東京都立国立高等学校、通称「国高(くにこう)」。この名前を聞いて、皆さんはどんなイメージを持つでしょうか?都内トップクラスの偏差値を誇る進学校、というイメージが強いかもしれません。もちろん、それは間違いではありません。しかし、都立国立高等学校の本当の魅力は、ただ勉強ができる生徒が集まる場所、というだけではないのです。
ここは、勉強も、部活動も、そして「日本一」とも称される学校行事も、そのすべてに全力で打ち込む「全部やる、みんなでやる」という合言葉が息づく、熱いエネルギーに満ちた場所です。高校3年間で、一生忘れられないような最高の青春を送り、生涯付き合える仲間と出会いたい。もし君がそう願うなら、この学校は最高の舞台になるかもしれません。
この記事を読み進めながら、国高でのエキサイティングな高校生活を想像してみてください。
都立国立高等学校の基本情報
まずは、学校の基本的な情報を確認しておきましょう。
項目 | 内容 |
正式名称 | 東京都立国立高等学校 |
公立/私立の別 | 都立 |
共学/男子校/女子校の別 | 男女共学 |
所在地 | 東京都国立市東4-25-1 |
代表電話番号 | 042-572-2131 |
公式サイト | https://www.metro.ed.jp/kunitachi-h/ |
都立国立高等学校の偏差値・難易度・併願校
都立国立高等学校は、都内でも最難関に位置づけられる高校です。その難易度を、具体的な数字やデータから見ていきましょう。
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学科・コースごとの偏差値
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普通科: 74
各種の模擬試験や塾によって偏差値は多少変動しますが、おおむね73から74という非常に高い数値で安定しており、都立高校の中では日比谷高校、西高校などと並ぶトップレベルの難易度です。
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難易度のイメージ
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同じくらいの偏差値の高校:都立日比谷高校、都立西高校、都立立川高校(創造理数科)などが挙げられます。これらの高校は「都立トップ3」や「進学指導重点校」として、互いに切磋琢磨するライバル校と言えるでしょう。
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合格に必要な内申点の目安:合格者の多くは、中学校の成績がオール5に近い非常に優秀な生徒です。具体的には、都立高校入試で使われる「換算内申」が、65点満点中61点以上が一つの目安とされています。これは、主要5教科だけでなく、音楽や美術、体育、技術・家庭科といった実技教科でも高い評価を得ている必要があることを意味します。内申点が高いことはもちろん有利ですが、都立国立高等学校の入試は学力検査の比重が7割と高いため、当日の試験で高得点を取ることが何よりも重要です。
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主な併願校
都立高校が第一志望の場合、併願として受験する私立高校を選ぶことになります。国立高校の受験生が選ぶ併願校には、いくつかの傾向が見られます。多摩地区に住む受験生が多いため、同じエリア内の難関私立高校がよく選ばれています。
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最難関レベル:国際基督教大学高校(ICU)、早稲田大学本庄高等学院、早稲田実業学校高等部
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大学附属校:中央大学附属高校、明治大学付属明治高校、法政大学高校
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進学指導が手厚い実力校:桐朋高校(男子校)、錦城高校(特進コース)、八王子学園八王子高校(特選コース)、帝京大学高校
これらの併願校のラインナップから、国立高校を志望する受験生が、単に学力レベルが高いだけでなく、自由な校風や主体性を重んじる教育環境を求めていることがうかがえます。
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都立国立高等学校に設置されている学科・コース
都立国立高等学校の大きな特徴の一つは、専門コースを設けず、全員が同じスタートラインに立つことです。
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全日制課程 普通科
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どんなことを学ぶ場所なのか:1、2年生では芸術科目(音楽・美術・書道から選択)以外は全員が同じ科目を履修し、文系・理系にとらわれない幅広い知識と教養の土台を築きます。3年生になると、それぞれの進路希望に合わせて、国公立大学の二次試験や難関私立大学の入試に対応した多彩な選択科目が用意されており、自分の目標に向かって集中的に学習を深めることができます。
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どんな生徒におすすめか:特定の分野に早くから絞るのではなく、高校生活を通して自分の興味や適性を見つけ、幅広い選択肢の中から将来の進路を決めたいと考えている生徒に最適です。文系・理系どちらの道にも高いレベルで対応できるカリキュラムは、大きな魅力と言えるでしょう。
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都立国立高等学校の特色・校風
国立高校を語る上で欠かせないのが、その独特で強烈な個性を持つ校風です。キーワードは「自由闊達」「文武両道」「生徒主体」、そして「全部やる、みんなでやる」です。
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宿題の量:表向きの「宿題」として出される量は少ないと言われています。しかし、これは「何もしなくていい」という意味ではありません。特に英語や数学の授業は非常に進度が速く、毎日の予習を前提に進められるため、実質的にはこの予習が宿題のような役割を果たしています。授業にしっかりついていくためには、自主的な家庭学習が不可欠です。
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校則:校則はほとんどなく、生徒の自主性に任されているのが大きな特徴です。
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服装:制服はありません。多くの生徒は、いわゆる「なんちゃって制服」と呼ばれる、自分でコーディネートした制服風の服装で通学しています。髪型やメイクについても自由で、個性を表現することができます。
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スマホ:授業中や考査中、集会中を除けば、校内での使用は基本的に自由です。時と場合を考えて、マナーを守って使うことが求められます。
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生徒たちの雰囲気:非常にエネルギッシュで、何事にも積極的に取り組む生徒が多いようです。口コミでは、いわゆる「陽キャ」と呼ばれるような、明るく社交的な生徒が学校生活の中心になりやすいという声が見られます。一方で、その熱量や「みんなで盛り上がろう」という雰囲気は、控えめな性格の生徒にとっては少し圧倒されてしまう場面もあるかもしれません。強い同調圧力があると感じる生徒もいるようです。
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アルバイト:学業や部活動への支障を考慮し、原則として禁止されています。やむを得ない事情がある場合に限り、学校に届け出て許可を得る必要がありますが、現実的には学校生活が非常に忙しいため、アルバイトをしている生徒はほとんどいないようです。
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制服の評判:前述の通り、制服はありません。生徒たちは思い思いの服装で学校生活を楽しんでいます。
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土曜授業:進学指導重点校として、年間約20回の土曜授業が実施されています。
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3年間クラス替えなし:国立高校の最も特徴的な制度の一つが、入学から卒業までの3年間、クラス替えがない「持ち上がり制」であることです。担任の先生も基本的には変わりません。これにより、クラスメイトとは家族のような非常に深い絆が生まれます。特に3年生で挑む文化祭のクラス演劇では、この強い団結力が最大限に発揮されます。しかし、これは諸刃の剣でもあり、万が一クラスの雰囲気に馴染めなかった場合、3年間苦しい思いをする可能性もゼロではありません。口コミでは「クラス運が全てを決める」といった声も見られます。
この学校の「自由」は、何もしなくてもよい自由ではなく、「自ら考え、責任をもって行動する自由」です。校則で縛る代わりに、生徒同士の高い意識と文化が、学校全体の秩序と活気を生み出しているのです。この独特の環境に身を置く覚悟があるかどうかが、国高生活を楽しめるかどうかの大きな分かれ道と言えるでしょう。
都立国立高等学校の部活動・イベント
「全部やる」の精神は、部活動やイベントで最も色濃く表れます。勉強だけでなく、これらの活動に青春のすべてを懸けるのが国高生です。
部活動
部活動加入率は非常に高く、兼部する生徒も多いため、100%を超えると言われています。運動部22、文化部22と、多種多様なクラブがあり、活発に活動しています。
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特に有名な部活動
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硬式野球部:1980年に、都立高校として初めて夏の甲子園に出場したという輝かしい歴史を持つ名門です。文武両道の象徴として、今も多くの生徒の憧れとなっています。
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少林寺拳法部:全国大会の常連であり、毎年優秀な成績を収めている強豪部です。高いレベルで武道に打ち込みたい生徒が集まっています。
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女子硬式テニス部:都立高校トップレベルの実力を誇り、関東公立高校テニス選手権大会で準優勝するなど、輝かしい実績を残しています。
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クラシックバレエ部:都立高校では唯一、国立高校にしかない珍しい部活動です。本格的なバレエに取り組める環境が整っています。
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地学部:屋上に設置された本格的な天文ドームと大型望遠鏡を使って活動できる、非常に恵まれた環境の部活動です。理科系の部活動が物理・化学・生物・地学と全て揃っているのも、国立高校ならではの魅力です。
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イベント
国立高校の学校生活は、壮大なイベントを中心に回っていると言っても過言ではありません。そのどれもが、生徒主体で企画・運営されています。
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国高祭(くにこうさい):毎年9月に行われる文化祭・体育祭・後夜祭の総称です。特に文化祭は「日本一の文化祭」と評され、2日間で1万人以上が来場する一大イベントです。
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文化祭:最大の見どころは、3年生の全クラスが上演する演劇です。脚本、演出、大道具、衣装、音響、照明のすべてを生徒たち自身が手がけ、そのクオリティは高校生のレベルを遥かに超えています。教室を劇場に改造するために作られる巨大な「外装」は圧巻の一言。準備は前の年の文化祭終了直後から始まり、約1年をかけてクラス一丸となって作り上げます。
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体育祭:文化祭の翌週に行われます。1年生による応援合戦は特に熱が入り、各クラスが趣向を凝らしたパフォーマンスで競い合います。
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第九演奏会:40年以上の歴史を誇る、国立高校のもう一つの魂とも言えるイベントです。毎年4月、新入生を迎える歓迎行事として、プロのオーケストラ(東京フィルハーモニー交響楽団など)やプロのソリストを招き、約400名の生徒たちがベートーヴェンの交響曲第九番「歓喜の歌」をドイツ語で合唱します。府中の森芸術劇場などの本格的なコンサートホールで行われ、その感動的な演奏は、多くの生徒にとって国高生活の原体験となります。
これらの行事は、単なる「お楽しみ」ではありません。企画、予算管理、交渉、チームビルディング、そしてプレッシャーの中での実践という、社会で必要とされるスキルを学ぶ、壮大なプロジェクト・ベースド・ラーニング(課題解決型学習)の場なのです。
都立国立高等学校の進学実績
行事や部活動に全力投球する一方で、国立高校は都内屈指の進学実績を誇ります。この両立を可能にしているのが、生徒の高い能力と、それを支える手厚いサポート体制です。
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最新の大学進学実績(2025年春)
以下は、主な大学の合格者数です(浪人生を含む)。
分類 | 主な大学名 | 合格者数 |
国公立大学 | 東京大学 | 13 |
京都大学 | 16 | |
一橋大学 | 18 | |
東京科学大学(旧東工大) | 16 | |
東北大学 | 15 | |
北海道大学 | 11 | |
東京都立大学 | 13 | |
国公立大学医学部医学科 | 12 | |
国公立大学 合計 | 194 | |
難関私立大学 | 早稲田大学 | 109 |
慶應義塾大学 | 74 | |
上智大学 | 44 | |
東京理科大学 | 102 | |
GMARCH(学習院・明治・青山学院・立教・中央・法政)合計 | 403 |
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進学実績を支える取り組み
文化祭が終わる高校3年生の9月まで行事に没頭し、そこから一気に受験モードに切り替える生徒が多いのが国高のスタイル。この「追い上げ」を可能にする、強力なサポート体制が整っています。
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サポートティーチャー制度:各定期考査前や長期休暇中に、国立高校を卒業した大学生・大学院生が「サポートティーチャー」として来校し、後輩たちの勉強の質問や進路相談に乗ってくれます。年の近い先輩からのアドバイスは、非常に心強い存在です。
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充実した補習・講習:夏休みなどの長期休業中はもちろん、平常時から放課後にかけて、受験対策の補習や講習が数多く開講されます。昨年度は年間で134講座も開かれ、多くの生徒が活用しています。内容は基礎の復習から、難関大学の二次試験対策、論文指導まで多岐にわたります。
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自習室:平日は夜20時まで開放されており、多くの生徒が集中して勉強に取り組んでいます。卒業生のサポートティーチャーも待機しており、質問しやすい環境が整っています。
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大学見学ツアー:1、2年生の希望者を対象に、東京大学や京都大学を訪問するツアーが実施され、早い段階から大学進学への意識を高める機会となっています。
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都立国立高等学校の特長・アピールポイント
他の高校にはない、国立高校ならではの強みやユニークな取り組みをまとめました。
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伝説的な「国高祭」:単なる文化祭ではなく、生徒の自主性、創造性、協調性を育む、1年がかりの教育プロジェクトです。
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「全部やる、みんなでやる」の生徒文化:生徒が主体となって学校を動かす文化が根付いており、リーダーシップと責任感を養うことができます。
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絆を深める「3年間持ち上がり制クラス」:高校生活の核となるクラス演劇などの協働作業を可能にし、一生涯の友人を作るための独特なシステムです。
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本物の芸術に触れる「第九演奏会」:プロのオーケストラと共演するという、他では決して味わえない感動的な芸術体験ができます。
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卒業生による手厚い学習支援:伝統の「サポートティーチャー」制度により、身近なロールモデルである先輩から直接、学習や進路のサポートを受けられます。
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未来を拓く理数・情報教育:東京都の「東京サイエンス・ハイスクール」や文部科学省の「DXハイスクール」に指定され、3Dプリンターなどの最新設備を導入し、大学や企業と連携した先進的な学びを推進しています。
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都立高校では珍しい「天文ドーム」:屋上には本格的な天体望遠鏡を備えた天文ドームがあり、宇宙の神秘に触れることができます。
都立国立高等学校の口コミ・評判のまとめ
在校生や卒業生の声から、国立高校のリアルな姿を探ってみましょう。良い点と、入学前に知っておきたい気になる点の両方を公平に紹介します。
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良い点
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「人生で最高の青春が送れる、とにかく楽しい学校」という声が圧倒的に多いです。
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「文化祭や体育祭などの行事が信じられないくらい盛り上がり、クラスの団結力が強まる」。
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「自由な校風の中で、自分で考えて行動する力が身についた」。
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「3年間同じクラスで過ごすので、一生付き合えるような深い友情を築けた」。
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「周りの生徒は多才で面白い人ばかり。毎日が良い刺激になる」。
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「先生方は生徒の自主性を尊重し、熱心にサポートしてくれる」。
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気になる点(注意点)
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「行事や部活が忙しすぎて、勉強する時間が全く取れない。夏休みは無いも同然」という意見が非常に多いです。
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「『みんなでやる』という同調圧力が強く、自分のペースで過ごしたい人や、一つのことに集中したい人には辛い環境かもしれない」。
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「3年間クラス替えがないため、クラスに馴染めるかどうかで学校生活の楽しさが天国と地獄ほど変わる可能性がある」。
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「内向的な性格だと、常にエネルギッシュな雰囲気に気圧されてしまうかもしれない」。
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「あまりの忙しさに、心身ともに疲弊してしまう『燃え尽き』のリスクがある」という声も聞かれます。
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これらの口コミから浮かび上がるのは、国立高校が持つ強烈な魅力と、その裏返しである厳しさです。学校が提供する熱狂的な環境を心から楽しめるかどうか、自分の性格とよく相談することが、後悔しない高校選びの鍵となります。
アクセス・通学
国立高校への通学方法と、どのエリアから通う生徒が多いかについて説明します。
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最寄り駅からのアクセス
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JR中央線「国立駅」南口から徒歩15分
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JR南武線「谷保駅」北口から徒歩10分
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バスを利用する場合:JR国立駅南口からバスに乗り約5分、「国立高校前」バス停で下車し、そこから徒歩3分です。
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通学エリアの傾向
かつては学区制がありましたが、現在は都内全域から通学が可能です。とはいえ、立地的に国立市、立川市、国分寺市、府中市、八王子市といった多摩地区から通学している生徒が中心です。近年は多摩モノレールの開通により、西武線沿線など、これまで少しアクセスが不便だったエリアからの通学者も増えているようです。
都立国立高等学校受験生へのワンポイントアドバイス
ここまで読んでくれてありがとう。都立国立高等学校が、いかにエネルギッシュで魅力的な学校か、そして同時に、いかにタフな環境であるかが伝わったでしょうか。
最後に、進学アドバイザーとして、国立高校を目指す君にメッセージを送ります。この学校は、「勉強だけじゃ物足りない!」「高校生活のすべてに全力で挑戦したい!」「最高の仲間と、一生モノの思い出を作りたい!」と強く願う、エネルギーに満ち溢れた生徒にこそ、心からおすすめします。もし君が、チームで何かを成し遂げることに喜びを感じ、忙しい毎日を「充実している」と楽しめるタイプなら、都立国立高等学校は最高の環境になるはずです。
受験勉強では、まず「換算内申」をできるだけ高く確保することが第一歩です。その上で、合格を勝ち取る鍵となるのが、都立共通問題より格段に難しい「自校作成問題」への対策です。特に、入学後の授業の進度も速い英語と数学は、重点的に力を入れて、応用問題に粘り強く取り組む力を養っておきましょう。大変な道のりですが、その先には、他では決して味わえない、濃密で輝かしい3年間が待っています。君の挑戦を、心から応援しています!
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。