高等学校の進学実績は、全国の公立高校の中でもトップクラスであり、その躍進はとどまるところを知りません。特に難関国公立大学や難関私立大学への合格者数は目覚ましいものがあります。

2025年度の大学入試では、東京大学に74名(現役67名)が合格するという驚異的な実績を記録しました。これは前年の44名から大きく飛躍した数字であり、学校全体の学力レベルがさらに向上していることを示しています。

大学分類 主な大学名と2025年度合格者数
国公立大学 東京大学 74名、京都大学 11名、一橋大学 10名、東京科学大学 11名、東北大学 12名、北海道大学 10名、大阪大学 7名、横浜国立大学 36名など、合計225名
難関私立大学 早稲田大学 233名、慶應義塾大学 177名、上智大学 60名、東京理科大学 180名、明治大学 214名、青山学院大学 44名、立教大学 29名、中央大学 53名、法政大学 45名
医学部医学科 国公立大学 10名、私立大学 11名、合計21名

この輝かしい実績を支えているのが、学校独自のきめ細やかな進学指導体制です。

  • 「心に火をつける」進路指導:学校は「進路は高1で7割決まる」という考えのもと、入学後すぐに生徒の学習意欲を高めるための指導を開始します。卒業生を招いた「東大ガイダンス」や「医学部ガイダンス」で具体的な目標をイメージさせ、2年生の12月には全生徒が「第一志望宣言」を行います。これは、自らの夢を言語化し、保護者や教員と共有することで、最後まで諦めずに挑戦し続ける強い意志を育むための重要な儀式です。

  • 豊富な講習制度:通常の授業に加え、希望者制の「土曜講習」や夏期・冬期の長期休業中講習が非常に充実しています。基礎力養成から大学入試の過去問演習まで、多彩な講座が生徒の学力を強力にバックアップします。

  • 手厚い個別サポート:授業時間外でも先生への質問や学習相談が随時可能で、自習室も完備されています。生徒が主体的に動けば、先生方はとことん付き合ってくれるという声が多く聞かれます。

横浜翠嵐高等学校の特長・アピールポイント

他の高校にはない、横浜翠嵐ならではの強みやユニークな取り組みをまとめました。これらが、翠嵐を翠嵐たらしめている魅力の源泉です。

  • 思考力を鍛え、仲間を選ぶ「特色検査」

    入試で課される「特色検査」は、単なる学力試験ではありません。物事の本質を捉え、粘り強く考える力を持つ生徒を選抜するための仕組みです。この検査を突破した仲間が集まるからこそ、入学後も知的に刺激し合える環境が生まれます。

  • 生徒の「心に火をつける」独自の進路指導

    入学直後から始まる手厚い進路指導は、生徒のやる気を引き出すためのプログラムです。特に2年生で行う「第一志望宣言」は、自らの目標を固め、最後までやり抜く力を育む、翠嵐独自の文化です。

  • 世界を舞台に活躍するリーダーを育てる「グローバル探究」

    総合的な探究の時間を利用し、社会問題について英語で議論したり、留学生と交流したりする機会が豊富にあります。将来、国内外で活躍するための視野と主体性を養うことを目的とした、翠嵐の教育ミッションを象徴する取り組みです。

  • 圧倒的な進学実績を支える手厚い講習システム

    土曜日や長期休暇中に開かれる希望制の講習は、量・質ともに他の公立高校を圧倒します。生徒は自分のレベルや目標に合わせて講座を選択し、弱点克服や得意分野の伸長に役立てています。

  • 生徒が創り上げる、熱狂的な学校行事

    文化祭「翠翔祭」や「体育祭」は、企画から運営までほぼすべてを生徒が担います。これらの行事を通して、計画性、協調性、リーダーシップといった社会で生きる力を実践的に学ぶことができます。特に体育祭名物「可愛子」は学校の伝統と一体感を象徴するイベントです。

  • 最高の財産となる「優秀で多様な仲間たち」

    在校生や卒業生が口を揃えて挙げる翠嵐最大の魅力は、「人」です。全国トップレベルの頭脳を持つだけでなく、個性豊かで面白い友人たちと過ごす3年間は、何物にも代えがたい貴重な財産となります。

  • 活発な国際交流活動

    アメリカの姉妹校との相互訪問や、大使館訪問、留学生との交流会など、世界に目を向ける機会が数多く用意されています。生徒主体の国際交流委員会が中心となり、活動を企画・運営しています。

横浜翠嵐高等学校の口コミ・評判のまとめ

ここでは、在校生や卒業生から寄せられたリアルな声を、良い点と気になる点に分けて公平にご紹介します。

  • 良い点

    • 「周りのレベルが高く、自然と勉強する気になる」「最高の仲間と高め合える」といった、友人関係や学習環境を絶賛する声が最も多く見られます。

    • 「先生のサポートが手厚い」という評価も多いですが、「自主的に質問に行けば、とことん付き合ってくれる」という条件付きのようです。主体的な生徒ほど、手厚いサポートを受けられる環境です。

    • 「行事が本当に楽しい」「勉強だけでなく青春もできる」など、勉強一辺倒ではない、充実した高校生活を送れる点を魅力に感じる声も多数あります。

    • 「いじめの気配が全くない」「多様な人がいて、互いに認め合える」という、自由で寛容な校風を評価する意見も目立ちます。

  • 気になる点

    • 「校舎が古い、汚い」「雨漏りするところがある」など、施設の老朽化を指摘する声は非常に多いです。最新の綺麗な校舎を期待している人には向かないかもしれません。

    • 「横浜駅から坂を登るのがきつい」という、立地に関する意見も定番です。毎日の通学はかなりの運動になることを覚悟した方が良さそうです。

    • 「先生の授業力は人による」「進学実績は生徒の頑張りと塾のおかげ」といった、学校の授業に対する少し厳しい意見も見られます。高いレベルの生徒が集まっているからこそ、教員への要求も高くなる傾向があるようです。

    • 「勉強は大変」「課題が多い」という声は共通しており、高い学習意欲と自己管理能力がなければ、厳しい3年間になる可能性も示唆されています。

アクセス・通学

横浜翠嵐高等学校は、横浜の中心地にありながら、緑豊かな丘の上に位置しています。複数の駅やバス路線が利用可能ですが、どのルートを使っても最後は坂を登ることになります。

  • 最寄り駅からのアクセス

    • 横浜駅(JR各線、東急東横線、京急本線など)西口から徒歩約20分

    • 三ツ沢下町駅(横浜市営地下鉄ブルーライン)から徒歩約12分

    • 反町駅(東急東横線)から徒歩約18分

  • バスでのアクセス

    • 横浜駅西口バスターミナル6番のりばから、市営バス34系統「沢渡循環」で約10分、「翠嵐高校前」下車すぐ

    • 横浜駅西口から各社バスで「三ツ沢総合グランド入口」下車、徒歩約5分

通学している生徒は、横浜市内全域はもちろん、川崎市や横須賀市、さらには県央地区など、非常に広範囲に及びます。特に、東急田園都市線沿線や東急東横線沿線、港北ニュータウンエリアから通う生徒が多い傾向が見られます。これは、優秀な生徒が、多少の通学時間をかけてでも横浜翠嵐高等学校で学びたいと考えていることの表れです。

横浜翠嵐高等学校受験生へのワンポイントアドバイス

横浜翠嵐高等学校を目指す皆さん、こんにちは。進学アドバイザーとして、最後に皆さんへエールを送ります。

横浜翠嵐は、単に偏差値が高いからという理由だけで目指す学校ではありません。ここは、「なぜ学ぶのか」を常に自問し、知的好奇心を満たすことに喜びを感じる人のための場所です。周りに流されず、自分の頭で考え、主体的に行動できる。そして何より、自分とは違う才能や個性を持つ仲間を尊敬し、共に成長することを楽しめる。そんなあなたにこそ、横浜翠嵐高等学校は最高の環境を提供してくれるでしょう。

受験勉強では、まず中学1年生の時から内申点を確実に積み上げてください。そして、5教科の学力はもちろんのこと、合否を分ける「特色検査」の対策に力を注ぎましょう。日頃からニュースや社会問題に関心を持ち、「なぜだろう?」と考える習慣が、あなたの思考力を鍛えてくれます。道は険しいですが、その先には、一生の財産となる仲間と、かけがえのない3年間が待っています。頑張ってください!

※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。