大阪府立天王寺高等学校、通称「天高(てんこう)」。その名は、大阪屈指の学力を誇る進学校として広く知られています。しかし、この学校の真の魅力は、高い偏差値だけでは語り尽くせません。
天王寺高等学校が掲げる「秀才を誇らず野人を誇り、名門を言わず実力をいう」というユニークなモットーは、単なる学力エリートではなく、たくましい精神力と人間力を備えた人物を育てるという、学校の強い意志を表しています。ここでは、そんな天高での3年間がどのようなものなのか、偏差値や進学実績といったデータはもちろん、学校生活のリアルな姿、在校生や卒業生の正直な声まで、あらゆる角度から深く掘り下げていきます。
この記事を読み終える頃には、天王寺高等学校があなたにとって、ただの憧れの進学校から、3年間の青春を懸けて挑戦する価値のある、具体的な目標へと変わっているかもしれません。
天王寺高等学校の基本情報
まずは、学校の基本的な情報を確認しておきましょう。
項目 | 内容 |
正式名称 | 大阪府立天王寺高等学校 |
公立/私立の別 | 公立 |
共学/別学 | 男女共学 |
所在地 | 〒545-0005 大阪府大阪市阿倍野区三明町2-4-23 |
代表電話番号 | 06-6629-6801 |
公式サイトURL | https://tennoji-hs.jp/ |
天王寺高等学校の偏差値・難易度・併願校
天王寺高等学校への進学を考える上で、最も気になるのがその難易度でしょう。具体的なデータと共に、合格に必要なレベルをイメージしてみましょう。
最新の偏差値は「文理学科」でと、大阪府内、さらには全国でもトップクラスに位置しています。この数値は、学力上位約1%以内に入るレベルであり、中学校でトップクラスの成績を維持し続けることが大前提となります。
大阪府内の公立高校では、北野高校(偏差値)に次ぐ第2位の難易度を誇り、三国丘高校(偏差値)、大手前高校(偏差値)、茨木高校(偏差-値)といった名門校と共に、府内の最難関グループを形成しています。
高校名 | 偏差値 |
北野高等学校 | 76 |
天王寺高等学校 | 75 |
三国丘高等学校 | 74 |
大手前高等学校 | 73 |
茨木高等学校 | 73 |
合格を勝ち取るためには、学力検査での高得点だけでなく、中学校での成績を示す内申点も極めて重要です。目安としては、満点のに近い点数が求められ、具体的には点以上が目標となります。これは、主要教科だけでなく、副教科においても手を抜かず、3年間を通じて真摯に授業に取り組む姿勢が評価されることを意味します。この非常に高い学力と内申点の両立が求められる点こそが、天王寺高等学校の入試の厳しさであり、入学してくる生徒たちが優れた学力と高い学習意欲を兼ね備えている理由でもあります。
大阪府の公立高校入試では、他の公立高校との併願はできません。そのため、天王寺高等学校の受験生は、滑り止めとして難関私立高校を併願するのが一般的です。主な併願校としては、いずれも全国的に有名な進学校である西大和学園高校、清風南海高校、四天王寺高校、帝塚山高校などが挙げられます。これらの併願校の選択からも、天高を目指す受験生層のレベルの高さがうかがえます。
天王寺高等学校に設置されている学科・コース
現在の天王寺高等学校に設置されているのは「文理学科」のみです。かつては普通科も設置されていましたが、現在は廃止され、全ての生徒が同じ文理学科で学ぶことになります。この統一された学科体制は、入学した生徒全員がまず「天高生」としての一体感を持ち、共通の強固な学力基盤を築くことを意図しています。
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文理学科
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どんなことを学ぶ場所か?:1年次では、国語・数学・英語などの主要科目に重点を置いた共通カリキュラムで、文系・理系問わず高いレベルの基礎学力を徹底的に養います。2年次からは、各自の進路希望に応じて「文科(ヒューマニティーズコース)」と「理科(サイエンスコース)」に分かれ、より専門的な学習へと進みます。
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どんな生徒におすすめか?:将来、国公立大学や難関私立大学への進学を強く希望し、文系・理系どちらの分野においても深い教養と探究心を身につけたい生徒におすすめです。
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特に注目すべきは、天王寺高等学校独自の学校設定科目「創知(そうち)」です。これは、単なる知識の習得に留まらず、自ら課題を発見し、情報を収集・分析し、解決策を導き出して発表する「探究活動」を行う授業です。情報活用能力、科学的な英語表現、ディベートといったスキルを統合的に学びながら、大学での研究や社会での問題解決に直結する実践的な力を育てます。この「創知」は、文部科学省から指定されているSSH(スーパーサイエンスハイスクール)としての取り組みを具体化した、天高教育の核となるプログラムです。
天王寺高等学校の特色・校風
天王寺高等学校の雰囲気を知る上で欠かせないキーワードが、「自由闊達(じゆうかったつ)」と「質実剛健(しつじつごうけん)」です。この言葉通り、生徒の自主性を重んじる自由な雰囲気と、心身を鍛えることをいとわない、たくましい気風が共存しています。
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宿題の量:口コミでは「課題が多い」「予習・復習をしないとすぐについていけなくなる」といった声が多く見られ、学習量はかなり多いようです。学校側も、生徒が高いレベルの学習をこなすことを前提としており、日々の努力が不可欠です。
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校則(スマホ、服装など):服装については、決まった制服はなく、私服での登校が認められています。ただし、式典などのフォーマルな場では着用が求められる「標準服」は存在します。自由な校風の象徴ですが、TPOをわきまえた服装が求められます。スマートフォンの校内での使用は原則として禁止されており、行事の際に写真撮影などで限定的に許可されることがあるようです。
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生徒たちの雰囲気:生徒は個性的で自立した人が多く、知的な刺激にあふれた環境です。「文武両道」を地で行く生徒が多く、勉強、部活、行事と非常に忙しい毎日を送っています。一方で、その環境は厳しさも伴います。「勉強する気がないなら苦痛」「落ちこぼれると自力で這い上がる必要がある」という声もあり、高いレベルでの自己管理能力が求められます。かつて成績不振の生徒が「天カス」と揶揄されたという話があるほど、内部での競争は熾烈です。
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アルバイト:アルバイトに関する明確な規定の情報は見当たりませんでした。学業や部活動が非常に忙しいため、両立は現実的に難しいかもしれませんが、詳細は学校に直接確認することをおすすめします。
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制服の評判:前述の通り、普段は私服通学が可能です。標準服のデザインについては個人の好みが分かれるところですが、女子生徒の中には、市販のアイテムを組み合わせた「なんちゃって制服」で登校を楽しむ人もいるようです。
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土曜授業:年間で8回から10回程度、正規の授業として土曜授業(午前4コマ)が実施されます。それ以外の土曜日も、希望者向けの「土曜講習」や自習室の開放など、学習機会が豊富に提供されています。
天高の「自由」とは、何もしなくてよい自由ではなく、自らを律し、高い目標に向かって努力する自由です。この自由と責任が表裏一体となった環境こそが、天高生の驚異的な自立心と精神的な強さを育む土壌となっているのです。
天王寺高等学校の部活動・イベント
天高の教育方針である「鍛錬主義」や「野人」の精神は、部活動や学校行事に色濃く反映されています。これらは単なる息抜きではなく、人間力を育むための重要な教育活動と位置づけられています。
部活動
部活動への加入率は約9割以上と非常に高く、ほとんどの生徒が勉強と両立させながら活動に打ち込んでいます。限られた時間の中で成果を出す「効率よく工夫された」活動が信条です。
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硬式野球部:府内屈指の強豪として知られ、激戦区の大阪で公立高校ながら夏の大会2年連続ベスト32という快挙を成し遂げています。6年連続で初戦を突破するなど、安定した実力を誇ります。
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山岳スキー部:インターハイ(全国高等学校総合体育大会)に駒を進めるなど、全国レベルで活躍しています。
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その他の部活動:運動部では陸上部、ラグビー部、フィールドホッケー部などが、文化部ではSSH指定校らしく物理研究部や生物研究部といった探究色の強いクラブや、全国レベルの競技かるた部などが活発に活動しています。また、多くの部で卒業生によるOB・OG会が組織され、後輩たちを力強く支援しているのも天高の伝統です。
イベント
天高の学校行事は、ユニークで記憶に残るものが数多くあります。
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運動会:体育祭ではなく「運動会」と呼ばれ、生徒が主体となって運営されます。名物は3年生による「陸上ボート」という競技で、クラスの団結力が試される迫力満点のレースです。夜には「ファイアーストーム」も行われ、大きな盛り上がりを見せます。
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文化展示発表会(文展):一般的な文化祭とは異なり、各クラスや文化部による研究発表や作品展示が中心の、学術的な色合いが濃いイベントです。日頃の学習や探究活動の成果を披露する場となっています。
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修学旅行:2年生の秋に実施されます。近年の行き先は沖縄で、3泊4日の日程でマリンスポーツや文化体験、最終日には班ごとに計画を立ててタクシーで名所を巡る研修などが行われました。
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伝統の鍛錬行事:
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水泳訓練:1年生の夏に行われる2泊3日の臨海学校。福井県の若狭湾で遠泳に挑む、今では珍しい伝統行事です。自然の厳しさの中で心身を鍛え、仲間との絆を深めます。
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金剛登山・耐寒訓練:体力と精神力を鍛えることを目的とした、まさに「質実剛健」を体現する行事です。
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芸術鑑賞会:文楽や能・狂言といった日本の伝統芸能を鑑賞する機会が設けられており、「本物」に触れることを重視する教育方針がうかがえます。
これらの行事は、学力だけでは測れないたくましさ、協調性、そしてやり遂げる力を育む、天高ならではの「野人」教育の真骨頂と言えるでしょう。
天王寺高等学校の進学実績
天王寺高等学校の教育の成果は、その圧倒的な大学進学実績に明確に表れています。生徒たちの努力と、学校の強力なサポート体制が結実した結果です。
2025年春の卒業生(現役・既卒含む)の主な大学合格者数は以下の通りです。
大学分類 | 主な大学名と合格者数 |
国公立大学 | 東京大学 4名、京都大学 53名、大阪大学 54名、神戸大学 36名、北海道大学 8名、東北大学 4名、名古屋大学 3名、九州大学 4名、大阪公立大学 60名 など 国公立大学合計 304名 |
国公立大学医学部医学科 | 合計 16名 |
難関私立大学 | 同志社大学 132名、立命館大学 106名、関西大学 75名、関西学院大学 65名、早稲田大学 10名、慶應義塾大学 8名 など |
これらの輝かしい実績は、生徒個人の頑張りだけに支えられているわけではありません。天高には、生徒の進路実現を後押しする独自の強力なサポート体制があります。
その代表格が「桃陰(とういん)セミナー」です。これは、土曜日に行われる自学自習支援システムで、最大の特徴は、指導役を天高の卒業生である現役大学生が務める点にあります。つい最近まで同じ環境で学び、受験を乗り越えた先輩から、勉強の質問はもちろん、大学生活や進路選択についてリアルなアドバイスをもらえる貴重な機会です。このセミナーは、公立高校でありながら、まるで手厚い予備校のようなサポートを受けられる、天高の大きな強みです。
この他にも、生徒のニーズに応じた「土曜講習」や「平日補習」、さらには教員が過去の入試問題を徹底分析して作成する「手作りの模試」など、教員と卒業生が一体となった重層的なサポート体制が、生徒一人ひとりの高い志を現実のものにしています。
天王寺高等学校の特長・アピールポイント
数ある進学校の中で、天王寺高等学校が際立った個性を放っている理由を、5つのポイントにまとめました。
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「秀才」と「野人」を育む独自の教育哲学
学力だけでなく、困難に立ち向かう精神的な強さや人間的な魅力を兼ね備えた人物の育成を目指す、他に類を見ない教育文化が根付いています。
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SSHとGLHSのダブル指定による高度な学び
国から「スーパーサイエンスハイスクール」、府から「グローバルリーダーズハイスクール」の指定を受け、独自の探究学習「創知」や活発な国際交流など、質の高い教育プログラムが実践されています。
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「本物」に触れる機会「天高アカデメイア+」
各分野の第一線で活躍する大学教授や専門家を招いて行われる講演会シリーズです。知的好奇心を刺激し、将来の夢を具体化する貴重な体験ができます。
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卒業生が支える最強のサポート「桃陰セミナー」
現役大学生のOB・OGが後輩の学習を無償でサポートする伝統の自習セミナー。勉強の疑問解消だけでなく、身近なロールモデルとの交流が大きなモチベーションになります。
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心身を鍛える忘れられない伝統行事
遠泳に挑む「水泳訓練」や「金剛登山」など、一見すると厳しい伝統行事が、一生ものの友情と何事にも屈しない強靭な精神力を育みます。
天王寺高等学校の口コミ・評判のまとめ
在校生や卒業生の声からは、天王寺高等学校のリアルな姿が浮かび上がってきます。良い点と気になる点を公平に見ていきましょう。
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良い点
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「周りの生徒のレベルが非常に高く、常に良い刺激を受けられる」
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「先生方の授業レベルが高く、知的好奇心を満たしてくれる」
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「行事が本当に楽しく、全力で取り組むことでクラスの団結力が強まる」
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「自由な校風の中で、自分で考えて行動する自主性が身についた」
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「勉強も部活も行事も、全てに本気で取り組める充実した3年間だった」
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気になる点(注意点)
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「授業は上位層に合わせて進むため、少しでも油断するとすぐについていけなくなる」
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「基本的に『自主性』に任されるので、落ちこぼれた時のフォローは手厚くないと感じる」
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「『自分よりすごい才能の持ち主がいる』という現実を突きつけられ、自信を失いそうになることもある」
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「課題や行事が多く、とにかく忙しい。体力と自己管理能力がないと辛い」
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「校舎や施設が少し古いという意見がある」
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これらの口コミは、天高が「万人に合う学校ではない」ことを示唆しています。しかし、その厳しさこそが、この学校で成功するために必要な資質を教えてくれます。高い目標を持ち、自律的に努力できる生徒にとっては、これ以上ない成長の場となるでしょう。
アクセス・通学
天王寺高等学校は、複数の路線・駅から徒歩圏内という、非常に交通の便が良い場所にあります。
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JR阪和線「美章園」駅より徒歩約4〜5分
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近鉄南大阪線「河堀口」駅より徒歩約4〜5分
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JR環状線「寺田町」駅より徒歩約8分
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Osaka Metro 谷町線「文の里」駅より徒歩約7分
これだけ多くの路線が利用できるため、大阪市内はもちろん、府内の広範囲から生徒が通学しています。地域のトップ層が、交通の便の良さを活かして集まってくる、まさに大阪の教育のハブの一つと言えます。
天王寺高等学校受験生へのワンポイントアドバイス
ここまで読んでくれてありがとうございます。天王寺高等学校が、単に偏差値が高いだけの学校ではないことが、きっと伝わったことでしょう。最後に、進学アドバイザーとして、天高を目指す君たちにエールを送ります。
天王寺高等学校は、「難関大学に合格したい」という目標はもちろんのこと、「知的好奇心を満たしたい」「困難な挑戦にワクワクする」そんな君を待っています。自由には責任が伴うことを理解し、それを自らの力に変えられる強い意志を持つ人、そして、仲間と切磋琢磨しながら、スマートな「秀才」であると同時に、たくましい「野人」へと成長したいと願う君にとって、天王寺高等学校は最高の舞台となるはずです。
受験勉強では、苦手科目を作らないことが鉄則です。難易度の高いC問題が出題される学力検査、そしてほぼ完璧を求められる内申点、どちらも取りこぼしは許されません。今のうちから、言われてからやるのではなく、自分で計画を立てて学習する「自学自習」の習慣を確立してください。その習慣こそが、天高合格への鍵であり、入学後、君を支える最大の武器になります。健闘を祈っています!
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。