長崎県立大村高等学校は、350年以上の長きにわたる歴史を持つ、九州で最も古い藩校「集義館」をその源流とする伝統校です。その一方で、文部科学省から「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」の指定を受け、最先端の科学技術教育や探究活動に力を入れる革新的な一面も持ち合わせています。歴史と未来が交差するこの学び舎は、多くの可能性を秘めています。
大村高等学校が掲げる校是は「両道不岐(りょうどうふき)」。これは、学問と部活動は二つの異なる道ではなく、人間的成長を目指す上での一つの道である、という意味です。勉強はもちろん、部活動や学校行事にも全力で打ち込むことで、心身ともにバランスの取れた豊かな人間性を育むことを目指しています。この精神は、学校生活のあらゆる場面に息づいています。
高校選びは、皆さんのこれからの3年間、そしてその先の未来を方向づける、とても大切な決断です。このページは、そんな皆さんと保護者の方々のための、頼れる道しるべとなることを目指して作りました。偏差値や学科の情報だけでなく、学校生活のリアルな雰囲気や先輩たちの声まで、詳しくお伝えしていきます。さあ、一緒に大村高等学校の扉を開けてみましょう。
大村高等学校の基本情報
まずは、学校の基本的な情報を確認しておきましょう。
項目 | 内容 |
正式名称 | 長崎県立大村高等学校 |
公立/私立の別 | 公立 |
共学/男子校/女子校の別 | 男女共学 |
所在地 | 〒856-0835 長崎県大村市久原1-591 |
代表電話番号 | 0957-52-2660 |
公式サイトURL | https://www.news.ed.jp/omura-h/ |
大村高等学校の偏差値・難易度・併願校
高校選びで気になるのが、やはり偏差値や難易度ですよね。大村高等学校は学科によって難易度が異なるのが大きな特徴です。自分の目標に合わせて見ていきましょう。
学科・コース別 偏差値の目安
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文理探究科: 50-62
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普通科: 45-49
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家政科: 40-44
文理探究科の偏差値に幅があるのは、調査機関によって数値が異なるためですが、県内でもトップクラスの難易度であることは間違いありません。偏差値62という数値は、佐世保北高校や長崎北高校の普通科と並ぶレベル感を示しており、高い学力が求められます。一方、普通科や家政科は、それぞれ異なる目標を持つ生徒たちが集まるため、偏差値も多様です。
難易度のイメージと内申点の目安
大村高等学校の入試では、当日の学力試験の点数だけでなく、中学校での成績、つまり内申点も非常に重要視されます。特に注目したいのは、中学1年生から3年生までの成績が評価の対象になる点です。
合格した先輩たちのデータを見ると、例えば普通科に合格した先輩は、中学3年間を通じて45点満点中38点以上を安定して取っていました。最難関の文理探究科を目指すのであれば、3年間コンスタントに30点台後半の内申点をキープすることが一つの目安となるでしょう。これは、「受験は中3から」ではなく、中学入学時からコツコツと努力を積み重ねることが合格への鍵であることを示しています。
主な併願校
長崎県の公立高校入試では、基本的に一つの高校しか受験できません。そのため、多くの受験生が、万が一の場合に備えて私立高校を併願します。大村高等学校を受験する生徒がよく併願する私立高校には、以下のような学校があります。
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創成館高等学校
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鎮西学院高等学校
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長崎日本大学高等学校
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聖和女子学院高等学校(女子生徒の場合)
これらの高校の特進コースなどを併願先に選ぶことが多いようです。
大村高等学校に設置されている学科・コース
大村高等学校には、それぞれ特色の異なる3つの学科が設置されています。自分の興味や将来の夢に合わせて選べるのが魅力です。
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文理探究科
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どんなことを学ぶ場所なのか:文系・理系の枠にとらわれず、SSH事業を活かした探究活動やディベートなどを通じて、複雑な問題に対応できる柔軟な思考力を養います。
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どんな生徒におすすめか:特定の科目に縛られず幅広く学びたい、答えのない問いに挑戦するのが好きな知的好奇心旺盛な人におすすめです。
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普通科
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どんなことを学ぶ場所なのか:創立以来の歴史を持つ中心的な学科で、国公立大学や私立大学への進学を目指し、バランスの取れた学力を身につけます。2年次からは進路希望に応じたクラス編成で、きめ細やかな指導が受けられます。
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どんな生徒におすすめか:大学進学を考えているけれど、まだ具体的な夢が決まっていない人、自分の可能性を幅広く探りたい人におすすめです。
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家政科
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どんなことを学ぶ場所なのか:食物・被服・保育などの専門知識と技術を、豊富な実習を通して実践的に学びます。家庭科技術検定で複数の1級取得を目指すなど、高い専門性を追求できるのが特長です。
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どんな生徒におすすめか:「好き」を専門スキルにしたい人、資格取得や専門職(栄養士、デザイナー、保育士など)を目指したい人におすすめです。近年は国公立大学への進学実績も伸びています。
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大村高等学校の特色・校風
学校生活の雰囲気は、高校選びの重要なポイントです。ここでは、口コミなどから見える大村高校のリアルな姿に迫ります。
校風をキーワードで表すと、「文武両道」「伝統と革新」「探究心」「落ち着いた雰囲気」といった言葉が当てはまるでしょう。
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宿題の量は多い?少ない?
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「課題はそこそこあるけれど、無理な量ではない」という声が多いようです。ただし、全国レベルで活動するような忙しい部活動に所属している生徒にとっては、勉強との両立が大変だと感じることもあるようです。まさに「両道不岐」を実践するための、適度な負荷があると言えるかもしれません。
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校則は厳しい?緩やか?
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口コミでは「校則が厳しい」という意見が目立ちます。特に、定期的に行われる頭髪検査については、厳格だと感じる生徒が多いようです。
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しかし、その一方で、最近「スマートフォンの持ち込みがOKになった」「制服が新しくなって可愛くなった」という声もあり、時代に合わせて校則を緩和する動きも見られます。伝統を重んじつつも、変化を取り入れようとする姿勢がうかがえます。
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生徒たちの雰囲気は?
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全体的に真面目で落ち着いた雰囲気があるようです。生徒同士の仲は良く、いじめなどの話はあまり聞かれないという口コミもあります。学科やコースによって目標が異なる生徒たちが集まっていますが、お互いを尊重し合える環境のようです。
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アルバイトは可能?
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原則として禁止されています。ただし、家庭の事情などでどうしても必要な場合は、保護者からの申請に基づき、学校の許可を得て行うことが可能です。その際も、時間や業種に厳しい制限があるため、気軽にできる環境ではないと考えておきましょう。
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制服の評判は?
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制服は、近年モデルチェンジされました。以前の制服は「独特の紺色であまり可愛くない」という意見もありましたが、新しい制服は「かわいくなった」と在校生からも好評のようです。制服のデザインを重視する人にとっては、嬉しいポイントかもしれません。
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土曜授業はある?
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土曜授業の有無に関する明確な情報は見当たりませんでした。模擬試験などが土曜日に行われることはあるようです。詳しい情報は、学校説明会などで直接確認することをおすすめします。
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大村高等学校の部活動・イベント
部活動
「両道不岐」を掲げる大村高等学校は、部活動が非常に盛んです。体育部23、文化部13と、たくさんの選択肢の中から自分の打ち込みたいものを見つけることができます。
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特に有名な部活動
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漕艇部(ボート部):1世紀以上の長い歴史を誇る、学校を象徴する部活動の一つです。学校近くの大村湾や諫早市の本明川で日々練習に励み、九州大会や全国大会(インターハイ)の常連として輝かしい成績を収めています。そのひたむきな姿は、まさに大高精神の体現と言えるでしょう。
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陸上部、弓道部、ソフトテニス部:これらの部活動も、個人・団体ともに九州大会や全国大会で活躍する強豪です。高いレベルで競技に打ち込みたい生徒にとって、素晴らしい環境が整っています。
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全体の様子
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体育部だけでなく、文化部も活発です。文芸部が県のコンクールで最優秀賞を受賞するなど、文化的な活動でも高い実績を上げています。多くの生徒が部活動に加入し、勉強と両立しながら充実した毎日を送っています。
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イベント
学校生活を彩るイベントも、大村高校の大きな魅力です。
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五教祭(ごきょうさい)
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毎年9月か10月に行われる文化祭です。各クラスや文化部が趣向を凝らした展示やステージ発表を行い、学校中が活気に包まれます。中でも一番の見どころは、家政科3年生によるファッションショーです。生徒たちが1年間かけて製作した衣装を身にまとい、本格的なショーを繰り広げる姿は圧巻の一言。そのクオリティの高さから地域でも評判となり、近年は一般公開もされています。
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体育祭
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五教祭と同じく秋に開催される体育祭は、生徒たちのエネルギーが爆発する一日です。クラス対抗で様々な競技に全力で取り組み、応援にも熱が入ります。生徒たちがハツラツと躍動する姿が見られます。
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修学旅行
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修学旅行は、単なる観光旅行ではなく、学びの要素が強いのが特徴です。近年では熊本・鹿児島を訪れ、震災からの復興や自然環境について学ぶプログラムが実施されました。過去には福島県を訪問し、東日本大震災について学ぶ機会もあったようです。仲間との思い出作りはもちろん、社会について深く考える貴重な体験ができます。
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大村高等学校の進学実績
多くの生徒が大学進学を目指す大村高等学校は、その希望を叶えるための確かな実績を持っています。卒業生の約9割が大学や短大へ進学しており、県内でも有数の進学校です。
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国公立大学
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特に国公立大学への進学実績が豊富で、毎年多くの合格者を輩出しています。近年の主な合格先には、以下のような大学があります。
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九州大学
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九州工業大学
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長崎大学(薬学部、工学部、情報データ科学部など)
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佐賀大学
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鹿児島大学
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山口大学
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長崎県立大学
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特に、SSH指定校としての強みを活かし、理学部や工学部といった理系の難関学部への合格者が多いのが特徴です。
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難関私立大学
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国公立大学だけでなく、全国の有名私立大学にも多くの生徒が進学しています。
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その他の進路
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家政科の生徒を中心に、専門学校でさらに専門的な技術を学んだり、地元企業へ就職したりする生徒もいます。一人ひとりの希望に合わせた多様な進路選択が可能です。
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進学実績を支える取り組み
高い進学実績の背景には、学校独自の手厚いサポート体制があります。その中心となるのが「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」の取り組みです。通常の授業に加えて、大学や研究機関と連携した「探究活動」が行われます。生徒たちは自ら課題を設定し、仮説を立て、実験や調査を通じて検証し、発表するという一連のプロセスを経験します。この経験を通じて培われる論理的思考力や表現力は、大学入試、特に推薦入試や面接などで大きな力となります。
大村高等学校の特長・アピールポイント
他の高校にはない、大村高等学校ならではの強みや魅力をまとめました。
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九州最古の藩校がルーツの深い歴史と伝統
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350年以上の歴史を持つ学び舎で過ごす3年間は、他では得られない誇りと経験になります。
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文部科学省指定「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」
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全国で約200校しか指定されていないSSH校として、大学レベルの最先端の科学探究活動に参加できます。
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文理の壁を越える先進的な「文理探究科」
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これからの社会で不可欠となる文理融合の視点を、独自のカリキュラムで高校時代から身につけることができます。
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「両道不岐」を体現する全国レベルの部活動
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100年以上の歴史を誇る漕艇部をはじめ、多くの部活動が全国で活躍しており、勉強と両立しながら高みを目指せる環境です。
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高い専門性を誇る家政科と圧巻のファッションショー
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プロレベルの技術を学び、資格取得も目指せる家政科は、文化祭のファッションショーが地域でも評判になるほどの人気を誇ります。
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約9割という高い大学進学率
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SSHでの探究活動や手厚い進路指導により、国公立大学を中心に多くの生徒が希望の進路を実現しています。
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新しくなった快適な校舎と制服
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近年、校舎が建て替えられ、学習環境は非常に快適です。制服もリニューアルされ、生徒からの評判も上々です。
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大村高等学校の口コミ・評判のまとめ
ここでは、在校生や卒業生から寄せられた、よりリアルな声を紹介します。良い点と気になる点の両方を知ることで、入学後のミスマッチを防ぎましょう。
良い点
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「勉強と部活を両立できる環境が整っている」という声が非常に多いです。「文武両道」を目指す生徒にとって、最高の環境だと感じられているようです。
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「生徒同士の仲が良く、いじめなども聞かない」といった、良好な人間関係を評価する声が見られます。クラスの団結力が強く、行事なども盛り上がるようです。
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「校舎が建て替えられて綺麗で快適」という意見があります。新しい校舎で気持ちよく学校生活を送れるのは大きなメリットです。
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「SSHの活動など、大学進学に有利な経験ができる」という、学習内容の質の高さを評価する声もあります。
気になる点
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「校則、特に頭髪検査が厳しい」という声は、昔から根強くあります。ただし、前述の通り、最近はスマホが許可されるなど緩和される傾向も見られます。
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「自称進学校的なプレッシャーを感じる」という意見もあります。課題の量が多かったり、先生からの期待が重荷になったりすることがあるようです。
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「先生の授業の質にばらつきがある」という声も一部で見られます。熱心で分かりやすい先生がいる一方で、教科書を読むだけの授業だと感じる生徒もいるようです。
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「学校までの坂道(大高坂)がとにかくキツい」という声は、多くの生徒が共感する点のようです。特に自転車通学の生徒にとっては、毎日の体力づくりになっている、というユーモアを交えた意見も見られます。
アクセス・通学
毎日のことだから、通学のしやすさも大切です。
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最寄り駅とアクセス
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最寄り駅は、JR大村線の「大村駅」です。
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大村駅から学校までは、徒歩で約20分から25分ほどの距離です。駅から自転車を利用して通学する生徒も多いようです。
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バスでのアクセス
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最寄りのバス停は、長崎県営バスの「大村公園」または「玖島中学校」です。バス停からは、徒歩で約5分から7分で学校に着きます。
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通学エリアと「大高坂」
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多くの生徒は大村市内から通学していますが、諫早市など近隣の市町村からJRを利用して通う生徒もいます。
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どの交通手段を使っても、最後には「大高坂」と呼ばれる急な坂道を登ることになります。この坂は、大村高校のシンボルの一つでもあり、3年間通い続けることで足腰が鍛えられる、という話は卒業生の間で語り継がれています。
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大村高等学校受験生へのワンポイントアドバイス
ここまで読んでくれてありがとうございます。最後に、進学アドバイザーとして、大村高等学校を目指す皆さんへメッセージを送ります。
大村高等学校は、ただ言われたことをこなすだけでなく、勉強にも部活動にも、そして探究活動にも、自ら目標を立てて夢中になれるエネルギーを持った生徒に特におすすめしたい学校です。「両道不岐」の精神のもと、時には忙しく大変なこともあるかもしれませんが、その分、他では味わえないような達成感と充実感に満ちた3年間を送ることができるでしょう。
受験勉強においては、文理探究科や普通科の上位大学を目指すのであれば、5教科ともに苦手科目を作らないバランスの良さが求められます。また、内申点が重視されるため、中学1年生の時から授業態度を真剣にし、提出物をきちんと出し、定期テストで一点でも多く点数を取る、という日々の積み重ねが何よりも大切です。大村高等学校は、そうした真面目な努力をしっかりと評価してくれる学校です。
高校選びは、皆さんの未来への大きな一歩です。この情報が、その一歩を踏み出すための助けになれば嬉しいです。ぜひ一度、学校説明会や五教祭に足を運んで、自分の目で大高の雰囲気を感じてみてください。皆さんの挑戦を心から応援しています!
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。