茨城県立水戸第一高等学校、通称「水戸一(みといち)」。この名前を聞いて、皆さんはどんなイメージを抱くでしょうか?県内トップクラスの進学校、歴史と伝統のある学校…そのどれもが正解です。
しかし、水戸一の本当の魅力は、その一言では語り尽くせない奥深さにあります。ここでは、生徒の「自主自立」を最大限に尊重する「自由」な校風と、日本トップクラスの大学を目指すための「厳しい」学問への姿勢が、見事に共存しているのです。
この記事では、そんな水戸第一高等学校のリアルな姿を、進学アドバイザーの視点から、皆さんの知りたい情報に焦点を当てて、余すところなくお伝えしていきます。憧れの高校生活を具体的にイメージしながら、最後までじっくりと読み進めてみてください。
水戸第一高等学校の基本情報
まずは、学校の基本的な情報を確認しましょう。公式な情報なので、覚えておくと便利です。
項目 | 内容 |
正式名称 | 茨城県立水戸第一高等学校 |
公立/私立の別 | 公立 |
共学/別学の別 | 男女共学 |
所在地 | 〒310-0011 茨城県水戸市三の丸3-10-1 |
代表電話番号 | 029-224-2254 |
公式サイトURL | https://www.mito1-h.ibk.ed.jp/ |
水戸第一高等学校の偏差値・難易度・併願校
水戸一高を目指す上で、最も気になるのが偏差値と難易度でしょう。具体的な数字と、合格に必要な力の目安を解説します。
偏差値・難易度
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普通科 [単位制]:
この偏差値は、茨城県内の公立高校でトップクラスであり、全国的に見ても非常に高いレベルに位置します。土浦第一高校と並んで、県内の最難関校として知られています。
この難易度をより具体的にイメージするために、いくつかの目安を見てみましょう。
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合格に必要な内申点の目安: 129点 / 135点満点
これは、中学3年間の9教科の成績が、ほぼオール5でなければならないことを意味します。日々の授業態度、提出物、定期テストのすべてで最高の結果を出し続ける努力が、水戸第一高等学校への挑戦権を得るための土台となります。
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合格に必要な学力検査の点数目安: 445点 / 500点満点
当日の学力検査でも、各教科で9割近い得点が求められる、非常に高いレベルの戦いになります。
この高い入学基準こそが、水戸一高の学習環境を特別なものにしています。入学する生徒は皆、それぞれの中学校でトップクラスの成績を収めてきた生徒たちです。その高いレベルの仲間たちと切磋琢磨できる環境が、学校全体の学力を引き上げ、素晴らしい進学実績へと繋がっているのです。
主な併願校
茨城県の公立高校入試では、原則として1校しか受験できません。そのため、万が一に備えて私立高校を併願することが一般的です。水戸一高を目指す受験生は、以下のような進学コースを持つ私立高校を併願校として選ぶ傾向があります。
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水城高等学校(SUISUIコースなど)
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茨城高等学校
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常磐大学高等学校(特進選抜コースなど)
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東洋大学附属牛久高等学校(特別進学コースなど)
これらの学校は、水戸一高を志望する生徒の学力や学習意欲に応えられるカリキュラムを持っているため、併願先として人気があります。
水戸第一高等学校に設置されている学科・コース
水戸第一高等学校には、生徒の興味や進路希望に合わせた学びを実現するための学科・コースが設置されています。
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普通科 [単位制]
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どんなことを学ぶ場所か:決まった時間割ではなく、大学のように自分の興味や進路に合わせて授業を選択し、自分だけの時間割を作って学びます。
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どんな生徒におすすめか:将来の目標が明確で、自ら学習計画を立てて主体的に学びたい生徒に最適です。
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医学コース
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どんなことを学ぶ場所か:2年次から選択可能な、医師や医療従事者を目指す生徒のための専門コース。大学病院での体験実習や、医学部入試に特化した講座など、実践的な学びが豊富です。
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どんな生徒におすすめか:将来、医療の分野で社会に貢献したいという強い意志を持つ生徒におすすめです。
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水戸第一高等学校の特色・校風
水戸一高を語る上で欠かせないのが、その独特の校風です。キーワードは「自主自立」「自由闊達」「堅忍力行」。
「自由」と「責任」が共存する校風
水戸一高の最大の特色は、生徒の自主性を重んじる自由な校風です。
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校則は緩やかか:非常に緩やかで、生徒の自主性に任されている部分が多いです。
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制服:ありません。生徒は私服で通学し、個性豊かなファッションで学校生活を送っています。これは水戸一高の自由を象徴する文化です。
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スマホの持ち込み:授業中以外は基本的に使用が認められているようです。
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アルバイト:届け出をすれば可能です。
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生徒たちの雰囲気:個性的で知的好奇心が旺盛な生徒が多いと言われています。「ガリ勉ばかり」というイメージとは異なり、勉強も、部活も、趣味も、全力で楽しむ「面白い人」の集まりだと表現する声が多く聞かれます。
しかし、この「自由」は「責任」とセットです。自由が与えられているからこそ、生徒一人ひとりには高いレベルの自己管理能力が求められます。
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宿題の量は多いか:口コミで最も多く言及されるのが、「課題の量が非常に多い」という点です。授業の進度も速く、予習・復習をしっかり行わないとついていくのが大変だという声が多数あります。
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土曜授業はあるか:土曜日にも課外授業や模試などが組まれることがあります。
つまり、水戸一高の「自由」とは、単に校則が緩いということではありません。それは、大学での学びに近い「自分で自分を律し、主体的に学ぶ」姿勢を高校時代から身につけるための、高度な教育方針なのです。この環境を最大限に活かせるかどうかは、生徒自身の自己管理能力にかかっています。
水戸第一高等学校の部活動・イベント
勉強だけでなく、部活動や学校行事にも全力で取り組むのが水戸一高生のスタイルです。
部活動
「文武両道」を掲げ、多くの生徒が部活動に加入し、学業と両立させながら高いレベルで活動しています。
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全体の様子:運動部、文化部ともに非常に充実しており、全国レベルで活躍する部活も少なくありません。柔道部や相撲部は休部中ですが、それ以外の主要な部活動はほとんど揃っています。
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特に有名な部活動:
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棋道部:全国大会の常連で、輝かしい実績を誇ります。
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放送部:NHK杯全国高校放送コンテストなどで毎年優秀な成績を収めています。
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吹奏楽部:専用のウェブサイトを持つなど活動が活発で、定期演奏会は多くの観客を集めます。
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硬式野球部、陸上競技部、弓道部:伝統的に強く、関東大会などでも活躍しています。
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山岳部:本格的な登山活動を行う、特色ある部です。
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イベント
水戸一高の学校行事は、生徒が主体となって企画・運営するのが特徴です。
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歩く会:水戸一高の魂とも言える、最も有名な伝統行事です。作家・恩田陸さんの小説『夜のピクニック』のモデルになったことでも知られています。全校生徒が約24時間かけて70kmもの道のりを一昼夜歩き通すという、非常に過酷なイベントです。体力的な厳しさはもちろん、仲間と語り合い、励まし合いながらゴールを目指す経験は、一生忘れられない思い出になると言われています。
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学苑祭(文化祭):毎年6月に行われる文化祭で、各クラスや文化部が趣向を凝らした展示や発表を行います。非常に盛り上がり、生徒たちの創造性が爆発するイベントです。
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一高オリンピック(体育祭):クラス対抗で様々な競技に挑む体育祭です。クラスの団結力が試されます。
興味深いのは、多くの高校にある「修学旅行」が水戸一高にはないことです。これは、単なる観光旅行よりも、「堅忍力行」の校是を体現する「歩く会」のような、心身を鍛え、人間性を育む行事を重視するという、学校の明確な教育哲学の表れと言えるでしょう。
水戸第一高等学校の進学実績
県内トップの進学校として、水戸第一高等学校は毎年素晴らしい大学進学実績を誇ります。
最新の大学合格実績
国公立大学から難関私立大学まで、幅広い大学に多くの合格者を輩出しています。特に、地元の筑波大学や、旧帝国大学である東北大学への進学者が多いのが特徴です。
2025年の主要大学合格実績(現役・既卒含む)は以下の通りです。
分類 | 主な大学名 | 2025年合格者数 |
最難関国公立 | 東京大学、京都大学 | 13 |
旧帝国大学等 | 東北大学、北海道大学、大阪大学など | 45 |
首都圏難関国公立 | 筑波大学、千葉大学など | 27以上 |
早慶上理 | 早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学など | 81 |
GMARCH | 明治大学、法政大学、中央大学など | 230 |
医学部医学科 | 国公立・私立合計 | 29 |
進学実績を支える取り組み
高い進学実績は、生徒自身の努力はもちろん、学校の充実したサポート体制によって支えられています。
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大学模擬講義:2年生を対象に、大学の教授を招いて実際の大学の講義を体験する機会が設けられています。
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医学コースの特別講座:医学部を目指す生徒のために、医学部入試に特化した対策講座や、現役医師による講演会などが実施されます。
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卒業生による激励会:大学受験を終えたばかりの卒業生が来校し、在校生にアドバイスを送る激励会が開かれます。
一方で、口コミでは「浪人する生徒がかなりいる」という声も見られます。これは、学校の指導力が低いというわけではありません。むしろ、水戸一高の「妥協せず、自分の目指す最高の大学へ」という高い志を持つ文化の表れです。多くの生徒が、安易に志望校のレベルを下げるのではなく、一年間再挑戦してでも夢を叶えようと考える傾向があるのです。
水戸第一高等学校の特長・アピールポイント
他の高校にはない、水戸第一高等学校ならではの強みや魅力をまとめました。
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「自由」と「自己管理能力」を同時に育む校風
生徒を信頼し、服装や校則で縛らない自由な環境を与える一方で、膨大な課題と高いレベルの授業で、徹底的に自己管理能力と学力を鍛えます。
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心と体を鍛える唯一無二の伝統行事「歩く会」
単なる学校行事ではなく、友情、忍耐力、そして自分自身と向き合う貴重な時間を提供する、人間的成長の機会です。
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医師への最短ルートを拓く「医学コース」
医療現場での体験実習など、他校にはない専門的なカリキュラムで、医学部合格を強力にバックアップします。
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大学での学びを先取りする「単位制」カリキュラム
生徒一人ひとりの知的好奇心と進路希望に応える、柔軟で深度のある学びを実現します。
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知的で個性的な仲間たちと過ごす3年間
県内トップレベルの生徒が集まる環境は、毎日が刺激に満ちており、互いを高め合える最高の場所です。
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歴史と緑に囲まれた学習環境
水戸城跡という歴史的な場所に立地し、落ち着いた環境で学びに集中できます。
水戸第一高等学校の口コミ・評判のまとめ
在校生や卒業生からの「生の声」は、学校選びの重要な参考になります。良い点と気になる点を公平にご紹介します。
良い点
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「周りの生徒のレベルが高く、常に刺激を受けられる」
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「制服がなく私服で通えるのが最高。個性を尊重してくれる」
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「歩く会や学苑祭などの行事が本当に楽しく、クラスの団結力が強まる」
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「先生方は質問に行けば親身に教えてくれるし、面白い先生が多い」
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「生徒の自主性を信じて任せてくれる校風が心地よい」
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「部活動が盛んで、勉強と両立して青春を謳歌できる」
気になる点(注意点)
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「とにかく課題の量がとてつもなく多く、自分の勉強時間が削られる」
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「授業の進度が速く、少しでも油断するとすぐについていけなくなる」
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「校舎やトイレなどの施設が全体的に古い」
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「修学旅行がないのが残念」
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「先生によって授業の質に差があると感じることがある」
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「周りが優秀すぎて、プレッシャーを感じたり、自信をなくしたりすることがある」
まとめると、水戸一高は「自ら学び、考え、行動できる生徒」にとっては最高の環境ですが、「手厚いサポートや丁寧な指導を求める生徒」にとっては、その自由さやレベルの高さが逆に負担になる可能性もある、と言えそうです。
アクセス・通学
水戸第一高等学校への通学方法と、通学エリアについてです。
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最寄り駅からのアクセス
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JR常磐線・水郡線・鹿島臨海鉄道大洗鹿島線「水戸駅」北口から徒歩約11~15分。
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バスを利用する場合、学校の目の前にある「一高下」バス停で下車すると便利です。
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通学エリア
水戸市内に住む生徒はもちろんですが、県内トップ校ということもあり、ひたちなか市、那珂市、笠間市など、広範囲の市町村からJR線を利用して通学している生徒が多くいます。
水戸第一高等学校受験生へのワンポイントアドバイス
ここまで読んでくれてありがとうございます。最後に、進学アドバイザーとして、水戸第一高等学校を目指す皆さんへメッセージを送ります。
水戸一高は、ただ学力が高いだけでなく、「知的な自立」を求める生徒にこそ、最高の舞台となる学校です。誰かにやらされる勉強ではなく、自分の好奇心を原動力に学びを深めたい人、周りのレベルの高い仲間と本気で議論を交わしたい人、そして自由の中で自分を律する強さを身につけたい人。もし君がそんな高校生活に憧れるなら、水戸一高は最高の選択肢になるでしょう。
受験勉強では、単なる暗記に留まらず、「なぜそうなるのか」を自分の言葉で説明できるレベルまで理解を深めることを意識してください。その思考力こそが、入学後も君を支える大きな力になります。水戸一高生への道は険しいですが、その先には、かけがえのない3年間が待っています。応援しています!
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。