鳥取県立倉吉農業高等学校は、140年近い歴史と伝統を誇る、県内唯一の農業専門高校です。「倉農(くらのう)」の愛称で親しまれ、広大な実習地で、動物や植物、食品や環境について実践的に学ぶことができます。農業と聞くと、少し特別なイメージを持つかもしれませんが、私たちが生きていく上で欠かせない「食」や「環境」のスペシャリストを育てる、未来に直結した学びの場なのです。

倉吉農業高等学校では、ただ知識を詰め込むだけでなく、「五感を駆使する教育」や「体験を重視する教育」を大切にしています。動物の世話をしたり、野菜を育てて加工・販売したり、里山を守る活動をしたりと、体全体で学ぶ機会が豊富に用意されています。仲間と共に汗を流し、命の尊さや自然の恵みを肌で感じる3年間は、きっとあなたを大きく成長させてくれるでしょう。

この記事では、そんな倉吉農業高等学校の魅力を、偏差値や学科の紹介、学校生活の様子から進路実績まで、進学アドバイザーの視点から分かりやすく解説していきます。この記事を読めば、倉農がどんな学校で、どんな高校生活が待っているのか、きっと具体的にイメージできるはずです。

倉吉農業高等学校の基本情報

倉吉農業高等学校の基本的な情報を表にまとめました。

項目 内容
正式名称 鳥取県立倉吉農業高等学校
公立/私立の別 公立
共学/男子校/女子校の別 男女共学
所在地 〒682-0941 鳥取県倉吉市大谷166番地
代表電話番号 0858-28-1341
公式サイトURL https://www.torikyo.ed.jp/kurano-h/

倉吉農業高等学校の偏差値・難易度・併願校

倉吉農業高等学校の偏差値は、専門高校という特性上、普通科の高校とは少し異なります。学科ごとの偏差値の目安は以下の通りです。

  • 生物科:37

  • 食品科:37

  • 環境科:37

偏差値の数字だけ見ると、難易度が低いように感じるかもしれませんが、大切なのは「この学校で何を学びたいか」という強い意志です。倉吉農業高等学校の入試では、学力検査だけでなく面接も重視されます。動物が好き、自然に関心がある、食品加工に挑戦したいなど、自分の興味や将来の夢をしっかりとアピールすることが合格への鍵となります。

内申点の目安としては、5段階評価で平均3前後の学力があれば、十分に合格を狙えるでしょう。ただし、これはあくまで目安です。日々の授業に真面目に取り組み、提出物をきちんと出すなど、基本的な学習習慣を身につけておくことが大切です。

鳥取県の公立高校入試では、基本的に他の公立高校を併願することはできません。そのため、併願校としては私立高校を選ぶことになります。倉吉農業高等学校を受験する生徒の主な併願校としては、鳥取敬愛高等学校や倉吉北高等学校などが挙げられます。

倉吉農業高等学校に設置されている学科・コース

倉吉農業高等学校には、専門分野に特化した3つの学科があり、さらに細かく6つのコースに分かれています。自分の興味や関心に合わせて、専門的な知識と技術をとことん追求できる環境が整っています。

  • 生物科

    • 畜産コース:牛や豚、馬などの飼育を通して、畜産の知識と技術を学びます。動物が好きで、命を大切にする心を育てたい人におすすめです。

    • 園芸コース:野菜や果物の栽培を実践的に学びます。自分で育てた作物を収穫する喜びを味わいたい人、将来、農業や関連産業で活躍したい人にぴったりです。

  • 食品科

    • 食品コース:パンやジャム、お菓子などの加工品作りを学びます。原材料の生産から製造まで、安全で美味しい食品作りのプロを目指したい人におすすめです。

    • 流通コース:作った商品をどうやって売るか、マーケティングや販売について学びます。商品開発やビジネスに興味がある人に向いています。

  • 環境科

    • 建築・森林コース:森林の管理や木材加工、建築の基礎などを学びます。自然環境を守りながら、快適な生活空間を創造したい人におすすめです。

    • 建設DXコース:ドローンやICTなどの最新技術を使った測量や土木設計を学びます。最先端の技術で社会の基盤づくりに貢献したい人にぴったりです。

    • フラワー・ガーデンコース:草花や造園について学び、美しい景観を作り出す技術を身につけます。花や緑が好きで、デザインに興味がある人におすすめです。

倉吉農業高等学校の特色・校風

倉吉農業高等学校の校風は、「実践重視」と「地域密着」という言葉で表せます。広大な敷地での実習が多く、生徒たちはのびのびと学校生活を送っているようです。

  • 校則・学校生活

    • 校則は、以前よりは緩やかになったという声があり、「厳しすぎず緩すぎず、ちょうどいい」と感じる生徒が多いようです。月に1回程度の服装指導があります。

    • スマホの持ち込みは可能ですが、校内での使用ルールは定められています。授業中の使用はもちろん禁止です。

    • アルバイトは、長期休暇中などに許可制で行うことができます。

    • 制服は、男子が詰襟、女子がブレザーです。特にデザインについての大きな評判はありませんが、清潔感のある着こなしが求められます。

    • 土曜授業は基本的にありません。

  • 生徒の雰囲気・宿題

    • 生徒は、動物や植物が好きな、穏やかで真面目な生徒が多い傾向があります。専門的な知識を学びたいという目的意識を持って入学してくる生徒が多いため、落ち着いた雰囲気で学習に取り組めます。

    • 宿題の量は、学科やコースによって差がありますが、特に「当番実習」と呼ばれる放課後の実習が特徴的です。動物の世話や農作物の管理など、大変なこともありますが、大きな達成感を得られるようです。

  • 寮生活

    • 生物科と環境科の1年生は、原則として1年間、敷地内にある「祥雲寮」での寮生活を送ります。朝早くからの動物の世話などを通して、規則正しい生活習慣と仲間との協調性を育みます。寮での生活は大変な面もありますが、クリスマス会などの行事もあり、一生の友人との絆を深める貴重な経験となるでしょう。

倉吉農業高等学校の部活動・イベント

倉吉農業高等学校では、勉強や実習だけでなく、部活動や学校行事も非常に盛んです。

部活動

倉吉農業高等学校には、全国レベルで活躍する部活動や、農業高校ならではのユニークな部活動があります。

  • 運動部

    • 特に有名なのが相撲部で、数々の全国大会で輝かしい成績を収めています。元横綱の琴櫻も同校の出身です。

    • アーチェリー部や柔道部も全国大会出場の実績があります。

    • そのほか、野球、サッカー、バスケットボール、ソフトテニスなど、多くの運動部が活発に活動しています。

  • 文化部・同好会

    • 文化部では、地域のイベントでも活躍する「倉農太鼓部」が有名です。全国高等学校総合文化祭への出場や、海外公演の経験もあります。

    • 農業高校ならではの「農業クラブ(FFJ)」では、プロジェクト研究や意見発表などを通して、農業に関する知識や技術を深めます。

    • 珍しい部活動として「乗馬・セラピー同好会」があり、乗馬を通して保育園児などと交流する活動も行っています。

イベント

生徒たちが主体となって作り上げるイベントは、学校生活を彩る大きな楽しみの一つです。

  • 倉農祭(文化祭)

    • 毎年秋に開催される最大のイベントで、地域住民も心待ちにしています。生徒たちが育てた新鮮な野菜や果物、パンやジャムなどの加工品が販売され、毎年長蛇の列ができるほどの人気です。ステージ発表やクラス展示などもあり、学校全体が活気に満ち溢れます。

  • 体育祭

    • 学科対抗で行われるため、クラスや学科の団結力が一層深まります。農業高校らしいユニークな種目が行われることもあります。

  • 修学旅行

    • 行き先は年度によって異なりますが、北海道や沖縄など、鳥取とは異なる自然や文化、農業に触れる貴重な機会となっています。

倉吉農業高等学校の進学実績

倉吉農業高等学校の卒業生は、農業系の大学や専門学校への進学から、地元企業への就職まで、非常に幅広い分野で活躍しています。専門的な知識と技術を身につけているため、多様な進路選択が可能です。

  • 大学・短期大学

    • 国公立大学では、鳥取大学や公立鳥取環境大学などへの進学実績があります。

    • 私立大学では、東京農業大学、近畿大学、酪農学園大学など、全国の農業系大学へ進学する生徒が多いのが特徴です。

  • 専門学校

    • 鳥取県立農業大学校をはじめ、全国の農業系専門学校へ進学し、さらに高度な専門技術を学ぶ生徒も多くいます。

  • 就職

    • 就職希望者の就職率は非常に高く、地元企業からの信頼も厚いです。

    • 公務員(市役所、自衛隊など)や、JA鳥取中央、大山乳業農業協同組合といった農業関連団体、さらには製造業、建設業、販売業など、多岐にわたる企業へ就職しています。

学校では、インターンシップ(現場実習)や社会人講師による授業などを通して、生徒一人ひとりのキャリアプランニングをサポートしています。

倉吉農業高等学校の特長・アピールポイント

他の高校にはない、倉吉農業高等学校ならではの強みやユニークな取り組みをまとめました。

  • 東京ドーム約4個分の広大なキャンパス

    • 学校の敷地は非常に広く、水田、畑、果樹園、牛舎、演習林など、本格的な実習を行うための施設が充実しています。

  • 動物たちとのふれあい

    • 牛や豚、馬、羊など、たくさんの動物を飼育しており、日々の世話を通して命の尊さを学ぶことができます。

  • 「食」のプロフェッショナルを目指せる

    • 自分たちで育てた農産物を使い、パンやジャム、お菓子、福神漬けなど、様々な食品を製造・加工する技術を学べます。

  • 地域に愛される「倉農ブランド」

    • 生徒が作った農産物や加工品は「倉農ブランド」として地域で人気です。特に文化祭「倉農祭」での販売実習は、実践的なビジネスを学ぶ絶好の機会です。

  • 全国レベルのコンクールでの実績

    • 「全国農業高校お米甲子園」で最高金賞を受賞するなど、生徒たちの技術力は全国的にも高く評価されています。

  • 1年間の寮生活で育む人間力

    • 生物科と環境科の1年生が経験する寮生活は、規律や協調性を学び、人間的に大きく成長できる貴重な機会です。

  • 最先端のスマート農業が学べる

    • ドローンやICTを活用した「スマート農業」の学習にも力を入れており、未来の農業を担うための最新技術を身につけることができます。

倉吉農業高等学校の口コミ・評判のまとめ

在校生や卒業生からは、倉吉農業高等学校での学校生活について様々な声が寄せられています。

  • 良い点

    • 「専門的な知識や技術が身につき、将来の夢に直結する学びができる」という満足の声が非常に多いです。

    • 「実習が多く、座学だけでは得られない貴重な体験ができるのが楽しい」といった意見も目立ちます。

    • 「先生方が親身になって指導してくれる」「同じ目標を持つ仲間と出会えた」など、学習環境や人間関係の良さを挙げる声も多くあります。

    • 「寮生活を通して、自立心や協調性が身についた」という、寮生活を肯定的に捉える意見も多数見られます。

  • 気になる点

    • 「朝早い当番実習や動物の世話は、体力的に大変なこともある」という声があります。生き物を扱う以上、責任感が求められます。

    • 「虫が苦手な人や、土で汚れることに抵抗がある人には少し厳しいかもしれない」といった、農業高校ならではの意見もあります。

    • 「学科によっては、実習やレポートが多くて忙しい」と感じる生徒もいるようです。

    • 最寄り駅から少し距離があるため、アクセスが不便だと感じる人もいます。

アクセス・通学

倉吉農業高等学校へのアクセス方法は以下の通りです。

  • 最寄り駅

    • JR山陰本線「倉吉駅」

  • 駅からのアクセス

    • 倉吉駅バスターミナルから日本交通バス(関金線、明高線など)に乗車し、「倉吉農高前」バス停で下車、徒歩すぐ。

    • 倉吉駅から自転車で通学する生徒も多くいます。

通学エリアとしては、倉吉市内の生徒が最も多いですが、琴浦町、湯梨浜町、北栄町、三朝町など、鳥取県中部一円から多くの生徒が通学しています。また、寮があるため、県外から入学してくる生徒もいます。

倉吉農業高等学校受験生へのワンポイントアドバイス

倉吉農業高等学校を目指す皆さんへ、進学アドバイザーとして最後に応援メッセージを送ります。

この学校は、「自然や動物が大好きだ」「自分の手で何かを育てたり、作ったりすることに興味がある」「将来は、食や環境、地域社会に関わる仕事がしたい」そんなあなたにこそ、ぴったりの場所です。普通科の高校では決して味わえない、実践的でダイナミックな3年間が待っています。倉吉農業高等学校でしかできない経験を通して、自分の可能性を大きく広げてください。

受験勉強においては、もちろん国語、数学、英語などの基礎学力は大切ですが、それ以上に「なぜ倉農で学びたいのか」という熱意を自分の言葉で語れるようにしておくことが重要です。学校説明会やオープンスクールにはぜひ参加して、倉吉農業高等学校の雰囲気を肌で感じ、自分の目で見て、先生や先輩の話を聞いてみてください。面接では、その時に感じたことや、入学して挑戦したいことを自信を持って伝えましょう。あなたの熱意は、きっと面接官に届くはずです。応援しています!

※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。