長野工業高等専門学校、通称「長野高専」は、一般的な高校とは一線を画す、未来のエンジニアや研究者を育てるための5年一貫教育を行う国立の高等教育機関です。中学を卒業したばかりの15歳から、大学2年生にあたる20歳までの5年間、同じキャンパスで専門的な技術と知識をとことん追求できる場所。それは、早くから「これが好きだ」「この道を究めたい」という情熱を持つ君にとって、最高の環境が用意されていることを意味します。
この学校の大きな魅力は、卒業後の未来が大きく開かれている点にあります。5年間の学びを終えた卒業生は、大学の工学部卒業生に匹敵する専門知識と実践力を身につけているため、日本を代表するような優良企業から引く手あまたです。また、さらに学びを深めたい場合は、多くの国公立大学の3年次に編入するという特別な道も選べます。長野高専での5年間は、未来の可能性を最大限に広げるための、価値ある投資と言えるでしょう。
この記事では、そんな長野工業高等専門学校が一体どんな場所なのか、偏差値や難易度といった受験情報から、ユニークな学科、自由な校風、在校生のリアルな声まで、皆さんが本当に知りたい情報を余すところなくお伝えします。この特別な学びの場が、君にとって運命の学校になるかどうか、一緒に探していきましょう。
長野工業高等専門学校の基本情報
まずは、学校の基本的な情報を確認しましょう。学校選びの第一歩として、所在地や連絡先は正確に把握しておくことが大切です。
項目 | 内容 |
正式名称 | 独立行政法人国立高等専門学校機構 長野工業高等専門学校 |
公立/私立の別 | 国立 |
共学/男子校/女子校の別 | 男女共学 |
所在地 | 〒381-8550 長野県長野市徳間716 |
代表電話番号 | 026-295-7003 |
公式サイトURL | http://www.nagano-nct.ac.jp/ |
長野工業高等専門学校の偏差値・難易度・併願校
長野高専を目指す上で、最も気になるのがその難易度でしょう。偏差値や内申点の目安、そして併願校について詳しく見ていきます。
偏差値・難易度
長野工業高等専門学校の偏差値は「64〜65」とされており、長野県内でもトップクラスの難易度を誇ります。この数値は、県内の有名進学校である屋代高校や伊那北高校に匹敵するレベルであり、長野県内の国立の学校としては最も高い水準です。高専は「専門学校」という名前がついていますが、その入学難易度は非常に高く、生半可な勉強では合格を勝ち取ることは難しい、学力重視の学校であると理解してください。
合格のためには、当日の学力検査の得点だけでなく、中学校での成績、つまり「内申点」も重要になります。特に、定員の約半分を占める推薦選抜での合格を目指す場合、出願資格として「中学3年間の9教科の評定合計が36以上(5段階評価)」という基準が設けられています。これは、主要5教科だけでなく、副教科も含めてオール4以上を維持する必要があることを意味します。学力検査で受験する場合でも、内申点は合否判定の参考にされるため、日々の授業態度や提出物にも真剣に取り組むことが、長野工業高等専門学校への合格切符を掴むための鍵となります。
主な併願校
長野高専は国立の学校であるため、受験生は滑り止めとして私立高校を併願するのが一般的です。長野高専を受験する学力層の生徒が併願先として選ぶことが多いのは、以下のような高校です。
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佐久長聖高等学校(普通科Ⅰ類)
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長野日本大学高等学校(探求創造学科)
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文化学園長野高等学校
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長野俊英高等学校
これらの高校も県内では高いレベルにあり、しっかりとした対策が必要です。
長野工業高等専門学校に設置されている学科・コース
長野高専の学びの最大の特徴は、その専門性の高さにあります。2022年度から、従来の5つの学科は「工学科」という1つの大きな学科に統合されました。新入生はまず1年半、工学の幅広い基礎を共通で学びます。これにより、自分の興味や適性をじっくりと見極めた上で、2年生の後期から3つの専門的な系(フィールド)に分かれていくことになります。このシステムは、現代の複雑な社会問題を解決するために、一つの分野だけでなく複数の分野を融合させた知識(複合・融合工学)がいかに重要かを反映したものです。
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情報エレクトロニクス系
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どんなことを学ぶ?: コンピュータのプログラミングやAI、社会を支える電力システム、通信技術など、情報と電気電子の最先端分野を学びます。
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どんな生徒におすすめ?: パソコンやスマホの仕組みに興味がある人、自分でアプリやゲームを作ってみたい人、未来のスマート社会の実現に貢献したい人におすすめです。
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機械ロボティクス系
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どんなことを学ぶ?: ロボットの設計・制御、自動車などの機械の仕組み、そして製品の性能を決める材料についてなど、「ものづくり」の根幹をなす技術を学びます。
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どんな生徒におすすめ?: ロボットや機械を自分の手で動かしてみたい人、アイデアを形にすることが好きな人、日本のものづくり産業を支える技術者になりたい人におすすめです。
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都市デザイン系
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どんなことを学ぶ?: 人々が安全で快適に暮らせる「まちづくり」について学びます。道路や橋などの社会インフラの設計や、環境問題、SDGs(持続可能な開発目標)に貢献する都市計画などを探究します。
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どんな生徒におすすめ?: まちづくりや地図を見るのが好きな人、環境問題に関心がある人、人々の生活を豊かにするスケールの大きな仕事に挑戦したい人におすすめです。
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長野工業高等専門学校の特色・校風
長野高専のキャンパスライフを語る上で欠かせないキーワードは、「自由と自主性」です。その雰囲気は、一般的な高校というよりは大学に非常に近いと言えるでしょう。
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校風キーワード: 自由と自主性、大学に近い環境、知的で個性的
自由な環境と厳しい自己責任
長野高専の最も大きな特色は、生徒の自主性を尊重する自由な校風です。制服はなく、生徒は毎日私服で通学します。髪型や髪色に関する厳しい規則もほとんど聞かれません。アルバイトは届け出をすれば可能で、スマートフォンも授業中以外は基本的に使用が認められています。学校側が生徒を「学生」として扱い、一人の大人として信頼していることの表れです。
しかし、この自由には大きな責任が伴います。大学と同じように、学業成績が基準に満たない場合は容赦なく「留年(進級できないこと)」となります。自由な時間管理や自己管理ができないと、あっという間に勉強についていけなくなるという厳しさも併せ持っています。この「自由と責任」のバランスこそが、高専生活の核心であり、生徒を精神的に大きく成長させる要因となっています。
生徒たちの雰囲気
キャンパスには、「賢い人ばかり」「自分の世界観を持った、個性的な人が多く集まる」といった声が聞かれるように、知的好奇心が旺盛で、自分の好きなことに没頭するタイプの生徒が多いようです。いじめはほとんど聞いたことがないという口コミが多く、互いの個性を尊重し、干渉しすぎない落ち着いた人間関係が築かれているようです。
その他の気になる点
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宿題の量: 「宿題」という形での課題は少ないかもしれませんが、レポートや実験、研究など、自主的に取り組むべき課題は多く、学業の負荷はかなり大きいと考えられます。
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土曜授業: 基本的に土曜授業はありません。大学と同様に、夏季や春季の長期休暇が長いのが特徴です。
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制服の評判: 制服がないため、生徒はTシャツやパーカーなど、季節や好みに合わせて自由な服装を楽しんでいます。
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寮生活: 遠方からの生徒のために、男子寮、女子寮、国際寮が完備されています。同じ志を持つ仲間たちと寝食を共にすることで、強い絆が生まれるのも高専生活の魅力の一つです。
長野工業高等専門学校の部活動・イベント
高専の部活動やイベントは、教室での学びを実践し、さらに深める絶好の機会です。特に、技術系の活動は他の高校では決して味わえない魅力に満ちています。
部活動
長野高専には46もの部活動や同好会があり、非常に活発です。運動部も文化部も充実していますが、やはり注目すべきは高専ならではの技術系部活動です。これらの活動は、単なる趣味の延長ではなく、学んだ知識を総動員して挑む「実践的な学びの場」となっています。
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ロボコン部: 高専の代名詞とも言える部活動。毎年開催される「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト」への出場を目指し、学生たちが自らの手でユニークなロボットを設計・製作します。機械、電気、情報の知識を結集して一つのものを作り上げる経験は、何物にも代えがたい財産になります。
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エコノパワー部: 1リットルのガソリンで何キロ走れるかを競う、省エネカーの大会に出場しています。燃費を極限まで追求するため、機械工学や流体力学、材料力学といった専門知識がフルに活かされます。
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陸上競技部: 運動部の中でも特に強豪として知られ、全国レベルで活躍する選手もいます。
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その他のユニークな部活: 「航空・ロボット製作部」や「情報技術研究部」、「e-sports同好会」など、専門性を活かしたユニークな活動がたくさんあります。
イベント
学校行事も、高専ならではの特色が色濃く反映されています。
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工嶺祭(こうれいさい): 毎年秋に開催される文化祭で、長野高専最大のイベントです。最大の見どころは、学生たちが日頃の学びの成果を発表するクラス展示。企業と協力して製作した本格的なクレーンゲームや、複雑な仕掛けが連動するピタゴラ装置、精巧なジオラマなど、その技術力の高さは圧巻の一言。夜には音楽祭も開かれ、最後は全校生徒でテーマ曲を大合唱するなど、感動的なフィナーレを迎えます。
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体育祭: 春と秋の年2回開催されます。1年生から5年生までの全学年が混合でチームを組み、サッカーやバスケットボールなどの種目で競い合います。学年を超えた交流が深まる大切な行事です。
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研修旅行: 2年生の時に研修旅行が実施されます。また、4年生になると企業での実務訓練(インターンシップ)も行われ、社会に出る準備をします。
長野工業高等専門学校の進学実績
長野高専の卒業生は、「就職」と「進学」という二つの優れた選択肢を手にすることができます。これは、他の高校にはない、高専ならではの最大の強みです。
圧倒的な強さを誇る「就職」
高専卒業生に対する産業界からの評価は極めて高く、就職希望者に対する求人倍率(一人の学生に対して何社の求人があるか)は、本科卒業生で平均18倍という驚異的な数字を記録しています。学生一人あたり10社以上の企業から声がかかることも珍しくありません。これは、5年間の実践的な教育で培われた高い専門性と問題解決能力が、即戦力として高く評価されているためです。卒業生の多くは、日本を代表する大企業や地元の優良企業に、技術系総合職として就職していきます。
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主な就職先(県外): 東海旅客鉄道(JR東海)、中部電力、東日本旅客鉄道(JR東日本)、ファナック、SUBARU、本田技研工業、ソニーグループなど
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主な就職先(県内): セイコーエプソン、KOA、竹内製作所、ミネベアミツミ、日置電機、長野県職員など
難関大学への扉を開く「進学」
さらに学びを深めたい学生のために、「大学編入」という道が用意されています。これは、高専の5年間の課程を修了した後、4年制大学の「3年次」に入学できる制度です。一般の大学受験とは異なるルートのため、多くの高校生が挑む厳しい共通テストなどを経ずに、国公立大学をはじめとする難関大学へ進学することが可能です。
また、長野高専のキャンパス内には、本科卒業生がさらに2年間高度な研究を行える「専攻科」も設置されています。専攻科を修了すると、大学卒業と同等の「学士」の学位が取得でき、大学院への進学も可能になります。
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主な進学先(大学編入): 長岡技術科学大学、豊橋技術科学大学、信州大学、東北大学、筑波大学、千葉大学、東京工業大学(現 東京科学大学)など、全国の国公立大学
長野工業高等専門学校の特長・アピールポイント
他の高校にはない、長野高専ならではの強みや魅力をまとめました。
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5年一貫の専門教育
普通の高校では体験できないスピードと深さで、中学卒業後すぐに大好きな工学の世界に飛び込めます。大学レベルの専門知識と技術を、10代のうちから身につけることが可能です。
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圧倒的な就職力
卒業後の就職は、まさに「引く手あまた」。求人倍率は平均18倍にも達し、安定した未来と専門職としてのキャリアを確実なものにできます。
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難関大学への編入という選択肢
厳しい一般入試を避け、トップクラスの国公立大学工学部に3年生として編入できる特別なルートがあります。就職だけでなく、研究者への道も力強くサポートされています。
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大学のような自由な校風
制服なし、アルバイトOKなど、校則は最小限。学生の自主性を尊重する環境で、自己管理能力と自立心が育まれます。
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実践的なものづくり活動
全国的に有名な「ロボコン」への挑戦や、技術の粋を集めた文化祭「工嶺祭」など、学んだ知識を活かして創造力を爆発させる機会に満ちています。
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全国から仲間が集う寮生活
キャンパス内にある学生寮では、日本全国から集まった同じ志を持つ仲間たちと暮らし、学ぶことができます。この経験は、一生の宝物になるでしょう。
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未来を見据えた学際的カリキュラム
専門分野の垣根を越えた「1学科3系」制は、これからの社会が求める複雑な課題に対応できる、柔軟で幅広い視野を持った技術者を育成するための最先端の教育システムです。
長野工業高等専門学校の口コミ・評判のまとめ
在校生や卒業生からのリアルな声は、学校の本当の姿を知る上で非常に参考になります。ここでは、良い点と気になる点を公平に紹介します。
良い点
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「専門分野を深く、実践的に学べる」
「先生方が熱心で、専門的なことをしっかり教えてくれる」「1年生から実習が多く、知識が確実に身につく」といった声が多数あります。自分の好きな分野をとことん追求したい学生にとっては、最高の環境と評価されています。
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「自由な校風で、やりたいことができる」
「校則がほとんどなく、学生の自主性に任されている」「大学のようで楽しい」という意見が多く、自由な環境でのびのびと学校生活を送りたい生徒に合っているようです。
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「就職も進学も本当に強い」
卒業後の進路に対する安心感は、生徒や保護者から高く評価されています。「将来的に工学の分野に進むならここ以上の学校はない」という声もあり、キャリア形成における圧倒的な強みが認識されています。
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「個性が尊重され、いじめが少ない」
「自分の世界観を持った人が多く、互いを尊重する雰囲気」「いじめは聞いたことがない」など、落ち着いて学業に専念できる環境であることがうかがえます。
気になる点
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「興味がないと本当に苦痛になる」
これが最も多く聞かれる注意点です。「専門的な勉強が好きになれる自信がある人だけにおすすめします」「安易な気持ちで入学すると大変」といった声が示すように、明確な目的意識がないと、高度で専門的な授業についていくのが非常に困難になります。
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「進路の方向転換が難しい」
「専門的すぎて、後から文系などに進路を変えるのがとてもしづらい」という意見も重要です。15歳の時点で将来の道を工学系一本に絞ることになるため、その決断には慎重さが求められます。
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「勉強が難しく、留年のプレッシャーがある」
「勉強がとても難しい」「成績が振るわないと留年してしまう厳しい面もある」という声は、自由な校風の裏側にある厳しさを物語っています。高いレベルの学業を維持するための自己管理能力が不可欠です。
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「施設が少し古い部分もある」
全体的には設備が整っていますが、校舎の一部に古さを感じるという意見も散見されます。
アクセス・通学
長野高専への通学方法です。学校説明会などで訪れる際の参考にしてください。
出発地 | 交通手段 | 所要時間 | 詳細 |
しなの鉄道 北しなの線「三才駅」 | 徒歩 | 約15分 | キャンパスに最も近い駅です。 |
JR「長野駅」善光寺口 | 長電バス | 約30分 | 6番乗り場から三才駅経由のバスに乗車し、「高専」バス停で下車します。 |
長野市内を中心に、県内全域から生徒が通っています。また、キャンパス内に寮が完備されているため、南信地方などの遠隔地や県外からの入学者も多く在籍しています。
長野工業高等専門学校受験生へのワンポイントアドバイス
ここまで読んでくれて、本当にありがとう。最後に、進学アドバイザーとして、長野高専を目指す君に心からのエールを送ります。
もし君が、「ものを作ることが大好きだ」「機械やコンピュータの仕組みを考えるとワクワクする」「周りに流されず、自分のペースでとことん好きなことを探究したい」と強く感じているなら、長野工業高等専門学校は君にとって最高の場所になるはずです。ここは、普通の高校生活では物足りないと感じるような、知的好奇心にあふれた君の才能を、5年間かけてじっくりと開花させてくれる特別な学校です。
受験勉強では、まず中学校の範囲を穴なく完璧にすることが何よりも大切です。特に数学と理科は、入学後の専門科目の土台となるため、得意分野にしておくと大きなアドバンテージになります。推薦選抜を考えているなら、面接対策も重要です。英語での口頭試問も含まれるので準備が必要ですが、それ以上に「なぜ長野高専で学びたいのか」「ここで何を成し遂げたいのか」という君自身の熱い想いを、自分の言葉でしっかりと伝えられるように練習してください。君のその情熱こそが、合格への一番の近道です。健闘を祈っています!
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。