神奈川県立湘南高等学校は、県内トップクラスの学力だけでなく、日本一とも称される熱い学校行事と、生徒の自主性を最大限に尊重する自由な校風で、多くの受験生の憧れを集める特別な場所です。
この学校の根底には、「勉強・部活・行事」の三つすべてに全力で挑戦する「三兎を追え」という独特の精神が流れています。それは、単なる文武両道を超えた、高校生活のすべてを味わい尽くすというエネルギッシュな生き方そのものです。高い目標を掲げ、湘南高等学校という選択肢を考えているあなたは、すでに素晴らしい一歩を踏み出しています。
この記事では、偏差値や進学実績といったデータはもちろん、在校生が語るリアルな学校生活、熱気に満ちたイベントの様子まで、湘南の魅力を余すところなくお伝えします。この記事が、あなたにとって最高の高校選びの助けとなることを心から願っています。
湘南高等学校の基本情報
まずは、湘南高等学校の基本的な情報を確認しましょう。学校選びの第一歩として、正確な情報を把握しておくことはとても大切です。
項目 | 内容 |
正式名称 | 神奈川県立湘南高等学校 |
公立/私立の別 | 公立 |
共学/男子校/女子校の別 | 男女共学 |
所在地 | 〒251-0021 神奈川県藤沢市鵠沼神明5-6-10 |
代表電話番号 | (0466)26-4151 |
公式サイトのURL | https://www.pen-kanagawa.ed.jp/shonan-h/ |
湘南高等学校の偏差値・難易度・併願校
湘南高等学校がどれくらいの難易度なのか、具体的な数字やデータをもとに見ていきましょう。目標設定の参考にしてください。
偏差値・難易度
湘南高等学校の偏差値は非常に高く、神奈川県の公立高校の中では横浜翠嵐高校に次ぐトップレベルに位置しています。
-
普通科:
この偏差値 という数字は、受験生全体の上位約1%に位置することを意味しており、最難関レベルであることが分かります。
合格の目安となる内申点や学力検査の得点も非常に高い水準が求められます。2024年度入試のデータによると、合格者の平均点は以下のようになっています。
-
合格に必要な内申点の目安: 点
-
合格に必要な学力検査の目安: 点
-
合格に必要な特色検査の目安: 点
内申点は、中学2年生と3年生の成績が評価対象となりますが、ほぼ全ての教科で最高の「5」を獲得する必要がある計算です。このことからも、日々の授業態度や定期テストへの真摯な取り組みがいかに重要かがわかります。
さらに、神奈川県の公立トップ校入試で特徴的なのが、選考基準の比率です。湘南高校は「内申:学力検査:特色検査」の比率が「」となっています。これは、内申点ももちろん重要ですが、それ以上に当日の学力検査と、思考力・判断力・表現力が問われる特色検査の結果が合否を大きく左右することを示しています。内申点で高得点を取る生徒が集まる中で、最終的な決め手となるのは、難易度の高い入試問題に対応できる学力と、初見の問題にも臆せず立ち向かう思考力なのです。
主な併願校
神奈川県の公立高校入試では、他の公立高校を併願することはできません。そのため、湘南高等学校を受験する生徒の多くは、万が一の場合に備えて、難関私立高校を併願します。主な併願先としては、以下のような高校が挙げられます。これらの学校もまた、高い学力レベルを誇る人気の進学校です。
-
山手学院高等学校
-
桐蔭学園高等学校
-
桐光学園高等学校
-
中央大学附属横浜高等学校
-
法政大学第二高等学校
-
鎌倉学園高等学校
湘南高等学校に設置されている学科・コース
湘南高等学校に設置されている学科は「普通科」のみです。しかし、「普通科」という名前からは想像できないほど、その教育内容はユニークで、生徒の知的好奇心と主体性を引き出す工夫に満ちています。
-
普通科
-
どんなことを学ぶ場所か:1・2年生ではクラス単位で幅広い教養を学び、3年生になると文系・理系など4つのコースに分かれて専門性を深めます。特に3年生では選択科目が豊富に用意されており、一人ひとりの進路希望に合わせた時間割を組むことが可能です。
-
どんな生徒におすすめか:特定の分野に絞らず、まずは幅広い知識を身につけたい人、そして将来の目標に合わせて自分の学びをデザインしたい人におすすめです。
-
湘南高校の授業は、1コマが70分と、一般的な高校の50分授業よりも長く設定されています。これは、一つ一つの授業を細切れにせず、実験や議論、演習といった活動にじっくり時間をかけることで、より深く、本質的な理解を目指すための工夫です。この長い授業時間に対応するためには、高い集中力と学問への探究心が求められます。また、時間割は2週間を1サイクルとして組まれており、毎週同じ授業が行われるわけではないという点も特徴的です。
湘南高等学校の特色・校風
湘南高等学校の最大の魅力は、その独特の校風にあると言っても過言ではありません。キーワードは「自由闊達」「生徒主体」「圧倒的な熱量」です。
学校全体の雰囲気
湘南高校の校風を最もよく表すのが、「生徒への信頼」に基づいた自由な環境です。学校側が生徒を細かく管理するのではなく、生徒一人ひとりの自主性と責任感を信じ、その可能性を最大限に引き出すことを目指しています。
-
宿題の量:量は「多い」と感じる生徒が多いようです。特に、70分授業の効果を最大限に引き出すためには、予習・復習が不可欠とされています。勉強、部活、行事の「三兎」を追いかける生活は「とにかく忙しい」という声が多く、効率的な時間管理が求められます。
-
校則(スマホ、服装など):校則は非常に緩やかで、生徒の自主性に任されています。髪を染めたり、ピアスを開けたりすることも基本的には自由です。制服(男子は学ラン、女子はブレザー)はありますが、パーカーやセーターを自由に着こなすなど、個性を表現することが認められています。服装検査などもほとんどありません。スマホの持ち込みも可能で、校内での使用も常識の範囲内で認められています。
-
生徒たちの雰囲気:非常に活気があり、エネルギッシュです。勉強も部活も行事も、すべてに全力で取り組むのが「湘南生」のスタイル。周りの仲間が頑張っているから自分も頑張れる、という相乗効果が生まれる環境です。個性的な生徒が多く、互いの違いを尊重し合う文化が根付いているため、いじめなどはほとんど聞かれません。
-
アルバイト:可能です。忙しい学校生活との両立は大変ですが、自己管理のもとで行っている生徒もいます。
-
制服の評判:制服そのものはスタンダードなデザインですが、カーディガンやリボンなどで自由にアレンジできるため、生徒からの評判は良いようです。
-
土曜授業:学力向上進学重点校として、模試や補習などで土曜日を活用することはあるようです。詳細は学校説明会などで確認することをおすすめします。
この「自由」は、何もしなくてよい自由ではありません。むしろ、自らを律し、高い目標に向かって努力するための「責任を伴う自由」です。学校から与えられた自由な時間と環境をどう使うか、その選択が生徒一人ひとりに委ねられています。この環境こそが、湘南生の高い自己管理能力と、困難な課題をやり遂げる人間力を育んでいるのです。
湘南高等学校の部活動・イベント
「三兎を追え」の精神を象徴するのが、非常に盛んな部活動と、熱気に満ちた学校イベントです。
部活動
湘南高等学校の生徒のほとんどが部活動に加入しており、その加入率は97%にも達します。運動部と文化部を掛け持ちする「兼部」も珍しくなく、中には3つ以上の部活で活動する生徒もいるほどです。
運動部、文化部ともに非常に数が多く、全国レベルや関東大会レベルで活躍する部も少なくありません。
-
特に有名な部活動
-
フェンシング部:全国大会の常連で、インターハイ出場選手を輩出するなど、輝かしい実績を誇ります。OB・OG会によるサポートも手厚いようです。
-
合唱部:全国的に有名な指導者のもと、毎年全国大会に出場するほどのハイレベルな活動をしています。
-
クイズ研究部:テレビ番組の「高校生クイズ」で本選に出場するなど、知の競技でも活躍しています。
-
陸上競技部、水泳部、卓球部など:多くの運動部が県大会で上位入賞し、関東大会へ駒を進めています。
-
-
珍しい部活動
-
ジャグリング部、競技かるた部、鉄道研究部、気象部など、他の高校ではあまり見られないユニークな部活動も充実しており、生徒の多様な興味に応えています。
-
イベント
湘南高校の学校行事は、そのほとんどが生徒主体で企画・運営されます。中でも体育祭は、学校の枠を超えて知られる伝説的なイベントです。
-
体育祭:9月に行われる湘南高校最大のイベントで、「自称“日本一の体育祭”」を掲げています。全校生徒が1年生から3年生までの縦割りで9つの色に分かれ、総合優勝を目指します。一般的な競技だけでなく、50年以上の伝統を持つ「仮装演技」や、畳21畳分にもなる巨大な背景画(デコ)の制作など、芸術性や創造性も競われます。企画から運営まで生徒の実行委員会が担い、夏休みを返上して準備にあたるなど、その熱量は圧倒的です。
-
文化祭:6月に定時制と合同で開催されます。部活動の発表の場が中心で、グラウンドのステージで行われるパフォーマンスは大変な盛り上がりを見せます。
-
合唱コンクール:7月に鎌倉芸術館などの本格的なホールを借りて行われます。クラス一丸となって練習に励み、美しいハーモニーを響かせます。
-
対組陸上記録会:5月に行われるクラス対抗の陸上大会で、新入生にとってはクラスの団結力を高める最初の大きなイベントです。
特に3年生にとって、9月の体育祭は高校生活の集大成です。この一大イベントに全力を注いだ後、一気に受験モードへと切り替わります。この切り替えが非常に重要で、体育祭が終わってから本格的な受験勉強を始める生徒も少なくありません。そのため、1・2年生のうちからしっかりとした学力の土台を築いておくことが、難関大学合格への鍵となります。
湘南高等学校の進学実績
「三兎を追え」を実践し、充実した高校生活を送りながらも、湘南高等学校の生徒たちは驚異的な進学実績を残しています。神奈川県から「学力向上進学重点校」に指定されており、質の高い授業と生徒自身の努力が、輝かしい結果に結びついています。
以下は、2025年春の主要大学合格実績です(既卒生含む)。
2025年春 主要大学合格実績
大学分類 | 主な大学名と合格者数 |
国公立大学 | 東京大学 18名、京都大学 6名、一橋大学 16名、東京工業大学 14名、東北大学 13名、北海道大学 11名、大阪大学 5名、横浜国立大学 40名 など 国公立大学合計:193名 |
難関私立大学 | 早稲田大学 134名、慶應義塾大学 148名、上智大学 72名、東京理科大学 78名 GMARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)合計:445名 |
進学サポート体制
湘南高校の進学指導の根幹は、日々の質の高い授業にあります。特別な補習や講習を多用するのではなく、生徒に予習・復習を課し、70分間の授業の密度を極限まで高めることを重視しています。教師陣も予備校の授業を見学するなど、常に授業力向上に努めています。
また、3年生になると全員が学内模試を受け、全国レベルでの自分の立ち位置を正確に把握します。これにより、一人ひとりに対して、より緻密で的確な進路指導が可能となっています。進路室には豊富な資料が揃い、自習スペースも完備されているなど、生徒が自主的に学習に取り組める環境が整っています。
湘南高等学校の特長・アピールポイント
他の高校にはない、湘南高等学校ならではの強みやユニークな取り組みをまとめました。
-
「三兎を追え」の精神
単なる文武両道ではなく、勉強・部活・行事の三つ全てに全力で取り組むことを奨励する独自の文化。この厳しい挑戦が、生徒を人間的に大きく成長させます。
-
生徒の自主性を育む圧倒的な「自由」
校則を最小限にし、生徒を信頼する校風。この自由な環境が、高い自己管理能力と責任感を育み、生徒の主体性を引き出します。
-
日本一と称される学校行事
特に体育祭は、企画から運営まで全て生徒の手で行われる伝説的なイベント。一年をかけた準備を通じて、一生の思い出と仲間との強い絆が生まれます。
-
県内屈指の進学実績と質の高い授業
東京大学や京都大学をはじめとする最難関大学への高い合格実績。その背景には、深い学びを促す70分授業という独自の取り組みがあります。
-
公立とは思えない充実した施設
約6万冊の蔵書を誇る独立した図書館、本格的なコンサートも可能な多目的ホール、合宿施設、二つの体育館など、学習・活動環境が非常に整っています。
-
多様な仲間と切磋琢磨できる環境
県内全域から集まった、知的好奇心と情熱にあふれる個性豊かな仲間たち。互いに刺激し合い、高め合える環境は、何物にも代えがたい財産となります。
湘南高等学校の口コミ・評判のまとめ
在校生や卒業生から寄せられる声には、湘南高校のリアルな姿が映し出されています。良い点と、入学前に知っておきたい気になる点を公平にまとめました。
良い点
-
「人生で一番輝ける3年間だった」という声が非常に多いです。勉強も遊びも全力で、毎日が充実していると感じる生徒がほとんどのようです。
-
行事や部活動を通じて、一生付き合える最高の仲間に出会えた、という意見が目立ちます。困難な課題に一緒に取り組むことで、強い団結力が生まれます。
-
先生方は生徒の自主性を尊重し、サポートに徹してくれる存在。親身に相談に乗ってくれるという声も多く、信頼関係が築かれています。
-
自由な校風のおかげで、ありのままの自分でいられる、個性が尊重される、と感じる生徒が多いです。
-
周りの生徒のレベルが非常に高いため、常に良い刺激を受けながら勉強や活動に取り組める環境です。
気になる点
-
「とにかく忙しい」というのが、多くの生徒が口を揃える点です。勉強、部活、行事の両立は想像以上に大変で、高いタイムマネジメント能力が求められます。
-
体育祭などの行事準備に熱中するあまり、勉強時間が確保しづらくなる時期があるようです。日々の積み重ねができていないと、後で苦労するという声もあります。
-
最寄りの藤沢本町駅からは近いものの、ターミナル駅である藤沢駅からは徒歩20分と少し距離があります。
-
公立高校であるため、授業は全体の進度に合わせて進みます。そのため、非常に学力が高い生徒にとっては、授業が少し物足りなく感じられる可能性も指摘されています。
アクセス・通学
湘南高等学校への通学方法と、どのエリアから通う生徒が多いのかを見てみましょう。
最寄り駅からのアクセス
-
小田急江ノ島線「藤沢本町駅」より徒歩約7分
-
JR東海道線・小田急江ノ島線「藤沢駅」より徒歩約20分
-
バスを利用する場合は、神奈川中央交通バス「湘南高校前」バス停などが便利です。
藤沢駅からは少し歩きますが、最も近い藤沢本町駅からは10分かからずに到着できます。
通学エリア
湘南高校は藤沢市にありますが、学区制が廃止された現在では、神奈川県全域から優秀な生徒が集まっています。在校生の出身地で最も多いのは、意外にも横浜市で、次に藤沢市、川崎市と続きます。
この事実は、湘南高校が単なる地域のトップ校ではなく、多くの生徒が長い通学時間をかけてでも通いたいと願う「デスティネーション・スクール(目的地となる学校)」であることを物語っています。そのユニークな教育と文化に惹かれ、県内各地から高い志を持った仲間が集まる、特別な場所なのです。
湘南高等学校受験生へのワンポイントアドバイス
ここまで読んでくれてありがとうございます。最後に、進学アドバイザーとして、湘南高等学校を目指すあなたへ応援メッセージを送ります。
湘南高校は、「勉強だけ頑張りたい」という人よりも、「勉強も、部活も、行事も、全部に本気で打ち込みたい!」というエネルギーあふれる人に特におすすめの学校です。自由な環境を楽しみながらも、自分を律して目標に向かえる強い意志と自己管理能力が求められます。もしあなたが、「最も困難な道に挑戦せよ」という言葉に心を動かされ、最高の仲間たちと一生忘れられない3年間を創り上げたいと願うなら、湘南高校はまさに最高の舞台となるでしょう。
受験勉強では、まず内申点を確実に確保することがスタートラインです。その上で、学力検査で高得点を取るための盤石な基礎力と、特色検査を突破するための柔軟な思考力を鍛えましょう。特色検査は、普段から「なぜそうなるのか?」と物事の本質を考える習慣が力になります。
湘南高校での三年間は、あなたを大きく成長させる、かけがえのない時間になるはずです。その挑戦の先に待っている最高の高校生活を目指して、頑張ってください!
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。