「ものづくりが好き」「科学技術にワクワクする」そんなあなたに、未来のエンジニアへの最短ルートを歩める特別な学校、大分工業高等専門学校を紹介します。高等専門学校、通称「高専」は、中学校を卒業した後の5年間、一貫して専門的な技術や知識を深く学べるユニークな教育機関です。一般的な高校とは少し違う、大学のような自由な雰囲気の中で、自分の「好き」をとことん追求できる環境がここにはあります。
このガイドでは、そんな大分工業高等専門学校がどんな場所なのか、中学生の皆さんとその保護者の方々が本当に知りたい情報を、分かりやすく、そして詳しく解説していきます。偏差値や入試のことから、学校生活のリアルな様子、先輩たちの輝かしい進路まで、大分高専の魅力を余すところなくお伝えします。
ロボット開発で全国の舞台を目指したい、最先端のIT技術を身につけたい、あるいは私たちの暮らしを支える社会基盤をデザインしたい。そんな夢の第一歩を、この学校で踏み出してみませんか?この記事を読み終える頃には、あなたの未来の選択肢が、より鮮明に、そして魅力的に見えてくるはずです。
大分工業高等専門学校の基本情報
まずは、学校の基本的な情報を確認しておきましょう。
項目 | 内容 |
正式名称 | 独立行政法人国立高等専門学校機構 大分工業高等専門学校 |
公立/私立の別 | 国立 |
共学/男子校/女子校の別 | 男女共学 |
所在地 | 〒870-0152 大分県大分市大字牧1666番地 |
代表電話番号 | 097-552-6075 |
公式サイトURL | https://www.oita-ct.ac.jp/ |
大分工業高等専門学校の偏差値・難易度・併願校
未来のエンジニアを目指す多くのライバルが集まる大分高専は、大分県内でもトップクラスの難易度を誇ります。
学科ごとの偏差値は以下の通りです。
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機械工学科: 69
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電気電子工学科: 69
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情報工学科: 69
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都市・環境工学科: 69
偏差値69というのは、中学校のクラスの中でも常に上位の成績が求められるレベルです。大分県内の高校偏差値ランキングでは、150校以上ある中で3位に位置しており、その難易度の高さがうかがえます。全国にある国立高専の平均偏差値が約62であることからも、大分工業高等専門学校の学力水準は非常に高いと言えるでしょう。
合格のためには、内申点も重要ですが、それ以上に当日の学力検査で高得点を取ることが求められます。特に注意したいのが、入試は全国の国立高専で同じ日に同じ問題が出題される「全国一斉入試」である点です。さらに、大分高専の入試には特徴的なルールがあり、数学の得点が全受験生の平均点の60%に満たない場合は、他の教科の点数がどんなに高くても不合格となってしまいます。これは、技術者としての基礎となる論理的思考力や計算能力を非常に重視していることの表れです。
主な併願校としては、同じく高い学力レベルが求められる私立高校の特進コースが選ばれることが多いようです。具体的には、大分東明高等学校の「普通科特別進学コース」(偏差値66前後)や、大分高等学校の「普通科特進(選抜)コース」(偏差値65前後)などが挙げられます。
大分工業高等専門学校に設置されている学科・コース
大分工業高等専門学校には、未来の産業を支える4つの専門分野が用意されています。自分の興味や将来の夢に合わせて、最適な学科を選びましょう。
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機械工学科
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ロボットや自動車、航空機など、あらゆる「動くもの」の設計や製作技術を学びます。ものづくりや機械の仕組みに興味がある人におすすめです。
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電気電子工学科
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スマートフォンから電力システムまで、現代社会に不可欠な電気・電子・情報の技術を学びます。私たちの生活を動かすエネルギーや回路に興味がある人にぴったりです。
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情報工学科
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プログラミングやAI、ネットワーク技術など、デジタル社会の根幹をなす知識を学びます。ソフトウェア開発や新しいITサービスを創り出したい人におすすめです。
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都市・環境工学科
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橋や道路といった社会インフラの設計・建設から、自然環境を守る技術までを学びます。地図に残る大きな仕事や、持続可能な社会づくりに貢献したい人に最適です。
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大分工業高等専門学校の特色・校風
大分高専の雰囲気をキーワードで表すなら、「自由」「自主性」「大学のよう」「専門性の追求」といった言葉がぴったりです。
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宿題の量と勉強
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日々の宿題は一般的な高校に比べて少ないという声もありますが、授業の進度は非常に速く、内容は高度です。特にテスト前は真剣に勉強しないと、赤点(60点未満)を取ってしまう可能性があります。留年制度もしっかりと存在するため、自由な時間が多い分、自分で計画を立てて学習する「自主性」が何よりも大切になります。
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校則
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校則は非常に緩やかで、大学に近い雰囲気です。休み時間にスマートフォンを使用することはもちろん、服装に関する厳しい規定も少ないようです。アルバイトも許可されており、多くの生徒が学業と両立させています。この自由な校風に惹かれて入学を決める生徒も少なくありません。
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生徒たちの雰囲気
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「個性的で面白い人が多い」「自分の好きなことに没頭している人が集まる楽園」といった口コミが多く見られます。学年トップクラスだったような優秀な生徒も多く在籍しており、互いに刺激し合える環境です。いじめなどの話はほとんど聞かれず、平和で落ち着いた雰囲気の中で学校生活を送れるようです。
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制服
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制服はありますが、そのデザインについては様々な意見があるようです。ただ、校風が自由なため、制服の着こなしについては比較的寛容な傾向が見られます。
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土曜授業
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基本的に土曜日の授業はありません。
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この学校の最大の特色は、「自由と自己責任」のバランスです。先生方は各分野の専門家(博士号を持つ教員も多い)で、大学レベルのハイレベルな授業を展開しますが、手取り足取り教えるというよりは、学生の自主的な学びをサポートするスタンスです。そのため、自ら学ぶ意欲のある生徒にとっては最高の環境ですが、受け身の姿勢でいるとあっという間に取り残されてしまう厳しさも併せ持っています。
大分工業高等専門学校の部活動・イベント
部活動
大分高専では、勉強だけでなく部活動も非常に盛んです。運動部、文化部ともに充実しており、多くの学生が所属して活動を楽しんでいます。長期休暇中には、学校の敷地内にある合宿所で泊まり込みの練習を行う部もあるなど、本格的に打ち込める環境が整っています。
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運動部
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陸上競技部、サッカー部、野球部、バスケットボール部、バレーボール部、テニス部、柔道部、剣道部など、多彩な部活動が揃っています。特に、多くの部が九州地区の高専体育大会(高専大会)で活躍しており、日々の練習に励んでいます。
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文化部
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文化部の中でも特に有名なのが「ロボット研究部」です。
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ロボット研究部(ロボコン):
大分高専を象徴する存在とも言えるのが、このロボット研究部です。NHKが主催する「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト(高専ロボコン)」の常連校であり、全国でも屈指の強豪として知られています。過去には、大会最高の名誉である「ロボコン大賞」や、スポンサーである本田技研工業からの「Honda賞」をダブル受賞するなど、輝かしい実績を誇ります。近年も、地区大会での優勝や全国大会準優勝、技術賞、デザイン賞など、毎年何らかの賞を獲得し続けています。その独創的なアイデアと高い技術力は、まさに大分高専の「ものづくり教育」の成果そのものと言えるでしょう。
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イベント
5年間の学生生活を彩る、ユニークで楽しいイベントも大分高専の魅力の一つです。
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高専祭(こうせんさい)
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毎年10月下旬の土日に行われる、学校最大の文化祭です。各クラスや部活動が趣向を凝らした模擬店や展示、ステージパフォーマンスを披露します。地域住民にも開放され、毎年多くの来場者で賑わう一大イベントです。学生たちが日頃の研究や活動の成果を発表する貴重な機会でもあります。
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体育祭
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高専祭の直前、10月下旬の平日に開催されます。学科対抗で行われるため、クラスだけでなく学科全体の団結力が試される熱い一日となります。高専ならではのユニークな競技もあり、非常に盛り上がります。
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研修旅行・校外研修
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一般的な高校の修学旅行とは異なり、学年ごとに目的の異なる旅行が企画されています。例えば、2年生では日帰りの教養旅行、3年生では1泊2日の校外研修、そして4年生になると2泊3日の研修旅行が実施されます。学年が上がるにつれて、より専門的な視点での見学や研修が組み込まれていくのが特徴です。
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大分工業高等専門学校の進学実績
大分工業高等専門学校の卒業生は、社会から即戦力として高く評価されており、その進路は大きく「就職」と「進学」の2つに分かれます。
卒業生のうち、約6割が就職し、約4割が進学を選んでいます。特筆すべきは、就職希望者の就職率がほぼ100%であることです。これは、企業からの求人数が卒業生数をはるかに上回る「売り手市場」であることを意味しており、学生は多くの選択肢の中から自分の希望に合った企業を選ぶことができます。
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主な就職先
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卒業生は、日本を代表する大手企業や地元の優良企業で技術者として活躍しています。
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(例)日本製鉄、ENEOS、京セラ、小松製作所、シマノ、九州電力、JR西日本、大分キヤノン、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング、鹿島建設など、製造業、IT、インフラ、建設と幅広い分野にわたります。
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主な進学先(大学3年次編入)
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高専卒業生は、多くの国公立大学の3年次に編入することができます。これは、高専の5年間で大学2年次修了相当の単位を取得できるためです。
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国公立大学: 九州大学、大阪大学、熊本大学、九州工業大学、千葉大学、豊橋技術科学大学、大分大学など、全国の難関大学への編入実績が多数あります。
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専攻科への進学: 卒業後、さらに2年間専門分野を深く学びたい学生のために、大分高専には「専攻科」が設置されています。専攻科を修了すると、4年制大学卒業と同じ「学士」の学位を取得でき、大学院への進学も可能になります。卒業生の約2割がこの専攻科へ進学しています。
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このように、5年間の学びを終えた時点で、「一流企業でプロの技術者としてキャリアをスタートさせる」か、「難関大学でさらに高度な研究を続ける」かという、2つの質の高い選択肢が用意されているのが、大分高専の最大の強みの一つです。
大分工業高等専門学校の特長・アピールポイント
他の高校にはない、大分高専ならではのユニークな強みや取り組みを7つのポイントにまとめました。
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5年間の一貫した専門教育
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中学卒業後の15歳から5年間、途切れることなく専門分野を深く、体系的に学べるカリキュラムが組まれています。早期から専門性を身につけることで、社会で即戦力となる実践的な技術者を目指せます。
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未来を担う「半導体」教育プログラム
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近年、九州が「シリコンアイランド」として再び注目される中、産業界のニーズに応えるため、全学科の4年生を対象とした「半導体デバイス概論」という新しい授業を開講。企業の技術者を講師に招き、最先端の知識を学べる体制を整えています。
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九州大学との連携教育プログラム
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専攻科の学生を対象に、日本を代表する旧帝国大学の一つである九州大学工学部に在籍しながら学べる特別なプログラムがあります。このプログラムを修了すると、高専の専攻科修了証と九州大学の学士(工学)の両方を取得できます。
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全国トップレベルのロボコン実績
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ロボット研究部は、高専ロボコン全国大会の常連であり、最高賞の「ロボコン大賞」をはじめ数々の受賞歴を誇ります。この実績は、学校全体の「ものづくり」に対する情熱と高い技術力の象徴です。
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大学のような自由な校風と自主性の尊重
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緩やかな校則のもと、学生を「大人」として扱い、その自主性を尊重する文化が根付いています。この環境が、自ら考え行動する力を持った、自立した技術者を育てます。
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圧倒的な就職実績と多様な進路
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就職希望者の就職率はほぼ100%。大手企業への就職から、九州大学をはじめとする難関国公立大学への編入まで、卒業後の進路が非常に安定しており、多様な選択肢から自分の未来を選べます。
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産業界との強い連携
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「大分高専テクノフォーラム」などを通じて、地域の産業界と密接に連携しています。企業の技術者から直接指導を受けたり、共同研究に参加したりと、社会とのつながりの中で実践的に学べる機会が豊富にあります。
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大分工業高等専門学校の口コミ・評判のまとめ
在校生や卒業生からのリアルな声を集め、良い点と少し気になる点を公平にまとめました。
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良い点
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「先生の質が高い」: 特に専門科目の先生は、博士号を持つなどその分野のスペシャリストが多く、大学レベルの深い知識を教えてくれるという声が多数あります。
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「自由で過ごしやすい」: 校則が緩く、大学のような雰囲気で自分のペースで学べる点を高く評価する意見が目立ちます。個性的な仲間と出会えるのも魅力のようです。
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「専門知識が深く学べる」: 自分の興味のある分野をとことん追求したい生徒にとっては、これ以上ない環境だと感じられているようです。実験や実習設備も充実しています。
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「就職・進学に非常に強い」: 卒業後の進路の安定感は、生徒・保護者ともに大きな安心材料となっています。多くの選択肢から将来を選べる点が強みです。
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気になる点
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「自主性がないと厳しい」: 自由の裏返しとして、自分で勉強の計画を立てて実行できないと、授業についていけなくなるという厳しい指摘が多くあります。
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「勉強が大変で留年のリスクもある」: 授業の進度が速く、テストの合格ラインも高いため、楽に進級できるわけではありません。特にテスト前は相当な努力が必要との声があります。
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「興味がないと専門科目はつらい」: 5年間同じ専門分野を学び続けるため、入学後に「この分野は合わなかった」と感じてしまうと、モチベーションを維持するのが難しいという意見もあります。
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「進路の方向転換が難しい」: 一度入学すると、理系・工業系の道に進むことがほぼ決まります。文系の大学に進みたいなど、全く違う分野への進路変更は難しいのが現実です。
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アクセス・通学
大分高専への主な通学方法を紹介します。大分市内を中心に、県内各地から多くの生徒が通学しています。
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最寄り駅からのアクセス
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JR日豊本線「高城駅」: 学校から最も近い駅です。駅から学校までは徒歩で約25分かかります。
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JR「大分駅」: 大分県の中心駅である大分駅からは、バスの利用が便利です。
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大分バス: 大分駅前6番のりばから「萩原経由 明野団地行き」に乗車し、「大分高専」バス停で下車。所要時間は約20分です。学校の目の前に着くので最も便利です。
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その他、大分駅前のバス停から乗車し、学校から徒歩5〜10分の「奥山公園前」や「アクロス前」バス停で下車する方法もあります。
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通学エリア
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大分市内の生徒が最も多いですが、JRやバスの路線が充実しているため、別府市や臼杵市、佐伯市など、県内の広い範囲から通学している生徒がいます。また、遠方の生徒のために学生寮(明野寮)も完備されています。
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大分工業高等専門学校受験生へのワンポイントアドバイス
ここまで読んでくれてありがとうございます。もしあなたが、「ものづくりが大好き」「科学の力で未来を変えたい」と本気で考えていて、普通の高校生活では物足りないと感じているなら、大分工業高等専門学校は最高の選択肢になるはずです。ここは、好奇心を原動力に、自ら道を切り拓いていく人のための学校です。
受験勉強では、まず中学校の学習内容を完璧にすることが大前提です。その上で、必ず「高専の過去問」に挑戦してください。高専の入試問題は、公立高校の入試とは傾向が異なり、単なる暗記ではなく、知識を応用して考える力を問う問題が多く出題されます。特に、合否を分けると言っても過言ではない「数学」には力を入れましょう。なぜそうなるのか、本質を理解する学習を心がけてください。
大分高専での5年間は、決して楽な道のりではありません。しかし、そこで得られる専門知識、共に高め合う仲間、そして未来を切り拓く力は、あなたの人生にとってかけがえのない財産となるでしょう。挑戦する価値は十分にあります。あなたの情熱を、ぜひ試験にぶつけてください。応援しています!
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。