島根県立松江北高等学校は、山陰地方でも屈指の歴史と伝統を誇る進学校です。その起源は明治9年(1876年)にまで遡り、150年近い歴史の中で、二人の総理大臣をはじめ、学術、文化、経済など各界で活躍する多くの優れた人材を社会に送り出してきました。県内トップクラスの学力レベルを誇り、高い目標を持つ生徒たちが集まる場所として、その名は広く知られています。
この学校が掲げるのは「質実剛健」と「文武両道」という二つの大きな柱です。これは、単に学問を修めるだけでなく、部活動や学校行事を通じて心身を鍛え、人間として大きく成長することを目指すという強い意志の表れです。松江北高等学校での3年間は、難関大学への進学という目標に向かって仲間と切磋琢磨する、挑戦に満ちた日々となるでしょう。
高校選びは、皆さんの将来を左右する大きな決断です。この記事では、進学アドバイザーとして、松江北高等学校がどのような学校なのか、偏差値や学習環境、学校生活のリアルな姿まで、中学生の皆さんや保護者の方々が本当に知りたい情報を分かりやすく、そして詳しく解説していきます。この情報が、皆さんにとって最適な進路選択の一助となることを心から願っています。
松江北高等学校の基本情報
まずは、学校の基本的な情報を確認しておきましょう。
項目 | 内容 |
正式名称 | 島根県立松江北高等学校 |
公立/私立の別 | 公立 |
共学/男子校/女子校の別 | 男女共学 |
所在地 | 〒690-0872 島根県松江市奥谷町164 |
代表電話番号 | 0852-21-4888 |
公式サイトURL | http://www.matsuekita.ed.jp |
松江北高等学校の偏差値・難易度・併願校
松江北高等学校は、学科によって偏差値や難易度が大きく異なります。自分の学力や目標と照らし合わせて、どちらの学科を目指すか考えることが重要です。
学科ごとの偏差値
最新の偏差値の目安は以下の通りです。
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理数科: 67~69
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普通科: 58~59
理数科は島根県内の高校でトップに位置する最難関コースです。一方、普通科も県内上位の高いレベルにあり、簡単に入れるわけではありません。この偏差値の差は、学校内での学習内容や進度、目指す進学先にも影響を与えるため、松江北高等学校を志望する上で最も重要なポイントの一つと言えるでしょう。
難易度のイメージ
偏差値だけでは、具体的な難易度は分かりにくいかもしれません。そこで、合格に必要な学力の目安を他の角度から見てみましょう。
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同じくらいの偏差値の他の高校
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理数科(偏差値67~69)は、県内で並ぶ高校はほとんどなく、まさにトップ・オブ・トップと言えます。
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普通科(偏差値58~59)は、出雲高校(普通科)や浜田高校(理数科)、松江南高校(探究科学科)などが近いレベルの目標となります。
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合格に必要な内申点の目安
島根県の公立高校入試では、中学3年間の成績が評価対象となります。特に松江北高等学校のような人気校では、高い内申点が求められます。具体的な点数は公表されていませんが、合格者の話を聞くと、9教科の5段階評定で「オール4」以上、つまり評定平均4.0以上を一つの目標に、得意教科では「5」を確実に取っておくことが望ましいでしょう。特に理数科を目指す場合は、より高いレベルが求められる傾向にあります。
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合格に必要な学力検査(入試当日点)の目安
塾などが公表しているデータによると、250点満点の実力テストで、理数科は215点以上、普通科は170点以上が一つの目標ラインとされています。また、別のデータでは、合格者の平均点は164点という情報もあります。いずれにせよ、当日の試験で高得点を取ることが合格の鍵となります。
主な併願校
島根県では公立高校を複数併願することはできないため、松江北高等学校を第一志望とする受験生の多くは、万が一の場合に備えて私立高校を併願します。主な併願先としては、以下の高校が挙げられます。
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開星高等学校
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立正大学淞南高等学校
開星高校は特進コースなどを設置し、大学進学に力を入れています。立正大学淞南高校は、全国レベルの部活動が有名ですが、進学コースも設置されています。自分の学力や、高校卒業後の進路、万が一私立に通うことになった場合の学校生活などを総合的に考えて、併願校を決定することが大切です。
松江北高等学校に設置されている学科・コース
松江北高等学校には、それぞれ特色の異なる2つの学科が設置されています。自分の興味や将来の夢に合わせて、最適な学科を選びましょう。
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理数科
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どんなことを学ぶ場所か:数学や理科の専門科目を深く掘り下げ、課題研究(個人やグループでの研究活動)などを通じて、科学的な思考力や探求心を育む学科です。
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どんな生徒におすすめか:将来、医学部や難関大学の理工学部など、理数系の道に進みたいと考えている人、知的好奇心が旺盛で、難しい問題に挑戦するのが好きな人におすすめです。
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普通科
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どんなことを学ぶ場所か:国公立大学や難関私立大学への進学を目指し、5教科を中心に幅広く、かつ高いレベルの学力を身につける学科です。文系・理系の選択があり、幅広い進路に対応できます。
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どんな生徒におすすめか:まだ将来の夢がはっきりと決まっていないけれど、高いレベルの環境で勉強し、大学進学の選択肢を広げたい人におすすめです。口コミによると、普通科内にも成績上位者を集めた「ハイクラス」が存在するとの声もあり、高い目標を持つ生徒が集まっています。
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松江北高等学校の特色・校風
学校選びでは、偏差値や進学実績だけでなく、学校全体の雰囲気、つまり「校風」が自分に合っているかどうかも非常に重要です。
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キーワードで表す校風:質実剛健、文武両道、自主自律、真面目、落ち着いた雰囲気
中学生が知りたいリアルな学校生活
口コミなどを基に、学校生活の具体的な様子をまとめました。
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宿題の量は多いか少ないか?
「とにかく勉強する学校」と評されるように、課題や予習の量はかなり多いようです。特に難しい教科は予習が必須と考える生徒が多く、日々の学習習慣が非常に重要になります。授業は火・水・木が7限授業、月・金が6限授業となっており、学習時間は豊富に確保されています。
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校則は厳しいか緩やかか?
校則は、県内の他の高校と比較して厳しいという意見が多いようです。
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スマホ:電源を切った状態での持ち込みは許可されていますが、校内での使用は禁止です。授業中に着信音が鳴るなどした場合は没収されるというルールがあります。
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服装:頭髪の染色やピアスなどのアクセサリーは禁止。靴下も白や黒など、色が指定されています。
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アルバイト:原則として禁止されています。
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生徒たちの雰囲気は?
「志のある生徒が多い」という声に代表されるように、真面目で落ち着いた雰囲気の生徒が多いようです。いじめなどの話はほとんど聞かれず、お互いの個性を尊重し、自分のペースで学校生活を送れる環境だと評価されています。一方で、理数科や普通科のハイクラスと、その他の生徒との間で、学習意欲や成績に差があるという指摘もあります。
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制服の評判はどうか?
男子は伝統的な学ラン、女子はブレザーです。制服については、正直に言うと「ダサい」という意見が一部の生徒から聞かれます。ファッション性よりも、伝統や質実さを重んじたデザインと言えるかもしれません。
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土曜授業はあるか?
毎週ではありませんが、「土曜補習」や「学校開放の日」として、土曜日に授業や学習の機会が設けられることがあります。
松江北高等学校の部活動・イベント
「文武両道」を掲げる松江北高等学校では、部活動や学校行事も非常に盛んです。
部活動
部活動加入率は90%を超えており、ほとんどの生徒が勉強と部活動を両立させています。体育系17、文化系20と、非常に多くの部があり、自分に合った活動を見つけやすい環境です。
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特に有名な部活動
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百人一首かるた部:県大会で常に上位の成績を収める強豪として知られています。競技かるたは、暗記力と瞬発力が求められる奥深い世界で、熱心に活動しています。
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陸上競技部:県の高校総体で学校別総合優勝を何度も成し遂げるなど、輝かしい実績を誇ります。口コミでも「陸上は特に強い」という声が見られます。
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音楽四部(吹奏楽、合唱、筝曲、弦楽):この4つの音楽系部活動が合同で毎年定期演奏会を開催しており、学校の文化的な顔となっています。卒業生には世界的に有名なオペラ歌手もいます。
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放送部、弦楽部、美術部、将棋部など:これらの文化部も、全国高等学校総合文化祭に出場するなど、全国レベルで活躍しています。
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イベント
生徒たちが主体となって作り上げるイベントは、高校生活の最高の思い出になります。
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紅陵祭(こうりょうさい)
松江北高校で最も盛り上がる学校行事です。9月に行われるこのイベントは、文化祭、体育祭、合唱コンクールを3日間にわたってまとめて行う、非常に大規模なものです。準備期間も長く、クラス一丸となって取り組む過程で、友達との絆が深まると評判です。学年ごとに内容が異なり、ルーム(クラス)別の出し物や、社会問題をテーマにした劇など、非常に見応えのある企画が満載です。
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研修旅行
以前は「修学旅行がない」ことが残念な点として挙げられていましたが、2022年度から内容を一新し、学科別の「研修旅行」が導入されました。これは単なる観光旅行ではなく、将来の進路を考えるための重要な学習機会と位置づけられています。
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理数科:2泊3日で関東方面へ。東京大学や筑波研究学園都市などを訪問し、最先端の科学技術に触れる研修を行います。
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普通科:近畿方面へ研修旅行に行きます。
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球技大会
年に2回、校内で開催され、クラス対抗で熱戦が繰り広げられます。勉強の合間のリフレッシュとして、生徒たちに人気の行事です。
松江北高等学校の進学実績
島根県を代表する進学校である松江北高等学校は、毎年、全国の難関大学へ多くの合格者を輩出しています。
最新の大学進学実績(2024年春)
以下は、令和6年度(2024年)の主な大学の合格者数です(浪人生含む)。
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国公立大学
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旧帝国大学など:京都大学 3名、大阪大学 3名、九州大学 6名など、毎年安定して最難関大学への合格者を出しています。
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地元の国公立大学:島根大学 31名、鳥取大学 12名と、地元志向の生徒の進学先としても中心的な役割を担っています。
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その他主な国公立大学:広島大学 6名、岡山大学 8名、神戸大学 1名など、中国・四国地方の主要大学にも多数合格しています。
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医学部医学科:国公立・私立合わせて19名(現役9名)が合格しており、医療界への道も開かれています。
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難関私立大学
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早慶上理:早稲田大学 6名、東京理科大学 3名など、首都圏の最難関私立大学にも実績があります。
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関関同立:関西学院大学 22名、同志社大学 14名、立命館大学 12名、関西大学 5名と、特に関西の難関私立大学への進学者が多いのが特徴です。
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その他の進路
口コミにもあるように、就職を選ぶ生徒はほぼおらず、ほとんどの生徒が大学進学を目指します。
進学実績を支える取り組み
高い進学実績は、生徒自身の努力はもちろん、学校の徹底したサポート体制によって支えられています。
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補習や講習:平日の7限授業や土曜補習に加え、長期休暇中にも進学講座が開かれます。先生方は非常に熱心で、放課後遅くまで質問対応をしてくれると評判です。廊下に質問用の机やホワイトボードが常設されている光景は、松江北高校ならではと言えるでしょう。
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補習科(ほしゅうか):松江北高校の最もユニークな制度の一つが、この「補習科」です。これは、高校卒業後、もう1年大学受験に挑戦する卒業生のために設置された、学校内予備校のようなコースです。慣れ親しんだ環境と先生方の下で、第一志望合格を目指せるこの制度は、生徒と保護者にとって大きな安心材料となっています。
松江北高等学校の特長・アピールポイント
他の高校にはない、松江北高等学校ならではの強みや魅力をまとめました。
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150年近い歴史と輝かしい卒業生の伝統
1876年の創立以来、若槻禮次郎氏、竹下登氏という二人の内閣総理大臣や、『長崎の鐘』で知られる永井隆博士など、数多くの著名な卒業生を輩出しています。この歴史と伝統が、生徒たちの誇りと高い志を育んでいます。
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県内トップレベルを誇る「理数科」の存在
専門的なカリキュラム、大学の研究室のような「課題研究」、そして東京大学などを訪れる「関東研修旅行」など、理数科には将来の科学者や技術者、医師を育てるための特別な環境が用意されています。
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卒業後も母校で学べる手厚いサポート「補習科」
大学受験に再挑戦する卒業生のために、学校が予備校の役割を果たす「補習科」というユニークな制度があります。これは、生徒の進路実現に対する学校の強い責任感の表れです。
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徹底的に勉強に集中できる学習環境
生徒の学習意欲に応えるため、廊下にまで質問用の机とホワイトボードが設置されています。先生方も夜遅くまで質問に対応してくれるなど、学びたい生徒を全力でバックアップする体制が整っています。
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学校全体が一つになる大規模イベント「紅陵祭」
文化祭・体育祭・合唱コンクールを3日間に凝縮した「紅陵祭」は、学校生活最大のイベントです。クラスの団結力を高め、一生の思い出を作る貴重な機会となっています。
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個性を尊重し、高い目標を共に目指す仲間たち
「自分のペースを大切にできる」「いじめは一切なかった」という口コミが示すように、生徒たちは互いを尊重し合う雰囲気があります。同じ高い目標を持つ仲間と切磋琢磨できる環境は、何物にも代えがたい財産です。
松江北高等学校の口コミ・評判のまとめ
在校生や卒業生の声を公平にまとめることで、学校のリアルな姿が見えてきます。
良い点
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「勉強したい人には最高の環境」
多くの生徒が、学習環境の良さを一番の魅力に挙げています。熱心な先生、充実した図書館、質問しやすい雰囲気など、本気で学ぼうとする生徒にとっては理想的な場所だという声が多数あります。
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「目標の高い仲間と切磋琢磨できる」
周りの生徒の学習意欲が高いため、自然と自分も頑張れるという意見が多く見られます。理数科や普通科のハイクラスでは特にその傾向が強いようです。
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「先生のサポートが手厚い」
分からないことがあれば、放課後遅くまで親身に教えてくれる先生が多いと評判です。生徒と先生の距離が近く、信頼関係が築きやすいという声もあります。
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「行事が楽しく、クラスの団結力が強い」
特に「紅陵祭」は準備期間から本番まで非常に盛り上がり、クラスの絆を深める絶好の機会だと評価されています。
気になる点
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「課題が多く、とにかく忙しい」
日々の課題や予習・復習に追われ、自由な時間が少ないと感じる生徒もいます。「青春したいなら来ないほうがいいかも?」という少し厳しい意見も。
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「校則が厳しく、自由が少ない」
スマートフォンの使用禁止や服装規定など、校則を窮屈に感じるという声は少なくありません。
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「施設の古さが目立つ」
歴史と伝統がある一方、校舎やトイレなどの設備が古いという指摘があります。
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「先生の質にばらつきがある/成績で対応が変わる?」
熱心な先生が多い一方で、一部にはそうでない先生もいるという意見や、成績が良くない生徒には冷たく感じるという声も一部で見られます。
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「修学旅行がない」
現在は「研修旅行」に形を変えましたが、他の高校のような一般的な修学旅行がないことを残念に思う声も根強くあります。
アクセス・通学
松江北高等学校は松江城の北側に位置する、小高い丘の上にあります。
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最寄り駅からのアクセス
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JR山陰本線「松江駅」から:バスで約15分、または徒歩で約40分。
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一畑電車 北松江線「松江しんじ湖温泉駅」から:徒歩で約20分。
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バスでのアクセス
松江駅からバスを利用する場合、複数の路線が利用可能です。最寄りのバス停は「塩見縄手」や「北堀町」などで、バス停から学校までは徒歩5〜6分ほどです。
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通学エリアと「北高坂」
通学している生徒は松江市内が中心ですが、市外からJRなどを利用して通う生徒もいます。多くの生徒が自転車で通学していますが、学校が丘の上にあるため、最後に「北高坂(きたこうざか)」と呼ばれる急な坂道を上らなければなりません。この坂は「2ステージの坂道」と表現されるほどで、電動アシスト自転車やマウンテンバイクを利用する生徒も多いようです。この坂を毎日上り下りすることも、北高生活の一部と言えるでしょう。
松江北高等学校受験生へのワンポイントアドバイス
ここまで松江北高等学校について詳しく見てきましたが、最後に皆さんへの応援メッセージを送ります。
松江北高等学校は、「高い目標に向かって、本気で勉強に打ち込みたい」と考えている人に特におすすめの学校です。周りも同じ志を持つ仲間ばかりなので、時にはライバルとして競い合い、時には友人として支え合いながら、充実した3年間を送ることができるでしょう。厳しい環境に身を置くことで、自分を大きく成長させたいと願う君に、松江北高等学校は最高の舞台を用意してくれます。
受験勉強では、まず中学校の基礎を完璧に固めることが何よりも大切です。特に松江北高等学校の入試では、ケアレスミスが命取りになります。応用問題に挑戦する前に、教科書の隅々まで理解し、基本的な問題を絶対に間違えない実力を養ってください。そして、中学1年生の時から定期テストに真剣に取り組み、高い内申点を確保することも忘れないでください。皆さんの挑戦を心から応援しています!
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。