鶴岡工業高等専門学校は、一般的な高校とは少し違う、5年間の一貫教育で未来のエンジニアや研究者を育てる「高等専門学校(高専)」です。中学校を卒業してすぐ、自分の大好きな科学や技術の世界にどっぷりと浸かり、高校と大学レベルの専門知識を深く、そして実践的に学べる特別な場所、それが鶴岡工業高等専門学校です。

この学校が掲げるのは「理魂工才(りこんこうさい)」と「自学自習」という言葉です。これは、科学の心と技術の才能を磨き、誰かに教わるだけでなく自ら学ぶ力を持った人間になる、という力強いメッセージです。ここでは、ただ知識を詰め込むのではなく、実験や実習を通して「なぜそうなるのか」「どうすればもっと良くなるのか」を自分の頭で考え、手を動かして探求していく毎日が待っています。

ものづくりが好き、プログラミングに夢中、科学の実験にワクワクする。もし君がそんな一人なら、この記事を読み進めてみてください。鶴岡工業高等専門学校での挑戦的な授業、熱中できる部活動、そして卒業生たちがつかんだ素晴らしい未来について、詳しくご案内します。君の可能性を最大限に引き出す、特別な5年間がここにあるかもしれません。

鶴岡工業高等専門学校の基本情報

まずは、学校の基本的な情報を確認しておきましょう。

項目 内容
正式名称 独立行政法人国立高等専門学校機構 鶴岡工業高等専門学校
区分 国立
男女別 共学
所在地 〒997-8511 山形県鶴岡市井岡字沢田104
代表電話番号 0235-25-9014
公式サイトURL https://www.tsuruoka-nct.ac.jp/

鶴岡工業高等専門学校の偏差値・難易度・併願校

鶴岡工業高等専門学校を目指す上で、まず気になるのが学力的な難易度ですよね。ここでは偏差値や合格に必要な力の目安を具体的に見ていきましょう。

創造工学科の偏差値は、おおよそ58から60とされています。山形県内の高校と比較すると、山形北高校(普通科)や新庄北高校(普通科)などが近いレベルにあり、県内でも学力上位の学校であることが分かります。しっかりとした学力が求められる、挑戦しがいのある学校と言えるでしょう。

しかし、鶴岡工業高等専門学校の入試で偏差値と同じくらい、あるいはそれ以上に重要視されるのが中学校での成績、つまり「内申点」です。特に推薦選抜での合格を目指す場合、出願資格として「中学1年生から3年生までの9教科の5段階評定の合計が98以上」という基準が設けられています。これは3年間、ほぼ全ての教科で平均して4以上の成績を維持する必要があることを意味します。この事実は、単に受験科目が得意なだけでなく、どの教科にも真面目にコツコツと取り組む姿勢が、5年間の厳しい専門教育を乗り越える上で不可欠だと学校側が考えていることの表れです。中学1年生の最初のテストから、すでに入試は始まっていると考えて良いでしょう。

高専は国立のため、山形県内の公立高校との併願はできませんが、私立高校との併願は可能です。偏差値が近いことや、万が一の場合の進学先として、多くの受験生が以下の私立高校を併願校として検討しています。

  • 日本大学山形高等学校

  • 東海大学山形高等学校

  • 酒田南高等学校

  • 鶴岡東高等学校

鶴岡工業高等専門学校に設置されている学科・コース

鶴岡工業高等専門学校には「創造工学科」という一つの大きな学科があり、その中で専門分野に応じた複数のコースに分かれて学びを深めていきます。この「創造工学科」という名前には、単一の技術分野にとらわれず、様々な知識を融合させて新しい価値を生み出す、現代的な技術者を育成するという学校の強い意志が込められています。2年生から各コースに分属し、専門性を高めていきます。

  • 機械コース

    • あらゆる産業の基盤となる機械の設計や製作、制御について学びます。ロボットや自動車など、動くモノの仕組みに興味がある人におすすめです。

  • 電気・電子コース

    • スマートフォンから電力網まで、社会を支える電気エネルギーや情報通信、エレクトロニクス技術を学びます。電気の力で未来を動かしたい人におすすめです。

  • 情報コース

    • プログラミングやネットワーク、AIといったソフトウェアからハードウェアまで幅広く学びます。未来のIT社会を創り出したい人におすすめです。

  • 化学・生物コース

    • 環境問題の解決や新素材の開発など、化学やバイオの力で地球規模の課題に挑みます。科学の力で社会に貢献したい人におすすめです。

  • デジタルデザインコース(令和7年度新設)

    • 工学の知識とデジタル技術を融合させ、使いやすく魅力的な製品やシステムをデザインする力を養います。テクノロジーと創造性を両立させたい人におすすめです。

鶴岡工業高等専門学校の特色・校風

鶴岡工業高等専門学校のキャンパスライフを表現するキーワードは、「自由と自律」「自学自習」「大学のような雰囲気」です。ここでは、中学生の皆さんが本当に知りたい学校生活のリアルな姿を、口コミなどを基に詳しく紹介します。

  • 宿題の量

    • 「宿題」というよりは「課題」や「レポート」が中心で、その量はコースによって大きく異なります。特に電気・電子コースのレポートは非常に大変だという声が多く聞かれます。授業の進度も速く、積極的に自分で学んでいかないと追いつくのが難しいようです。

  • 校則(スマホ、服装など)

    • 校則は非常に緩やかで、多くの在校生が「大学のようで自由」と感じています。服装については指定の制服がありますが、日常的な頭髪や持ち物に関する厳しい規則は少ないようです。スマートフォンも常識の範囲内での使用が認められていると考えられます。ただし、この自由は「自分で自分を管理する」という責任とセットです。

  • 生徒たちの雰囲気

    • 同じ専門分野に強い興味を持つ仲間が集まっているため、真面目で探求心旺盛な生徒が多いようです。5年制のためキャンパスには15歳から20歳までの学生がおり、年上の先輩との交流も多く、落ち着いた大人の雰囲気があります。

  • アルバイト

    • 学業への専念を第一に考えているため、原則としてアルバイトは認められていません。ただし、経済的な理由など、やむを得ない事情がある場合に限り、長期休暇中などに許可されることがあります。

  • 制服の評判

    • 制服はブレザータイプで、男子体型用(I型)と女子体型用(II型)が用意されています。スラックスとスカートは選択が可能で、機能的かつ現代的なデザインと言えるでしょう。

  • 土曜授業

    • 正規の授業は基本的にありませんが、部活動などは土曜日にも活発に行われているようです。特にロボット技術研究部は土曜の午前中も活動しており、意欲のある学生が自主的に活動できる環境が整っています。

この学校の最大の特色は、自由な環境が与えられている点です。しかし、それは同時に、厳しい自己管理能力が求められることの裏返しでもあります。自主的に学習計画を立て、課題に取り組む「自律」の精神がなければ、進級が難しくなる(留年する)可能性もあるという厳しい側面も理解しておく必要があります。

鶴岡工業高等専門学校の部活動・イベント

部活動

鶴岡工業高等専門学校には、運動部、文化部ともに多彩なクラブがあり、多くの学生が学業と両立させながら活動に打ち込んでいます。特に、高専ならではの専門知識や設備を活かした技術系の部活動が盛んです。

その中でも、学校の顔とも言えるのが「ロボット技術研究部」です。この部は、毎年テレビで放送される「NHK高専ロボコン」の常連校として全国にその名を知られています。全国大会への出場経験も豊富で、独創的なアイデアや高い技術力が評価され、審査員特別賞など数々の賞を受賞しています。また、「廃炉創造ロボコン」といった社会課題の解決を目指すコンテストでも優秀な成績を収めており、まさに学校で学んだ知識と技術を実践する最高の舞台となっています。ロボット技術研究部の活躍は、単なる部活動の成果にとどまらず、鶴岡高専の教育レベルの高さを象徴していると言えるでしょう。

イベント

高専生活を彩るイベントも充実しています。体育祭や修学旅行といった一般的な学校行事に加え、鶴岡高専には特別なイベントがあります。

そのハイライトが、4年に一度だけ開催される学校祭「鶴峰祭(かくほうさい)」です。4年に一度ということは、5年間の在学中にたった一度しか経験できない、非常に貴重なイベントです。その希少性から、学生たちの熱意は並大抵のものではありません。「Dynamite~あっと驚く鶴峰祭~」といったエネルギッシュなテーマが掲げられ、クラスや部活動、有志の学生たちが一体となって、ユニークな企画や研究発表でキャンパスを盛り上げます。在校生にとって、鶴峰祭は学年を超えた絆を深め、一生の思い出となる特別な一日となるのです。

鶴岡工業高等専門学校の進学実績

「就職もよし、進学もよし」という言葉が合い言葉になっている通り、鶴岡工業高等専門学校の卒業生には、大きく分けて2つの輝かしい道が用意されています。卒業生の進路は、例年およそ就職が60~70%、進学が30~40%という割合で推移しています。

就職という道

高専卒業生は、即戦力となる実践的・創造的技術者として産業界から極めて高い評価を受けており、就職率はほぼ100%を誇ります。多くの学生が、誰もが知る大手企業や優良企業から引く手あまたの状況です。近年の主な就職先には、トヨタ自動車東日本、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング、TDK、ENEOS、ソフトバンク、JR東日本など、日本の産業をリードする企業が名を連ねています。

進学という道

より高度な学問を探求したい学生には、大学進学の道が開かれています。高専からの進学の最大のメリットは「大学編入」制度です。これは、5年間の高専での学びが大学の1・2年次に相当すると認められ、大学の3年次から入学できるというものです。つまり、同年代の高校生より1年早く大学を卒業できる可能性がある、非常に効率的な進路です。

編入先も、東北大学、北海道大学、筑波大学といった旧帝国大学をはじめとする難関国公立大学が中心です。特に、高専卒業生の受け皿として設立された長岡技術科学大学や豊橋技術科学大学へ進学する学生も多くいます。また、鶴岡高専に設置されている「専攻科」に進学し、さらに2年間学ぶことで、4年制大学卒業と同等の「学士」の学位を取得することも可能です。

学校では、進路指導ガイダンスや企業説明会、面接指導など、一人ひとりの希望に合わせた手厚いサポート体制が整えられており、学生が安心して自分の未来を選択できるよう支援しています。

鶴岡工業高等専門学校の特長・アピールポイント

他の高校にはない、鶴岡工業高等専門学校ならではの強みや魅力をまとめました。

  • 5年間の一貫した専門教育

    • 中学卒業後すぐに専門分野の学習をスタート。高校3年間では到達できない、深く体系的な知識と技術を5年間かけてじっくりと身につけることができます。

  • 大学レベルの実験・研究設備

    • 一般的な高校では触れることのできない、本格的な工作機械や実験装置を授業や研究で日常的に使用できます。理論を実践で確かめる環境が整っています。

  • 圧倒的な就職実績と大学編入制度

    • 大手優良企業へのほぼ100%の就職率か、難関国公立大学の3年次へ編入するか。卒業後の選択肢の質と幅広さは、大きな魅力です。

  • 自由を重んじる大学のような校風

    • 厳しい校則は少なく、学生の自主性が尊重されます。大人として扱われる環境で、自己管理能力と責任感を養うことができます。

  • 全国レベルで活躍するロボット技術研究部

    • 高専ロボコンなどで輝かしい実績を誇る部活動は、学校の技術力の象徴です。仲間と共にものづくりの頂点を目指す、熱い経験ができます。

  • 未来を創造する学際的なカリキュラム

    • 「創造工学科」の名の下、機械、電気、情報といった分野の垣根を越えて学ぶことができます。複雑な課題を解決できる、複合的な視野を持った技術者を目指せます。

  • 一生の思い出になる4年に一度の「鶴峰祭」

    • 在学中に一度しか経験できない特別な学校祭は、学生生活のハイライト。学校全体が一つになる熱気と達成感は、他では味わえません。

鶴岡工業高等専門学校の口コミ・評判のまとめ

ここでは、在校生や卒業生から寄せられたリアルな声を、良い点と気になる点に分けて公平にご紹介します。

良い点

  • 「やりたいことが明確な生徒には最高の環境」

    • 専門分野を深く学びたいという強い意志があれば、これ以上ないほど充実した5年間を送れる、という声が多数あります。

  • 「就職にも進学にも強く、コストパフォーマンスが最強」

    • 国立なので学費が比較的安価であるにもかかわらず、卒業後の進路が非常に有利な点を評価する声が多いです。

  • 「自由で楽しい。先生や先輩との距離も近い」

    • 大学のような自由な雰囲気と、同じ目標を持つ仲間や先輩、専門知識の豊富な先生方との良好な人間関係を魅力に挙げる意見が見られます。

  • 「専門的な設備が自由に使えるのが魅力」

    • 高度な実験装置や工作機械を使える環境は、ものづくりが好きな学生にとって大きな喜びのようです。

気になる点

  • 「目的意識がないと簡単に留年する。自己管理能力が必須」

    • 最も多く聞かれる注意点です。自由な校風の裏返しで、学習意欲を失ったり、課題を怠ったりすると、すぐについていけなくなるという厳しさがあります。

  • 「校舎や一部の設備が古い」

    • 実験・研究設備は充実している一方で、校舎などの建物自体は歴史を感じさせるという意見もあります。

  • 「先生はご自身の研究が優先に見えることがある」

    • 先生方はそれぞれの分野の研究者でもあるため、一部の学生は、教育よりも研究に重きを置いているように感じることがあるようです。

  • 「課題レポートが非常に大変な学科もある」

    • 学業の負担、特にレポート作成の厳しさは覚悟しておく必要がある、という声も聞かれます。

アクセス・通学

鶴岡工業高等専門学校の所在地と主なアクセス方法は以下の通りです。

  • 所在地

    • 山形県鶴岡市井岡字沢田104

  • アクセス

    • 最寄り駅はJR羽越本線の鶴岡駅となります。駅から学校までは距離があるため、路線バスを利用するのが一般的です。

    • 庄内交通バスの「鶴岡駅前」バス停から「鶴岡高専」行きのバスに乗車し、終点で下車します。

    • 立地的に、鶴岡市内や酒田市など庄内地方全域から生徒が通学しています。また、遠方の学生のために学生寮も完備されています。

鶴岡工業高等専門学校受験生へのワンポイントアドバイス

こんにちは!進学アドバイザーの私から、鶴岡工業高等専門学校を目指す君へ、最後のエールを送ります。

この学校は、「科学やものづくりが大好きで、一日でも早く専門家への道を歩み始めたい」と願う君にこそ、最高の場所です。受け身の授業ではなく、自ら手を動かし、探求していくことに喜びを感じる人、自由な環境で自分の力を試したい自立心のある人には、きっとかけがえのない5年間になるでしょう。鶴岡工業高等専門学校を選ぶことは、単なる高校選びではなく、未来のエンジニア、研究者としての自分への第一歩を踏み出す決断です。

受験勉強では、まず数学と理科の基礎を徹底的に固めてください。高専の入試問題は、中学校で習う内容を深く理解しているかを問う良問がそろっています。そして、忘れてはならないのが内申点の重要性です。鶴岡工業高等専門学校は、日々の授業に真面目に取り組む誠実な生徒を求めています。主要5教科だけでなく、全ての教科に全力で取り組みましょう。何よりも大切なのは、君自身の「知りたい」「作りたい」という好奇心です。その気持ちを胸に、挑戦してください。未来の技術を創造する君に会える日を楽しみにしています。

※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。