岩手県立不来方高等学校は、一人ひとりの「好き」や「得意」を最大限に伸ばすことができる、県内でもユニークな教育で知られています。芸術、語学、スポーツ、そしてもちろん学問と、多様な分野で自分の才能を磨きたい生徒にとって、最高の環境が整っています。そんな不来方高等学校は、2025年4月、盛岡南高等学校と統合し、新たに「岩手県立南昌みらい高等学校」として未来への大きな一歩を踏み出します。

この変化に、期待と少しの不安を感じている中学生や保護者の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、安心してください。全国にその名を轟かせる部活動の伝統、専門分野をとことん探究できる「学系」という学びのスタイルなど、不来方高等学校が長年培ってきた素晴らしい精神と強みは、新しい学校の核としてしっかりと受け継がれていきます。これは終わりではなく、二つの学校の力が合わさることで、さらに魅力的な学校へと進化する始まりなのです。

この記事では、これから「南昌みらい高等学校」を目指す皆さんのために、その礎となる不来方高等学校がどんな学校なのかを、偏差値や進学実績といったデータから、在校生のリアルな声、学校生活の隅々に至るまで、詳しく、そして分かりやすく解説していきます。この記事を読めば、あなたがこの学校でどんな3年間を送り、どんな未来へ羽ばたいていけるのか、きっと具体的にイメージできるはずです。

不来方高等学校の基本情報

まずは、学校の基本的な情報を確認しておきましょう。2025年4月からは「岩手県立南昌みらい高等学校」として新しい歴史をスタートさせるため、新校名と新しい公式サイトのURLも併せて記載します。

項目 内容
正式名称 岩手県立不来方高等学校
2025年4月からの新校名 岩手県立南昌みらい高等学校
公立/私立の別 公立
共学/男子校/女子校の別 共学
所在地 〒028-3615 岩手県紫波郡矢巾町南矢幅9-1-1
代表電話番号 019-697-8247 (事務室)
公式サイトURL https://www2.iwate-ed.jp/koz-h/
新高校公式サイトURL https://www2.iwate-ed.jp/nsm-h/

不来方高等学校の偏差値・難易度・併願校

不来方高等学校の大きな特徴は、普通科の中に専門性の高い「学系」が設置されている点です。そのため、偏差値も学系によって異なります。これは、学力だけでなく、特定の分野への情熱や技能も評価される、この学校ならではの入試制度を反映しています。

  • 人文理数学系: 53

  • 外国語学系: 50

  • 芸術学系: 49

  • 体育学系: 46

この偏差値の幅は、学校の教育方針そのものを表しています。例えば、人文理数学系は大学進学を主眼に置いた学力が求められるため、偏差値が高めです。一方で、芸術学系や体育学系は、デッサンや実技試験、スポーツの実績などが合否に大きく影響するため、一概に学力テストの点数だけでは測れないのです。不来方高等学校を目指すということは、自分の得意分野で勝負できるチャンスがあるということです。

合格に必要な内申点の目安としては、岩手県の公立高校入試では中学3年間の成績が重要視されます。特に人文理数学系を目指す場合は、主要5教科を中心にバランスよく高い評定を取っておくことが望ましいでしょう。具体的な目標としては、9教科の評定合計で35/45以上が一つの目安となりそうです。

岩手県の公立高校入試では、他の公立高校を併願することはできません。そのため、併願校は私立高校から選ぶことになります。不来方高等学校を受験する生徒の主な併願校としては、以下のような私立高校が挙げられます。

  • 一関修紅高等学校

  • 盛岡中央高等学校

  • 盛岡白百合学園高等学校

  • 盛岡誠桜高等学校

不来方高等学校に設置されている学科・コース

不来方高等学校の心臓部とも言えるのが、5つの「学系」からなる独自の教育システムです。これは、高校1年生の時から自分の興味や将来の夢に合わせて専門分野を深く学べる仕組みで、新しい南昌みらい高等学校にも引き継がれます。

  • 人文理数学系

    国公立大学や難関私立大学への進学を目指し、文系・理系の主要教科をバランスよく、そして深く学ぶ学系です。将来、法律、経済、医療、科学技術などの分野で活躍したい人におすすめです。

  • 外国語学系

    英語はもちろん、フランス語や中国語のコースがあり、第二外国語としてドイツ語やスペイン語、ハングルも選択可能です。ネイティブの先生による授業や海外修学旅行などを通して、世界で通用する語学力と国際感覚を養います。将来、国際関係の仕事や海外で活躍したい人に最適です。

  • 芸術学系

    音楽コースと美術・工芸コースに分かれています。専門の施設が充実しており、まるで芸術大学のようです。

    • 音楽コース: 声楽やピアノなどの専門的なレッスンを受け、卒業演奏会も開催します。音楽大学への進学を目指す本格派におすすめです。

    • 美術・工芸コース: 絵画、デザイン、彫刻、工芸など、幅広い分野を専門の先生から学べます。美術大学への進学や、クリエイティブな仕事を目指す人にぴったりです。

  • 体育学系

    ハンドボール、カヌー、ホッケーなど7つの専攻があり、専門的なトレーニングを授業の一環として行います。トップアスリートやスポーツ指導者を目指し、体育系の大学への進学を考えている人におすすめです。

この学系システムは、単なるコース分けではありません。同じ目標を持つ仲間たちと3年間を共に過ごすことで、強い連帯感が生まれます。それぞれの学系が、まるで「学校の中にあるもう一つの専門学校」のように機能しているのが、不来方高等学校の最大の魅力です。

不来方高等学校の特色・校風

不来方高等学校の校風を表すキーワードは、「文武両道」「個性の尊重」「自由と規律」です。様々な夢を持つ生徒が集まっているため、キャンパスはいつも活気に満ちています。

  • 宿題の量

    学系によって大きく異なります。人文理数学系は大学受験を見据えた課題が多く、計画的な学習が求められます。一方、芸術学系や体育学系は、授業後の練習や制作活動そのものが「宿題」とも言え、専門分野に打ち込む時間が長くなる傾向があります。

  • 校則(スマホ、服装など)

    校則は、一般的な公立高校の基準に沿ったもので、「自由・創造・飛翔」という校訓のもと、生徒の自主性を尊重しつつも、高校生としての品位を保つための規律が求められます。スマートフォンの使用は、授業中は禁止ですが、休み時間や放課後は使用できるなど、常識の範囲内での運用がされているようです。服装は制服が定められています。

  • 生徒たちの雰囲気

    生徒は、自分の専門分野に情熱を注ぐ、真面目でひたむきな人が多いようです。アスリート、アーティスト、学者肌の生徒など、多様な個性がお互いを尊重し合う文化があります。自分の「好き」に正直な生徒が多く、活気のある雰囲気です。

  • アルバイト

    学業や部活動に専念することが推奨されており、原則として禁止または許可制となっていることが多いようです。特に全国レベルで活動する部活動に所属している場合、時間的に両立は難しいかもしれません。

  • 制服の評判

    制服のデザインや評判に関する具体的な口コミは見当たりませんでしたが、公立高校として標準的なデザインであると考えられます。

  • 土曜授業

    土曜授業の有無についての明確な情報はありませんが、進学補習や部活動の練習・遠征などで土曜日に登校する機会は多いようです。

不来方高等学校の部活動・イベント

部活動

不来方高等学校のアイデンティティを語る上で、部活動は絶対に欠かせません。数多くの部が全国の頂点を競うレベルにあり、学校全体がその活躍を誇りに思っています。

  • 全体の様子

    運動部17、文化部10と、非常に充実しています。多くの生徒が部活動に加入しており、放課後のキャンパスは練習に励む生徒たちの熱気であふれています。特に、体育学系や芸術学系の生徒は、部活動と学系の学びが直結しており、非常に高いレベルで活動しています。

  • 特に有名な部活動

    • 音楽部(合唱): 「コズカタサウンド」として全国にファンを持つ、日本屈指の強豪です。全日本合唱コンクール全国大会で、最高賞である文部科学大臣賞を何度も受賞しており、その歌声は圧巻の一言です。

    • ハンドボール部: 男女ともに全国大会の常連で、男子は全国選抜大会で優勝経験もあるほどの超強豪校です。体育学系の生徒が中心となり、日々厳しい練習に打ち込んでいます。

    • ホッケー部・カヌー部: これらの部も全国優勝の経験を持つなど、輝かしい実績を誇ります。専門的な指導のもと、オリンピックを目指せるような環境が整っています。

    • 硬式野球部: 2017年に部員わずか10名で春のセンバツ甲子園に出場したことは、多くの人々の記憶に残っています。困難に立ち向かう「不来方魂」を象徴する出来事でした。

その他にも、美術部や書道部が全国レベルの展覧会で入賞したり、将棋部や放送部が東北大会へ進出したりと、文化部も非常に活発です。

イベント

不来方高等学校の学校行事は、学系の特色を活かしたユニークなものが多く、生徒たちの才能が輝く舞台となっています。

  • 翔鶴祭(文化祭)

    学校最大のイベントです。特に芸術学系の生徒によるコンサートや作品展は、高校生のレベルをはるかに超えていると評判です。各クラスや文化部も趣向を凝らした企画で参加し、学校中が一体となって盛り上がります。

  • 体育祭

    体育学系の生徒や運動部員が本領を発揮する、非常にハイレベルで見応えのあるイベントです。学系対抗のリレーなどもあり、応援にも熱が入ります。

  • 修学旅行

    学系ごとに目的地が異なる場合があるのが特徴です。例えば、外国語学系では過去にオーストラリアへの語学研修を兼ねた修学旅行を実施しており、実践的な学びの機会となっています。

  • 学系ごとの専門行事

    音楽コースの定期演奏会や卒業演奏会、美術・工芸コースの校外作品展、体育学系のスキー実習やキャンプ実習など、年間を通して専門性を高めるための行事が数多く計画されています。これらの行事は、日々の学びの成果を発表する貴重な機会であり、生徒たちの大きな成長につながっています。

不来方高等学校の進学実績

不来方高等学校は、学系システムを活かして、生徒一人ひとりの希望進路に合わせた多様な進学実績を誇っています。学業だけでなく、芸術やスポーツの分野で専門大学へ進む生徒が多いのも大きな特徴です。

  • 進学実績の概観

    国公立大学へは毎年60名から70名が合格しており、地元の岩手大学や岩手県立大学への進学者が特に多いです。また、芸術系や体育系の国公立大学(東京藝術大学、金沢美術工芸大学、秋田公立美術大学など)への合格者も輩出しています。私立大学では、早稲田大学や上智大学、MARCH(明治、立教、法政など)といった難関大学にも合格者を出しています。

  • 主な大学進学実績(2023年実績参考)

分類 主な進学先と人数
国公立大学 合計 約60〜70名。岩手大学 (17), 岩手県立大学 (14), 北海道教育大学 (4), 大阪大学 (1), お茶の水女子大学 (1), 長岡造形大学 (5), 秋田公立美術大学 (2)など
難関私立大学 早稲田大学, 上智大学, 明治大学, 立教大学, 法政大学 (3), 中央大学 など
その他 盛岡大学, 東北学院大学, 東北福祉大学など多数。また、国立音楽大学, 東北芸術工科大学など、専門分野の大学への進学者が多いのが特徴
専門学校・就職 看護・医療系の専門学校への進学者も安定しています。就職を希望する生徒の就職内定率は100%を達成しており、最後まで手厚いサポートが行われています。
  • 進学サポート体制

    学校では、①授業を通じた基礎学力の養成、②キャリア学習を通じた進路意識の向上、③個別指導(添削・面接練習など)を通じた実践力の向上、という3つの柱で生徒の夢の実現を支援しています。学系の先生方が専門分野の進路に詳しいため、きめ細やかなアドバイスが受けられるのも強みです。

不来方高等学校の特長・アピールポイント

他の高校にはない、不来方高等学校ならではの魅力を5つのポイントにまとめました。

  • 県内唯一の「5学系システム」

    最大の特長です。公立高校でありながら、まるで専門学校のように自分の好きな分野を深く探究できます。高校生活を通して「これを学びたい」という明確な目標がある生徒にとって、最高の環境です。

  • 日本一を目指せる全国レベルの部活動

    音楽(合唱)、ハンドボール、ホッケー、カヌーなど、数多くの部が全国の頂点を争っています。高いレベルで切磋琢磨したい、本気で部活動に打ち込みたい生徒にとって、これ以上ない舞台が用意されています。

  • 専門分野に特化した充実の施設

    音楽コースや美術・工芸コースの生徒が使用する「芸術棟」には、専門的な制作や練習に必要な設備が整っています。また、体育学系の生徒が使用するトレーニング施設なども充実しており、専門的な学びをハード面から支えています。

  • 多様な夢を実現する進路実績

    一般的な大学だけでなく、音楽大学、美術大学、体育大学といった専門分野のトップクラスの大学へも多くの卒業生を送り出しています。これは、学校が多様な才能を認め、育てることに成功している証です。

  • グローバルな視野を育む国際交流

    外国語学系を中心に、ネイティブスピーカーによる授業や海外研修の機会が設けられており、生きた語学力と異文化理解を深めることができます。

不来方高等学校の口コミ・評判のまとめ

ここでは、在校生や卒業生から寄せられるリアルな声をもとに、不来方高等学校の良い点と、知っておくべき気になる点を公平にご紹介します。

  • 良い点

    • 「自分の『好き』をとことん追求できる環境がある」という声が最も多く聞かれます。学系システムのおかげで、同じ目標を持つ仲間と専門的な授業を受けられることが、大きな満足につながっているようです。

    • 「部活動で日本一を目指せるのが魅力」という意見も多数あります。高い目標を掲げて本気で打ち込める環境は、情熱のある生徒にとって大きな魅力です。

    • 「専門知識が豊富な先生方の指導が手厚い」という評判も聞かれます。特に芸術系や体育系では、専門分野のプロフェッショナルから直接指導を受けられることを高く評価する声が多いです。

    • 「行事が楽しく、学系やクラスの団結力が強い」という口コミもあります。翔鶴祭などを通じて、多様な才能を持つ生徒たちが一体となる経験ができるようです。

  • 気になる点

    • 過去の部活動における重大事案について、触れないわけにはいきません。2018年、バレーボール部で顧問による指導を苦にした生徒が自ら命を絶つという、大変痛ましい出来事がありました。これは、生徒を守るべき学校の責任が果たされなかった重大な問題です。

    • この出来事の後、第三者委員会による調査が行われ、当該教員は懲戒免職処分となりました。そして、県全体で再発防止に向けた取り組みが強化されています。盛岡南高校との統合による「南昌みらい高等学校」への移行は、この過去を乗り越え、より安全で生徒一人ひとりに寄り添う新しい学校文化を築くという、強い決意の表れでもあります。この歴史と、それを受けての改革について、受験生と保護者の皆様には知っておいていただきたいと思います。

    • 「学系によっては専門性が高く、途中で進路変更しにくいかもしれない」という意見もあります。入学時にある程度やりたいことが決まっている生徒には最適ですが、まだ迷っている生徒にとっては、専門に特化しすぎていると感じる可能性も指摘されています。

アクセス・通学

不来方高等学校は、交通の便が非常に良い場所にあります。

  • 最寄り駅

    JR東北本線「矢幅駅」です。

  • 駅からのアクセス

    • 徒歩: 矢幅駅の東口から、歩いて約10分〜13分です。ほとんどの生徒が駅から歩いて通学しています。

    • バス: 矢巾町市街地循環バスを利用すると、「不来方高校前」というバス停が学校の目の前にあります。

  • 主な通学エリア

    矢幅駅は、盛岡駅から電車で約14分、花巻駅からは約27分というアクセスの良さから、盛岡市や花巻市、紫波町など、広範囲から生徒が通学しています。

不来方高等学校受験生へのワンポイントアドバイス

ここまで読んでくれて、ありがとうございます。最後に、進学アドバイザーとして、不来方高等学校の伝統を受け継ぐ新しい学校を目指す君たちへ、応援メッセージを送ります。

この学校、まもなく「南昌みらい高等学校」となる場所は、「好き」という気持ちを、誰にも負けない「強み」に変えることができる特別なステージです。もし君の中に「絵を描くのが好きでたまらない」「歌声で人を感動させたい」「このスポーツで頂点に立ちたい」「世界中の人と話せるようになりたい」という熱い想いがあるなら、ここは最高の環境になるでしょう。不来方高等学校が育んできたのは、そんな一人ひとりの情熱です。

受験勉強では、5教科の学力を伸ばすことはもちろん大切です。しかし、それと同時に、自分が目指す学系で求められる力も磨いてください。芸術学系ならデッサンや楽器の練習を、体育学系なら日々のトレーニングを、外国語学系なら英検の勉強やスピーチの練習を。面接や実技試験では、君のその熱意が何よりも評価されます。「なぜこの学校で学びたいのか」を自分の言葉で語れるように準備しておきましょう。君の挑戦を心から応援しています!

※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。