鹿児島工業高等専門学校は、ロボットや最先端のAI技術など、未来の「ものづくり」に夢中なあなたのための特別な学び舎です。中学校を卒業してすぐ、5年間という一貫した教育課程で、専門技術者への道をまっすぐに歩み始めることができる、ユニークで魅力的な国立の高等専門学校です。

一般的な高校とは異なり、鹿児島工業高等専門学校では、早い段階から専門分野の奥深い世界に飛び込むことができます。座学だけでなく、豊富な実験や実習を通して、自分の手でアイデアを形にしていく実践的なスキルを磨く時間は、何物にも代えがたい経験となるでしょう。鹿児島工業高等専門学校を選ぶことは、単なる進学先の決定ではなく、「技術者になる」という未来への力強い第一歩を踏み出すことを意味します。

この記事では、そんな魅力あふれる学校のすべてを、進学アドバイザーの視点から分かりやすくご紹介します。偏差値や学科の内容はもちろん、先輩たちのリアルな声が聞こえてくるような学校生活の様子、そして卒業後の輝かしい進路まで、あなたが知りたい情報を余すところなく詰め込みました。ぜひ、キャンパスで学ぶ自分自身の姿を想像しながら、読み進めてみてください。

鹿児島工業高等専門学校の基本情報

まずは、学校の基本的な情報を確認しましょう。正式名称や所在地などを一覧にまとめました。

項目 内容
正式名称 独立行政法人国立高等専門学校機構 鹿児島工業高等専門学校
公立/私立の別 国立
共学/別学 男女共学
所在地 〒899-5193 鹿児島県霧島市隼人町真孝1460-1
代表電話番号 0995-42-9000
公式サイト https://www.kagoshima-ct.ac.jp/

鹿児島工業高等専門学校の偏差値・難易度・併願校

鹿児島工業高等専門学校への進学を考える上で、まず気になるのが学力的な難易度でしょう。ここでは偏差値を中心に、合格の目安や併願校について具体的に解説します。

鹿児島工業高等専門学校の偏差値は、学科によって多少の差はありますが、おおむね65〜66とされています。これは鹿児島県内の高校239校の中でもトップ10に入るレベルであり、非常に高い学力が求められることが分かります。同じくらいの偏差値の高校としては、公立では鹿児島中央高等学校(普通科、偏差値67)や鹿児島市立鹿児島玉龍高等学校(普通科、偏差値65)、私立では池田高等学校(普通科、偏差値68)や志學館高等部(普通科、偏差値67)などが挙げられます。

合格に必要な内申点の目安として、特に推薦選抜を考えている場合は、中学2年生と3年生の9教科5段階評定の合計が「74以上」であることが一つの基準となります。学力選抜では、全国の高専で共通の問題が出題されますが、鹿児島高専の大きな特徴として、試験科目に「社会」がなく、代わりに「数学」の配点を高くする「傾斜配点」が採用されています。これは、高専での学習の根幹となる数学的な思考力を持つ生徒を重視している学校側の明確なメッセージと言えるでしょう。

併願校については、国立の学校であるため、公立高校との併願はできませんが、多くの受験生が私立高校を併願しています。主な併願先としては、鹿児島実業高等学校、樟南高等学校、鹿児島高等学校、出水中央高等学校などが挙げられます。

鹿児島工業高等専門学校に設置されている学科・コース

鹿児島工業高等専門学校は、社会のニーズと技術の進化に対応するため、2026年度(令和8年度)の入学生から、これまでの5学科体制を大きく刷新し、未来志向の新しい学びの形へと生まれ変わります。ここでは、これから入学する皆さんが実際に学ぶことになる新しい学科体制について詳しく紹介します。

2026年度からスタートする新学科「創造デザイン工学科」

これまでの5つの専門学科(機械工学科、電気電子工学科、電子制御工学科、情報工学科、都市環境デザイン工学科)が一つに統合され、「創造デザイン工学科」という1学科3類5コース制が始まります。

新しい学びの流れ

1年次では、コースに分かれず全員が共通の基礎科目を学びます。ここで工学の幅広い土台を築きながら、特にこれからの社会で必須となるデータサイエンスやAIの活用といった最先端分野の基礎を集中的に習得します。そして、1年間の学びを通して自分の興味や適性を見極めた上で、2年次から以下の5つの専門コースに分かれて、より深い学びへと進んでいきます。

5つの専門コース

  • コンピューターサイエンスコース – 社会を支える情報システムを自ら設計・構築する力を身につけます。ネットショッピングや銀行ATMなど、あらゆる場面で活躍する情報スペシャリストを目指す人におすすめです。

  • データサイエンスコース – 大量のデータから未来を予測し、社会の課題を解決に導く「データを使いこなす力」を養います。情報科学に加え、統計学や経営学も学び、新しいビジネスや価値を創造したい人におすすめです。

  • 知能ロボティクスコース – 日常生活から宇宙開発まで、あらゆる分野で活躍するロボットを開発する技術を学びます。機械のハードウェアと制御するソフトウェアの両面からアプローチし、ものづくりで未来を動かしたい人におすすめです。

  • 先進エレクトロニクスコース – スマートフォンや電気自動車、AIの進化を支える半導体や通信技術のプロフェッショナルを目指します。エネルギーや環境問題にも貢献できる、持続可能な社会を実現したい人におすすめです。

  • 都市環境デザインコース – 人々が安全で快適に暮らせる未来の都市をデザインする力を身につけます。建設、防災、環境、そして情報技術を幅広く学び、社会基盤づくりを通して地域や世界に貢献したい人におすすめです。

鹿児島工業高等専門学校の特色・校風

鹿児島工業高等専門学校のキャンパスには、どのような空気が流れているのでしょうか。ここでは、キーワードと共に、学校生活のリアルな姿を口コミや評判を基に詳しく見ていきましょう。

学校全体の雰囲気を表すキーワードは、「自由」「自主性」「専門性」「実践的」です。

最も多くの在校生や卒業生が口にするのが「自由な校風」です。大学に近い雰囲気で、校則も一般的な高校と比べると緩やかな傾向があるようです。しかし、この自由は「自主性」とセットになっています。自分で計画を立てて勉強を進められる生徒にとっては最高の環境ですが、自己管理が苦手だと授業についていけなくなる可能性もある、という声が多く聞かれます。まさに、高校生から一足早く大学生、そして社会人へと成長するための環境が用意されていると言えるでしょう。

授業は1コマ90分制で、大学の講義と同じスタイルです。これにより、一つのテーマをじっくりと深く掘り下げて学ぶことができます。宿題の量について直接的な言及は少ないものの、テストは赤点が60点未満と基準が高く、勉強はかなり大変だという意見が目立ちます。先輩から過去の試験問題(過去問)を譲ってもらうのが、単位取得のための重要な戦略の一つになっているようです。

生徒たちの雰囲気は、総じて「勉強に意欲的」で、お互いに助け合いながら学んでいる様子がうかがえます。専門分野を学ぶ学校だけに、それぞれがはっきりとした個性や目標を持っている生徒が多いようです。工業系の学校のため男子生徒の割合が高いですが、近年は女子生徒も増えており、理系分野で活躍する女子学生を応援する「Robogals Kagoshima」のような活動も活発です。

アルバイトについては、夏休みや春休みが長いことを利用して励んでいる生徒が多いようです。土曜授業は基本的にありません。制服については、具体的な評判に関する情報は見当たりませんでしたが、自由な校風から、着こなしなどについては比較的寛容である可能性が考えられます。

鹿児島工業高等専門学校の部活動・イベント

専門的な勉強が中心の高専生活ですが、それを彩る部活動や学校行事も非常に充実しています。ここでは、鹿児島高専ならではの熱い活動を紹介します。

部活動

運動部、文化部ともに多種多様なクラブがあり、学生の約6割が何らかの課外活動に参加していると言われています。

特に鹿児島工業高等専門学校の特色が色濃く表れているのが、全国の高専が競い合うコンテストを目指す部活動です。テレビでもおなじみの「高専ロボコン(ロボットコンテスト)」をはじめ、「高専プロコン(プログラミングコンテスト)」や「高専デザコン(デザインコンペティション)」など、日々の学びを実践で試す最高の舞台が用意されています。これらの活動は、チームで一つの目標に向かってものづくりに取り組む貴重な経験となり、まさに高専教育の集大成と言えるでしょう。

その他にも、将来の起業を目指す学生が集まる「起業クラブ」や、学生の様々なチャレンジをサポートする「鹿児島高専SSD」など、ユニークな活動も盛んです。もちろん、野球部やサッカー部、吹奏楽部といった一般的な部活動も活発に活動しています。

イベント

鹿児島高専で最も盛り上がるイベントは、毎年10月に2日間にわたって開催される「高専祭」です。1日目が文化祭、2日目が体育祭という構成になっています。

この高専祭の最大の名物が、体育祭で行われる「応援合戦」です。これは、旧学科(将来的には新コース)ごとに分かれて、1年がかりで準備した約10分間の演舞を披露するもので、その迫力と一体感は圧巻の一言です。応援団の学生たちは、それぞれの科のテーマカラーに髪を染め、代々受け継がれてきた伝統の型をベースにした演舞で競い合います。応援合戦と並ぶ名物が、各科が制作する巨大な「櫓絵(やぐらえ)」で、体育祭を華やかに彩ります。これらの活動は、単なる学校行事の枠を超え、学生たちの所属意識と団結力を育む、かけがえのない伝統となっています。

鹿児島工業高等専門学校の進学実績

5年間の学びを終えた後、卒業生たちはどのような未来へ羽ばたいていくのでしょうか。鹿児島工業高等専門学校の最大の強みの一つである、輝かしい進路実績について見ていきましょう。

卒業後の進路は、大きく分けて「就職」と「進学」の2つがあり、例年、約7割が就職、約3割が進学を選んでいます。

圧倒的な就職実績

高専の就職率は、ほぼ100%と言われるほど高く、企業からの評価が非常に高いのが特徴です。鹿児島工業高等専門学校も例外ではなく、大手優良企業から数多くの求人が寄せられます。専攻科修了生の実績では、求人倍率が160倍を超えることもあり、まさに「引く手あまた」の状態です。卒業生は、ファナック、三菱重工業、パナソニック、ソニーといった日本を代表するメーカーや、国土交通省などの官公庁まで、幅広い分野で即戦力の技術者として活躍しています。企業が高専生を高く評価するのは、5年間の実践的な教育で培われた「現場で使える専門知識と技術力」があるからです。

多様な進学の道

より高度な専門知識や研究能力を身につけたい学生のために、進学の道も広く開かれています。

主な進学先は、鹿児島工業高等専門学校に設置されている「専攻科」への進学と、4年制大学の3年次への「編入学」です。専攻科は、本科5年間の教育の上にさらに2年間学ぶ課程で、修了すると大学卒業と同等の「学士(工学)」の学位が授与されます。

大学編入では、九州大学、九州工業大学、熊本大学といった地元の難関国公立大学や、高専からの編入生を積極的に受け入れている豊橋技術科学大学、長岡技術科学大学などへ、多くの卒業生が進学しています。高専で築いた強固な基礎があるため、大学でもスムーズに学びを深めていくことができます。

鹿児島工業高等専門学校の特長・アピールポイント

他の高校にはない、鹿児島工業高等専門学校ならではの強みやユニークな取り組みを、7つのポイントに絞ってご紹介します。

  • 5年一貫の実践的専門教育

    高校3年間と大学4年間を合わせた7年間よりも早く、20歳で大学工学部卒業レベルの高い専門性を持った技術者「準学士」として社会に出ることができます。

  • 未来を見据えた新学科「創造デザイン工学科」

    2026年度から始まるカリキュラム改革は、AIやデータサイエンスといった最先端分野の教育を強化するものです。これにより、変化の激しい未来の産業界で本当に必要とされる人材を育成します。

  • 驚異的な就職実績と企業からの厚い信頼

    有名企業からの求人数は卒業生数をはるかに上回り、就職希望者の就職率はほぼ100%を誇ります。これは、社会が高専卒業生の実践力を高く評価している何よりの証です。

  • 大学編入や専攻科進学など多様なキャリアパス

    卒業時に「就職」か「進学」かを選べるだけでなく、国公立大学の3年次への編入や、学士号が取得できる専攻科への進学など、自分の目標に合わせて柔軟なキャリアを設計できます。

  • 「自主性」を育む自由な校風と大学のような学習環境

    90分授業や服装・頭髪の自由度が高い校則など、学生を大人として扱う環境が、社会で必須となる自己管理能力や主体性を自然と育みます。

  • ロボコンに代表される本格的な「ものづくり」体験

    授業での実験・実習はもちろん、ロボコンなどの全国規模のコンテストに挑戦する中で、企画から設計、製作、プレゼンまで、ものづくりの全工程を実践的に学ぶことができます。

  • 寮生活を通じた人間的成長

    約450名の学生が生活する「志学寮」では、規律ある共同生活を通して、協調性やコミュニケーション能力を養い、一生涯の友人との固い絆を育むことができます。

鹿児島工業高等専門学校の口コミ・評判のまとめ

ここでは、在校生や卒業生から寄せられた様々な声を、良い点と気になる点に分けて公平にご紹介します。学校選びの参考にしてください。

良い点

  • 「自主性のある生徒には最高の環境」

    自分のやりたいことが明確で、自ら進んで勉強できる生徒にとっては、大学のように自由な環境が非常に合っているという声が多数あります。先生に質問しやすく、専門的な内容を深く学べる点を評価する意見が多いです。

  • 「就職に圧倒的に強い安心感」

    卒業後の進路、特に就職に関する心配がほとんどないことが、学生生活を送る上での大きな安心感とモチベーションにつながっているようです。実際に高い就職率を誇る点が、ポジティブな評判の大きな要因となっています。

  • 「実践的な授業が楽しい」

    座学だけでなく、実験や実習が多いカリキュラムが楽しい、やりがいがあるという声も聞かれます。自分の手で何かを作り上げたり、理論を実際に検証したりする機会が豊富な点は、ものづくりが好きな生徒にとって大きな魅力です。

  • 「仲間との絆が深まる」

    5年間という長い時間を同じ目標を持つ仲間と過ごすため、クラスの団結力が非常に強いという意見があります。特に寮生活や高専祭などの行事を通して、一生の友人を得られたという声が多いです。

  • 「施設が綺麗で学習環境が整っている」

    近年、校舎の改修が行われ、施設が綺麗で快適に学べるという評判があります。学習に必要な設備が整っている点も評価されています。

気になる点

  • 「目的意識がないと厳しい」

    「生半可な気持ちで来るべきではない」という厳しい意見が、裏を返せば最も多いアドバイスかもしれません。自由な校風ゆえに、明確な目標がないと勉強しなくなり、堕落してしまう危険性があるという指摘が複数あります。

  • 「勉強はかなり大変」

    授業のレベルが高く、テストの基準も厳しいため、学業の負担は大きいようです。留年する学生もいるため、日々の予習・復習が欠かせないという声があります。

  • 「進路が専門分野に限定されがち」

    15歳で工業系の道に進むことを決めるため、卒業後に文系など全く異なる分野に進路変更するのは難しいという現実があります。入学前に、本当に自分がこの道に進みたいのかをしっかり考える必要があるという意見です。

  • 「先生によって教え方に差がある」

    大学のように専門分野の研究者が教員を務めているため、教え方の上手さには先生によって差がある、という声も一部で見られました。

アクセス・通学

鹿児島工業高等専門学校は鹿児島県霧島市にあります。遠方から通う学生のために学生寮も完備されていますが、自宅から通学する場合の主なアクセス方法をご紹介します。

  • 最寄り駅

    • JR日豊本線「隼人駅」が最寄り駅です。

  • 駅からのアクセス

    • 徒歩の場合:隼人駅から約2km、歩いて25分ほどの距離です。

    • バスの場合:隼人駅からバスに乗車し、「鹿児島高専」バス停で下車すると約6分で到着します。

    • その他、国道10号線沿いの「浜之市本町」バス停からは徒歩約8分、県道沿いの「隼人中前」バス停からは徒歩約5分です。

通学している生徒は、地元の霧島市や姶良市はもちろん、JRを利用して鹿児島市内(鹿児島中央駅から隼人駅まで約40分)や、宮崎県の都城方面(都城駅から隼人駅まで約50分)など、広い範囲から通っています。

鹿児島工業高等専門学校受験生へのワンポイントアドバイス

ここまで読んでくれてありがとうございます。最後に、進学アドバイザーとして、鹿児島工業高等専門学校を目指す君たちにエールを送ります。

鹿児島工業高等専門学校は、「ものづくりが大好き」「数学や理科が得意で、もっと深く探求したい」そして「早くから専門的なスキルを身につけて社会で活躍したい」と強く願う君に、最高の場所です。自由な環境の中で自らを律し、仲間と切磋琢磨しながら成長したいと考える、自立心旺盛な生徒に特におすすめします。

受験勉強で特に力を入れてほしいのは、何と言っても「数学」です。鹿児島高専の入試では数学の配点が高く設定されており、ここでの得点が合否を大きく左右します。全国の高専の過去問を繰り返し解き、応用問題にも対応できる確かな計算力と思考力を養ってください。君の挑戦を心から応援しています!

※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。