奈良県の最南端、雄大な自然に抱かれた十津川村に、全国から生徒が集まるユニークな高校、それが奈良県立十津川高等学校です。1864年設立の「文武館」を前身とする、160年以上の歴史と伝統を誇る学校で、「やればできるを学べる学校(ところ)」をスローガンに、生徒一人ひとりの可能性を最大限に引き出す教育を実践しています。十津川高等学校は、一般的な高校とは一味も二味も違う、特別な環境が魅力です。

その最大の特徴は、全国から生徒を募集していること、そして多くの生徒が寮生活を送っていることです。親元を離れ、仲間と共に過ごす3年間は、学力だけでなく、自立心や協調性といった人間的な成長を大きく促してくれるでしょう。豊かな自然環境を活かした学びや、地域との深いつながりも十津川高等学校ならではの魅力と言えます。

この記事では、そんな十津川高等学校について、偏差値や難易度、ユニークな学科、学校生活の様子、そして卒業後の進路まで、受験生や保護者の皆さんが知りたい情報を詳しく、そして分かりやすく解説していきます。この記事を読めば、きっとあなたも十津川高校で学ぶことの面白さ、素晴らしさを感じられるはずです。

十津川高等学校の基本情報

項目 内容
正式名称 奈良県立十津川高等学校
公立/私立の別 公立
共学/男子校/女子校の別 男女共学
所在地 〒637-1445 奈良県吉野郡十津川村込之上58
代表電話番号 0746-64-0241
公式サイトURL http://www.nps.ed.jp/totsukawa-hs/

十津川高等学校の偏差値・難易度・併願校

十津川高等学校の入試は、そのユニークな教育環境を反映し、一般的な学力だけで合否が決まるわけではありません。偏差値はあくまで一つの目安として捉え、この学校で学びたいという強い意欲が何よりも大切になります。

総合学科の偏差値は「35」が一つの目安とされています。しかし、十津川高等学校は特色選抜で全国募集を行っており、学力試験だけでなく個人面接が重視されるのが大きな特徴です。面接では、十津川という地域への関心や、集団生活を通して何を学びたいか、将来の希望などが問われます。そのため、偏差値の数字以上に、この学校で学びたいという熱意や目的意識、そして寮生活への適性が合否の鍵を握ると言えるでしょう。

奈良県の公立高校入試制度上、他の公立高校との併願はできません。そのため、併願校としては私立高校を検討することになります。奈良県内の同じくらいの偏差値の高校としては、御所実業高等学校(偏差値39)や二階堂高等学校(偏差値39)などがあります。しかし、十津川高校の全国募集や全寮制という特殊な環境を考えると、単純な偏差値だけで併願校を選ぶのは難しいかもしれません。

十津川高等学校に設置されている学科・コース

十津川高等学校は、生徒一人ひとりの興味や関心、そして将来の進路希望に柔軟に対応できる「総合学科」を設置しています。1年次で基礎的な学力を固めた後、2年次からは以下の4つの系列に分かれて、より専門的な学びを深めていきます。

  • 文理総合系列: 大学進学や公務員就職など、多様な進路実現を目指す系列です。一人ひとりの目標に合わせたきめ細やかな学習指導が受けられます。幅広い分野に興味があり、自分の可能性をじっくり探したい人におすすめです。

  • 木工芸系列: 十津川の豊かな木材資源を活かし、「ものづくり」の専門的な技術を学びます。伝統的な木工芸の文化に触れながら、実践的なスキルを身につけたい人に最適です。

  • 美術系列: 雄大な自然に囲まれた環境の中で、絵画やデザインなどの美術的な表現技法を学び、豊かな感性を育みます。創造的な活動を通じて、自分を表現したいと考える生徒におすすめです。

  • 地域探究系列: 地域の産業や防災など、十津川村が抱える課題について探究し、問題解決能力を養います。地域社会に貢献したい、実践的な学びを通して社会との関わりを深めたいという意欲のある生徒に向いています。

十津川高等学校の特色・校風

十津川高等学校の校風は、「アットホーム」「自主自律」「文武両道」といったキーワードで表現できるでしょう。全校生徒が100名程度の小規模校であり、多くの生徒が寮生活を送っているため、生徒同士はもちろん、先生との距離も非常に近いのが特徴です。

  • 校則: 校則は、社会のルールを守るという観点から定められていますが、生徒の自主性を尊重する雰囲気があるようです。スマホの持ち込みは許可されていますが、校内での使用には一定のルールが設けられています。服装に関する規定も、常識の範囲内であれば厳しすぎることはないという声が多いようです。

  • 宿題の量: 宿題の量は、系列や選択科目によって異なりますが、日々の学習習慣を身につけるために適切な量が課される傾向にあります。特に進学を目指す生徒には、補習なども含めて手厚いサポートがあります。

  • 生徒たちの雰囲気: 全国から様々な背景を持つ生徒が集まっているため、多様性を受け入れる穏やかで落ち着いた雰囲気があります。寮生活を通して深い絆が生まれ、学年を超えて仲が良いのも特徴です。

  • アルバイト: アルバイトは原則として禁止されています。生徒は学業と部活動、そして寮生活に集中することが求められます。

  • 制服: 制服は、男子が詰襟、女子がセーラー服で、落ち着いたデザインが評判です。

  • 土曜授業: 土曜授業は基本的にありませんが、学校行事や模試などが行われることがあります。

十津川高等学校の部活動・イベント

部活動

十津川高等学校では、豊かな自然環境を活かした部活動が盛んです。生徒たちは、仲間と共に目標に向かって日々練習に励んでいます。

  • ボート部: 奈良県で唯一のボート部で、学校のすぐ裏にある二津野ダム湖という絶好の環境で活動しています。高校からボートを始める生徒がほとんどですが、毎年インターハイに出場するなど輝かしい実績を誇っています。

  • 剣道部: 「剣正しからざれば、心正しからず」という言葉を胸に、日本の伝統的な礼節を重んじながら稽古に励んでいます。心・技・体の成長を目指せる部活動です。

  • その他の部活動: 運動部には硬式野球部、陸上競技部、バレーボール部などがあります。文化部には、木工芸の技術を磨く工芸部や、音楽部、美術部、茶道部、華道部などがあり、生徒たちはそれぞれの興味に合わせて活動を楽しんでいます。

イベント

寮生活を送る生徒が多い十津川高等学校では、学校行事も生徒たちの手で作り上げる一体感のあるものが多く、一年を通して様々なイベントで盛り上がります。

  • 文化祭・体育祭: 文化祭や体育祭は、学校全体が一つになる大きなイベントです。クラスや部活動ごとに趣向を凝らした発表や展示、競技が行われ、生徒たちの自主性や協調性が発揮されます。

  • 修学旅行: 2年生の秋には修学旅行が実施されます。近年は、学校の創設者ゆかりの地である島根県の隠岐島などを訪れています。事前学習で地域の歴史や文化を深く学び、現地での体験を通して見聞を広める、学びの多い旅行となっています。

  • 郷土学習・地域交流: 十津川村の自然や文化に触れる機会が多く設けられています。地域のお祭りへの参加やボランティア活動などを通して、地域住民との交流を深めています。

十津川高等学校の進学実績

十津川高等学校は、生徒一人ひとりの希望進路に合わせたきめ細やかなサポート体制が整っており、卒業生は大学進学から就職まで、多様な道へと進んでいます。小規模校ならではの手厚い指導が、確かな進路実現につながっています。

近年の主な進学実績を見ると、国公立大学では奈良教育大学や和歌山大学などへ、私立大学では近畿大学、龍谷大学、摂南大学、大阪産業大学などへ合格者を出しています。指定校推薦枠も豊富で、多くの生徒が活用しているようです。

大学進学だけでなく、専門学校への進学や公務員、民間企業への就職など、生徒の多様なニーズに応えています。特に、地域おこし協力隊として活躍する卒業生もおり、十津川高校での学びが地域貢献へと繋がっていることがうかがえます。進路指導室では、個別相談や面接指導、小論文指導などが充実しており、生徒一人ひとりが安心して自分の将来と向き合える環境が整っています。

十津川高等学校の特長・アピールポイント

他の高校にはない、十津川高等学校ならではのユニークな魅力を5つのポイントにまとめました。

  • 全国から生徒が集まる「全国募集」と「全寮制」: 最大の特長は、全国から生徒を募集していることです。親元を離れ、仲間と共同生活を送る寮生活は、自立心やコミュニケーション能力を育む貴重な経験となります。

  • 実質的な「学費無償」制度: 十津川村の手厚い支援により、授業料や寮費、食費などが補助され、経済的な負担が大幅に軽減されます。これにより、全国どこからでも意欲のある生徒が学ぶ機会を得ることができます。

  • 雄大な自然を活かした学び: 世界遺産・熊野古道が通る豊かな自然環境が、そのまま学びのフィールドです。ボート部の活動や、地域の自然・文化を探究する学習など、ここでしかできない体験が待っています。

  • 地域との強いつながり「郷土学」: 十津川村の歴史や文化、産業について学ぶ「郷土学」という独自の科目があります。地域の人々と交流し、地域が抱える課題について考える実践的な学びを通して、社会に貢献する力を養います。

  • 専門性を深める4つの系列: 総合学科の中に「文理総合」「木工芸」「美術」「地域探究」という特色ある4つの系列を設置。生徒一人ひとりの興味や関心、進路希望に合わせて専門的な知識や技術を深く学ぶことができます。

十津川高等学校の口コミ・評判のまとめ

在校生や卒業生からは、十津川高等学校ならではの教育環境に対する肯定的な声が多く聞かれます。

  • 良い点:

    • 「先生方が親身になって相談に乗ってくれるので、勉強も学校生活も安心して送れる」

    • 「寮生活を通して、一生付き合える仲間ができた」

    • 「自然に囲まれた環境で、のびのびと高校生活を送ることができる」

    • 「少人数なので、先生の目が行き届きやすく、質問もしやすい」

    • 「ボート部や工芸部など、ここでしかできない特別な活動に打ち込める」

  • 気になる点:

    • 「近くにコンビニやお店が少ないので、少し不便に感じることもある」

    • 「全寮制なので、集団生活が苦手な人には向かないかもしれない」

    • 「山間部にあるため、交通の便が良いとは言えない」

    • 「都会の高校のような華やかさはないかもしれない」

アクセス・通学

十津川高等学校は奈良県の南部に位置し、多くの生徒が学校の寮で生活しています。

  • 公共交通機関でのアクセス:

    • 近鉄「大和八木駅」から奈良交通バス(十津川温泉行き)で約4時間、「込之上」バス停下車すぐ。

    • JR「五条駅」から奈良交通バスで約3時間、「込之上」バス停下車すぐ。

    • JR「新宮駅」から奈良交通バスで約2時間、「込之上」バス停下車すぐ。

通学圏としては、全国から生徒が集まっていますが、地元の十津川村や周辺地域から通う生徒もいます。ほとんどの生徒は、学校敷地内にある男女別の寮に入り、そこから通学しています。

十津川高等学校受験生へのワンポイントアドバイス

十津川高等学校は、ただ学力を伸ばすだけでなく、人間として大きく成長したいと願う君にこそ、ぴったりの学校です。親元を離れての寮生活や、大自然の中での学びは、決して楽なことばかりではないかもしれません。しかし、それを乗り越えた先には、かけがえのない仲間との絆や、何事にも動じない強い心が育っているはずです。十津川高等学校は、自ら考えて行動する力、そして仲間と協力して物事を成し遂げる力を、3年間かけてじっくりと育ててくれます。

受験勉強においては、基礎的な学力をしっかりと身につけることはもちろんですが、それ以上に「なぜ十津川高校で学びたいのか」を自分の言葉で語れるようにしておくことが大切です。面接では、君の熱意や人柄が重視されます。学校の特色をよく理解し、この学校で挑戦したいこと、将来の夢などを具体的に考えてみてください。自然が好き、ものづくりが好き、新しい環境で自分を試したい。そんな君の挑戦を、十津川高等学校は全力で応援してくれるはずです。

※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。