鈴鹿工業高等専門学校、通称「鈴鹿高専」は、ものづくりや科学技術に強い興味を持つ君にとって、夢への最短ルートとなり得る特別な場所です。中学校を卒業してすぐ、5年間という一貫した教育の中で、大学レベルの専門知識と技術を深く学ぶことができる。それが「高等専門学校(高専)」というユニークな教育機関なのです。

普通の高校とは少し違い、ここでは15歳から未来のエンジニア、研究者としての道を歩み始めます。授業の多くは実験や実習で、教科書で学んだ知識をすぐに自分の手で試し、形にすることができます。この実践的な学びこそが、鈴鹿工業高等専門学校が社会から高く評価され、卒業生が世界に名だたる企業や難関大学で活躍する理由です。

この記事では、そんな鈴鹿高専の魅力を、偏差値や難易度、学校生活の様子から、卒業後の輝かしい進路まで、中学生の皆さんや保護者の方々に分かりやすく、そして具体的にご紹介します。もし君の心の中に「これが好きだ」「もっと深く知りたい」という情熱の炎があるなら、この先を読み進めてみてください。きっと、君の未来を照らすヒントが見つかるはずです。

鈴鹿工業高等専門学校の基本情報

まずは、鈴鹿工業高等専門学校の基本的な情報を確認しましょう。進路を考える上で最も基礎となる部分です。

項目 内容
正式名称 独立行政法人国立高等専門学校機構 鈴鹿工業高等専門学校
区分 国立
男女別 共学
所在地 〒510-0294 三重県鈴鹿市白子町
代表電話番号 059-386-1031
公式サイト https://www.suzuka-ct.ac.jp/

鈴鹿工業高等専門学校の偏差値・難易度・併願校

鈴鹿工業高等専門学校への進学を考える上で、その難易度を正確に把握しておくことは非常に重要です。

各種の情報を総合すると、鈴鹿高専の偏差値は概ね66から68とされており、三重県内でもトップクラスの難易度を誇ります。これは、全国に約50校ある国立高専の平均偏差値62.2を大きく上回る数値であり、入学には高い学力が求められることが分かります。三重県内の公立高校で言えば、伊勢高校(国際科学コース)や桑名高校(理数科)といった進学校の専門コースに匹敵するレベルです。

合格に必要な内申点の目安として、特に推薦選抜を目指す場合は、中学校3年間の9教科の5段階評価の合計が「110以上」(平均で約4.1)という基準が設けられています。ただし、これはあくまで出願の基準であり、合格をより確実にするためには、平均4.5(合計121程度)を目指したいところです。学力選抜の場合でも、当日の試験結果が重視されるとはいえ、同じように高い学力を持つ受験生が集まるため、しっかりとした内申点を確保しておくことが望ましいでしょう。

鈴鹿工業高等専門学校は国立のため、学力選抜では三重県立高校との併願が可能な場合がありますが、制度は年度によって変わる可能性があるため、必ず最新の募集要項で確認してください。私立高校を併願する場合、偏差値が近い高田高等学校(普通科Ⅱ類特別選抜コース)や暁高等学校(普通科Ⅱ類英進コース・6年制編入)などが主な選択肢として挙げられます。

鈴鹿工業高等専門学校に設置されている学科・コース

鈴鹿工業高等専門学校では、1年生から5つの専門学科に分かれて学びます。自分の興味や将来の夢に最も近い分野を選べるのが大きな魅力です。各学科がどんな場所なのか、見ていきましょう。

  • 機械工学科

    ロボットや自動車、航空機など、あらゆる「動くモノ」の設計から製作までを学びます。機械の仕組みを考えたり、プラモデル作りや分解・組立が好きな人におすすめです。

  • 電気電子工学科

    スマートフォンから大規模な発電所まで、社会を支える電気エネルギーや電子回路の技術を探求します。電子工作や、エネルギー問題に関心がある人にぴったりの学科です。

  • 電子情報工学科

    プログラミングやAI(人工知能)、コンピュータのハードウェアなど、情報技術の最先端を学びます。将来、ゲーム開発者やITエンジニアとして活躍したい人に最適です。

  • 生物応用化学科

    化学と生物学を融合させ、医薬品や食品、環境にやさしい新素材などを開発する技術を学びます。理科の実験が好きで、医療や環境分野に貢献したい人におすすめです。

  • 材料工学科

    社会の基盤となる金属やセラミックス、プラスチックといった「マテリアル(材料)」の性質を解き明かし、新たな機能を持つ素材を創り出します。物理も化学も好きで、未来のテクノロジーの土台を作りたい人に向いています。

なお、5年間の本科を卒業した後は、さらに2年間の「専攻科」に進学し、大学卒業と同等の「学士」の学位を取得する道も開かれています。

鈴鹿工業高等専門学校の特色・校風

鈴鹿工業高等専門学校の最大の特色は、その「大学のような自由な雰囲気」と、それに伴う「高いレベルでの自己管理」が求められる点にあります。キーワードで表すなら、「自由と責任」「実践躬行」「専門性の追求」と言えるでしょう。

  • 宿題の量とレポート

    一般的な高校でイメージされるような毎日の「宿題」は少ない傾向にあります。その代わり、低学年のうちから実験や実習ごとの詳細な「レポート」提出が求められます。これは、結果をまとめて考察する力、つまり技術者としての基礎能力を養うための重要なトレーニングです。

  • 校則(スマホ・服装など)

    校則は非常に緩やかで、大学に近い環境です。スマートフォンの持ち込みは自由で、授業中に調査などで使用することもあります。服装は、1年生から3年生までは制服がありますが、4年生からは私服登校となり、見た目にも大学生のような雰囲気になります。髪型や持ち物についても、厳しく注意されることは少ないようです。

  • 生徒たちの雰囲気

    「ものづくりが好き」「特定の分野をとことん追求したい」という共通の目的を持った学生が集まるため、真面目で知的な探究心にあふれています。同時に、学校生活は明るく活気があり、友人関係も良好という声が多く聞かれます。自分の「好き」を気兼ねなく話せる仲間が見つかる場所です。

  • アルバイト・長期休暇

    アルバイトは基本的に許可されており、多くの学生が経験しているようです。また、夏休みと春休みがそれぞれ約2ヶ月と非常に長いのも大きな特徴です。この期間を利用して、アルバイトに励んだり、自分の研究やプロジェクトに没頭したりと、自主的に時間を使うことができます。

  • 土曜授業

    基本的に土曜授業はありません。

この自由な環境は、自主性や主体性を育む上で非常に有益ですが、同時に厳しい側面も持ち合わせています。授業の進度は非常に速く、特に数学などは3年生で大学レベルの内容に入ります。また、赤点(欠点)の基準が60点と高く設定されており、複数の科目を落とすと留年する可能性も普通の高校より高いと言われています。自由を謳歌するためには、日々の学習をこつこつと続ける強い意志と自己管理能力が不可欠です。

鈴鹿工業高等専門学校の部活動・イベント

専門分野の勉強が中心となる鈴鹿高専ですが、部活動や学校行事も非常に活発で、充実した学生生活を送ることができます。

部活動

鈴鹿高専は「文武両道」を掲げており、運動部・文化部ともに多くのクラブが活動しています。

特に全国レベルで活躍している部活動として、テニス部や男子バレーボール部が知られています。これらの部は全国高専体育大会(高専大会)で何度も優勝を飾るなど、輝かしい実績を誇ります。また、3年生までは高校総体(インターハイ)にも参加できるため、幅広い舞台で挑戦することが可能です。

鈴鹿工業高等専門学校ならではの活動として、「創造活動プロジェクト」があります。これは単なる部活動ではなく、授業の一環としても単位が認められる本格的なエンジニアリング活動です。

  • ロボコンプロジェクト:テレビでもおなじみの「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト」への出場を目指し、独創的なロボットを設計・製作します。

  • ソーラーカー・エコカープロジェクト:自作の車両で燃費や性能を競う大会に参加し、環境技術やエネルギー効率を追求します。

  • プログラミングコンテスト(プロコン):ソフトウェア開発の技術とアイデアを競う全国大会に挑戦します。

文化部では、歴史ある音楽部や、地域の社会人チームと連携して活動する珍しい「ソーラン同好会」など、ユニークなクラブも存在します。

イベント

学生生活を彩る年間行事も盛りだくさんです。

  • 高専祭:毎年11月上旬に開催される学園祭です。各学科の研究展示や、学生たちが企画した模擬店、ステージ発表などでキャンパスが一体となって盛り上がります。日頃の研究成果を一般の方々にも披露する貴重な機会です。

  • 体育祭:高専祭と並ぶ大きなイベントで、特に名物となっているのが「学科対抗リレー」です。5つの学科がそれぞれのプライドをかけて競い合い、学生だけでなく教員も参加して大変な熱気に包まれます。

  • 研修旅行(修学旅行):3年生の時に実施されます。以前はシンガポールなど海外が目的地でしたが、近年は北海道への研修旅行となっています。単なる観光旅行ではなく、集団行動や班別行動を通して計画性を養い、現地の文化や歴史を学ぶ貴重な体験です。

この他にも、新入生が親睦を深めるための合宿研修や、最先端の現場を学ぶ工場見学など、多彩な行事が用意されています。

鈴鹿工業高等専門学校の進学実績

鈴鹿工業高等専門学校の卒業後の進路は、大きく分けて「就職」と「進学」の2つがあり、その割合は例年ほぼ半々です。どちらの道を選んでも、非常に有利な条件で未来を切り拓けるのが最大の強みです。

  • 就職:驚異的な「売り手市場」

    鈴鹿高専の卒業生に対する企業からの評価は絶大で、求人倍率(就職希望者1人に対する求人数)は毎年平均して10数倍、多い時には20倍を超えることもあります。特に電気電子工学科では30倍以上を記録することもあるようです。これは、5年間の実践的な教育で培われた高い専門性が、即戦力として高く評価されている証拠です。

    就職活動は、大学のような自由応募ではなく、ほとんどが「学校推薦」で行われます。トヨタ自動車、本田技研工業、パナソニック、中部電力、JR東海、キヤノン、サントリーといった日本を代表する大企業をはじめ、多くの優良企業への道が開かれています。

  • 進学:難関国公立大学への編入

    進学希望者の多くは、まず鈴鹿高専内にある2年制の「専攻科」へ進み、大学卒業資格(学士)を取得します。

    さらに特筆すべきは、全国の国公立大学工学部などへ「3年次編入」という形で進学できる制度です。これは高専生に用意された特別なルートで、一般入試よりも有利に進学できるケースが多くなっています。主な編入学先としては、名古屋大学、豊橋技術科学大学、三重大学、大阪大学、東北大学など、国内トップクラスの国立大学が名を連ねています。高専での5年間の学びを土台に、さらに高度な研究の世界へ進むことができます。

このように、鈴鹿工業高等専門学校は、安定した優良企業への就職と、難関大学への進学という、2つの輝かしい道を学生に提供しています。

鈴鹿工業高等専門学校の特長・アピールポイント

他の高校にはない、鈴鹿工業高等専門学校ならではの強みやユニークな取り組みをまとめました。

  • 5年間の一貫した専門教育

    中学卒業後すぐに専門分野の学習を始め、高校と大学の7年間に相当する内容を5年間で効率よく、かつ深く学びます。知識が途切れることなく積み重なるため、強固な専門性の土台が築かれます。

  • 実践重視の「創造工学」とプロジェクト活動

    座学だけでなく、1年生から実験・実習が豊富にあり、「創造工学」といった授業では自らテーマを設定してものづくりに挑戦します。ロボコンなどのプロジェクト活動も単位として認められ、「やってみる」ことを通じて本物の技術力を養います。

  • 大学レベルの研究環境と手厚い教員サポート

    教員は大学教授のように個別の研究室を持っており、学生はいつでも質問や相談に訪れることができます。専門分野の第一線で活躍する先生から、少人数で直接指導を受けられる恵まれた環境です。

  • 圧倒的な就職力と国公立大学への編入実績

    企業からの絶大な信頼を背景に、学校推薦で有名企業への就職が有利に進められます。また、多くの国公立大学に「3年次編入」という特別なルートで進学できるのも、高専ならではの大きなメリットです。

  • 自由と責任を重んじる大学のような校風

    校則が緩やかで、学生は一人の大人として扱われます。この自由な環境が自主性を育む一方で、高い学習意欲と自己管理能力が求められる、自己成長に最適な場所です。

  • 地域や産業界との強い連携

    東海地方の工業地帯という立地を活かし、企業との共同研究やインターンシップが盛んです。これにより、社会のニーズに合った実践的な学びが可能となり、地元企業への高い就職率にも繋がっています。

  • 充実した寮生活

    遠方からの学生のために学寮が完備されています。共同生活を通して、学科や学年を超えた深い絆が生まれ、協調性や人間性を育むことができます。

鈴鹿工業高等専門学校の口コミ・評判のまとめ

在校生や卒業生の声から、鈴鹿工業高等専門学校のリアルな姿を探ってみましょう。良い点と、入学前に知っておきたい注意点の両方を公平にご紹介します。

  • 良い点

    • 「ものづくりが好きな人にとっては、これ以上ない最高の環境。設備も整っていて、やりたい実験ができます」という声が非常に多いです。

    • 「先生方が各分野の専門家で、質問に行くと研究室で一対一で丁寧に教えてくれる。サポートが手厚い」と、教員との距離の近さを評価する意見が目立ちます。

    • 「校則が緩くて自由。大学みたいな雰囲気で、自分のペースで勉強や活動に取り組める」と、自主性を重んじる校風が好評です。

    • 「就職にも進学にも強く、将来の心配がない。大手企業からの求人が本当に多い」と、卒業後の進路に対する安心感は絶大です。

    • 「夏休みや春休みが約2ヶ月もあって長い。自分の好きな研究やアルバイトに打ち込める時間がたっぷりある」という点も魅力のようです。

  • 気になる点

    • 「勉強は本当に大変。授業の進度が速いので、一度でも気を抜くとついていけなくなる」という声は共通しています。

    • 「赤点が60点と高く、留年率も普通の高校より高いのは事実。日々の予習・復習が欠かせない」と、学業の厳しさに関する指摘が多くあります。

    • 「自分が選んだ専門分野に本当に興味がないと、授業が苦痛になる可能性がある。なんとなくで入ると後悔するかもしれない」という、入学前の覚悟を問う意見も見られます。

    • 「学科によっては女子生徒が極端に少ない。特に機械科や電気電子科、電子情報科は男子校に近い雰囲気がある」という現実的な声もあります。

    • 「駅から少し歩くので、アクセスが少し不便に感じる」という意見も一部で見られます。

アクセス・通学

鈴鹿工業高等専門学校への主なアクセス方法は以下の通りです。

  • 電車とバスを利用する場合

    最も一般的なルートは、近鉄名古屋線の「白子駅」で下車する方法です。白子駅西口のバス乗り場から、三重交通バスの「平田町駅行き」または「鈴鹿サーキット行き」に乗車し、約10分。「東旭が丘3丁目」バス停で下車後、徒歩で約7分から10分です。

  • その他の駅からのアクセス

    伊勢鉄道の「玉垣駅」からは徒歩で約14分です。

通学している学生は、鈴鹿市や四日市市をはじめとする三重県内全域から集まっています。また、学校の評判の高さから、県外から進学してくる学生も少なくありません。そうした遠方の学生のためにキャンパス内には学寮が完備されており、愛知県や岐阜県、滋賀県など近隣の県から来た学生も寮生活を送りながら学んでいます。

鈴鹿工業高等専門学校受験生へのワンポイントアドバイス

ここまで読んでくれて、鈴鹿工業高等専門学校に強い魅力を感じてくれた君へ、最後のアドバイスです。

この学校は、「科学や技術、ものづくりに対する強い探究心がある人」「自由な環境で、自ら目標を立てて努力できる人」、そして「早くから専門性を身につけて、社会の第一線で活躍したいと願う人」に、特におすすめします。もし君がそんな一人なら、鈴鹿高専は最高の学び舎になるでしょう。

受験勉強では、鈴鹿工業高等専門学校が採用している全国高専共通の学力検査問題の傾向を掴むことが大切です。特に、理科、数学、英語の3教科は、他の教科より配点が高く設定されることが多いです。もちろん5教科すべてをバランス良く勉強することは大前提ですが、この3教科に特に力を入れて対策を進めることが、合格への近道となります。君の「好き」という気持ちが、きっと難しい勉強を乗り越える力になるはず。応援しています!

※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。