奈良県立高円芸術高等学校は、県内で唯一、芸術教育を専門とする公立高校です。音楽、美術、デザインといった分野で自分の才能を伸ばしたい、あるいは芸術がすぐそばにあるユニークな環境で高校生活を送りたいと考えている中学生の皆さんにとって、ここは特別な場所になるかもしれません。「専門的な勉強はついていけるかな?」「普通科はどんな雰囲気なんだろう?」そんな期待と不安が入り混じっていることでしょう。

この記事では、皆さんが抱える疑問や知りたいことに一つひとつ丁寧にお答えしていきます。高円芸術高等学校が持つ4つの学科の魅力から、在校生の先輩たちが語るリアルな学校生活、そして卒業後の進路まで、進学アドバイザーの視点から詳しく、そして分かりやすく解説します。偏差値や入試の難易度といったデータだけでなく、学校の温かい雰囲気や活気あるイベントの様子も具体的にお伝えします。

さあ、一緒に高円芸術高等学校の扉を開けてみましょう。この記事を読み終える頃には、この学校があなたの夢を叶えるための最高の舞台になるかどうか、きっと確かなイメージが描けているはずです。あなたの未来につながる大切な3年間を過ごす場所を、じっくりと見つけていきましょう。

高円芸術高等学校の基本情報

まずは、学校の基本的な情報を確認しておきましょう。連絡先や場所は、学校見学や問い合わせの際に必要になります。

項目 内容
正式名称 奈良県立高円芸術高等学校
公立/私立の別 公立
共学/男子校/女子校の別 男女共学
所在地 〒630-8302 奈良市白毫寺町633
代表電話番号 0742-22-5838
公式サイトのURL https://www.e-net.nara.jp/hs/takamado-art/

高円芸術高等学校の偏差値・難易度・併願校

高校選びで気になるのが、やはり偏差値や難易度。ここでは、高円芸術高等学校の具体的な学力レベルと、受験の際に一緒に検討されることが多い併願校について解説します。

学科・コースごとの偏差値の目安は以下の通りです。ただし、数値はあくまで目安であり、年度によって変動する可能性があることを覚えておいてください。

  • 美術科: 51~53

  • デザイン科: 49~51

  • 音楽科: 47~49

  • 普通科: 47~49

高円芸術高等学校の大きな特徴は、学科によって入試の種類が異なる点です。音楽科、美術科、デザイン科は「特色選抜」という形式で、学力試験に加えて実技試験が課されます。ここでは、デッサンや楽器演奏などの専門スキルが合否の重要なポイントになります。そのため、偏差値の数字以上に、その分野への情熱と基礎的な技術が求められると言えるでしょう。一方、普通科は「一般選抜」で、主に学力試験と内申点で評価されます。

合格に必要な内申点の目安としては、過去の合格者の例を見ると、デザイン科では45点満点中37~43点、普通科では27~31点あたりの生徒が合格しているようです。同じくらいの偏差値の高校としては、高取国際高等学校などが挙げられます。

奈良県の公立高校入試では、基本的に他の公立高校を併願することはできません。そのため、高円芸術高等学校を第一志望とする受験生の多くは、滑り止めとして私立高校を受験します。主な併願校としては、以下の高校がよく選ばれる傾向にあります。

  • 奈良大学附属高等学校(文理コースなど)

  • 奈良育英高等学校(高大連携Sコースなど)

  • 奈良女子高等学校(総合進学コースなど)

高円芸術高等学校に設置されている学科・コース

高円芸術高等学校には、それぞれに専門性を持った4つの学科があります。自分が何を学びたいのか、どんな高校生活を送りたいのかを想像しながら、各学科の特徴を見ていきましょう。

  • 普通科

    • どんなことを学ぶ?: 確かな学力を身につけるためのカリキュラムが組まれていますが、芸術系の学科に囲まれた環境で学ぶのが最大の特徴です。芸術文化への理解を深める授業もあり、感性豊かな人間性を育みます。

    • どんな生徒におすすめ?: 芸術的な雰囲気が好きで、幅広い分野に興味がある人。大学進学に向けて、まずは基礎学力をしっかり固めたい人におすすめです。

  • 音楽科

    • どんなことを学ぶ?: ピアノ、声楽、管弦楽器など、それぞれの専門分野で高度な技術と表現力を磨きます。現役で活躍するプロの音楽家からマンツーマンで指導を受けられる授業もあり、非常に専門的です。

    • どんな生徒におすすめ?: 将来、音楽大学への進学やプロの音楽家を目指している人。音楽漬けの毎日を送り、自分の技術をとことん追求したい人に最適です。

  • 美術科

    • どんなことを学ぶ?: 1年次でデッサンなどの基礎を徹底的に学び、2年次からは日本画、油画、版画、彫塑といった専攻に分かれて、より専門的な制作活動に打ち込みます。発想力や構成力も養います。

    • どんな生徒におすすめ?: 絵を描いたり、立体作品を創ったりすることが好きな人。美術大学への進学を視野に入れ、自分の表現したい世界をじっくりと探求したい人に向いています。

  • デザイン科

    • どんなことを学ぶ?: 美しさと機能性を両立させるデザインの世界を学びます。2年次からはクラフト、情報メディア、ビジュアルデザインの専攻に分かれ、社会で役立つ実践的なスキルを身につけます。

    • どんな生徒におすすめ?: アイデアを形にすることや、ポスター・雑貨などのデザインに興味がある人。将来、デザイナーやクリエイターとして活躍したいという夢を持つ人におすすめです。

高円芸術高等学校の特色・校風

学校全体の雰囲気は、ひと言でいえば「落ち着いていて、個性が尊重される」空間です。芸術系の生徒が多いこともあり、派手なタイプよりは物静かで、自分の世界を大切にする生徒が多いようです。もちろん活発な生徒もいますが、全体的には穏やかな時間が流れています。

  • 宿題の量: 芸術系の学科では専門的な実技や制作に多くの時間を費やすためか、宿題の量は標準的か、やや少なめと感じる生徒が多いようです。普通科も、部活動などと両立しやすい範囲で出される傾向にあります。

  • 校則(スマホ、服装など): 校則は、厳しすぎず緩すぎず、比較的常識的な範囲だと言われています。スマートフォンの持ち込みは許可されており、休み時間などに使用している生徒が多いですが、授業中の使用はもちろん禁止です。服装検査なども定期的に行われますが、きちんと着こなしていれば問題になることは少ないでしょう。

  • 生徒たちの雰囲気: 真面目で控えめな生徒が多いという声がよく聞かれます。特に専門学科の生徒は、自分の目標に向かって黙々と練習や制作に打ち込んでいる姿が印象的です。一方で、一部のクラスでは授業中に騒がしくなることもあるという意見もあり、クラスの雰囲気は一様ではないようです。

  • アルバイト: 原則として禁止されています。学校側は、学業や部活動、専門分野の練習に集中してほしいという考えを持っています。ただし、家庭の経済的な事情などでやむを得ない場合は、保護者からの申し出により、学業に支障のない範囲で許可されることもあります。

  • 制服の評判: 制服は、紺色のブレザーを基調とした落ち着いたデザインです。夏服と冬服があり、セーターやベストを合わせることもできます。デザインについての評判は人それぞれですが、着こなしやすく、フォーマルな印象で良いという声が多いようです。

  • 土曜授業: 基本的に土曜授業はありませんが、学校行事や特別な補習などが行われることはあります。

  • その他: 昼休みには学校近くのパン屋さんが焼きたてのパンを販売に来てくれる「購買」があり、生徒たちに大人気です。30~40種類ものパンが並び、毎日選ぶのが楽しみという声も聞かれます。

高円芸術高等学校の部活動・イベント

部活動

高円芸術高等学校の部活動は、文化部が非常に充実しているのが特徴です。もちろん、運動部も活発に活動しています。

  • 美術部: 美術科・デザイン科の生徒は全員が所属し、放課後はそれぞれの専攻作品の制作に励みます。それとは別に、普通科の生徒を中心とした美術部もあり、文化祭でステンドグラス風の巨大作品を展示するなど、ダイナミックな活動をしています。このように二つの美術部が存在するのは、この学校ならではのユニークな点です。

  • コーラス部: NHK全国学校音楽コンクールで入賞するなど、高い実力を持つ部活動です。毎年開催される定期演奏会では、本格的な合唱曲からポップスまで幅広いジャンルの歌声を披露し、多くの観客を魅了しています。他校との合同合唱団として全国大会に出場する機会もあり、活動の幅が広いです。

  • 書道部: 伝統的な書道だけでなく、音楽に合わせて大きな紙に文字を書く「書道パフォーマンス」を文化祭で行うなど、新しい表現に挑戦しています。その迫力あるパフォーマンスは、文化祭の名物の一つとなっています。各種展覧会でも数々の賞を受賞しています。

  • 吹奏楽部: 音楽科の生徒だけでなく、多くの生徒が所属し、活気にあふれています。毎年行われる定期演奏会は、部活動の集大成となる大きなイベントで、地域の人々にも親しまれています。

運動部は、サッカー部、硬式野球部、テニス部、バスケットボール部、陸上部などがあり、それぞれの目標に向かって練習に励んでいます。

イベント

高円芸術高等学校の1年間は、芸術の発表会を兼ねた華やかなイベントで彩られています。

  • 高円祭(文化祭): 9月に行われる学校最大のイベントです。各クラスや文化部が趣向を凝らした展示や発表を行いますが、特に芸術系学科の展示は圧巻です。音楽科の生徒によるコンサート、美術科・デザイン科の作品展、演劇部の公演など、校内の至る所でハイレベルな芸術に触れることができます。

  • 体育大会: 高円祭と同じく9月に行われます。クラス対抗で様々な競技に挑み、学年や学科を超えて団結力を高める一日です。

  • 修学旅行: 2年生の10月に実施されます。行き先は年度によって異なりますが、仲間との絆を深める貴重な思い出となります。

  • 学科ごとの発表会: 音楽科の「定期演奏会」や「卒業演奏会」、美術科・デザイン科の「高円美術展」など、1年間の学びの成果を披露する専門的なイベントが数多く開催されます。これらの発表会は一般にも公開されることが多く、生徒たちの緊張感と達成感に満ちた表情を見ることができます。

高円芸術高等学校の進学実績

高円芸術高等学校の進路は、その専門性を反映して、美術・音楽系の大学への進学が大きな強みとなっています。卒業生たちがどのような未来へ羽ばたいているのか、具体的な実績を見てみましょう。

  • 国公立大学: 芸術系の国公立大学への合格者を毎年輩出しています。主な進学先としては、京都市立芸術大学、金沢美術工芸大学、大阪教育大学、奈良教育大学などが挙げられます。これらの大学は専門性が高く、難関として知られており、高円芸術高校の教育レベルの高さがうかがえます。

  • 難関私立大学: 美術・デザイン分野では、多摩美術大学や武蔵野美術大学といった国内トップクラスの私立美大への合格実績が豊富です。また、京都精華大学など、関西の主要な芸術大学にも多くの卒業生が進学しています。一般の大学では、関関同立に8名、産近甲龍に14名(2024年度実績)といった合格者も出ています。

  • その他の進路: 大学だけでなく、より実践的なスキルを身につけるために専門学校へ進む生徒や、学んだことを活かしてクリエイティブな分野へ就職する生徒もいます。

これらの進学実績を支えているのは、日々の専門的な授業そのものです。音楽科ではプロの演奏家による個人レッスン、美術科・デザイン科では大学入試で必須となるポートフォリオ(作品集)制作を見据えた指導が行われており、高校の授業が直接、希望進路の実現につながるカリキュラムとなっています。

高円芸術高等学校の特長・アピールポイント

他の高校にはない、高円芸術高等学校ならではの魅力を5つのポイントにまとめました。

  • 奈良県で唯一の公立芸術高校

    県内全域から芸術を志す仲間が集まる特別な場所です。公立高校なので、私立に比べて学費を抑えながら、専門的な教育を受けられるのは大きな魅力です。

  • プロフェッショナルによる直接指導

    特に音楽科では、現在も第一線で活躍するプロの音楽家を講師として招き、マンツーマンのレッスンを受けることができます。技術だけでなく、表現者としての心構えまで学べる貴重な機会です。

  • 専門性を深める多彩な専攻コース

    2年生からは、より専門的な分野を探求する「専攻」に分かれます。油画やビジュアルデザイン、声楽など、自分の興味や目標に合わせて深く学べるため、大学進学や将来の夢に直結する実力が身につきます。

  • 発表の場が豊富に用意されている

    文化祭「高円祭」はもちろん、音楽科の定期演奏会や美術科の作品展など、1年間の成果を発表する機会が数多くあります。人前で表現することの難しさや喜びを経験し、大きく成長することができます。

  • 芸術に囲まれた刺激的な学習環境

    普通科の生徒も、日常的に音楽や美術に触れながら学校生活を送ります。廊下を歩けば美しい音色が聞こえ、教室には個性的な作品が飾られている。そんな環境が、知らず知らずのうちに豊かな感性を育んでくれます。

高円芸術高等学校の口コミ・評判のまとめ

実際に通っている先輩や卒業生の声は、学校選びの重要な参考になります。ここでは、様々な口コミを公平にまとめました。

  • 良い点

    • 「本気で芸術をやりたいなら最高の環境」という声が圧倒的に多いです。専門の先生方の熱心な指導や、充実した設備を評価する意見が目立ちます。

    • 「同じ夢を持つ仲間と出会えた」という点も、多くの生徒にとって大きな魅力のようです。互いに刺激し合い、高め合える(切磋琢磨できる)関係が築きやすい環境です。

    • 「落ち着いた雰囲気で過ごしやすい」と感じる生徒も多いです。自分のペースで物事に打ち込みたい人や、穏やかな人間関係を好む人にはフィットするようです。

    • 「高円祭などの行事が本当に楽しい」という口コミも多数あります。学校全体で一つのものを作り上げる達成感は、特別な思い出になるようです。

  • 気になる点

    • 最も多く指摘されるのが「アクセスの不便さ」です。最寄り駅から徒歩20分以上かかり、バスを利用する生徒が多いですが、そのバス代が負担になるという声があります。自転車通学を選ぶ生徒も少なくありません。

    • 「芸術系の学科と普通科の間に少し壁がある」と感じる生徒もいるようです。専門分野に打ち込む生徒と、そうでない生徒との間で、モチベーションや関心事に差が生まれやすいのかもしれません。

    • 「一部の授業が騒がしく、集中できないことがある」という意見も見られます。先生によっては、クラスの雰囲気をうまくコントロールできていないと感じる場面があるようです。

    • 「校舎や施設の一部が古い」という指摘もあります。芸術に関する専門設備は整っていますが、教室など一般的な施設には年季を感じる部分があるようです。

アクセス・通学

高円芸術高等学校への通学は、バスか自転車を利用するのが一般的です。事前にルートや所要時間を確認しておきましょう。

  • 所在地: 〒630-8302 奈良市白毫寺町633

  • 電車でのアクセス

    • JR桜井線「京終駅」が最寄り駅ですが、駅から学校までは徒歩で約20~25分(約1.6km)かかります。

  • バスでのアクセス(JR奈良駅・近鉄奈良駅から)

    • 奈良交通バス 市内循環バスに乗車し、「高畑町」バス停で下車、そこから東へ徒歩約15分(約1.1km)。

    • 奈良交通バス 東山線に乗車し、「白毫寺」バス停で下車、そこから南へ徒歩約4分(約0.3km)。こちらが最も近いバス停の一つです。

    • 奈良交通バス 山村線に乗車し、「萩ヶ丘」バス停で下車、そこから東へ徒歩約7分(約0.5km)。

  • 通学エリア

    県内唯一の芸術高校という特性から、奈良市内に限らず、県内全域から生徒が通学しています。口コミにもあるように、駅から距離があるため、多くの生徒がバスを利用していますが、バスの定期代が高めなことから、近隣の生徒は自転車で通学するケースも多いようです。

高円芸術高等学校受験生へのワンポイントアドバイス

ここまで読んでくれてありがとうございます。最後に、進学アドバイザーとして、高円芸術高等学校を目指す皆さんへ応援メッセージを送ります。

この学校が最も大切にしているのは、点数や偏差値だけでは測れない、あなたの「好き」という気持ちと「探求したい」という情熱です。音楽科、美術科、デザイン科を目指す人は、自分の作品や演奏に自信を持ってください。上手い下手だけでなく、あなたが何を表現したいのか、その想いが一番の武器になります。学校のQ&Aにも「一番大切なことは絵を描くことや、物を作ることが大好きだということ」と書かれている通りです。日々の練習や制作を楽しみ、あなただけのポートフォリオを磨き上げてください。

普通科を目指す皆さんは、芸術に囲まれた環境で学ぶ自分を想像してみてください。もし、その環境にワクワクするなら、高円芸術高等学校はあなたに新しい視点と豊かな感性を与えてくれるはずです。まずは中学校での日々の授業を大切にし、基礎学力をしっかりと固めることに集中しましょう。この学校で過ごす3年間は、きっとあなたの人生を彩り豊かにしてくれることでしょう。皆さんの挑戦を心から応援しています!

※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。