島根県西部の石見地域において、1世紀以上の歴史を誇る島根県立益田高等学校は、伝統を重んじながらも常に未来を見据えた教育を展開する、地域の中核的な進学校です。単に大学進学を目指すだけでなく、生徒一人ひとりが持つ無限の可能性を引き出し、これからの社会でたくましく生き抜く力を育むことを教育の柱としています。
この学校の最大の魅力は、二つの大きな顔を持つ点にあります。一つは、文部科学省からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受け、科学的な探究活動を通じて未来のイノベーターを育成する先進的な顔。もう一つは、地域に根ざし、幅広い教養と豊かな人間性を育む、温かみのある学校としての顔です。この紹介記事を通じて、益田高等学校が持つ多面的な魅力を深く掘り下げていきます。
この記事を読み進めることで、あなたが思い描く高校生活が益田高等学校で実現できるかどうか、その答えが見つかるはずです。科学の道を究めたいという夢、部活動に打ち込みたいという情熱、あるいは、素晴らしい仲間たちと充実した3年間を送りたいという願い。あなたの目標に、この学校がどのように応えてくれるのか、一緒に見ていきましょう。
益田高等学校の基本情報
益田高等学校の基本的な情報を以下の表にまとめました。学校選びの第一歩として、まずはこちらをご確認ください。
項目 | 内容 |
正式名称 | 島根県立益田高等学校 |
公立/私立の別 | 公立 |
共学/別学 | 男女共学 |
所在地 | 〒698-0017 島根県益田市七尾町1-17 |
代表電話番号 | 0856-22-0044 |
公式サイト | http://www.masuda.ed.jp/ |
益田高等学校の偏差値・難易度・併願校
益田高等学校の偏差値は、学科によって大きく異なります。これは、自分の学力や目標に合った学科を選ぶ上で非常に重要なポイントになります。
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理数科:
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普通科:
理数科の偏差値63は、島根県内の高校の中でもトップクラスに位置します。特に理数系のコースとしては、出雲高校や大田高校の理数科と並ぶ高いレベルです。合格するためには、中学校での成績がトップ層にあり、特に数学と理科で卓越した学力が求められるでしょう。内申点も非常に高いレベルが必要とされます。
一方、普通科の偏差値53は、県内では中堅上位に位置づけられます。基礎学力が定着しており、平均以上の成績を収めていることが合格の目安となります。
この理数科と普通科の間に見られる約10ポイントという偏差値の差は、益田高等学校の大きな特徴の一つです。これは、2004年から続くスーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校としての実績が、理数科に非常に優秀な生徒を引きつけていることの表れと言えます。結果として、同じ「益田高校」という名前の学校の中に、学力レベルや学習環境が異なる二つの個性的な教育空間が存在しているような状況が生まれています。受験生は、自分がどちらの環境で学びたいのかを明確にイメージして志望学科を決める必要があります。
島根県の公立高校入試では、原則として一つの高校・学科にしか出願できません。そのため、益田高等学校を第一志望とする場合、併願校は私立高校から選ぶことになります。地域的に、多くの受験生が併願校として検討するのが益田東高等学校などの私立高校です。自分の学力や、万が一の場合の進学先として納得できるかを考え、学校説明会などに参加して情報を集めておきましょう。
益田高等学校に設置されている学科・コース
益田高等学校には、それぞれ特色の異なる2つの学科が設置されています。自分の興味や将来の目標に合わせて、最適な学科を選びましょう。
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理数科
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どんなことを学ぶ場所か:科学技術分野のリーダー育成を目指す専門学科。SSHプログラムの中核を担い、大学レベルの「課題研究」で自らテーマ設定、実験、発表まで行います。
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どんな生徒におすすめか:科学や数学が大好きで、探究心が旺盛な生徒。将来、研究者や技術者として社会に貢献したいという強い意志を持つ人におすすめです。
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普通科
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どんなことを学ぶ場所か:幅広い教養と基礎学力をバランス良く身につけ、多様な進路希望に対応する学科。令和3年度から単位制を導入し、自分の興味や進路に合わせた科目選択が可能です。
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どんな生徒におすすめか:文系・理系問わず様々な分野に興味があり、自分の可能性を広げたい生徒。部活動と勉強を両立させながら、じっくりと将来の夢を探したい人にも最適です。
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特筆すべきは、普通科の生徒も「Project Study(課題探究)」という探究活動に取り組む点です。これは、SSHの理念である探究型学習を全校生徒に広げるための取り組みであり、理数科の「課題研究」が純粋な科学探究であるのに対し、普通科では地域が抱える課題などをテーマに科学的な視点で探究します。このプログラムにより、普通科の生徒も論理的思考力やプレゼンテーション能力を養うことができ、他の高校の普通科にはないユニークな学びを経験できます。これは、大学入試の総合型選抜などでも大きな強みとなるでしょう。
益田高等学校の特色・校風
益田高等学校の校風は、キーワードで表すと「文武両道」「探究学習」「地域貢献」「自主自立」といった言葉が当てはまります。生徒一人ひとりの主体性を尊重する雰囲気があります。
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宿題の量と学習スタイル
口コミによれば、特に普通科では、私立の進学校のように強制的に勉強漬けになるというよりは、自分のペースで学習を進められる環境のようです。ただし、これは自主性が求められることの裏返しでもあります。理数科の生徒や、SSHの活動に参加する生徒は、授業外での研究や準備に多くの時間を費やすことになるでしょう。
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校則(スマホ、服装など)
近年、校則が以前より厳しくなったという声が卒業生から聞かれます。特にスマートフォンの扱いについては、校内では指定のボックスに預けるルールがあるようです。服装や身だしなみに関する指導も行われているようですが、学校の自己評価報告書では「基本的生活習慣の確立へ向けた指導に不十分な点があった」とも記されており、学校側も指導のあり方を模索している様子がうかがえます。この点は、学校が伝統的な自由な校風と、高い進学実績を維持するための規律との間で、バランスを取ろうとしている過渡期にあることを示しているのかもしれません。
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生徒たちの雰囲気
様々なタイプの生徒がいて、多様性を受け入れる雰囲気があるようです。理数科と普通科では生徒の雰囲気も異なり、理数科はより学究的な生徒が多く、普通科は活発で多様な生徒が集まる傾向があるかもしれません。全体としては、生徒の9割以上が部活動に加入しており、勉強だけでなく様々な活動に打ち込む活気のある学校です。
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アルバイト
アルバイトに関する明確な情報はありませんが、進学校では学業への専念を理由に原則禁止、または許可制としている場合が一般的です。希望する場合は、学校説明会などで直接確認することをおすすめします。
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制服の評判
制服は、創立110周年を迎えた令和3(2021)年度に大きくリニューアルされました。現代的でスタイリッシュなデザインに変わっており、学校の新しいイメージを象徴するものとなっています。
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土曜授業
授業は1コマ45分で、月・水・木・金は7時限、火曜日は8時限授業が行われます。正規の土曜授業はありませんが、SSHの活動や模試などが土曜日に行われることはあります。
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七尾寮(学生寮)
学校から徒歩数分の距離にある学生寮「七尾寮」は、益田高校の大きな特色です。遠方からの生徒を受け入れるだけでなく、規則正しい生活リズムと学習習慣の確立をサポートします。寮の食事は美味しいと評判で、集団生活を通じて自立心や協調性を育む貴重な経験ができます。
益田高等学校の部活動・イベント
益田高等学校での3年間は、勉強だけでなく、部活動や学校行事も大きな魅力です。生徒の多くが積極的に参加し、充実した高校生活を送っています。
部活動
部活動への加入率は90%を超え、ほとんどの生徒が何らかの部に所属しています。運動部・文化部ともに充実しており、全国レベルで活躍する部もあれば、初心者から楽しめる部まで様々です。
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自然科学部
SSH指定校である益田高校を象徴する部活動の一つです。物理、化学、生物などの分野に分かれて本格的な研究に取り組み、全国高等学校総合文化祭の常連です。卒業生の中には、高校時代の研究が評価されて世界大会で入賞した先輩もいるほど、レベルの高い活動を行っています。
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野球部
昭和53年春、昭和57年夏と、過去2度の甲子園出場経験を誇る伝統ある部です。地域の期待も厚く、今も「甲子園」を目標に日々厳しい練習に励んでいます。
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囲碁部
全国大会の常連であり、中国大会での優勝経験もある強豪部です。近年では、部員が島根県代表チームの一員として全国3位入賞に貢献するなど、輝かしい実績を誇ります。
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弓道部
「正射必中」を合言葉に、多くの部員が高校から弓道を始め、心技を磨いています。美しく、そして的に中(あ)たる射を目指し、部員一丸となって上位大会を目指す姿は、多くの生徒の憧れです。
その他にも、陸上競技部、サッカー部、テニス部、吹奏楽部など、多くの部が活発に活動しています。
イベント
益田高校の年間行事は、クラスや学年の団結を深める大切な機会です。
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文化祭
在校生によると、2日間にわたって開催される非常に盛り上がるイベントのようです。1年生は合唱コンクール、2年生はステージパフォーマンス、3年生は演劇と、学年ごとに特色ある出し物を行います。模擬店やキッチンカーも登場し、学校全体がお祭りの雰囲気に包まれます。
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体育祭
文化祭と並ぶ大きなイベントで、クラス対抗で様々な競技に熱中します。仲間と力を合わせ、勝利を目指して汗を流す経験は、かけがえのない思い出となるでしょう。
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SSH関連イベント
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益田未来協働フェスタ(益田さいえんすたうん):SSHの集大成とも言えるイベントです。生徒たちが日頃の研究成果を地域住民や小中学生に向けて発表します。科学の楽しさを伝えるこのイベントは、学校と地域を結ぶ重要な役割を担っています。
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海外研修:希望者対象のプログラムで、タイを訪問します。現地の大学で研究発表を行ったり、益田市に本社を置く企業の海外工場を見学したりと、グローバルな視野を養う貴重な機会です。
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修学旅行
高校生活のハイライトの一つである修学旅行も、仲間との絆を深める大切な行事です。
益田高等学校の進学実績
益田高等学校は、石見地域を代表する進学校として、毎年優れた大学進学実績を誇っています。卒業生の約8割が4年制大学へ進学し、特に国公立大学への現役合格率が高いのが特徴です。
2024年の主な大学合格実績を以下に示します(過年度生を含む場合があります)。
大学分類 | 主な合格大学名と人数 (2024年実績) |
最難関国公立大学 | 東京大学 (1), 北海道大学 (2), 神戸大学 (1), 九州大学 (1) |
地元・近隣国公立大学 | 島根大学 (17), 広島大学 (3), 山口大学 (16), 島根県立大学 (3) |
難関私立大学 (GMARCH, 関関同立など) | 早稲田大学 (4), 慶應義塾大学 (1), 上智大学 (1), 明治大学 (1), 中央大学 (1), 同志社大学 (1), 立命館大学 (2), 関西大学 (4), 関西学院大学 (1) |
その他 | 専門学校 (15), 短大 (3), 就職 (1) |
この実績から、益田高等学校の教育が持つ二つの側面が見えてきます。一つは、島根大学、山口大学、広島大学といった中国地方の主要な国公立大学への強力なパイプ役としての側面です。毎年多くの合格者を輩出しており、地域医療や教育を担う人材を育成する上で重要な役割を果たしています。
もう一つは、東京大学や早慶上智といった全国トップレベルの大学へも合格者を送り出す、高い学力を育成する機関としての側面です。これは、SSHプログラムをはじめとする質の高い教育が、生徒の学力を全国レベルにまで引き上げている証拠と言えるでしょう。
こうした高い進学実績を支えているのが、学校全体で取り組む手厚い進路指導体制です。進路指導部が中心となり、学年集会での情報提供や意識向上のための講演会を定期的に実施しています。また、「進路便り」を定期的に発行し、生徒や保護者へのきめ細やかな情報提供も行っています。教師陣が足並みをそろえ、全校体制で生徒一人ひとりの夢の実現をサポートする姿勢が、この進学実績に結びついています。
益田高等学校の特長・アピールポイント
益田高等学校には、他の高校にはないユニークな魅力がたくさんあります。ここでは、特に注目すべきポイントを5つに絞って紹介します。
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全国トップレベルのSSH(スーパーサイエンスハイスクール)プログラム
2004年以来、継続してSSHの指定を受けており、その活動は全国でも高く評価されています。理数科の「課題研究」や普通科の「課題探究」を通じて、本物の科学的探究プロセスを体験できます。海外研修や地域に向けた研究発表会など、活動の幅広さも魅力です。
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生徒の個性を伸ばす柔軟な単位制カリキュラム
令和3年度から導入された単位制により、生徒は自分の興味・関心や進路希望に応じて、より自由に科目を選択できるようになりました。これにより、一人ひとりに最適化された「自分だけの学び」をデザインすることが可能です。
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地域と全国、両方を見据えた卓越した進学実績
島根大学や山口大学など、地域の基幹大学に多数の合格者を輩出する一方で、東京大学や早稲田大学、慶應義塾大学といった最難関大学にも合格者を送り出しています。地域に貢献したい生徒から全国で活躍したい生徒まで、あらゆる目標に対応できる高い教育力を持っています。
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9割以上が参加する活気あふれる部活動
高い部活動加入率が示す通り、生徒は勉強だけでなく部活動にも全力で打ち込んでいます。全国レベルの囲碁部や自然科学部、甲子園出場経験のある野球部など、文武ともに輝かしい実績を誇る部が数多く存在します。
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自立心を育む学生寮「七尾寮」の存在
公立高校では珍しい学生寮が完備されており、遠方の生徒も安心して学校生活を送ることができます。規則正しい生活の中で学習習慣を身につけ、仲間との共同生活を通じて人間的に大きく成長できる環境は、大きな財産となるでしょう。
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地域社会に開かれた学校
「益田未来協働フェスタ」などを通じて、生徒が学んだ成果を積極的に地域へ還元しています。小中学生に科学の楽しさを教えたり、地域の課題解決に取り組んだりする活動は、社会貢献の意識と実践力を育みます。
益田高等学校の口コミ・評判のまとめ
在校生や卒業生の声を参考に、益田高等学校のリアルな姿を見ていきましょう。どんな学校にも良い点と、人によっては気になる点があります。両方を理解した上で、自分に合う学校か判断することが大切です。
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良い点
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「SSHの活動が面白い」「自分で研究できるのが楽しい」といった、探究学習に関するポジティブな声が多く聞かれます。特に科学に興味がある生徒にとっては、他では得られない貴重な経験ができるようです。
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「寮生活は楽しいし、食事が美味しい」「生活リズムが整う」など、七尾寮での生活に満足している声が目立ちます。親元を離れて自立した生活を送る上で、非常に良い環境だと評価されています。
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「部活動が盛んで、仲間と打ち込めるのが良い」「文化祭がすごく盛り上がる」など、学校行事や部活動の充実度を評価する声も多いです。勉強だけでなく、高校生活全体を楽しみたい生徒にとって魅力的なようです。
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「先生方が親身に相談に乗ってくれる」「質問に丁寧に答えてくれる」など、教員のサポート体制を評価する意見もあります。
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気になる点
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学校が実施した自己評価アンケートでは、「3年生の学校満足度がやや低い」という結果が出ており、改善点として挙げられています。進路決定を控えた時期に、何らかの課題を感じる生徒がいる可能性が示唆されます。
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「授業中に騒がしい生徒がいる」といった、一部の生徒の学習態度に関する指摘が、近隣の高校の口コミで見られます。益田高校は多様な生徒が集まるため、クラスの雰囲気によっては、集中して学習に取り組むために自身の強い意志が必要になる場面もあるかもしれません。
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理数科と普通科の学力差が大きいことから、生徒間で意識の違いや、学校生活における雰囲気の違いを感じることがあるかもしれません。この点は、入学前に理解しておくべきことの一つです。
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総じて、益田高等学校は、主体的に学び、活動する意欲のある生徒にとっては、最高の環境を提供してくれる学校と言えます。一方で、自由度の高さから、自分を律する力も同時に求められる学校であると言えるでしょう。
アクセス・通学
益田高等学校への通学方法についてまとめました。遠方からの通学を考えている場合は、寮の利用も視野に入れると良いでしょう。
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所在地
島根県益田市七尾町1-17
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最寄り駅からのアクセス
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JR山陰本線・山口線「益田駅」が最寄り駅です。
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益田駅から徒歩の場合:約23分から26分かかります。
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益田駅からバスの場合:石見交通バスに乗車し、「益田高校前」バス停で下車するのが最も便利です。所要時間は約10分で、バス停からは徒歩1分です。また、「石見交通本社前」バス停からも徒歩約8分です。
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主な通学エリア
多くの生徒は益田市内および浜田市、津和野町などを含む石見地域から通学しています。また、学校には「七尾寮」という学生寮が完備されているため、島根県内の遠隔地や県外から入学してくる生徒もいます。広島県や山口県北部から通学する生徒もいるかもしれません。
益田高等学校受験生へのワンポイントアドバイス
ここまで読んでくれてありがとう。最後に、進学アドバイザーとして、益田高等学校を目指す君たちにエールを送ります。
益田高等学校は、「これを学びたい!」「これに挑戦したい!」という強い想いを持つ君にこそ、最高の舞台を用意してくれる学校です。もし君が、科学の不思議をとことん探究したいなら、理数科の扉を叩いてみてください。もし君が、ハイレベルな部活動と勉強を両立させ、最高の仲間と青春を謳歌したいなら、普通科が君を待っています。この学校は、受け身で待っているだけではもったいない。自ら手を伸ばせば、掴みきれないほどのチャンスが溢れている場所なのです。
受験勉強に向けて、理数科を目指す君は、数学と理科の基礎を徹底的に固めましょう。そして、教科書を飛び出して、「なぜだろう?」と考える好奇心を大切にしてください。その探究心こそが、益田高等学校が最も評価する力です。普通科を目指す君は、苦手科目を作らないバランスの取れた学力を身につけることが大切です。そして、高校で何をしたいのか、自分の言葉で語れるように準備しておきましょう。
高校生活は、君が主役の3年間のドラマです。益田高等学校は、そのドラマを最高にエキサイティングなものにするための設備と仲間、そして熱意ある先生方がそろっています。自分の可能性を信じて、挑戦してください。応援しています!
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。