埼玉県立熊谷高等学校は、120年以上の輝かしい歴史を誇る、県北を代表する伝統的な男子校です。多くの人が進学校と聞くと、厳しい校則や管理体制をイメージするかもしれません。しかし、この学校の根幹にあるのは、そのイメージとは正反対の「自由と自治」という精神です。
この「自由」は、単に校則が緩やかであるという意味ではありません。それは、生徒一人ひとりが自らの行動に責任を持ち、高いレベルで自己管理を行うことを前提とした、成熟した大人への第一歩を促す教育哲学の表れです。熊谷高等学校での3年間は、この自由をどう活かすか、自分自身と向き合い続ける挑戦の連続となるでしょう。
この記事では、そんな熊谷高等学校の偏差値や進学実績といったデータから、在校生や卒業生が語るリアルな学校生活、そして他の高校にはないユニークな伝統行事まで、あらゆる角度からその魅力と実態を詳しく解説していきます。熊高が君にとって最高の学び舎となるか、一緒に見ていきましょう。
熊谷高等学校の基本情報
まずは、学校の基本的な情報を確認しておきましょう。
項目 | 内容 |
正式名称 | 埼玉県立熊谷高等学校 |
公立/私立の別 | 公立 |
共学/男子校/女子校の別 | 男子校 |
所在地 | 〒360-0812 埼玉県熊谷市大原1-9-1 |
代表電話番号 | 048-521-0050 |
公式サイトURL | https://kumagaya-h.spec.ed.jp/ |
熊谷高等学校の偏差値・難易度・併願校
熊谷高等学校の学力レベルを、具体的なデータで見ていきましょう。
偏差値・難易度
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普通科: 66
この偏差値は、埼玉県内の公立高校の中でもトップクラスに位置します。合格するためには、中学校の学習内容を深く理解し、応用力を身につけておく必要があります。
難易度をより具体的にイメージするために、他の指標も見てみましょう。
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同じくらいの偏差値の他の高校:川口北高等学校、浦和西高等学校、不動岡高等学校などが挙げられます。これらの学校と並ぶ、高い学力が求められることが分かります。
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合格に必要な内申点の目安:合格者の内申点は、37〜41の範囲にいることが多いようです。埼玉県の公立高校入試では、内申点が「1年生:2年生:3年生 = 1:1:2」の比率で評価されるため、中学1年生からの継続的な努力が重要になります。ただし、熊谷高等学校は学力検査を重視する傾向があるため、入試当日の得点力も同じくらい大切です。
近年、男子校の人気が落ち着いている影響もあり、他の同レベルの進学校と比較すると、倍率が若干穏やかな年が見られます。これは、高いレベルの教育環境を、過度な競争を避けて目指せるという点で、意欲のある受験生にとっては大きなチャンスと言えるかもしれません。
主な併願校
埼玉県では公立高校は1校しか受験できないため、併願校は私立高校となります。熊谷高等学校の受験生が併願先として選ぶことが多いのは、以下のような大学付属校や進学コースを持つ私立高校です。
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本庄東高等学校(特進コース)
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正智深谷高等学校(特別進学Sコース)
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城北埼玉高等学校
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栄北高等学校(特類Sコース)
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城西大学付属川越高等学校(特進コース)
これらの学校は、万が一の場合の進学先としてだけでなく、入試本番の雰囲気に慣れるための「予行演習」としても多くの受験生が活用しています。
熊谷高等学校に設置されている学科・コース
熊谷高等学校に設置されている学科は「普通科」のみです。しかし、そのカリキュラムには大きな特徴があります。
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普通科(進学型単位制)
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どんなことを学ぶ場所か:1年生では芸術などを除き、ほとんどの科目を全員が共通で学び、文系・理系問わず幅広い知識の土台を築きます。2年生からは、生徒一人ひとりの進路希望に応じて、文系・理系に分かれ、多くの選択科目の中から自分の大学受験に必要な科目を組み合わせて時間割を作成します。
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どんな生徒におすすめか:将来、大学で学びたい分野が明確で、その目標に向かって効率的に学習を進めたい生徒に最適です。学校から与えられた道を歩くのではなく、自ら学びの道を設計していく主体性が求められます。この「進学型単位制」は、まさに学校の校風である「自由と自治」を学習面で具現化したシステムと言えるでしょう。
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熊谷高等学校の特色・校風
熊谷高等学校の最も大きな魅力は、その独特の校風にあります。
キーワード:質実剛健、文武両道、自由と自治
これらの校訓が、学校生活の隅々にまで浸透しています。
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宿題の量:口コミによれば、日常的に課される宿題の量は少ないようです。「課題はほとんど出ない」という声もあり、生徒の自主的な学習への信頼がうかがえます。その分、自分で計画を立てて予習・復習を進める自己管理能力が不可欠です。
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校則:校則は「ないに等しい」と言われるほど緩やかです。制服はなく私服での通学が認められており、髪を染めたりピアスを開けたりすることも禁止されていません。スマートフォンの使用についても厳しい制限はないようです。この環境は、生徒を子ども扱いせず、一人の人間として信頼する「ハイ・トラスト(高い信頼)」な文化の表れです。
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生徒たちの雰囲気:個性的な生徒が多く、互いの違いを認め合う懐の深い雰囲気があります。真面目に勉強に打ち込む生徒、部活動に青春を燃やす生徒、趣味に没頭する生徒など様々ですが、いじめが少ないという評判が多く聞かれます。男子校ならではの気兼ねなさから、何事にも全力で取り組める環境です。
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アルバイト:申請をすれば可能です。
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制服の評判:制服はありません。高校生らしい品位を保ちつつ、各自が自由な服装で学校生活を送っています。
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土曜授業:年間16〜17回、おおむね隔週で土曜授業が実施されています。この授業は一般にも公開されており、学校の普段の様子を知る良い機会となっています。
熊谷高等学校の部活動・イベント
「文武両道」を掲げる熊高では、部活動や学校行事も非常に盛んです。
部活動
運動部19、文化部11、さらに多数の愛好会があり、多くの生徒が熱心に活動しています。男子校という環境から、異性の目を気にすることなく、自分の限界に挑戦できるのが大きな特徴です。
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特に実績豊富な部活動
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陸上競技部、ソフトテニス部、水泳部、スキー部:これらの部は全国大会(インターハイ)への出場経験が豊富で、高いレベルで活動しています。
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ラグビー部:伝統的に強豪として知られ、熊高のスポーツを象徴する部活動の一つです。
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應援團(応援団):単なる応援活動にとどまらず、熊高の伝統と精神を体現する存在として、全校生徒から一目置かれています。その力強いパフォーマンスは、学校行事や大会に欠かせない名物です。
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音楽部、将棋部:文化部も活発で、音楽部は関東大会での入賞実績があり、将棋部は全国大会で上位に入るなど、輝かしい成績を収めています。
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イベント
熊高の学校行事は、生徒たちの手で作り上げられ、そのスケールと熱気は他校の追随を許しません。
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熊高祭(文化祭・体育祭):毎年9月に行われる学校最大のイベントです。文化祭では、クラスや有志のサークルによる独創的な出し物が並びます。特に、女装した生徒がパフォーマンスを競う「ミス熊高コンテスト」は、ユーモアと熱気に満ちた名物企画として知られています。体育祭も、騎馬戦などで見せる男子校ならではの迫力と一体感は圧巻です。
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40キロハイク:5月に行われる、熊高を象徴する最も過酷で、最も思い出深い伝統行事です。全校生徒が熊谷の荒川河川敷から長瀞までの約40kmの道のりを一日かけて歩き通します(走る生徒もいます)。これは単なる遠足ではなく、「自分との戦い」と位置づけられています。苦楽を共にした仲間との絆は、この行事を通して一生ものの固い結束へと変わります。
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その他のイベント:1年生の臨海学校、冬のクロスカントリー大会、学年ごとに行われる球技大会(ラグビー、サッカー、バスケットボールなど)も、クラスの団結力を高める大切な行事として、非常に盛り上がります。これらの行事は、単なる楽しみのためだけでなく、
質実剛健
の精神を体で学ぶ、人間形成の重要な機会となっています。
熊谷高等学校の進学実績
自由な校風の中、生徒たちは高い進学実績を上げています。手厚いサポート体制がその背景にあります。
最新の大学進学実績(2025年入試)
以下は、主な大学の合格者数(現役・既卒の合計)です。
大学群 | 合格者数 | 主な内訳 |
国公立大学 | 80名 | 京都大学1名、一橋大学1名、東北大学5名、北海道大学3名、埼玉大学8名など |
早慶上理 | 54名 | 早稲田大学16名、慶應義塾大学7名、上智大学11名、東京理科大学20名 |
GMARCH | 123名 | 明治大学29名、立教大学27名、中央大学27名、法政大学34名、青山学院大学6名など |
国公私立大学医学部医学科 | 6名 | 国立2名、私立4名 |
国公立大学に毎年80名以上、難関私立大学にも多数の合格者を輩出しており、特に医学部への進学者もいる点は、理系教育の質の高さを示しています。
進学実績を支える取り組み
生徒の「自治」を尊重しつつも、学習面でのサポートは非常に手厚いのが熊谷高等学校の強みです。
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補習・講習:夏休みなどの長期休業中には、大学受験対策講座が数十講座も開講され、生徒は自分のニーズに合わせて受講できます。
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充実した自習環境:個別学習スペースが完備された図書館は、平日夜8時30分まで開放されています。これは県内でもトップクラスの学習環境であり、生徒の「学びたい」という意欲に全力で応える学校の姿勢の表れです。
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質問しやすい体制:授業後や放課後には、各教科の研究室前で先生に気軽に質問できる環境が整っています。
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熊高手帳:生徒全員に配布される手帳で、学習計画や学校生活の記録をつけることを通じて、自己管理能力を育成します。
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キャリア教育:社会で活躍する卒業生を招いた講演会や、大学生のOBと交流する機会が豊富にあり、将来の進路を具体的に考えるきっかけを提供しています。
熊谷高等学校の特長・アピールポイント
他の高校にはない、熊谷高等学校ならではの強みをまとめました。
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究極の「自由と自治」の校風
制服なし、厳しい校則なしという環境が、他に類を見ないレベルでの自主性と自己管理能力を育みます。
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進学型単位制と少人数授業
生徒一人ひとりの志望大学に合わせたオーダーメイドの学習を可能にする、柔軟なカリキュラムです。
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独自の探究学習「熊高ゼミ」
歴史や科学、さらには柔道の「型」の研究まで、生徒が自らの興味をとことん追求し、発表するユニークな探究活動。思考力と表現力を鍛えます。
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夜8時半まで使える図書館
集中できる個別ブースを備えた図書館は、本気で勉強したい生徒にとって最高の環境です。
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ニュージーランド兄弟校との国際交流
サウスランド・ボーイズ・ハイスクールとの長年にわたる交流プログラムは、国際的な視野を広げる貴重な機会です。
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心と体を鍛える伝統行事
名物の「40キロハイク」をはじめとする過酷ながらも達成感のある行事が、強い精神力と一生涯の友情を育みます。
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強力な進学サポート体制
自由な校風を支える背景には、豊富な補習や手厚い個別指導など、生徒の努力を全力でバックアップする万全の体制があります。
熊谷高等学校の口コミ・評判のまとめ
在校生や卒業生からの声を、良い点と気になる点に分けて公平にご紹介します。
良い点
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「何よりも自由なのが最高。校則で縛られず、大学生のように扱ってもらえるので、自分で考えて行動する力がついた」という声が圧倒的に多いです。
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「40キロハイクのようなキツい行事を一緒に乗り越えた仲間とは、卒業してからも一生の付き合いになる」と、強い絆を挙げる声も多数あります。
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「どんな個性も受け入れてくれる雰囲気がある。いじめも聞いたことがなく、安心して自分らしくいられた」という意見も特徴的です。
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「先生方は、こちらから求めればどこまでも熱心に付き合ってくれる。質問に行けば、時間を忘れて教えてくれた」と、教員のサポートを評価する声もあります。
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「熊高祭などのイベントは本当に楽しく、クラスの一体感がすごい。男子校だからこそ、全力でバカなこともできる」といった行事に関するポジティブな口コミも目立ちます。
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「卒業してから分かる『熊高愛』は本物。母校に誇りを持てる」と、強い愛校心を語る卒業生が多いです。
気になる点
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「自己管理ができない人には向かない。自由な雰囲気に流されてしまうと、成績は一気に落ちる」という厳しい指摘は、多くの口コミに共通しています。
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「校舎や施設が全体的に古い」という意見があります。ただし、図書館など一部施設は改修が進められているようです。
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「できる生徒とそうでない生徒の学力差が大きいと感じることがある」という声も見られます。
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「駅から徒歩だと少し遠い。特に夏の暑い日は大変」という、通学に関する意見もあります。
これらの口コミから浮かび上がるのは、熊谷高等学校が「生徒を試す学校」であるということです。自らを律し、主体的に行動できる生徒にとっては最高の環境ですが、受け身の姿勢の生徒には厳しい環境となり得ます。学校の環境が、生徒の資質を増幅させる「フィルター」のような役割を果たしていると言えるでしょう。
アクセス・通学
熊谷高等学校への主な通学方法です。
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JR高崎線「熊谷駅」から
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徒歩:約25分
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バス:北口6番乗り場から朝日バスで約9分、「気象台入口」下車、徒歩約5分
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秩父鉄道「石原駅」から
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徒歩:約15分
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通学エリアについては、埼玉県内全域から通学可能ですが、地理的な関係から熊谷市、深谷市、本庄市、行田市といった県北部の生徒が多い傾向にあります。
熊谷高等学校受験生へのワンポイントアドバイス
ここまで読んでくれて、熊谷高等学校に強い興味を持ってくれた君に、最後のアドバイスを送ります。
熊谷高等学校は、「自ら走り出せる人」にこそ、最高の場所です。誰かに指示されるのを待つのではなく、自分で目標を見つけ、計画を立て、行動に移せる人。そんな君にとって、この学校の「自由」は、君の可能性を無限に広げる最強の武器になるはずです。受験勉強では、5教科の基礎を徹底的に固め、穴のない学力を目指してください。熊高はバランスの取れた人材を求めています。そして、日々の授業を大切にし、中学校の成績(内申点)もしっかり確保することを忘れないでください。
熊谷高等学校で待っているのは、楽なだけの3年間ではありません。高いレベルの勉強、そして40キロハイクのような厳しい挑戦が君を待っています。しかし、それらを乗り越えた時、君はきっと、心身ともにたくましく、自立した一人の人間に成長しているはずです。自由と責任の両方をその手に掴む覚悟があるなら、忘れられない3年間が君を待っています。君の挑戦を心から応援しています!
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。