桐朋高等学校は、都内でも屈指の進学校でありながら、他に類を見ないほどの「自由」な校風で知られています。多くの進学校が厳しい規律と管理体制のもとで実績を伸ばす中、桐朋高等学校は生徒一人ひとりの自主性と個性を最大限に尊重する教育を長年にわたって貫いてきました。緑豊かな学園都市、国立の落ち着いた環境で、生徒たちは自ら考え、判断し、行動する力を育んでいきます。
この学校が掲げる「自由」は、単に校則が緩やかであることだけを意味しません。それは、生徒に対する深い信頼の証であり、同時に「自らを律する責任」を求める教育哲学でもあります。与えられた自由の中で、学びや部活動、友人関係にどう向き合うか。そのすべてが生徒自身に委ねられています。この環境は、主体性を持つ生徒にとっては最高の成長の場となりますが、受け身の姿勢ではその魅力を十分に活かせないかもしれません。
この記事では、そんな桐朋高等学校の偏差値や進学実績といったデータから、在校生や卒業生の声に基づいたリアルな学校生活、そして他の学校にはないユニークな取り組みまで、あらゆる角度からその魅力と実態に迫ります。この記事を読めば、桐朋という学校があなたにとって本当に「合う」場所なのか、その答えを見つける手助けとなるはずです。
桐朋高等学校の基本情報
まずは、学校の基本的な情報を確認しておきましょう。
項目 | 内容 |
正式名称 | 桐朋中学校・桐朋高等学校 |
公立/私立の別 | 私立 |
共学/男子校/女子校の別 | 男子校 |
所在地 | 〒186-0004 東京都国立市中3-1-10 |
代表電話番号 | 042-577-2171 |
公式サイトのURL | https://www.toho.ed.jp/ |
桐朋高等学校の偏差値・難易度・併願校
桐朋高等学校の偏差値は71〜72とされており、これは東京都内でも最難関レベルに位置します。この数値は、多くの受験生が目標とする都立トップ校である日比谷高校(74)、国立高校(74)、西高校(73)に匹敵する水準であり、合格には非常に高い学力が求められることが分かります。私立高校のため、内申点が合否に直接影響することはありませんが、その分、当日の学力試験で高得点を取ることが絶対条件となります。
この高い学力レベルを反映して、多くの受験生が最難関の国私立高校を併願先に選んでいます。例えば、私立では早稲田大学高等学院、慶應義塾志木高等学校、明治大学付属明治高等学校、中央大学杉並高等学校、城北高等学校などが主な併願校として挙げられます。また、都立高校を第一志望とする受験生は、国立高校や立川高校などと組み合わせて受験するケースが多いようです。
これらの併願校リストから見えてくるのは、桐朋高等学校が単に学力だけで選ばれる学校ではないという点です。同じ偏差値帯には、大学附属校や特色の異なる進学校が数多く存在します。その中で、あえて桐朋を選ぶ受験生は、その偏差値の高さに加え、「自主性を重んじる自由な校風」に強い魅力を感じていると考えられます。つまり、受験校選びにおいて、学校の教育理念や文化を重視する生徒にとって、桐朋は唯一無二の選択肢となっているのです。
桐朋高等学校に設置されている学科・コース
桐朋高等学校には、普通科のみが設置されており、入学時に文系・理系や特進といったコース分けはありません。これは、生徒が高校生活を送る中で自らの興味や関心、適性を見極め、主体的に進路を選択してほしいという学校の考え方を反映したものです。
1年生のうちは全員が共通の科目を学び、基礎学力を固めます。そして、2年生から徐々に選択科目が増え、3年生になると必修科目はわずか10時間程度となり、時間割の大部分を自分の進路希望に合わせた選択科目で埋めることになります。これにより、国公立理系、私立文系、医学部志望など、一人ひとりの目標に最適化されたオーダーメイドのカリキュラムを組むことが可能です。この柔軟なカリキュラムは、まだ将来の夢が明確に決まっていない生徒や、文系・理系にとらわれず幅広く学びたい生徒にとって、自分の可能性をじっくりと探求できる理想的な環境と言えるでしょう。
桐朋高等学校の特色・校風
桐朋高等学校の校風をキーワードで表すなら、「自由闊達」「自主自律」「多様性の尊重」が最もふさわしいでしょう。生徒一人ひとりの個性を認め、互いに高め合う文化が根付いています。
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校則と服装
校則は「ないに等しい」と言われるほど緩やかで、制服もありません。服装や髪型は完全に自由です。「清潔端正に、いたずらに華美にわたらない」という指針のもと、生徒はTPOを自分で考えて行動することが求められます。これは、学校がルールで縛るのではなく、生徒自身の判断力と責任感を信頼している証です。
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スマートフォンの扱い
以前は原則禁止でしたが、現在は「校内で使用しない」ことを条件に持ち込みが許可されています。これも時代の変化に合わせつつ、生徒に責任ある使い方を学ばせるという方針の表れです。
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宿題の量
宿題の量はそれほど多くないという声が多いようです。しかし、数学などで使われる独自の教材は非常に歯ごたえがあり、単に量をこなすのではなく、質の高い学習を自主的に進めることが求められます。受け身で待っているだけでは、授業についていくのが難しくなるかもしれません。
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生徒たちの雰囲気
「多種多様な生徒がいる『るつぼ』のような場所」と表現されます。アニメや鉄道が好きな生徒、スポーツに打ち込む生徒、熱心に勉強する生徒など、様々な個性を持った生徒が互いを尊重し、共存しています。男子校ならではの気兼ねない雰囲気の中で、誰もが自分の「居場所」を見つけられると言われています。
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アルバイト・土曜授業
アルバイトは原則として認められていません。土曜日は通常授業があり、週6日制となっています。
この「自由」な校風は、桐朋の教育における最も重要な根幹です。しかし、それは単なる「放任」とは異なります。学校は、あえて細かなルールを設けないことで、生徒が自ら考え、判断し、行動せざるを得ない環境を意図的に作り出しています。この環境こそが、生徒の内面的な規律、時間管理能力、そして強い自己責任感を育むための教育的な仕掛けなのです。この高いレベルの要求に応えられる生徒にとっては、最高の成長の場となるでしょう。
桐朋高等学校の部活動・イベント
部活動
桐朋高等学校は部活動が非常に盛んで、ほとんどの生徒が何らかの部に所属し、学業と両立しながら熱心に活動しています。サッカーの公式戦が可能な広大なグラウンド、専用野球場、複数の体育館など、充実した施設がその活動を支えています。
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運動部
特に有名なのが陸上競技部です。スポーツ推薦制度がないにもかかわらず、全国レベルで活躍する選手を数多く輩出しており、過去にはオリンピック選手も出ています。顧問の指導方針も生徒の自主性を尊重するもので、選手自身が練習メニューの考案に関わるなど、学校全体の校風が部活動にも色濃く反映されています。水泳部も強豪として知られ、関東大会で上位入賞を果たすなどの実績があります。その他、サッカー、野球、バスケットボールといった人気スポーツから、ワンダーフォーゲル部やオリエンテーリング部(全国大会優勝経験あり)といったユニークな部まで、多種多様な選択肢があります。
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文化部
文化部も活発です。音楽部は定期演奏会を開き、生物部は文化祭の展示で高い評価を得ています。将棋部や囲碁部は全国優勝の経験を持つなど、全国レベルで活躍する部も少なくありません。地学部が活動拠点とするプラネタリウムや天体観測ドームなど、専門的な活動を支える施設も整っています。
イベント
桐朋の学校行事は、そのほとんどが生徒の手によって企画・運営されるのが最大の特色です。生徒たちはこれらの経験を通して、リーダーシップや協調性、問題解決能力を実践的に学んでいきます。
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桐朋祭(文化祭)
毎年6月に行われる学校最大のイベントで、来場者数は約1万人にものぼります。企画から運営まで、すべてが生徒で組織された実行委員会によって1年がかりで準備されます。クラスや有志団体による展示、出店、バンド演奏、ステージパフォーマンスなど、多彩な催しでキャンパスが熱気に包まれます。生徒が主体だからこその本気度が、大きな盛り上がりと達成感を生み出しています。
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修学旅行
高校2年生の修学旅行は、桐朋の自主性を象徴するユニークなものです。旅行の前半は、クラスごとに話し合ってテーマと行き先を自由に決定します。建築をテーマに関西を巡るクラスもあれば、歴史を探訪するクラスもあります。後半は全クラスが京都に集結し、合同で活動します。自分たちで旅を創り上げる経験は、一生の思い出となるでしょう。
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スポーツ大会
春と秋の年2回開催されます。クラス対抗で様々な競技に臨み、クラスの団結力を高める絶好の機会となっています。
桐朋高等学校の進学実績
桐朋高等学校は、その自由な校風の中から、毎年非常に優れた大学進学実績を上げています。ほとんどの卒業生が現役で四年制大学に進学し、特に最難関の国公立大学や私立大学で多くの合格者を輩出しています。
以下は、2025年度の主な大学の合格実績です。
大学分類 | 主な大学名 | 合格者数 |
国公立大学 | 東京大学 | 14 |
京都大学 | 4 | |
一橋大学 | 9 | |
東京科学大学 | 10 | |
その他旧帝大(東北、北海道など) | 25 | |
国公立大学 合計 | 125名以上 | |
国公立大学 医学部 | 13 | |
難関私立大学 | 早稲田大学 | 94 |
慶應義塾大学 | 75 | |
上智大学 | 33 | |
GMARCH 合計 | 231 | |
私立大学 医学部 | 50 |
これらの輝かしい実績は、決して詰め込み教育や厳しい管理によって生み出されたものではありません。桐朋の教育は、生徒一人ひとりの知的好奇心を刺激し、自ら学ぶ姿勢を育むことに重点を置いています。例えば、英語や数学では、生徒が自らの習熟度に応じて難易度を選択できる段階別授業が展開されています。また、卒業生を招いて大学での学びや仕事について語ってもらう懇談会などを通じ、生徒が早期から自らの将来について深く考える機会を提供しています。
桐朋の進学指導の根底にあるのは、「生徒が自ら目標を設定し、その達成に向けて主体的に努力する」という考え方です。学校は、そのための環境と質の高い授業を提供しますが、最終的に道を切り拓くのは生徒自身です。この環境で育った生徒たちは、大学受験という厳しい競争においても、自律的に学習計画を立て、最後までやり抜く力を身につけているのです。その結果が、難関大学への高い進学実績として表れています。
桐朋高等学校の特長・アピールポイント
桐朋高等学校には、他の学校にはないユニークな魅力がたくさんあります。ここでは、その中でも特に際立った特長を6つのポイントに絞って紹介します。
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大学レベルの探究学習「特別講座」
40年以上の歴史を持つ、希望者対象の放課後講座です。教員が自らの専門分野や趣味について熱く語る講座で、テーマは「ロシア・ウクライナ戦争を地政学から考える」といった学術的なものから、「インドカレーの魅力」「団地鑑賞入門」といったユニークなものまで多岐にわたります。知的好奇心を刺激し、学びの面白さを再発見できる貴重な機会です。
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生徒の主体性を育む「生徒が主役」の学校運営
約1万人が来場する文化祭「桐朋祭」の企画・運営から、クラスごとに目的地を決める修学旅行まで、学校生活のあらゆる場面で生徒が中心的な役割を担います。大きな責任を伴いますが、この経験を通じて得られる達成感やリーダーシップは計り知れません。
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知的好奇心を刺激する充実した専門施設
高校レベルでは珍しいプラネタリウムや天体観測ドーム、分野ごとに分かれた複数の化学・物理・生物実験室など、生徒の探究心を深めるための専門的な施設が整っています。これらの環境が、生徒の「もっと知りたい」という気持ちを力強く後押しします。
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「自主」を体現するユニークな体育文化「短縄跳び」
体育の授業で毎年行われる「短縄跳び」は、桐朋の校風を象徴する名物プログラムです。数多くの技とその達成度が点数化されており、生徒は指導されることなく、各自の目標に向かって自主的に練習し、検定に挑みます。自分で目標を設定し、努力するプロセスそのものを評価する、まさに桐朋らしい取り組みです。
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多様な個性が共存する「るつぼ」のような環境
学校には、実に様々な興味や背景を持つ生徒が集まっています。互いの違いを認め、尊重し合う文化が根付いているため、どんな生徒でも安心して自分らしくいられる居場所を見つけることができます。この多様な仲間との交流が、視野を広げ、人間的な成長を促します。
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スポーツ推薦に頼らない全国レベルの部活動
陸上競技部がオリンピック選手を輩出するなど、全国トップレベルで活躍する部活動が複数あります。特筆すべきは、これらの実績がスポーツ推薦制度に頼ることなく、一般入試を経て入学した生徒たちの純粋な情熱と努力によって成し遂げられている点です。
桐朋高等学校の口コミ・評判のまとめ
ここでは、在校生や卒業生から寄せられる様々な声を、良い点と気になる点に分けて公平に紹介します。
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良い点
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「圧倒的な自由さが最高」という声が最も多く聞かれます。校則や制服がなく、学校から生徒として信頼されていると感じられる点が、高い満足度に繋がっているようです。
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「一生付き合える友人に出会えた」という意見も多数あります。男子校ならではの気兼ねない雰囲気や、生徒主体の行事を通して育まれる強い絆は、桐朋ならではの財産のようです。
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「色々なタイプの面白いやつが多い」と、生徒の多様性を魅力に挙げる声も目立ちます。自分とは違う価値観に触れることが、良い刺激になっているようです。
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「先生方は生徒の自主性を尊重してくれる」と、教員との良好な関係を評価する口コミも多く、生徒一人ひとりに向き合ってくれる姿勢が信頼されています。
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「行事が本気で楽しい」という声も多く、生徒が主体だからこその一体感や達成感が、かけがえのない思い出を作っていることがうかがえます。
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気になる点
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最も注意すべき点として、「自由は『放任』と紙一重」という指摘があります。自分で自分を管理できない生徒は、勉強面で遅れてしまう危険性があるようです。
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上記に関連して、「手厚い学習サポートは期待できない」という声もあります。学校は自主性を重んじるため、塾や予備校に通って大学受験に備える生徒が多い傾向にあります。
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「自主性がない生徒には厳しい環境」という意見は、この学校の特性を的確に表しています。入学当初から、高いレベルの自己管理能力が求められることを覚悟しておく必要があります。
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「施設の一部が古い」という口コミも散見されます。歴史ある学校のため、最新の設備ばかりではないようです。
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アクセス・通学
緑豊かな文教地区に位置する桐朋高等学校へのアクセス方法と、生徒たちの主な通学エリアは以下の通りです。
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最寄り駅からのアクセス
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JR中央線「国立駅」南口より:大学通りを徒歩15分。または、立川バスで約5分、「桐朋」バス停下車、徒歩1分。
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JR南武線「谷保駅」より:北へ徒歩15分。または、立川バスで約5分、「桐朋」バス停下車、徒歩1分。
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国立駅からの大学通りは、桜やイチョウの並木が美しい、散歩にも気持ちの良い通学路です。
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生徒の主な通学エリア
公式情報によると、生徒がどの地域から通っているかのおおよその割合は以下のようになっています。
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東京多摩地域:約55%
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東京23区部:約33%
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神奈川県・埼玉県など:約12%
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このデータが示すように、学校が位置する多摩地区からの生徒が半数以上を占める一方で、3人に1人は23区内から、さらに1割以上の生徒が県境を越えて通学しています。これは、桐朋高等学校のユニークな教育方針と校風が、広い地域から生徒を惹きつける強い魅力を持っていることの証明と言えるでしょう。
桐朋高等学校受験生へのワンポイントアドバイス
ここまで読んでくれて、桐朋高等学校に強い興味を持ってくれた君に、進学アドバイザーとして最後のアドバイスを送ります。
桐朋高等学校は、知的好奇心が旺盛で、誰かに指示されるよりも自分で考えて行動するのが好きな生徒に特におすすめです。厳しいルールに縛られず、自分の個性や好きなことをとことん追求したい、そして周りの仲間と切磋琢磨しながら大きく成長したいと考える君にとって、最高の環境が待っています。
桐朋高等学校の入試では、単なる知識の暗記量ではなく、物事の本質を捉え、論理的に考える力が問われます。受験勉強では、難しい問題の解法を覚えるだけでなく、「なぜそうなるのか」という根本的な理解を大切にしてください。基礎を盤石にした上で、応用問題にじっくり取り組む学習が合格への鍵となります。桐朋は、君が持つ無限の可能性を信じ、その成長を温かく見守ってくれる学校です。自分を信じて、挑戦してみてください。応援しています!
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。