静岡県立韮山高等学校は、150年を超える県内最古の歴史を誇りながら、常に未来を見据えた教育を実践する、類まれな進学校です。そのルーツは、世界遺産である韮山反射炉を築き、日本の近代化に貢献した江川太郎左衛門英龍公にまで遡ります。この深い歴史的背景は、単なる伝統としてだけでなく、生徒一人ひとりの誇りとなり、高い志を育む土壌となっています。
学校が掲げるのは、学問と心身の鍛錬を両立させる「文武両道」の精神と、学祖の座右の銘であった「忍」の校訓です。これは、困難に屈せず、自らを律し、目標に向かって粘り強く努力し続ける力を養うという、韮山高等学校が最も大切にしている教育の核を示しています。ここで過ごす3年間は、変化の激しい社会を生き抜くための、確かな人間的基盤を築く期間となるでしょう。
高校選びは、皆さんの未来を形作る大切な一歩です。このページでは、歴史と革新が共存する韮山高等学校の魅力を、在校生の声や具体的なデータをもとに、分かりやすく、そして詳しくお伝えしていきます。この記事が、皆さんと保護者の方々にとって、最高の選択をするための一助となれば幸いです。
韮山高等学校の基本情報
まずは、学校の基本的な情報を確認しておきましょう。
項目 | 内容 |
正式名称 | 静岡県立韮山高等学校 |
公立/私立の別 | 公立 |
共学/男子校/女子校の別 | 男女共学 |
所在地 | 〒410-2143 静岡県伊豆の国市韮山韮山229 |
代表電話番号 | 055-949-1009 |
公式サイトのURL | https://www.edu.pref.shizuoka.jp/nirayama-h/ |
韮山高等学校の偏差値・難易度・併願校
韮山高等学校の学力レベルや、合格に向けてどのくらいの準備が必要かを見ていきましょう。
偏差値
学科ごとの偏差値は、各種の模擬試験や塾によって多少の差はありますが、おおむね以下の通りです。静岡県内でもトップクラスの難易度を誇ります。
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理数科:
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普通科:
この数字は、韮山高等学校が非常に高い学力レベルの生徒たちから選ばれていることを示しています。同じくらいの偏差値の高校としては、富士高校(理数科・普通科)や沼津東高校(理数科・普通科)などが挙げられ、静岡県東部を代表する進学校の一つであることが分かります。
難易度と内申点の目安
静岡県の公立高校入試では、中学3年生の成績のみで算出される「内申点」が非常に重要になります。9教科の5段階評価を合計した45点満点で評価され、合否に大きく影響します。
合格に必要な内申点の目安は以下の通りです。
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理数科: 以上
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普通科: 以上
これは、主要5教科だけでなく、音楽、美術、保健体育、技術・家庭科といった実技教科でも高い評価(4や5)を安定して取ることが求められるレベルです。特に、内申点が極めて優秀な生徒(44や45など)を優先的に合格させる「学校裁量枠」も存在するため、日々の授業態度や提出物など、中学3年生の学校生活すべてが受験につながると言えるでしょう。
主な併願校
静岡県の公立高校入試では、原則として他の公立高校を併願することはできません。そのため、韮山高等学校を受験する生徒の多くは、滑り止めとして私立高校を併願します。
主な併願先としては、同じ静岡県東部地区にある以下の私立高校が挙げられます。
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日本大学三島高等学校
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加藤学園高等学校
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加藤学園暁秀高等学校
これらの高校もそれぞれ特色ある教育を行っており、万が一の場合の進学先としてだけでなく、自分に合った学校を選ぶという視点で検討することが大切です。
韮山高等学校に設置されている学科・コース
韮山高等学校には、生徒の興味や進路希望に応えるための2つの学科が設置されています。
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理数科
理科や数学への強い探究心を持つ生徒のための専門学科です。将来、医学・歯学・薬学系や、難関大学の理工系学部への進学を目指す生徒におすすめです。高度な実験や課題研究など、探究的な学びが充実しています。
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普通科
国公立大学や難関私立大学への進学を目指す、学校の中心的学科です。2年生から文系・理系に分かれ、それぞれの進路希望に合わせたカリキュラムで学びます。特に、普通科の中には以下のような特色あるコースが設置されています。
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文系探究コース
2年次の文系希望者を対象とした特別コースです。週1回の探究授業やフィールドワークを通して、人文科学系の課題研究に深く取り組みます。将来、法学、経済学、文学、国際関係学などの分野で活躍したい人におすすめです。
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韮山高等学校の特色・校風
韮山高等学校の雰囲気や文化について、在校生や卒業生の声を基に詳しく見ていきましょう。
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校風を表すキーワード
文武両道、自主自律、歴史と伝統、活気と落ち着きの両立
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宿題の量
県内トップクラスの進学校ということもあり、宿題や課題の量は多い傾向にあるようです。「学校の課題に追われる」という声もあり、日々の学習習慣が非常に大切になります。ただし、それは生徒を縛るためではなく、高い進学目標を達成するためのペースメーカーとしての役割を果たしていると言えます。
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校則(スマホ、服装、アルバイトなど)
校則は、他の高校と比較して厳しくないという声が多いようです。細かな規則で縛るよりも、生徒の自主性や良識を重んじる校風が根付いています。
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スマホ:校内での使用について明確な禁止規定は見られませんが、授業中の使用は控えるなど、生徒がマナーを守って自己管理することが求められます。
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服装:制服は、男子が伝統的な黒の学生服(学ラン)、女子はリボンやネクタイのない黒のブレザーとスカートで、全体的にシンプルで品のある印象です。一部では「スーツのよう」とも言われ、落ち着いた校風を象徴しています。
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アルバイト:進学校であるため、学業に専念することが推奨されており、原則として許可されていない可能性が高いです。
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生徒たちの雰囲気
真面目で向学心の高い生徒が多く、休み時間や放課後には互いに教え合う光景がよく見られます。落ち着いた環境で勉強に集中したい生徒にとっては、最高の環境と言えるでしょう。一方で、「自分の芯がないとしんどいかも」という声もあり、周囲に流されず、自分で目標を設定して努力できる自律性が求められる学校です。
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体育の授業
「韮山高校の体育はきつい」という評判は有名ですが、近年は大きく変化しているようです。多くの在校生が「昔よりはかなり楽になった」「つらいと言いながらも皆笑顔でやっている」と語っており、過度に心配する必要はなさそうです。体力テストで全国トップレベルの成績を収めるなど、心身を鍛えるという伝統は今も生きていますが、それは仲間との一体感を育む良い機会にもなっています。
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土曜授業
年間行事予定を見ると、模擬試験や特別な行事で土曜日が使われることはありますが、毎週土曜日に通常授業が行われているわけではないようです。
韮山高等学校の部活動・イベント
部活動
韮山高等学校の「文武両道」を象徴するのが、活発な部活動です。運動部18、文化部13と非常に多くの部が活動しており、加入率も高いようです。
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運動部の様子
多くの運動部が県大会レベルで活躍しています。特に有名な部活動をいくつか紹介します。
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陸上競技部:学校の看板部活動の一つで、常に高いレベルで活動しています。男女学年問わず活気があり、厳しい練習も仲間と励まし合いながら乗り越える雰囲気が自慢です。
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野球部:長い歴史と伝統を誇り、OBの支援も手厚い部です。技術向上はもちろん、野球を通して人間性を高めることを第一の目標としています。
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弓道部:部員のほとんどが高校から始める初心者ですが、熱心な練習で全国大会を目指せるレベルにまで成長します。礼儀作法や集中力が身につき、精神的な成長も期待できる部です。
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文化部の様子
文化部も非常に個性的で、全国的にも珍しい活動を行っている部があります。
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物理部:天文班と情報班に分かれて活動しています。特に天文班は、校内に設置された本格的な天文ドームで、月に一度泊まり込みの天体観測会を実施しています。情報班ではプログラミング学習に取り組むなど、最先端の学びに触れることができます。
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文芸郷土研究部:地域の歴史や文化をテーマに、フィールドワークや論文作成といった大学の研究室のような本格的な活動を行っています。高校生のうちから研究の基礎を体験できる貴重な機会です。
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化学部、生物部:それぞれが興味のあるテーマで自由に実験や研究を進めることができます。専門家から話を聞く機会もあり、知的好奇心をとことん満たせる環境です。
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イベント
韮山高校の学校生活を彩る最大のイベントが「龍城祭」です。
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龍城祭(りゅうじょうさい)
毎年5月に行われるこの祭りは、単なる文化祭ではありません。「芸能祭」「文化祭」「体育祭」の3部構成で数日間にわたって開催される、学校全体の一大イベントです。
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芸能祭:吹奏楽部や演劇部などの文化部が、日頃の練習の成果を披露するステージです。オープニングから大いに盛り上がります。
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文化祭:一般公開され、毎年多くの地域住民や中学生で賑わいます。各クラスや文化部が趣向を凝らした展示や模擬店を出店し、活気に満ちあふれます。
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体育祭:赤・青・黄・白の4つの団に分かれて競い合います。クラスTシャツを着て応援する姿は、まさに青春そのものです。
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後夜祭:龍城祭のフィナーレを飾る、最も感動的なイベントです。講堂でのステージ発表に加え、校舎をスクリーンにしたプロジェクションマッピングや、夜空を彩る打ち上げ花火など、高校のイベントとは思えないほどの壮大なスケールで締めくくられます。この後夜祭は、多くの韮高生にとって忘れられない思い出となるようです。
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修学旅行
2年生の11月に実施される一大イベントです。仲間と共に過ごす数日間は、クラスの絆を一層深める貴重な時間となります。
韮山高等学校の進学実績
韮山高等学校は、その質の高い教育を反映し、静岡県内でも屈指の大学進学実績を誇ります。生徒の努力を最大限に引き出す、手厚いサポート体制がその背景にあります。
最新の大学進学実績(2025年春入試結果)
以下は、現役生と既卒生を合わせた主な大学の合格者数です。
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国公立大学
東京大学1名、京都大学4名、大阪大学4名、名古屋大学9名、東北大学5名、北海道大学7名といった旧帝国大学をはじめ、全国の難関国公立大学に多数の合格者を輩出しています。また、地元の静岡大学には27名が合格しており、地域貢献への意識も高いことがうかがえます。国公立大学全体での合格者数は154名にのぼります。
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難関私立大学
首都圏、関西圏の難関私立大学にも圧倒的な強さを見せています。
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早慶上理:早稲田大学10名、慶應義塾大学15名、上智大学7名、東京理科大学25名
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GMARCH:明治大学48名、青山学院大学9名、立教大学11名、中央大学34名、法政大学58名
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関関同立:関西大学9名、関西学院大学10名、同志社大学18名、立命館大学55名
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その他の進路
生徒の大多数が4年制大学へ進学しますが、特に医学部医学科への進学実績が際立っており、国公立・私立合わせて4名の合格者を出しています。また、地元の常葉大学にも86名が合格するなど、多様な進路希望に対応しています。
進学実績を支える取り組み
高い進学実績は、生徒個人の努力だけでなく、学校独自の優れたサポート体制によって支えられています。
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志龍塾(しりゅうじゅく)
卒業生であり、シダックスグループの創業者である志太勤氏によって設立された、韮山高校独自の講演会プログラムです。社会の第一線で活躍する様々な分野の専門家(多くは同校の卒業生)を講師として招き、生徒たちの視野を広げ、高い志を育むことを目的としています。最新の設備が整った「志龍講堂」で、一流の知性に触れる体験は、生徒にとって大きな刺激となります。
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医学系セミナー
医師を目指す生徒のための特別なプログラムです。順天堂大学や浜松医科大学と連携し、大学での実習や病院見学、入試対策講座などを実施しています。現役医師として働く卒業生から直接話を聞く機会もあり、医学部進学への具体的で強力なパイプラインとなっています。
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補習・講習
1年次から計画的な進路指導が行われ、教員による個別面談や放課後の補習などが手厚く実施されています。生徒一人ひとりの目標達成を、学校全体で全力でサポートする体制が整っています。
韮山高等学校の特長・アピールポイント
他の高校にはない、韮山高等学校ならではの強みやユニークな取り組みを7つのポイントにまとめました。
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150年以上の歴史と学祖の精神が息づく校風
静岡県で最も古い歴史を持つだけでなく、日本の近代化をリードした江川太郎左衛門の「忍」の精神が、今も生徒たちの学びの指針となっています。
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文系・理系ともに充実した独自の探究学習プログラム
理数科の高度な課題研究はもちろん、普通科にも「文系探究コース」を設置。すべての生徒が表面的な知識だけでなく、物事を深く掘り下げる「探究力」を身につけられます。
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「志龍塾」による一流の人物との出会い
社会の第一線で活躍する卒業生や専門家から直接話を聞ける講演会は、生徒の視野を広げ、将来への高い志を育む貴重な機会です。
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医系進学への強力なパイプライン「医学系セミナー」
医学部を持つ大学との密な連携プログラムは、医師を目指す生徒にとって他では得られない大きなアドバンテージです。
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学校全体で創り上げる壮大な「龍城祭」
単なる文化祭の枠を超えた、芸能・文化・体育の祭典。特にフィナーレの後夜祭は、プロジェクションマッピングや花火で彩られ、一生の思い出になります。
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自主性を究極にまで高めるユニークな部活動
校内の天文ドームで観測会を行う物理部や、論文執筆まで行う文芸郷土研究部など、生徒の知的好奇心と自主性を最大限に引き出す活動が数多くあります。
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高いレベルで「文武両道」を本気で実現する環境
全国トップクラスの進学実績を誇りながら、部活動も県大会レベルで活躍。勉強も部活も本気で取り組みたい生徒にとって、これ以上ない環境が整っています。
韮山高等学校の口コミ・評判のまとめ
在校生や卒業生からのリアルな声を集めました。良い点と、少し気になる点の両方を知ることで、より学校の姿が具体的に見えてくるはずです。
良い点
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「勉強する環境としては最高。周りのレベルが高いので自然と自分も引き上げられるし、自習室も充実している」
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「先生方がとても熱心。進路相談にも親身に乗ってくれるし、補習などのサポートも手厚い」
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「龍城祭がとにかく楽しい!クラスや学校全体の一体感がすごく、最高の思い出が作れる」
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「自由な校風が良い。校則でガチガチに縛られるのではなく、生徒の自主性を信じて任せてくれる」
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「体育や行事など、大変なことを一緒に乗り越えるから、固い絆で結ばれた友達ができる」
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「歴史と伝統があるので、卒業生であることに誇りを持てる。地域の方々にも愛されている学校だと感じる」
気になる点
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「自主性が求められるので、受け身なタイプだと厳しいかもしれない。自分で目標を見つけて動ける人に向いている」
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「良くも悪くも田舎。周りには田んぼと山しかなく、放課後に遊ぶような場所はない」
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「体育がきついというイメージは昔より薄れたが、それでも運動が苦手な人には少し負担に感じるかもしれない」
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「伝統を重んじるあまり、少し考え方が古いと感じる部分があるという意見も一部にはある」
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「進学校なので、課題の量はやはり多い。要領よくこなさないと、自分の勉強時間が確保しにくいこともある」
アクセス・通学
韮山高等学校への通学方法についてです。
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最寄り駅からのアクセス
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伊豆箱根鉄道 駿豆線「韮山駅」下車、徒歩約12分
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主な乗り換え駅
伊豆箱根鉄道に乗り換えるための主要な駅は、JR東海道本線・東海道新幹線の「三島駅」です。
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主な通学エリア
伊豆の国市や三島市、沼津市はもちろん、伊東市や修善寺など、伊豆半島全域や静岡県東部の広範囲から生徒が通学しています。地域のトップ校として、様々な中学校から優秀な生徒が集まってきています。
韮山高等学校受験生へのワンポイントアドバイス
歴史ある韮山高等学校は、自ら考え、行動し、高い目標に挑戦したいと願う君にこそ、ぴったりの場所です。ここは、ただ知識を詰め込むだけの場所ではありません。仲間と切磋琢磨し、時には厳しい課題に立ち向かいながら、人間として大きく成長するための最高の舞台が用意されています。自由な校風の中で自分を律し、勉強も部活も行事も、すべてに全力で打ち込みたいという情熱があるなら、韮山高等学校での3年間は、間違いなく君の人生にとってかけがえのない財産となるでしょう。
受験勉強で特に力を入れてほしいのは、中学3年生の「内申点」です。静岡県の入試制度では、この1年間の成績が合否を大きく左右します。4月から気を引き締め、授業態度、提出物、定期テストのすべてに真剣に取り組んでください。特に、理数科を目指すなら、数学と理科で圧倒的な力をつけておくことが合格への近道です。韮山高等学校で過ごす充実した日々を思い描きながら、最後まで諦めずに頑張ってください。心から応援しています!
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。