滋賀県でトップの進学校として知られる膳所高等学校は、120年以上の歴史と伝統を誇るだけでなく、生徒一人ひとりの未来を切り拓くための活気に満ちた学びの場です。
ただ偏差値が高いだけでなく、「遵義・力行(じゅんぎ・りょっこう)」という校訓のもと、学問と人間性の両方を深く追求する文化が根付いています。この学校が目指すのは、テストで良い点を取る生徒ではなく、自ら考え、行動し、社会に貢献できる人材の育成です。
この記事では、そんな膳所高等学校の本当の魅力、そして少し厳しいけれど充実した学校生活について、在校生や卒業生の声を交えながら、詳しく、そして分かりやすく解説していきます。この記事を読めば、あなたが膳所高校でどんな3年間を送れるのか、きっと具体的にイメージできるはずです。
膳所高等学校の基本情報
まずは、膳所高等学校の基本的な情報を確認しましょう。
項目 | 内容 |
正式名称 | 滋賀県立膳所高等学校 |
公立/私立の別 | 県立 |
共学/男子校/女子校の別 | 男女共学 |
所在地 | 〒520-0815 滋賀県大津市膳所2丁目11-1 |
代表電話番号 | 077-523-2304 |
公式サイトURL | http://www.zeze-h.shiga-ec.ed.jp/ |
膳所高等学校の偏差値・難易度・併願校
膳所高等学校の受験を考える上で、最も気になるのが偏差値と難易度でしょう。ここでは、具体的な数字と、合格に必要な学力の目安を解説します。
学科・コース | 偏差値 |
理数科 | 76~78 |
普通科 | 72~74 |
理数科、普通科ともに滋賀県内でトップクラスの偏差値を誇り、全国的に見ても非常にレベルの高い高校です。
難易度をより具体的にイメージするために、いくつかの補足情報を加えます。
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同じくらいの偏差値の他の高校:滋賀県内では、膳所高校の偏差値は突出しています。続くのが石山高等学校(普通科71)、守山高等学校(普通科70)、彦根東高等学校(普通科69)などです。このことからも、膳所高校が県内の学力最上位層の生徒が集まる場所であることが分かります。
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合格に必要な内申点の目安:膳所高校の入試では、当日の学力検査の点数だけでなく、中学校での成績(内申点)も非常に重要視されます。一般選抜では学力検査と内申点の比率が「8:2」または「7:3」で評価されることが多く、内申点が高いことが有利に働きます。合格者の多くは、中学3年生の9教科の評定合計が45点満点中、43~45点という非常に高い成績を収めています。これは、主要5教科だけでなく、副教科でもほぼ満点に近い成績が必要だということを意味します。2026年度入試から導入される「学校独自型選抜」では、出願要件として3年生の9教科の評定合計が40以上であることが明記されており、日々の学習がいかに大切かがわかります。
主な併願校については、滋賀県の公立高校入試制度では、別の公立高校を併願することは一般的ではありません。そのため、膳所高校を受験する生徒の多くは、万が一の場合に備えて、レベルの高い私立高校を併願します。主な併願先としては、以下のような高校が挙げられます。
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光泉カトリック高等学校
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立命館守山高等学校
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比叡山高等学校
膳所高等学校に設置されている学科・コース
膳所高等学校には、生徒の興味や進路希望に応えるための2つの学科が設置されています。どちらの学科も、単なる知識の詰め込みではなく、自ら課題を見つけて探究する力を養うことに重点を置いています。
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理数科
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どんなことを学ぶ場所か:数学や理科の分野に特に強い興味と適性を持つ生徒のために、より高度で専門的な内容を学びます。スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を活かし、大学レベルの講義や最先端の研究に触れる機会が豊富にあります。
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どんな生徒におすすめか:将来、研究者や医師、技術者など、科学技術の分野で世界的に活躍したいという高い志を持つ人におすすめです。
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普通科
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どんなことを学ぶ場所か:国公立大学や難関私立大学の文系・理系学部への進学を目指す、非常にレベルの高いコースです。2年生から文系と理系に分かれ、それぞれの進路に合わせたカリキュラムで学びます。
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どんな生徒におすすめか:特定の分野に限らず、幅広い学問に興味があり、高いレベルの環境で総合的な学力を伸ばしたい人におすすめです。普通科でもSSHの恩恵を受け、探究活動などを通じて論理的思考力が鍛えられます。
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膳所高等学校の特色・校風
膳所高等学校の最大の魅力の一つは、その独特の校風にあります。キーワードは「自由闊達」「文武両道」「自主自律」です。生徒を子ども扱いせず、一人の人間として信頼し、多くのことを任せる文化が根付いています。
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宿題の量は多いか少ないか:口コミでは「多い」という声が多数です。特に、日々の授業は生徒が予習をしてくることを前提に進められるため、家庭での学習習慣が不可欠です。受け身の姿勢ではついていくのが大変かもしれません。
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校則は厳しいか緩やかか:他の高校と比較して「緩やか」という評判です。
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スマホ:校内での使用に特に厳しい制限はないようです。生徒の自主性に任されています。
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服装:制服はありますが、カバンや靴は自由です。上履きとしてクロックスを履いている生徒も多いようです。女子のセーラー服は「かわいい」という評判がある一方で、全体的には「地味」という意見も見られます。
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生徒たちの雰囲気:非常に知的で、何事にも全力で取り組む活発な生徒が多いようです。「ガリ勉ばかり」というイメージとは異なり、勉強も部活も行事も楽しむ、バランスの取れた生徒が多いのが特徴です。周りのレベルが高いため、良い刺激を受けられる一方で、自主的に行動しないと置いていかれるという厳しさもあります。
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アルバイトは可能か:原則として禁止されています。そもそも、勉強と部活動、学校行事で非常に忙しく、アルバイトをする時間的な余裕はないという声がほとんどです。
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制服の評判はどうか:前述の通り、女子のセーラー服は人気がある一方で、全体的にはシンプルという印象のようです。
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土曜授業はあるか:希望者対象の土曜講座「石鹿セミナー」や「Zプログラム」が開講されており、学力向上や知的好奇心を満たすための学習機会が提供されています。
この自由な校風は、単に楽ができるという意味ではありません。厳しい学業の要求と両立させることで、生徒は自らを律する力、つまり「自主自律」の精神を自然と身につけていきます。学校から与えられる自由は、生徒に対する信頼の証であり、それに応える責任感を育むための重要な教育方針なのです。
膳所高等学校の部活動・イベント
膳所高校の「文武両道」は、単なるスローガンではありません。学業で高い成果を上げながら、部活動や学校行事にも全力で打ち込むのが膳所高生のスタイルです。
部活動
膳所高校では部活動を「班活動」と呼び、ほとんどの生徒が加入して熱心に活動しています。体育部、文化部ともに非常に充実しており、全国レベルで活躍する班も少なくありません。
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特に有名な部活動
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ボート班・ヨット班:琵琶湖という立地を活かし、全国大会の常連です。特にヨット班は全国優勝の経験もある強豪です。
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野球班:2018年には21世紀枠で選抜高等学校野球大会(春の甲子園)に出場し、進学校の星として大きな話題となりました。
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かるた班:競技かるたの強豪として知られ、全国高等学校小倉百人一首かるた選手権大会に何度も出場しています。
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珍しい部活動
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馬術班:公立高校には非常に珍しい部活動で、本格的な活動を行っています。
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山岳班:自然の中で心身を鍛える活動が人気です。
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全体の様子
体育部は20以上、文化部も15以上あり、その種類の豊富さは県内でも随一です。加入率は非常に高く、ほぼ全員が何らかの班に所属していると言われています。高いレベルでの両立が求められるため、生徒たちは時間の使い方が非常に上手になり、これが学業面での集中力にも繋がっています。
イベント
膳所高校の学校生活を語る上で欠かせないのが、生徒が主役となって作り上げる数々のイベントです。
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湖風祭(こふうさい):膳所高校で最も盛り上がる、学校祭の総称です。文化祭2日間、体育祭2日間の計4日間にわたって開催され、その規模と熱気は圧巻です。企画から運営まで、そのすべてが生徒主体で行われます。全学年が縦割りの「ブロック」を形成し、集団演技「マスゲーム」、校内装飾「アーティスト」、演劇「ビジュアル」などの部門で総合優勝を目指して競い合います。特に3年生がリーダーシップを発揮し、下級生をまとめ上げていく過程は、まさに青春そのもの。多くの卒業生が「一生の思い出」と語る、最高のイベントです。
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修学旅行:2年生の12月には、3泊4日で台湾を訪れます。現地の大学生との交流や文化体験などを通じて、国際的な視野を広げる貴重な機会となっています。
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その他のイベント:1年生の合唱コンクールや、年度末に行われるクラス対抗のスポーツ大会など、クラスの団結力を高めるイベントも年間を通じて行われます。
膳所高等学校の進学実績
滋賀県No.1の進学校として、膳所高等学校の大学進学実績は全国トップレベルです。生徒の高い志と、それを支える学校のきめ細やかな進路指導が、毎年素晴らしい結果を生み出しています。
以下は、2024年春の主な大学合格実績です(既卒生を含む)。
大学分類 | 主な大学名 | 合格者数(2024年春) |
国公立大学 | 京都大学 | 44名 |
大阪大学 | 37名 | |
神戸大学 | 18名 | |
滋賀医科大学(医学科含む) | 16名(医学科13名) | |
東京大学 | 3名 | |
難関私立大学 | 同志社大学 | 189名 |
立命館大学 | 298名 | |
早稲田大学 | 21名 | |
関西大学 | 53名 |
特筆すべきは、京都大学への合格者数です。毎年安定して多数の合格者を輩出しており、関西屈指の京大進学校として知られています。また、同志社大学や立命館大学への合格者数は、全国の高校の中でもトップクラスです。
この高い進学実績を支えているのが、学校の充実したサポート体制です。1年生の段階から将来を見据えた進路学習プログラムが組まれ、大学見学会やOB・OGによる講演会などが頻繁に開催されます。また、難関大学入試に対応した質の高い校内実力考査や、夏期補講、希望者への小論文指導など、生徒の「行ける大学」ではなく「行きたい大学」への進学を全力で後押しする体制が整っています。
ただし、注意点として、口コミでは浪人する生徒の割合が高いことも指摘されています。これは、安易な妥協をせず、自分の第一志望にこだわり抜く校風の表れでもあります。公式データでも、国公立大学合格者のうち、3分の1程度が既卒生(過年度生)である年もあり、高い目標に向かって粘り強く挑戦する文化が根付いていることがうかがえます。
膳所高等学校の特長・アピールポイント
他の高校にはない、膳所高等学校ならではの強みやユニークな取り組みを7つのポイントにまとめました。
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スーパーサイエンスハイスクール(SSH)としての高度な探究学習
文部科学省からSSHの指定を受け、全校を挙げて大学レベルの探究活動に取り組んでいます。理数科だけでなく普通科の生徒も、自ら課題を設定し、仮説を立て、検証し、発表するという一連のプロセスを学びます。この経験は、大学進学後も役立つ本質的な思考力を育てます。
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圧倒的な大学進学実績と京大への強さ
滋賀県内では他の追随を許さない、全国トップクラスの大学合格実績を誇ります。特に京都大学への進学者が多く、関西の難関私立大学への合格者数は全国1位になることもあります。
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生徒が主役の伝説的な「湖風祭」
企画から運営まで生徒が手がける4日間の学園祭は、学校生活最大のハイライトです。リーダーシップや協調性を育み、一生忘れられない思い出を作ることができます。
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「自主自律」を育む自由な校風
校則が緩やかで、生徒の自主性を尊重する文化があります。この自由な環境が、生徒に責任感と自己管理能力を身につけさせ、精神的な成長を促します。
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全国レベルで活躍する多彩な「班活動」
「文武両道」を地で行く活発な部活動が魅力です。馬術班やヨット班といった珍しい部活動もあり、多くの班が全国大会や近畿大会で活躍しています。
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充実した学習施設
県内有数の蔵書数を誇る図書館や、本格的なトレーニングハウス、屋上には天体望遠鏡も設置されており、生徒の知的好奇心や活動を支える設備が整っています。
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大学との連携による最先端の学び
京都大学や滋賀医科大学などと連携し、高校にいながら大学の講義を受けたり、研究室を訪問したりする機会が豊富にあります。早い段階から学問の最前線に触れることができます。
膳所高等学校の口コミ・評判のまとめ
ここでは、在校生や卒業生から寄せられるリアルな声を、良い点と気になる点に分けて公平にご紹介します。
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良い点
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「周りのレベルが高く、毎日が刺激的。尊敬できる友人がたくさんできる」という声が非常に多いです。切磋琢磨できる環境が最大の魅力のようです。
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「湖風祭がとにかく楽しくて、最高の思い出になった。クラスやブロックの団結力がすごい」など、学校行事への満足度は極めて高いです。
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「先生方は質問に行けば熱心に教えてくれる。自主的に学ぶ生徒へのサポートは手厚い」といった、主体性を重んじる指導への評価が見られます。
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「校則が緩く、自由な雰囲気で過ごしやすい。大人として扱ってくれるのが良い」と、自主性を尊重する校風を肯定的に捉える意見が多数あります。
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気になる点
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「授業の進度が速く、予習が前提なので、受け身の姿勢だとすぐにおいていかれる」という厳しい現実を指摘する声があります。高い自己管理能力が求められます。
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「先生によっては放任主義なところもあるので、自分から動かないとサポートは得られない」という意見も。手取り足取りの指導を期待すると、合わない可能性があります。
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「第一志望にこだわる人が多く、浪人する割合が高い。現役合格へのプレッシャーを感じることもある」という声。高い目標設定が、逆に負担になる場合もあるようです。
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「入学直後から『京大、京大』という雰囲気があり、少し偏っていると感じる」というユニークな意見もありました。
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「校内にコンビニや売店がなく、パンの販売しかないのが少し不便」「制服が少し地味」といった、学校生活の細かな点での不満も一部見られます。
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アクセス・通学
膳所高等学校への通学は、公共交通機関の利用が便利です。
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最寄り駅からのアクセス
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京阪電鉄石坂線「膳所本町」駅:徒歩約2~4分。学校から最も近く、多くの生徒が利用しています。
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JR琵琶湖線「膳所」駅:徒歩約15分。JRを利用して遠方から通学する生徒の主要駅となりますが、駅から少し歩く必要があります。
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バス:「丸の内町」バス停から徒歩約6分。
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通学エリア
学校がある大津市内や、隣接する草津市からの通学者が多い傾向にあります。しかし、県内トップの進学校であるため、エリアを問わず滋賀県全域から高い志を持った生徒が集まってきます。
膳所高等学校受験生へのワンポイントアドバイス
ここまで読んでくれてありがとうございます。最後に、進学アドバイザーとして、膳所高等学校を目指す君にエールを送ります。
膳所高等学校は、ただ勉強が得意なだけではなく、知的好奇心が旺盛で、自ら学ぶ意欲のある生徒にこそ、最高の環境を提供してくれます。「なぜだろう?」と考えるのが好きで、難しい課題に挑戦することにワクワクする、そんな君にぴったりの場所です。周りのレベルの高さに圧倒されることもあるかもしれませんが、それは君を大きく成長させてくれる最高の刺激になります。もし君が、受け身の勉強から一歩踏み出し、仲間と共に学びを深め、自分の力で未来を切り拓きたいと本気で願うなら、膳所高等学校はその夢を叶えるための最高の舞台となるでしょう。
受験勉強では、特に「中学校での日々の学習」を大切にしてください。膳所高校の入試は、一夜漬けの知識では歯が立ちません。授業態度、提出物、そして定期テスト、その一つひとつの積み重ねが評価される内申点が非常に重要です。今から、全教科でトップを目指す意識で、毎日の授業に真剣に取り組むことが合格への一番の近道です。健闘を祈っています!
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。