埼玉県立大宮高等学校、通称「大高(おおこう)」。この名前を聞いて、多くの受験生や保護者の方が「県内トップクラスの進学校」というイメージを抱くのではないでしょうか。そのイメージは間違いなく、高い学力と輝かしい進学実績を誇る、まさに埼玉を代表する名門校です。
しかし、大宮高校の本当の魅力は、ただ勉強ができる生徒が集まる場所というだけではありません。そこには、「自主自律」の精神のもと、生徒一人ひとりが勉強にも部活動にも、そして学校行事にも全力で打ち込む、熱気あふれる3年間があります。
この記事では、偏差値や入試情報といったデータはもちろん、学校生活のリアルな姿、在校生や卒業生の生の声まで、進学アドバイザーの視点から深く、そして分かりやすく解説していきます。憧れの「大高生」になるためのヒントが、きっと見つかるはずです。
大宮高等学校の基本情報
まずは、学校の基本的な情報を確認しておきましょう。
項目 | 内容 |
正式名称 | 埼玉県立大宮高等学校 |
公立/私立の別 | 公立 |
共学/男子校/女子校の別 | 共学 |
所在地 | 〒330-0834 さいたま市大宮区天沼町2−323 |
代表電話番号 | 048-641-0931 |
公式サイトURL | https://ohmiya-h.spec.ed.jp/ |
大宮高等学校の偏差値・難易度・併願校
大宮高校の難易度は、埼玉県内の公立高校でトップクラスに位置します。具体的な偏差値や合格の目安を見ていきましょう。
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理数科: 75
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普通科: 72
この偏差値は、県内でも最上位層であることを示しています。同じくらいの偏差値の高校としては、男子校の浦和高校(普通科74)、女子校の浦和第一女子高校(普通科73)などが挙げられ、大宮高校は共学校としては県内トップの難易度を誇ります。
合格の難しさは、偏差値の高さだけではありません。合格を勝ち取るためには、非常に高い内申点も求められます。データによると、合格者の内申点の平均は、中学1年生から3年生まで、9教科合計で42〜44点(45点満点中)という非常に高いレベルです。これは、ほぼ全ての教科で評定5を取っているレベルに相当します。特に重要なのは、大宮高校の入試では、当日の学力検査の得点だけで内申点のビハインドを覆すのは「現実的に不可能に近い」と言われている点です。つまり、中学1年生の最初の定期テストから、コツコツと高い成績を維持し続けることが、大宮高校への挑戦権を得るための絶対条件と言えるでしょう。
このような高いレベルの受験生が集まるため、併願校も県内トップクラスの私立高校が中心となります。主な併願校としては、以下のような学校が挙げられます。
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栄東高等学校
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大宮開成高等学校
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淑徳与野高等学校(女子)
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川越東高等学校(男子)
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城北埼玉高等学校(男子)
これらの私立高校も非常に高い難易度を誇っており、大宮高校を目指す生徒がいかにハイレベルな学力層であるかが分かります。
大宮高等学校に設置されている学科・コース
大宮高校には、将来の目標に合わせて選べる2つの魅力的な学科が設置されています。
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普通科
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幅広い分野の難関大学進学を目指す、学校の中心的コースです。2年次から文系・理系に分かれ、それぞれの進路希望に応じた専門的な学習を深めていきます。全ての進路に対応できる質の高い授業が展開されています。
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理数科
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将来、医師や研究者、技術者など、理系のスペシャリストを目指す生徒のための専門学科です。普通科よりも数学や理科の授業時間数が多く、より高度で専門的な内容を学びます。課題研究やOBによる進路相談会「三六会」など、理数科ならではの特別なプログラムも用意されています。
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理数科の入試には一つ特徴があります。学力検査で数学と理科の得点が2倍になる「傾斜配点」が採用されていることです。これは数学・理科が得意な生徒にとって有利な仕組みですが、注意も必要です。理数科を第一志望、普通科を第二志望として出願した場合、もし理数科が不合格で普通科の選考に回ると、この傾斜配点がなくなり、5教科均等の配点に戻ります。つまり、数学と理科の得点力という「武器」が標準化されてしまうため、国語や社会、英語といった他の教科でも高い得点を取れるオールラウンドな学力がなければ、普通科での合格も難しくなる可能性があります。理数科を目指す人も、決して他の教科をおろそかにしてはいけません。
大宮高等学校の特色・校風
大宮高校の校風をキーワードで表すなら、「自主自律」「文武両道」「自由と責任」でしょう。生徒たちが口を揃えて語るその雰囲気は、他の高校とは一線を画すものがあります。
生徒たちの口コミで最も多く語られるのが、「自由」であるということです。校則は比較的緩やかで、スマートフォンの持ち込みや校内での使用も、授業の妨げにならない限りは認められているようです。服装に関しても、制服の着こなしについて厳しく指導されることは少ないという声が多く、生徒の自主性が尊重されています。アルバイトは原則として禁止されていませんが、勉強や部活動との両立を考えると、現実的には難しいと感じる生徒が多いようです。
しかし、この「自由」は、無条件に与えられるものではありません。その裏には、生徒一人ひとりが負うべき「責任」が伴います。大宮高校の授業は1コマ65分制で、進度も非常に速いです。そのため、授業についていくには、日々の予習・復習が不可欠です。「宿題は少ないと聞いていたけど、予習・復習が大変で結局勉強時間はかなり多い」という声は、多くの在校生や卒業生から聞かれます。つまり、先生が厳しく管理するのではなく、生徒が自ら学習計画を立て、実行していく「自主自律」の精神が強く求められるのです。この環境は、自分で考えて行動できる生徒にとっては最高の成長の場となりますが、受け身の姿勢でいると、あっという間に周りから遅れてしまう厳しさも併せ持っています。
生徒たちの雰囲気は、「真面目で、かつ活発」と表現するのが最も近いでしょう。休み時間にも勉強している生徒がいる一方で、行事や部活動では全力で盛り上がる、オンとオフの切り替えが上手な生徒が多いようです。互いの個性を尊重し、高め合える仲間が集まっているため、いじめなどの話はほとんど聞かれず、人間関係で悩むことは少ないという口コミが目立ちます。
制服は、男子が伝統的な黒の学ラン、女子は紺のブレザーです。女子はスラックスも選択可能です。評判は人それぞれですが、「可愛い」という声もあれば、「他の高校に比べると普通」という声もあります。
また、大宮高校は2学期制を採用しており、隔週で土曜授業も実施しています。これにより十分な授業時間を確保していますが、その分、夏休みなどの長期休暇は他の3学期制の高校に比べて短くなる傾向があります。
大宮高等学校の部活動・イベント
部活動
「文武両道」を掲げる大宮高校では、部活動が非常に盛んです。驚くべきことに、部活動加入率は約97%に達し、ほとんどの生徒が勉強と両立しながら活動に打ち込んでいます。運動部18、文化部21と、選択肢が豊富なのも魅力です。
特に全国レベルで活躍する部活動も多く、学校の誇りとなっています。
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吹奏楽部: 全日本吹奏楽コンクールに何度も出場し、金賞を受賞した経験もある全国屈指の強豪です。その演奏レベルの高さは、多くの生徒の憧れとなっています。
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生物部: 国際学生科学技術フェア(ISEF)に出場するなど、学術的な分野で世界レベルの実績を上げています。SSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定校でもある大宮高校らしい活動と言えるでしょう。
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小倉百人一首かるた部: 競技かるたの世界は、まさに「文化系の格闘技」。関東大会で準優勝するなど、高い実績を誇ります。
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運動部: 野球部は過去に甲子園出場経験があり、近年では陸上部や水泳部からインターハイ出場選手を輩出するなど、多くの部が県大会上位で活躍しています。
活気のある強豪部だけでなく、自分のペースで楽しめる部活動もたくさんあるため、どんな生徒でも自分に合った場所を見つけられるはずです。
イベント
大宮高校の学校生活を彩るイベントは、生徒たちが主体となって企画・運営するのが大きな特徴です。その熱気と盛り上がりは、学校の大きな魅力の一つとなっています。
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大高祭(文化祭): 毎年8月末に開催される大高祭は、学校最大のイベントです。各クラスや文化部が趣向を凝らした展示や発表を行い、校内は大変な熱気に包まれます。企画から運営まで生徒が中心となって進めるため、クラスの団結力が一気に高まります。
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体育祭: 全校生徒が学年を超えた縦割りの「団」に分かれて競い合う、大迫力のイベントです。名物の「大高体操」で始まり、綱引きや大縄跳び、団対抗リレーなど、各種目で熱戦が繰り広げられます。応援合戦も見どころの一つで、団結して勝利を目指す姿は、まさに青春そのものです。
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修学旅行: 近年では、国際理解を深めることを目的に、シンガポールやマレーシアへの海外修学旅行が実施されているようです。異文化に触れる貴重な体験ができます。
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球技大会: 年に2回、前期と後期の期末考査後に行われます。試験勉強から解放された生徒たちが、クラス対抗で思いきりスポーツを楽しみます。
大宮高等学校の進学実績
埼玉県内トップクラスの進学校として、大宮高校は毎年、国公立大学や難関私立大学へ多数の合格者を輩出しています。特に注目すべきは、浪人せずに大学へ進学する「現役合格率」が約85%と非常に高い点です。これは、3年間で生徒を確実に志望大学へ導く、学校の指導力の高さを証明しています。
具体的な進学実績(令和5〜7年度入試のデータを基にした傾向)は以下の通りです。
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国公立大学: 東京大学、京都大学をはじめとする旧帝国大学や、一橋大学、東京工業大学といった最難関大学に毎年合格者を出しています。また、国公立大学医学部医学科への合格者も多数おり、理数科を中心に高い実績を誇ります。地元の埼玉大学や筑波大学などにも多くの生徒が進学しています。
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難関私立大学: 早稲田大学、慶應義塾大学に合わせて毎年100名以上の合格者を出すなど、圧倒的な実績があります。また、MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)や理科大などにも、非常に多くの合格者を出しています。
この輝かしい進学実績を支えているのが、手厚い進学サポート体制です。通常の授業に加えて、放課後や夏休みなどの長期休業中には、大学受験に直結する補習や講習が数多く開講されます。また、卒業生のネットワークも強く、理数科の「三六会」のように、現役で難関大学に合格したばかりの先輩から直接アドバイスをもらえる機会もあります。「チーム大宮」を合言葉に、学校全体で生徒の進路実現をバックアップする体制が整っているのです。
大宮高等学校の特長・アピールポイント
他の高校にはない、大宮高校ならではの強みやユニークな取り組みをまとめました。
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埼玉県トップの共学進学校
県内の最難関校には男子校・女子校が多い中、男女が共に学び、高め合える共学のトップ校であることは最大の魅力です。
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「自主自律」を育む自由な校風
厳しい校則で縛るのではなく、生徒の自主性を尊重する校風です。この「自由」の中で自らを律し、責任ある行動をとる経験が、生徒を大きく成長させます。
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質・量ともに充実した65分授業
1コマ65分授業と隔週土曜授業により、豊富な授業時間を確保しています。密度の濃い授業を通して、深い学びを実現します。
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未来の科学者を育てる理数科とSSH
専門性の高い理数科に加え、文部科学省からSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定も受けており、大学や研究機関と連携した高度な探究活動が可能です。
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97%の加入率を誇る活発な部活動
ほとんどの生徒が部活動に加入し、「文武両道」を実践しています。全国レベルの部から趣味を楽しむ部まで、多種多様な選択肢があります。
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生徒が主役の熱い学校行事
文化祭や体育祭は、企画から運営まで生徒が中心となって行います。学校全体が一つになる一体感と熱気は、大宮高校ならではのものです。
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抜群のアクセスと立地
さいたま新都心駅から徒歩10分という交通の便の良さも大きな魅力です。学校帰りに友人と過ごせる商業施設も近くにあり、充実した高校生活を送れます。
大宮高等学校の口コミ・評判のまとめ
在校生や卒業生の声から、大宮高校のリアルな姿を探ってみましょう。良い点と、入学前に知っておきたい気になる点を公平に紹介します。
良い点
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「周りのレベルが高く、常に刺激をもらえる」という声が非常に多いです。各中学校でトップクラスだった生徒が集まるため、互いに切磋琢磨できる環境が最高の財産だと感じているようです。
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「自由な校風で、のびのびと過ごせる」「先生が生徒を信頼してくれている」といった、自主性を尊重する文化への満足度が高いです。中学までとは違う、大人な雰囲気を楽しんでいる生徒が多いようです。
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「勉強は大変だけど、行事や部活が本当に楽しい」「最高の青春が送れる」という声も多数あります。勉強一辺倒ではなく、高校生活を全力で謳歌できるバランスの良さが評価されています。
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「現役で第一志望合格を目指せる」「先生方のサポートが手厚い」「質問に行くと熱心に教えてくれる」など、質の高い授業や進路指導への感謝の声も聞かれます。
気になる点
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「自主的に勉強できないと置いていかれる」「授業のスピードが速く、予習・復習をしないと地獄を見る」という声は、覚悟しておくべき点です。自由の裏返しとして、自己管理能力が強く求められます。
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「文武両道というより、実際は『文』に比重が偏っている」「部活によっては勉強との両立が本当に厳しい」という意見もあります。部活動にどこまで打ち込みたいか、入学前によく考える必要がありそうです。
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「先生によって授業の分かりやすさに差がある」という指摘も一部で見られます。これはどの学校にも言えることですが、合わない先生に当たった場合、自分で学習を補う努力が必要です。
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「施設が少し古い」という声がありましたが、近年、トイレや体育館などの改修工事が行われ、改善されている部分もあるようです。
アクセス・通学
大宮高校は交通の便が非常に良く、県内の広い範囲から生徒が通学しています。
最寄り駅・停留所 | アクセス方法 |
JR「さいたま新都心駅」東口 | 徒歩約10分 |
JR「大宮駅」 | 徒歩約20分 |
東武バス「高校入口」停留所 | 徒歩約2分 |
最も利用者が多いのは「さいたま新都心駅」のようです。駅周辺には商業施設も充実しており、通学の利便性は非常に高いと言えます。さいたま市内はもちろん、上尾市、川口市、越谷市、春日部市など、JR線や東武線沿線の様々なエリアから生徒が通っています。
大宮高等学校受験生へのワンポイントアドバイス
ここまで読んでくれて、ありがとうございます。埼玉県立大宮高等学校という素晴らしい学校に、強い興味を持ってくれたことでしょう。最後に、進学アドバイザーとして、皆さんへの応援メッセージを贈ります。
大宮高校は、「勉強も、部活も、行事も、全部本気でやりたい!」というエネルギーに満ちた生徒に特におすすめの学校です。高い目標を持つ仲間たちと切磋琢磨し、自由な環境で自分の可能性を最大限に伸ばしたいと考える君に、最高の3年間が待っています。
その夢を実現するために、受験勉強では「穴のない総合力」を意識してください。特に理数科を目指す人も、国語や社会、英語で確実に得点できる力が、最後の合否を分けます。そして何より大切なのが、中学1年生からの「内申点」です。大宮高校への挑戦は、もう始まっています。毎日の授業を大切にし、一つひとつの定期テストで最高の結果を出す努力を続けてください。その地道な積み重ねが、未来の「大高生」である君を作るのです。応援しています!
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。