神奈川県立多摩高等学校は、真剣な学びと、一生忘れられない「青春」が、最高のレベルで両立する場所です。「学力向上進学重点校」および「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」として、質の高い学習環境が整っている一方で、「行事の多摩」という愛称で呼ばれるほど、生徒が主役の学校行事が盛んなことでも知られています。
勉強も、部活も、行事も、すべてに全力で打ち込みたい。そんなエネルギッシュな高校生活を夢見る中学生にとって、多摩高等学校は最高の舞台となる可能性を秘めています。この記事では、在校生や卒業生のリアルな声も交えながら、その魅力と実態を詳しく解説していきます。
多摩高等学校の基本情報
まずは、多摩高等学校の基本的な情報を確認しましょう。
項目 | 内容 |
正式名称 | 神奈川県立多摩高等学校 |
公立/私立の別 | 公立 |
共学/別学 | 男女共学 |
所在地 | 〒214-0021 神奈川県川崎市多摩区宿河原5丁目14番1号 |
代表電話番号 | 044-911-7107 |
公式サイトURL | https://www.pen-kanagawa.ed.jp/tama-h/ |
多摩高等学校の偏差値・難易度・併願校
多摩高等学校は、神奈川県内でもトップクラスの人気と難易度を誇る高校です。合格を勝ち取るためには、しっかりとした学力と入試戦略が欠かせません。
偏差値と難易度の目安
多摩高等学校の偏差値は、調査機関によって幅がありますが、おおむね68〜69前後とされています。ただし、より実践的な目標として、実際に合格した生徒の平均的な成績を参考にすることが重要です。2024年度の入試では、合格者の全県模試の平均偏差値はでした。
合格の難易度を具体的にイメージするために、必要な内申点と学力検査の得点目安を見てみましょう。
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内申点の目安:124 / 135
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中学2年生の学年末の9教科の成績が対象となります。オール5に近い成績に、4がいくつかあるレベルが目安です。
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学力検査の得点目安:421点 / 500点
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5教科合計で8割以上の得点が求められます。神奈川県の平均点が例年280点前後であることからも、非常に高いレベルであることが分かります。
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特色検査の得点目安:56点 / 100点
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後述する「特色検査」でも、安定して6割近い得点を取る力が必要です。
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また、多摩高等学校の入試が特徴的なのは、第1次選考での評価比率が「内申点:学力検査:特色検査 = 」となっている点です。この比率は、当日の学力検査の結果を最も重視しつつ、多摩高校が求める思考力を測る特色検査も合否に大きく影響することを示しています。
特色検査とは?
特色検査は、国語・数学・理科・社会・英語といった教科の枠を超えた、総合的な思考力を問うテストです。与えられた文章や複数の資料(グラフ、表など)を正確に読み解き、そこから論理的に考えて答えを導き出す力が試されます。過去問対策はもちろん、日頃からニュースや身の回りの事象に対して「なぜだろう?」と考える習慣が、特色検査の攻略に繋がります。
主な併願校
神奈川県の公立高校入試では、他の公立高校を併願することはできません。そのため、多摩高等学校を受験する生徒の多くは、万が一の場合に備えて、同等かそれに近いレベルの私立高校を併願します。主な併願先として、以下のような高校が挙げられます。
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桐蔭学園高等学校(プログレス、アドバンス)
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朋優学院高等学校(国公立AG、特進SG)
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青稜高等学校(普通)
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中央大学附属横浜高等学校(普通)
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法政大学第二高等学校(普通)
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山手学院高等学校(普通)
多摩高等学校に設置されている学科・コース
多摩高等学校の魅力の一つは、生徒一人ひとりの進路希望に柔軟に対応できるカリキュラムにあります。
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普通科
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設置されている学科は「普通科」のみです。1年生では全員が同じ科目を履修し、幅広い学力の基礎を固めます。2年生から一部選択科目が導入され、3年生になるときに大きな特徴が現れます。多摩高等学校では、多くの高校にあるような固定の「文系コース」「理系コース」という分け方をしません。代わりに、生徒が自分の志望大学の受験科目に合わせて、豊富な選択科目の中から必要な授業を自由に組み合わせて自分だけの時間割を作ることができます。このシステムは、早くから自分の将来と向き合い、主体的に学ぶ姿勢を育むことを目的としています。
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多摩高等学校の特色・校風
「行事の多摩」の愛称がすべてを物語るように、多摩高等学校の校風は生徒の自主性とエネルギーに満ち溢れています。
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キーワード:自由闊達、文武両道、生徒主体、自主自律
中学生が知りたいリアルな学校生活
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宿題の量:口コミでは「宿題が多い」という声はあまり聞かれません。その代わり、1コマ70分の密度の濃い授業と、放課後や空き時間に自習室や図書館で主体的に勉強する文化が根付いています。先生から与えられる課題よりも、自分で目標設定して取り組む学習が中心となるようです。
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校則(スマホ、服装など):校則は「自由」「緩やか」という評判が多く、生徒の自主性が尊重されています。スマートフォンの校内での使用も基本的には認められており、行事の際には生徒がペンライト代わりに使って盛り上がる光景も見られます。服装は男子が学生服、女子がブレザーですが、頭髪などに関する規定は比較的緩やかなようです。ただし、「思ったよりは自由ではなかった」という声も一部あり、常識の範囲内でのルールは守る必要があります。
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生徒たちの雰囲気:全体的に「活気がある」「明るい」「良い人ばかり」といったポジティブな声が多数を占めます。勉強も部活も行事も、何事にも全力で取り組む仲間から刺激を受け、「周りにつられて自分も頑張れる」という環境が魅力です。一方で、この自由な校風は「自主性がないと置いていかれる」という側面も持っています。自ら積極的に行動できる生徒が輝く一方で、受け身の姿勢でいると、学校生活を十分に楽しめない可能性も指摘されています。まさに「自分次第」で高校生活の充実度が大きく変わる学校と言えるでしょう。
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アルバイト:原則として禁止されているようです。ほとんどの生徒が部活動や行事、勉強に集中しています。
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制服の評判:伝統的なデザインで、特に良くも悪くも大きな話題になることは少ないようです。校舎が新しくなった際も、制服は変更されませんでした。
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土曜授業:毎週の土曜授業はありません。ただし、希望者向けに大学受験対策などの「土曜講習」が実施されることがあります。これも生徒の自主性を重んじる多摩高校らしい取り組みです。
多摩高等学校の部活動・イベント
「文武両道」を掲げる多摩高校では、部活動と学校行事が学校生活の大きな柱となっています。
部活動
部活動への加入率は約95%と非常に高く、多くの生徒が学業と両立させながら熱心に活動しています。運動部・文化部ともに県内屈指の強豪部や、ユニークな活動を行う部が数多く存在し、学校全体として「かながわ部活ドリーム大賞」を受賞するなど、その活発さが評価されています。
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ダンスドリル部:全国大会の常連で、上位入賞の実績も多数ある、多摩高校を代表する強豪部の一つです。キレのあるパフォーマンスは圧巻です。
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水泳部:競泳での関東大会出場などの実績はもちろん、文化祭で披露される男子部員によるシンクロナイズドスイミング「ウォーターボーイズ」が超有名です。これを見るために多くの来場者が集まるほどの名物となっています。
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ギターアンサンブル部:全国規模のギター合奏コンクールで何度も金賞を受賞している実力派。美しい音色が魅力です。
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放送特別委員会:部活動と委員会を兼ねたユニークな組織。校内放送だけでなく、学校説明会や体育祭・文化祭など、あらゆる行事の運営を支える縁の下の力持ちです。制作した番組が全国コンクールで入賞するなど、その実力は折り紙付きです。
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地学部:3年連続で全国大会に出場し、研究発表で高い評価を得ています。微化石の発掘や天体観測など、本格的な探究活動を行っています。
イベント
「行事の多摩」の真骨頂は、生徒が主体となって企画・運営する大規模なイベントにあります。
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多摩高祭(文化祭・体育祭):9月に行われる学校最大のイベントです。生徒たちは1年がかりで準備を進め、その熱量は圧倒的です。
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文化祭:クラスや部活動による展示、研究発表、模擬店、ステージパフォーマンスなどで校内が一体となって盛り上がります。地域からの来場者も多く、大変な賑わいを見せます。
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体育祭:多摩高校で最もユニークな行事かもしれません。全校生徒が生まれ月によって「春組」「夏組」「秋組」「冬組」の4つの組に分かれます。この組は3年間変わらず、学年を超えた縦の繋がりが生まれます。競技だけでなく、各組がテーマに沿って作り上げる応援合戦のパフォーマンスや巨大なパネルも見どころで、その完成度の高さと団結力には毎年多くの感動が生まれます。
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合唱コンクール:6月に行われるクラス対抗の合唱コンクール。プロの声楽家が審査員を務めるほどレベルが高く、どのクラスも金賞を目指して真剣に取り組みます。美しいハーモニーが体育館に響き渡ります。
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修学旅行:2年生の時に実施されます。近年では探究活動「Meraki」の一環と位置づけられており、事前学習を踏まえて現地での調査活動などを行います。行き先は年度によって異なり、令和7年度は北海道が予定されています。
多摩高等学校の進学実績
「学力向上進学重点校」として、多摩高等学校は難関大学への高い進学実績を誇ります。生徒の希望進路を実現するための手厚いサポート体制も魅力です。
最新の大学進学実績
近年、進学実績は着実に向上しており、特に国公立大学や難関私立大学への合格者数が伸びています。以下は2025年春の主な大学合格実績(既卒生含む延べ人数)です。
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国公立大学:合計96名以上
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主な合格先:横浜国立大学 16名、東京都立大学 14名、東京科学大学 6名、東京外国語大学 6名、東北大学 4名、一橋大学 2名など、全国の難関大学に多数合格しています。
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難関私立大学
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早慶上理:早稲田大学 51名、慶應義塾大学 33名、上智大学 21名、東京理科大学 65名。
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GMARCH:明治大学 134名、法政大学 96名、青山学院大学 83名、立教大学 44名、中央大学 59名。
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その他の進路:卒業生のほとんどが4年制大学へ進学します。過去数年のデータでは、専門学校への進学者は年に1〜2名、就職者は0名となっており、学校全体が大学進学を強く意識した環境であることがわかります。
進学実績を支える取り組み
高い進学実績の背景には、学校独自のきめ細やかなサポート体制があります。
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70分授業:1回の授業時間を70分に設定することで、一つのテーマを深く掘り下げ、議論や演習の時間を十分に確保しています。大学の講義形式に近いこのスタイルは、思考力や集中力を養います。
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講習・補習制度:夏休みや土曜日などを利用して、希望者向けの講習や補習が数多く開講されます。基礎の復習からハイレベルな受験対策まで、自分の目的に合わせて受講できます。
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チューター制度:卒業生の現役大学生がチューターとして後輩の学習相談や進路相談に乗ってくれる制度があり、身近なロールモデルから具体的なアドバイスをもらえます。
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充実した自習環境:図書館や自習室はもちろん、職員室の前に質問用の机が常設されており、いつでも先生に質問しやすい環境が整っています。このアクセスの良さが、生徒たちの学習意欲を支えています。
多摩高等学校の特長・アピールポイント
他の高校にはない、多摩高等学校ならではの強みやユニークな取り組みをまとめました。
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SSH指定校としての探究活動「Meraki」
1年生から全員が取り組む、学校独自の探究学習プログラムです。自分の興味関心に基づいてテーマを設定し、1年間かけて研究を進め、発表します。答えのない問いに挑むこの経験は、思考力や表現力を飛躍的に高めます。
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大学レベルの学びを先取りする「70分授業」
通常の50分授業より20分長い授業時間で、じっくりと腰を据えた学びを実現。実験やグループワークにも十分な時間をかけられ、より深い理解へと繋がります。
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生徒の自主性を最大限に活かす「3年次の自由な科目選択」
3年生では決まったコースがなく、自分の進路希望に合わせて多種多様な選択科目から時間割を自由に設計できます。一人ひとりの「学びたい」という気持ちに完全オーダーメイドで応えるカリキュラムです。
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グローバルな視野を育む「台湾姉妹校との国際交流」
台湾のトップレベルの高校と姉妹校協定を結び、相互訪問やオンラインでの共同研究などを活発に行っています。生きた英語を使い、異文化に触れる貴重な機会が用意されています。
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学校生活の核となる「生徒主体の巨大イベント」
文化祭や体育祭は、企画から運営までほぼ全てを生徒たちの手で行います。巨大なプロジェクトを仲間と協力して成し遂げる経験は、何物にも代えがたい達成感と成長をもたらします。
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「学力向上進学重点校」としての手厚い進学サポート
質の高い授業に加え、卒業生チューターや豊富な講習、質問しやすい環境など、生徒の「もっと学びたい」という意欲を全力でバックアップする体制が整っています。
多摩高等学校の口コミ・評判のまとめ
在校生や卒業生の声から、多摩高等学校のリアルな姿を探ってみましょう。
良い点
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「行事が最高に楽しい!」という声が圧倒的に多いです。特に体育祭の四季対抗は、学年を超えた強い絆が生まれ、一生の思い出になると評判です。
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「自由な校風の中で、気の合う仲間がたくさんできた」という意見も目立ちます。互いに高め合える友人と出会えることが、学校生活の満足度に繋がっているようです。
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「勉強も部活も本気で取り組む人が多くて刺激になる」と、文武両道を体現する環境を評価する声も多数あります。周りの頑張りが自分のモチベーションになる好循環が生まれています。
気になる点
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最も多く指摘されるのが、「自主性がないと厳しい」という点です。自由な分、自分で計画を立てて行動しないと、勉強や行事についていけなくなる可能性があります。学校が手厚く管理してくれるわけではない、という覚悟は必要です。
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「行事が忙しすぎて、勉強との両立が大変」という声もあります。特にイベント前は準備に多くの時間を費やすため、高いレベルで両立させるには優れた時間管理能力が求められます。
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「自由と無秩序は紙一重」と感じる生徒もいるようです。例えば、校舎が汚れているなど、生徒一人ひとりの責任感が問われる場面もある、という指摘が見られます。
アクセス・通学
多摩高等学校は、複数の駅からアクセス可能で、通学しやすい立地にあります。
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最寄り駅からのアクセス
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JR南武線「宿河原駅」より徒歩約8分
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小田急線・JR南武線「登戸駅」より徒歩約18分
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主な通学エリア
学校が位置する川崎市多摩区や高津区からの通学者が多いのはもちろんですが、かつての学区制度が撤廃された現在では、川崎市内の他の区や、隣接する横浜市、さらにはJR南武線や小田急線沿線の東京都稲城市など、非常に広い範囲から生徒が集まっています。多様な地域から生徒が集まることも、学校の活気の一因となっているようです。
多摩高等学校受験生へのワンポイントアドバイス
ここまで読んでくれてありがとうございます。最後に、進学アドバイザーとして、多摩高等学校を目指す君にメッセージを送ります。
多摩高等学校は、「誰かに与えられるのを待つのではなく、自分の手で高校生活を創り上げたい」と強く願う人に、最高の環境を提供してくれます。知的好奇心が旺盛で、仲間と協力して何かを成し遂げるのが好きな君にこそ、挑戦してほしい学校です。
受験勉強では、5教科で高得点を狙うのはもちろんですが、合否を分けるのは「特色検査」です。普段から様々な文章やデータに触れ、論理的に考える練習を重ねてください。大変な挑戦ですが、その先には、君を大きく成長させてくれる、刺激的でかけがえのない3年間が待っています。多摩高等学校で最高の青春を送る君の姿を、心から応援しています!
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。