東京都立八王子東高等学校は、多摩地区を代表する進学校の一つとして、高い学力と豊かな人間性を育む教育で知られています。
この学校の最大の魅力は、単に大学進学実績が高いだけでなく、生徒一人ひとりが「自ら学び、自ら考え、自ら創る」という理念のもとで、主体的に学校生活を謳歌している点にあります。在校生たちは、誇りである焦げ茶色の制服にちなんで、自分たちの青春を「茶春(ちゃはる)」と呼び、勉強も行事も部活動も全力で楽しんでいます。
この記事では、そんな八王子東高等学校のリアルな姿を、進学アドバイザーの視点から、中学生とその保護者の皆さんに向けて分かりやすく、そして詳しく解説していきます。皆さんの高校選びの確かな一助となれば幸いです。
東京都立八王子東高等学校の基本情報
まずは、学校の基本的な情報を確認しましょう。学校選びの第一歩は、正確な情報を把握することから始まります。
項目 | 内容 |
正式名称 | 東京都立八王子東高等学校 |
公立/私立の別 | 公立 |
共学/別学 | 男女共学 |
所在地 | 〒192-8568 東京都八王子市高倉町68-1 |
代表電話番号 | 042-644-6996 |
公式サイトのURL | http://www.hachiojihigashi-h.metro.tokyo.jp/cms/html/top/main/index.html |
東京都立八王子東高等学校の偏差値・難易度・併願校
八王子東高等学校を目指す上で、最も気になるのがその難易度でしょう。ここでは偏差値だけでなく、合格に必要な内申点の目安や、主な併願校について具体的に解説します。
偏差値・難易度
八王子東高等学校の偏差値は、各種模擬試験のデータによるとおおむね「63〜64」が合格可能性60%のラインとされています。一部のウェブサイトでは70を超える数値も見られますが、これは算出基準が異なるためで、受験生の皆さんはVもぎやWもぎといった模試の結果を参考にすると、より現実的な立ち位置が把握できるでしょう。
都立高校の入試では、学力検査の得点と中学校の成績(内申点)を合計して合否が決まります。八王子東のような進学指導重点校では、学力検査の比重が700点、内申点の比重が300点(合計1000点満点)となっています。このため、当日の試験での高得点が非常に重要になります。
合格に必要な内申点の目安は、9教科の成績を5段階で評価した「素内申」で42前後、それを都立高校の基準で計算し直した「換算内申」で56〜57点あたりが目標となります。具体的には、主要5教科はオール4、実技4教科のうち2〜3教科で5を取るイメージです。もちろん、これはあくまで目安です。換算内申が多少低くても、当日の学力検査で高い点数を取れば逆転合格は十分に可能です。
同じくらいの偏差値の高校としては、都心部では新宿高校や小山台高校、多摩地区では立川高校(普通科)や国分寺高校などが挙げられます。これらの学校と並び、八王子東高等学校は多摩地区のトップレベルの学力を誇る学校と言えます。
主な併願校
都立高校が第一志望の場合、一般入試で他の都立高校を併願することはできません。そのため、併願校は私立高校を選ぶことになります。八王子東高等学校の受験生が併願先として選ぶことが多いのは、大学附属校や、高い進学実績を持つ進学校です。
-
大学附属校:中央大学附属高等学校、明治大学付属八王子高等学校、帝京大学高等学校など、大学への内部進学も視野に入れられる学校が人気です。
-
進学校(特進コースなど):拓殖大学第一高等学校(特進)、錦城高等学校(特進)、桐朋高等学校、桐光学園高等学校など、難関大学への進学を目指すコースを持つ学校も多く選ばれています。
これらの併願校も非常にレベルが高いため、八王子東高等学校を目指すには、併願校対策も含めた早期からの計画的な学習が不可欠です。
東京都立八王子東高等学校に設置されている学科・コース
八王子東高等学校に設置されている学科は以下の通りです。
-
普通科
-
どんなことを学ぶ場所か:特定のコース分けはなく、1年生から文系・理系を問わず、全ての教科をバランス良く学びます。幅広い教養を身につけた上で、2年生以降に自分の興味や進路希望に応じて科目を選択し、専門性を深めていきます。
-
どんな生徒におすすめか:将来の夢がまだ具体的に決まっていないけれど、高いレベルの環境で自分の可能性をじっくり探したい、という生徒に最適な環境です。
-
東京都立八王子東高等学校の特色・校風
キーワード:文武両道、生徒主体、探究学習、落ち着いた雰囲気、茶春
八王子東高等学校の校風を最もよく表しているのが「生徒の主体性」を重んじる文化です。学校行事の多くは生徒が中心となって企画・運営され、生徒たちは自ら考え、行動する力を養っていきます。
-
宿題の量:口コミを見ると「課題はかなり少なめ」という声がある一方で、高い進学実績を維持していることから、学校からの課題以上に、生徒一人ひとりが自主的に学習に取り組むことが期待されている雰囲気があるようです。自学自習の習慣が身についている生徒にとっては、自分のペースで学習を進めやすい環境と言えるでしょう。
-
校則:校則については「自由だ」という声と、「意外と厳しい」という声の両方が聞かれます。これは、学校が生徒の自主性を信頼していることの裏返しでもあります。スマートフォンは持ち込み可能で、授業中に板書を撮影するために使うことが推奨されることもあるなど、合理的な運用がなされています。一方で、制服の着こなしやマナーなど、高校生としての品位に関わる部分では、きちんと指導が入るようです。
-
生徒たちの雰囲気:「やるときはやる、楽しむときは楽しむ」というメリハリのついた生徒が多いのが特徴です。普段は和気あいあいとしていますが、試験前や行事の前にはクラス全体がぐっと集中する雰囲気があります。互いに切磋琢磨し合える、知的な刺激に満ちた環境です。
-
アルバイト:学校としてアルバイトを推奨しているわけではなく、多くの生徒は勉強や部活動、学校行事に集中しているため、アルバイトをしている生徒は少ない傾向にあるようです。
-
制服の評判:焦げ茶色のブレザーは八王子東の象徴として、生徒たちに愛されています。知的で落ち着いた印象を与え、この制服に憧れて入学を目指す受験生も少なくありません。伝統的な色合いを保ちつつ、シルエットや素材は現代的にアップデートされています。
-
土曜授業:毎週の正規の土曜授業は実施されていませんが、長期休暇中の講習や模試、部活動の練習などで土曜日に登校する機会は多くあります。
東京都立八王子東高等学校の部活動・イベント
部活動
八王子東高等学校は「文武両道」を掲げており、部活動も非常に盛んです。多くの生徒が部活動に加入し、学業と両立させながら高いレベルで活動しています。
運動部、文化部ともに種類が豊富で、初心者から経験者まで、誰もが熱中できる場所を見つけることができます。
-
陸上競技部:全国大会(インターハイ)に何度も出場している強豪部です。2004年アテネオリンピック代表の谷川聡選手もOBであり、高いレベルで競技に取り組める環境が整っています。
-
演劇部:全国高等学校総合文化祭で優良賞や創作脚本賞を受賞するなど、全国レベルでの実績を誇ります。表現力を磨きたい生徒にとって、非常に魅力的な部です。
-
水泳部、卓球部、コーラス部:これらの部も全国大会への出場経験があり、高い目標を持って活動しています。
-
ブレイクダンス部:高校の部活動としては珍しく、生徒の自主的な活動から生まれた部です。文化祭などでのパフォーマンスは非常に人気があります。
-
軟式野球部:硬式野球とは異なり、体格に関わらず活躍のチャンスがあり、勉強との両立をしながら関東大会や全国大会を目指して活動しています。
イベント
八王子東の学校生活を彩るイベントは、生徒たちが主体となって作り上げるのが最大の特色です。
-
しらかし祭:9月初旬に文化祭と体育祭をまとめて1週間にわたって行われる、学校最大のイベントです。企画から運営まで、そのほとんどを実行委員の生徒たちが担います。クラスごとの演劇や展示、体育祭での応援合戦など、学校全体が一体となって作り上げる熱気は圧巻の一言です。この経験を通して、生徒たちはリーダーシップや協調性を学んでいきます。
-
合唱祭:学年を超えてクラス単位で歌声を競い合います。本番に向けて練習を重ねる中で、クラスの団結力が飛躍的に高まります。
-
スポーツ大会:学期ごとに行われる球技大会で、クラス対抗で熱戦が繰り広げられます。新入生にとっては、クラスに打ち解ける良いきっかけとなる行事です。
-
修学旅行:例年、2年生で実施され、行き先は年度によって異なりますが、仲間との絆を深める貴重な機会となっています。
東京都立八王子東高等学校の進学実績
進学指導重点校である八王子東高等学校は、多摩地区屈指の大学進学実績を誇ります。生徒の約4割が現役で国公立大学に合格するなど、非常に高い水準を維持しています。
2025年度の主な大学進学実績(合格者数)
(※合格者数は既卒生を含む延べ人数です)
-
国公立大学:合計145名
-
東京大学:1名
-
京都大学:1名
-
一橋大学:4名
-
東京科学大学(旧東工大・医科歯科大):7名
-
北海道大学:9名
-
東北大学:3名
-
東京都立大学:27名
-
横浜国立大学:8名
-
千葉大学:3名
-
筑波大学:4名
-
東京外国語大学:10名
-
国公立大学医学部医学科:5名
-
-
難関私立大学
-
早稲田大学・慶應義塾大学・上智大学・東京理科大学:合計178名
-
GMARCH(学習院・明治・青山学院・立教・中央・法政):合計408名
-
進学実績を支える取り組み
これらの輝かしい実績は、学校全体の手厚いサポート体制によって支えられています。「塾や予備校に頼らなくても、学校の授業を軸に進路実現が図れる」という方針のもと、様々な取り組みが行われています。特に、夏休みには約70もの講座が開講される大規模な夏期講習があり、多くの生徒が参加して受験対策に励んでいます。その他、冬期講習や受験直前講座など、年間を通じて生徒の学力を引き上げるためのプログラムが充実しています。
東京都立八王子東高等学校の特長・アピールポイント
他の高校にはない、八王子東高等学校ならではの強みやユニークな取り組みをまとめました。
-
進学指導重点校としての圧倒的な進学サポート
東京都から「進学指導重点校」に指定されており、学校を挙げて生徒の進路実現をバックアップします。夏期・冬期講習など、予備校に頼らずとも難関大学を目指せる手厚いサポート体制が最大の強みです。
-
「探究学習」で育む、自ら考え抜く力
1年生から始まる「探究」の授業では、生徒が自ら課題を設定し、調査・分析・発表を行います。答えのない問いに向き合うこの活動を通して、大学での学びや社会で必要とされる思考力・表現力を養います。
-
生徒が主役!日本一熱い「しらかし祭」
企画から運営まで生徒が作り上げる文化祭・体育祭「しらかし祭」は、学校の自主・自律の精神を象徴するイベントです。仲間と協力して一つのものを創り上げる達成感は、何物にも代えがたい経験となります。
-
真の「文武両道」を実現する環境
全国レベルで活躍する部活動が多数ありながら、東京大学をはじめとする最難関大学への合格者も輩出しています。勉強も部活動も、どちらも本気で取り組みたい生徒にとって理想的な環境です。
-
多様な価値観に触れる都の指定事業
「理数研究校」や「GE-NET20(グローバル人材育成)」などにも指定されており、第一線の研究者の講演を聞いたり、オンライン英会話で海外の同世代と交流したりする機会が豊富に用意されています。
-
誇り高き「茶春」を生む、独自の生徒文化
生徒たちが自らの高校生活を「茶春」と呼び、誇りを持っているように、生徒主体で作り上げられてきたユニークな文化が根付いています。同じ価値観を持つ仲間たちと、一生の思い出に残る3年間を過ごせます。
東京都立八王子東高等学校の口コミ・評判のまとめ
在校生や卒業生からのリアルな声を、良い点と気になる点に分けて公平にご紹介します。
良い点
-
「勉強と学校行事、部活動のバランスが取れる」という声が非常に多いです。メリハリをつけて高校生活を全力で楽しみたい生徒にとって、最高の環境だと評価されています。
-
「周りの生徒のレベルが高く、互いに高め合える」という意見も目立ちます。同じ目標を持つ仲間と切磋琢磨できる環境が、学習意欲の向上につながっているようです。
-
「生徒の自主性を尊重してくれる校風が良い」という口コミも多数あります。特に学校行事を生徒主体で運営できることに、やりがいと楽しさを感じている生徒が多いようです。
-
「先生方が親身になって相談に乗ってくれる」といった、教師との良好な関係を挙げる声もあります。
気になる点
-
「駅から少し遠く、立地が不便」という点は、多くの生徒が挙げる注意点です。特に遠方から通学する場合、毎日の通学時間が長くなることは覚悟しておく必要があるかもしれません。
-
「先生によって授業の質に差がある」という意見も見られます。大学受験を意識した分かりやすい授業をしてくれる先生がいる一方で、そうでない先生もいる、という声は、多くの進学校で聞かれる共通の課題とも言えます。
-
「入学当初のやる気を失ってしまう生徒もいる」という指摘もあります。自由な校風だからこそ、自分を律する強い意志が求められる場面があるようです。
-
「校則が思ったより厳しいと感じる」という声も一部にあります。特に服装に関する指導は、中学校よりは緩やかですが、一定のルールは守る必要があります。
アクセス・通学
八王子東高等学校への主なアクセス方法は以下の通りです。
-
JR八高線「北八王子」駅から徒歩約11分
-
JR中央線「豊田」駅北口からバスを利用。「八王子駅北口行」バスに乗車し「大和田坂上」で下車、そこから徒歩約6分
-
JR中央線「八王子」駅または京王線「京王八王子」駅からバスを利用する方法もあります。
通学している生徒は、八王子市、町田市、日野市、多摩市、府中市といった多摩地区の生徒が中心です。全体の約2割の生徒が自転車で通学しているというデータもあります。周辺は大学や公園、研究所などが集まる落ち着いた文教地区です。
東京都立八王子東高等学校受験生へのワンポイントアドバイス
ここまで読んでいただき、八王子東高等学校の魅力が伝わったでしょうか。最後に、進学アドバイザーとして、この学校を目指す皆さんへ応援メッセージを送ります。
八王子東高等学校は、「誰かにやらされる勉強」ではなく、「自ら学びたい」という強い意欲を持った生徒に特におすすめの学校です。また、勉強だけでなく、部活動や学校行事にも本気で打ち込み、充実した「茶春」を送りたいと願う君にこそ、挑戦してほしい場所です。
受験勉強では、特に英語・数学・国語の3教科に力を入れてください。八王子東高等学校の入試は、都立共通問題よりも難易度の高い「自校作成問題」が出題されます。過去問を繰り返し解き、応用力や思考力を問う問題形式に慣れておくことが合格への鍵となります。もちろん、理科・社会で安定して高得点を取ることも、全体の得点を押し上げる上で非常に重要です。高い目標に向かって努力する皆さんを、心から応援しています。
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。