早稲田大学高等学院は、単に高校卒業の資格を得るための場所ではありません。日本を代表する私立大学、早稲田大学への扉を開く、特別な3年間を過ごすための学び舎です。多くの高校生が大学受験という大きな目標に向かって膨大な時間を費やす中で、ここではその時間を学問の探究や課外活動など、自らが本当に打ち込みたいことへと注ぐことができます。

この学校の最大の魅力は、その「自由」な校風にあります。大学受験から解放されているからこそ生まれるこの自由は、生徒一人ひとりの自主性と探究心を育む土壌となります。校則は最小限で、制服もなく、まるで大学のキャンパスのような雰囲気の中で、生徒たちは大人として扱われます。この独特の環境が、早稲田大学高等学院を他のどの高校とも違う、唯一無二の存在にしています。

もし、大学受験という枠組みから離れて、自分の興味や才能を存分に伸ばす3年間を過ごせるとしたら、あなたは何をしますか?この問いこそが、この学校を理解する鍵となります。これから、早稲田大学高等学院の具体的な姿を、偏差値から学校生活の隅々まで、詳しくご紹介します。この情報が、あなたにとって最適な進路選択の一助となることを心から願っています。

早稲田大学高等学院の基本情報

まずは、学校の基本的な情報を確認しましょう。

項目 内容
正式名称 早稲田大学高等学院
公立/私立の別 私立
共学/男子校/女子校の別 男子校
所在地 〒177-0044 東京都練馬区上石神井3-31-1
代表電話番号 03-5991-4156
公式サイト https://www.waseda.jp/school/shs/

早稲田大学高等学院の偏差値・難易度・併願校

早稲田大学高等学院への入学は、全国的に見ても最難関レベルです。その難易度を、具体的な数字や併願校の傾向から見ていきましょう。

偏差値

各種の塾や模試で算出される偏差値は、一般的に「75」とされています。これは東京都内でもトップクラスの数値であり、合格には極めて高い学力が求められます。

より具体的な目安として、難関校受験生が多く受ける駿台模試では、合格者の平均偏差値が57前後と言われています。偏差値60を超えると合格の可能性がかなり高まり、偏差値58あたりが合否を分ける一つのラインと考えられています。

難易度と内申点の目安

難易度の高さは、入試の倍率にも表れています。一般入試の実質倍率は約2.7倍から2.8倍と、非常に厳しい競争です。

また、早稲田大学高等学院には「自己推薦入試」という制度もありますが、こちらも簡単ではありません。出願資格の一つに、「中学校3年次2学期の9教科合計の評定(5段階評価)が40以上」という基準があります。これは、主要5教科だけでなく、技能4教科においてもほぼ満点に近い成績が求められることを意味しており、オールラウンドな優秀さが必要不可欠です。

主な併願校

最難関校であるため、受験生は他のトップレベルの高校を併願する傾向があります。

  • 最大のライバル校として挙げられるのが、同じく最難関の男子校である慶應義塾志木高等学校です。例年、早稲田大学高等学院の一般入試日と慶應義塾志木高校の2次試験日が重なることが多く、両方に合格した受験生がどちらかを選択するというケースが見られます。

  • 同じ早稲田大学の附属・系属校である早稲田大学本庄高等学院や早稲田実業学校高等部も、もちろん併願の選択肢となります。

  • 地域のトップ私立高校である、市川高等学校(千葉)、渋谷教育学園幕張高等学校(千葉)、開成高等学校(東京)なども有力な併願先です。

  • 国立大学の附属高校である、東京学芸大学附属高等学校や筑波大学附属高等学校も併願する受験生が多いです。

早稲田大学高等学院に設置されている学科・コース

早稲田大学高等学院の教育システムは、大学での専門的な学びへの準備期間として位置づけられています。そのため、学科やコースの構成も非常にシンプルです。

  • 普通科

    • 早稲田大学高等学院に設置されているのは「普通科」のみです。これは、高校段階では特定の分野に偏らず、幅広い教養と基礎学力を身につけることを重視しているためです。2年次から文系・理系のコースに分かれますが、これも比較的ゆるやかなもので、生徒の興味や関心の変化に柔軟に対応できる体制が整っています。

    • 全生徒が3年間、第二外国語(ドイツ語、フランス語、ロシア語、中国語の中から一つを選択)を必修で学ぶのが大きな特徴です。これは、将来、国際的な舞台で活躍するための基礎を築くことを目的としており、この学校の教育がいかに大学、そしてその先を見据えているかを示しています。知的好奇心が旺盛で、まだ自分の専門分野を決めかねている生徒にとって、じっくりと自分自身と向き合い、学問の面白さを発見できる環境と言えるでしょう。

早稲田大学高等学院の特色・校風

この学校の雰囲気を一言で表すなら、「自由闊達」そして「自主自律」です。生徒一人ひとりが大人として尊重され、自らの行動に責任を持つことが求められます。

  • 校則・制服

    • 校則は「ないに等しい」と言われるほど緩やかです。「短パンと下駄での登校が禁止」という話が有名なくらいで、服装は自由な私服です。髪型なども含め、個性が尊重されています。

  • スマホ・アルバイト

    • スマートフォンの校内での使用も特に厳しく制限されておらず、生徒の自主性に任されています。また、高校では珍しくアルバイトも許可されており、社会経験を積むことも可能です。

  • 宿題・授業

    • 大学受験のための詰め込み教育とは一線を画すため、宿題の量は他の進学校に比べて少ないと感じる生徒が多いようです。ただし、授業のレベルは高く、特に定期テスト前には真剣に勉強する雰囲気に切り替わります。土曜日も4時限の授業があり、週6日制となっています。

  • 生徒たちの雰囲気

    • 生徒は中学からの内部進学者、一般入試や自己推薦での入学者、帰国生など多様な背景を持っており、非常に個性的です。活発で、男子校特有のノリを楽しむ雰囲気が強い一方で、自分の興味のある分野をとことん追求する知的な探究心を持つ生徒も多く、互いに刺激し合える環境です。

  • 「自由」がもたらすもの

    • この自由な校風は、早稲田大学高等学院の最大の魅力であると同時に、注意すべき点でもあります。自ら目標を設定し、計画的に行動できる生徒にとっては、自分の可能性を無限に広げられる最高の環境です。しかし、自己管理が苦手な場合、自由な時間に流されてしまい、学業がおろそかになるリスクも指摘されています。実際に、進級の基準を満たせず留年する生徒も少数ながら毎年いるため、「自由」には「責任」が伴うことを理解しておく必要があります。

早稲田大学高等学院の部活動・イベント

自由な校風は、課外活動にも色濃く反映されています。生徒たちは勉強だけでなく、部活動や学校行事にも全力で取り組み、充実した3年間を過ごします。

部活動

運動部・文化部ともに非常に数が多く、活動も活発です。多くの生徒が部活動に所属し、文武両道を実践しています。

  • 運動部

    • 特に高い実績を誇る部として、春季都大会で優勝し関東大会に出場した軟式野球部や、関東大会でベスト8に入った水泳部(水球部門)が挙げられます。その他にも、ラグビー部、米式蹴球部(アメリカンフットボール部)、ボート部など、大学でも活躍する伝統ある部が数多く存在します。

  • 文化部

    • 文化部も非常に多彩です。第二外国語の授業と連動した語学部(英語班、仏語班、ロシア語同好会など)や、物理・化学・生物・地学の各班に分かれて本格的な研究を行う理科部は、学外のコンテストで賞を受賞するなど目覚ましい活躍を見せています。

    • 他にも、鉄道研究部、将棋部といった定番のものから、ジャグリング部、さらには生徒が自主的に立ち上げる「プロジェクト活動」として「起業・投資プロジェクト」といったユニークな活動まであり、どんな興味にも応える懐の深さがあります。

イベント

生徒が主体となって運営する学校行事は、学院生活のハイライトです。

  • 学院祭

    • 10月に開催される文化祭「学院祭」は、この学校を象徴する最大のイベントです。2日間で2万人以上が来場することもあると言われ、その規模と熱気は高校の文化祭の枠を完全に超えています。企画から運営まで、そのほとんどを生徒たちの手で行い、巨大なアトラクションや本格的なステージパフォーマンス、学術的な研究発表などがキャンパスの至る所で繰り広げられます。その様子はまさに大学の学園祭さながらで、生徒たちの自主性と創造性が爆発する2日間です。

  • 体育祭

    • 体育祭も生徒たちの熱気が感じられる一大イベントです。クラス対抗リレーはもちろん、クラス全員で取り組む「30人31脚」といったユニークな種目もあり、クラスの団結力を高める貴重な機会となっています。

  • 校外活動・研修

    • 特定の修学旅行はありませんが、1・2年次に2泊3日の校外活動が実施されます。また、希望者向けにはニュージーランドでの「キアオラプログラム」や、カナダでの「バンクーバー語学研修」といった国際的なプログラムも用意されています。

早稲田大学高等学院の進学実績

早稲田大学高等学院の進路を語る上で最も重要なのは、早稲田大学への内部進学です。

早稲田大学への内部進学

卒業生の約97%が早稲田大学へ進学するという、圧倒的な内部進学率を誇ります。これにより、生徒は大学受験のプレッシャーから解放され、高校3年間をより有意義に過ごすことができます。

ただし、全員が無条件で進学できるわけではありません。卒業のためには、高校3年次の評定平均が60点以上、修得単位数が85以上といった最低限の学業成績をクリアする必要があります。

また、どの学部に進学できるかは、3年間の成績によって決まります。特に政治経済学部や法学部といった人気学部への進学は、校内での厳しい競争を勝ち抜かなければなりません。つまり、「大学受験」という外部との競争がない代わりに、「希望学部への進学」という内部での競争が存在するのです。

2024年3月卒業生の主な学部別進学者数は以下の通りです。

学部名 進学者数
政治経済学部 110名
法学部 66名
商学部 50名
基幹理工学部 56名
創造理工学部 38名
先進理工学部 24名
社会科学部 30名
教育学部 29名
文化構想学部 27名
文学部 21名
国際教養学部 3名

他大学への進学

国公立大学や他大学の医学部など、早稲田大学以外の大学を受験することも可能です。しかし、その場合は「早稲田大学への推薦権を放棄する」必要があります。これは、他大学受験が不合格だった場合に早稲田大学に進学するという選択肢がなくなることを意味し、非常に大きな決断となります。そのため、この学校は「絶対に早稲田大学に進学したい」という強い意志を持つ生徒にとって最適な環境と言えるでしょう。

早稲田大学高等学院の特長・アピールポイント

他の高校にはない、この学校ならではの強みやユニークな取り組みをまとめました。

  • 大学レベルの探究学習「卒業論文」

    • 3年生になると、全員が1万2000字以上の卒業論文を執筆します。大学のゼミのように、少人数のグループで教員の指導を受けながら研究を進めるこの経験は、高校生のレベルをはるかに超えた思考力、探究力、そして文章力を育てます。

  • 高大連携のスムーズな接続

    • 高校にいながら大学の講義を履修できたり、大学の図書館や実験施設を利用できたりと、高校と大学の垣根が低いのが大きな特長です。一足先に大学の学びに触れることで、将来の目標がより明確になります。

  • 本格的な第二外国語教育

    • 全生徒が3年間、ドイツ語、フランス語、ロシア語、中国語のいずれかを必修で学びます。付け焼き刃ではない、本格的な語学力は、大学での学習や将来のキャリアにおいて大きな武器となります。

  • 3年間クラス替えなしの強い絆

    • 入学時に編成されたクラスのまま、3年間を共に過ごします。部活動や行事を通じて深まる仲間との絆は非常に強く、一生涯の友人を得られると多くの卒業生が語っています。

  • 生徒主体の圧倒的な学校行事

    • 2万人以上を集める学院祭をはじめ、学校行事の企画・運営は生徒が中心です。仲間と協力して一つの大きなことを成し遂げる経験は、リーダーシップや協調性を育む絶好の機会となります。

  • 多様なバックグラウンドを持つ仲間

    • 中学部からの内部進学者、難関の一般入試や自己推薦を突破した外部からの入学者、海外からの帰国生など、実に様々な生徒が集まっています。多様な価値観に触れる日常が、視野を広げ、人間的な成長を促します。

早稲田大学高等学院の口コミ・評判のまとめ

在校生や卒業生からは、学校の「自由」な校風を評価する声が圧倒的に多い一方で、その自由さを乗りこなす難しさを指摘する声も見られます。

良い点

  • 「とにかく自由。大学受験に縛られず、部活や趣味、自分の好きな研究に没頭できる最高の3年間だった」という声が最も多く聞かれます。この自由な時間が、将来の夢を見つけるきっかけになったという卒業生も少なくありません。

  • 「3年間クラス替えがないので、一生付き合える親友ができた」「学院祭や体育祭は本気で盛り上がり、最高の思い出」など、仲間との強い絆や充実した学校生活を評価する声も多数あります。

  • 「高校生のうちから大学の施設が使えたり、卒業論文に取り組めたりと、知的好奇心を刺激される環境だった」と、アカデミックな側面を魅力に感じる声も多いです。

  • 「早稲田大学に進学できるという安心感があるので、精神的に余裕を持って高校生活を送れた」という、附属校ならではのメリットを挙げる意見も目立ちます。

気になる点

  • 「自由な反面、自分で自分を律しないとすぐに堕落する。実際に留年する人もいるので、自己管理能力が問われる」という意見は、多くの口コミで共通して指摘されています。受け身の姿勢ではついていけない厳しさがあるようです。

  • 「男子校特有のノリがあるので、それが苦手な人には合わないかもしれない」という声もあります。良くも悪くもエネルギッシュな雰囲気に馴染めるかどうかが一つのポイントになりそうです。

  • 「静かに勉強したい人には向かないかもしれない。常にどこかで誰かが何か面白いことをしていて、活気がありすぎるくらい」という、学校の持つエネルギーの大きさを指摘する声も見られます。

  • 私立のトップ校であるため、「学費が高い」という点は、保護者にとって現実的な懸念点として挙げられています。

アクセス・通学

都心からのアクセスも良く、様々なエリアから生徒が通学しています。

  • 最寄り駅

    • 最も一般的なのは、西武新宿線「上石神井」駅で、北口から徒歩約7分です。

  • バスでのアクセス

    • JR中央線「西荻窪」駅や「吉祥寺」駅、西武池袋線「大泉学園」駅や「石神井公園」駅からバスを利用することも可能です。各駅から学校最寄りの「早稲田高等学院」バス停まで、約15分から25分で到着します。

  • 通学エリア

    • これらの交通網を利用して、東京23区西部や多摩地区、さらには埼玉県など、広い範囲から生徒が通っています。

早稲田大学高等学院受験生へのワンポイントアドバイス

ここまで読んでくれてありがとう。最後に、進学アドバイザーとして、早稲田大学高等学院を目指す君たちにメッセージを送ります。

この学校は、「自分の頭で考え、自分の足で行動できる人」にこそ、最高の環境を提供してくれます。誰かに言われたからやるのではなく、自分がやりたいからやる。そんな強い意志と探究心を持っている君に、早稲田大学高等学院は心からおすすめです。そして、「早稲田大学で学びたい」という夢があるなら、ここはその夢へ続く最も豊かで刺激的な道となるでしょう。

受験勉強では、入試方式によって力の入れどころが変わります。一般入試を目指すなら、難問に対応できる深い思考力を鍛えることが不可欠です。過去問を徹底的に分析し、解法のパターンを覚えるだけでなく、「なぜそうなるのか」を突き詰めてください。自己推薦入試を考えているなら、高い内申点を維持することはもちろん、「この学校の自由な3年間で、自分は何を成し遂げたいのか」を具体的に語れるように準備しておくことが何より重要です。早稲田大学高等学院は、君が持つ未来への熱意を見ています。健闘を祈っています!

※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。