福島工業高等専門学校、通称「福島高専」は、将来、技術者や研究者として社会で活躍したいと考える君にとって、非常に魅力的な選択肢となる学校です。この学校は、一般的な3年制の高校とは異なり、5年間の一貫教育を通して、専門分野の深い知識と実践的な技術を身につけることができる「高等教育機関」です。中学校を卒業してすぐ、大学レベルの専門的な学びに触れられる、特別な場所なのです。

5年間という時間は、大学受験に追われることなく、自分の好きな分野をじっくりと探求できる貴重な期間となります。ロボット、新しい素材、情報技術、都市開発など、君が「なぜだろう?」「どうなっているんだろう?」と心惹かれる分野があれば、福島高専はその知的好奇心に応え、未来のプロフェッショナルへと導いてくれるでしょう。

この記事では、そんな福島工業高等専門学校がどんな場所なのか、偏差値や難易度、学校生活のリアルな様子、そして卒業後の輝かしい進路まで、進学アドバイザーの視点から詳しく解説していきます。君が自分の未来を描くための、大切なヒントがきっと見つかるはずです。

福島工業高等専門学校の基本情報

まずは、学校の基本的な情報を確認しましょう。正式名称や所在地などをまとめたので、参考にしてください。

項目 内容
正式名称 独立行政法人国立高等専門学校機構 福島工業高等専門学校
区分 国立 / 共学
所在地 〒970-8034 福島県いわき市平上荒川字長尾30
代表電話番号 0246-46-0700
公式サイトURL https://www.fukushima-nct.ac.jp/

福島工業高等専門学校の偏差値・難易度・併願校

福島高専への進学を考える上で、最も気になるのが偏差値や難易度でしょう。ここでは、具体的な数値と共に、合格に必要な学力レベルや併願校について解説します。

福島工業高等専門学校の偏差値は、設置されている5つの学科すべてで「63」から「64」程度とされています。これは福島県内でもトップクラスの学力が求められることを意味しており、しっかりとした受験対策が不可欠です。

学科名 偏差値
機械システム工学科 63
電気電子システム工学科 63
化学・バイオ工学科 63
都市システム工学科 63
ビジネスコミュニケーション学科 63

この偏差値は、県内の進学校と比較すると、白河高校の理数科(偏差値64)に匹敵し、郡山高校の普通科(偏差値62)や相馬高校の理数科(偏差値63)などと肩を並べるレベルです。合格のためには、中学校の定期テストで常に上位の成績を維持し、特に数学や理科といった理系科目で高い得点力を身につけておくことが望ましいでしょう。内申点も重視されるため、日々の授業態度や提出物などもおろそかにできません。

併願校を考える際には注意が必要です。福島工業高等専門学校は国立の学校であるため、福島県の公立高校入試との併願はできません。そのため、万が一に備える場合は、私立高校を併願先として選ぶのが一般的です。偏差値が近い私立高校としては、日本大学東北高等学校や、東日本国際大学附属昌平高等学校、帝京安積高等学校などが主な候補となるでしょう。

福島工業高等専門学校に設置されている学科・コース

福島高専の最大の魅力は、中学卒業後すぐに専門分野の学習をスタートできる点にあります。設置されている5つの学科は、それぞれが未来の産業を支える重要な分野です。どの学科が自分の興味に合っているか、じっくり考えてみましょう。学科選択は、その後の5年間を左右する非常に重要な決断です。

  • 機械システム工学科

    ロボットや自動車、航空宇宙分野など、「モノが動く仕組み」に興味がある人におすすめ。設計から製作まで、実践的に機械工学の基礎を学びます。

  • 電気電子システム工学科

    スマートフォンやコンピュータ、エネルギー問題など、現代社会に不可欠な電気・電子・情報の技術を学びたい人に。私たちの生活を支える最先端技術のプロを目指します。

  • 化学・バイオ工学科

    新しい素材の開発や医薬品、環境にやさしいエネルギーなど、化学や生命科学の力で社会問題を解決したい人向け。実験を通して物質の変化の面白さを探求します。

  • 都市システム工学科

    橋や道路、ダムといった社会インフラの整備や、災害に強いまちづくりに貢献したい人におすすめ。人々の安全で快適な暮らしをデザインする技術を学びます。

  • ビジネスコミュニケーション学科

    情報技術(IT)と経営学を融合させ、新しいサービスやビジネスを生み出したい人に。プログラミングからマーケティングまで幅広く学び、社会の課題を解決する力を養います。

福島工業高等専門学校の特色・校風

福島高専の校風をキーワードで表すなら、「自主自律」そして「自由と責任」です。大学に近い環境で、学生一人ひとりの主体性が尊重される一方で、その自由には大きな責任が伴います。

口コミなどから見える学校生活のリアルな姿は、この校風を色濃く反映しています。まず、学習面では「課題やレポートの量が非常に多く、勉強はかなり大変」という声が多数聞かれます。特に、一般的な高校の赤点が30点前後であるのに対し、福島高専では60点が合格ラインと高く設定されており、日々の予習・復習が欠かせません。テスト前は多くの学生が協力し合って乗り越えるなど、厳しい環境だからこその一体感が生まれるようです。

校則は比較的緩やかで、「私服やスマートフォンの扱いなど、細かく縛られることは少ない」という意見が目立ちます。制服は1年生から3年生までがブレザーを着用し、「大人っぽくて格好いい・可愛い」と評判は上々です。4年生からは私服登校となり、式典などではスーツを着用するなど、より大学生に近いスタイルになります。アルバイトは規則上可能ですが、学業との両立は相当な努力が必要となるでしょう。

生徒たちの雰囲気は、総じて「真面目で落ち着いている」ようです。自分の好きな専門分野を学ぶために集まった学生が多いため、学習意欲が高く、互いに切磋琢磨する環境があります。自由な時間をどう使うか、厳しい課題をどう乗り越えるか、すべては自分次第。この「自由と責任」のバランスの中で、学生たちは技術者としてだけでなく、一人の人間として大きく成長していくのです。土曜授業は基本的にありません。

福島工業高等専門学校の部活動・イベント

厳しい勉学の合間にも、学生生活を彩る活発な部活動やユニークなイベントが充実しています。

部活動

福島高専には、運動部、文化部、そして高専ならではの研究会など、非常に多くの団体が存在し、多くの学生が所属して活動しています。

特に有名なのが、高専の代名詞ともいえる「ロボット技術研究会」です。毎年テレビでも放送される「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト(高専ロボコン)」にむけて、学生たちがアイデアと技術の粋を集めてロボットを製作します。この活動を通して、授業だけでは得られない実践的な問題解決能力やチームワークを養うことができます。

また、文化部では「鐵道愛好会」が全国規模のコンテストで入賞するなど、高いレベルで活動しています。他にも、全国的にも珍しい「カバディ愛好会」や、専門分野をさらに深掘りする「分子生物学愛好会」など、多様な興味に応えるユニークな部やサークルがあるのも大きな魅力です。運動部もサッカー、野球、ラグビー、陸上など一通り揃っており、高専体育大会(高体連とは別の高専独自の大会)を目標に日々練習に励んでいます。

イベント

福島高専のイベントは、学校の専門性と深く結びついているのが特徴です。

  • 体育大会

    毎年5月と9月の年2回開催されます。一般的な学校と違うのは、クラス対抗ではなく「学科対抗」で行われる点です。機械、電気、化学など、各学科のプライドをかけた熱い戦いが繰り広げられ、学科内の団結力を高める絶好の機会となっています。

  • 磐陽祭(ばんようさい)

    毎年秋に開催される文化祭です。学生たちが日頃の研究成果を発表する場であり、自作のロボットやゲーム、化学実験ショーなど、高専ならではの展示や企画が満載です。地域の方々も多く訪れ、大変な盛り上がりを見せます。

  • 学年行事日

    一般的な高校の修学旅行に代わる行事として、毎年10月中旬に実施されます。単なる観光旅行ではなく、所属する学科に関連する工場や研究所を見学したり、第一線で活躍する技術者の話を聞いたりする機会が設けられており、楽しみながら将来のキャリアについて考えることができます。

福島工業高等専門学校の進学実績

5年間の学びを終えた後の進路は、福島高専の大きな強みの一つです。卒業生の約半数が優良企業へ就職し、残りの半数がさらに学びを深めるために大学へ進学するなど、多様で質の高い選択肢が用意されています。

卒業後の進路がこれほどまでに安定しているのは、5年間の一貫教育で培われた専門知識と実践力が、社会や大学から高く評価されている証拠です。

  • 主な就職先

    就職希望者の就職率はほぼ100%を誇り、日本を代表するような大企業からの求人も多数寄せられます。具体的には、鹿島建設、大林組、清水建設といった大手ゼネコンや、東北電力、東京ガスネットワークなどのインフラ企業、JR東日本グループなど、安定した優良企業へ多くの卒業生を送り出しています。

  • 主な進学先(大学編入)

    進学を希望する場合、高専卒業生は4年制大学の「3年次」に編入することができます。これは、高専の5年間で大学の1・2年次相当の教養と専門基礎を修了していると認められているためで、時間的にも経済的にも大きなメリットです。

    特に、高専からの編入生を積極的に受け入れている長岡技術科学大学や豊橋技術科学大学への進学者が多いほか、以下のような難関国公立大学への編入実績も豊富です。

    • 国公立大学(主な編入先): 北海道大学、東北大学、筑波大学、千葉大学、横浜国立大学、九州大学、東京都立大学など

  • 専攻科への進学

    福島高専のキャンパス内には、本科5年間の学びをさらに発展させるための「専攻科」(2年間)が設置されています。専攻科を修了すると、4年制大学卒業と同等の「学士」の学位が取得でき、その後、大学院の修士課程に進学する道も開かれています。慣れ親しんだ環境で、より高度な研究に打ち込める魅力的な選択肢です。

福島工業高等専門学校の特長・アピールポイント

他の高校にはない、福島高専ならではの強みや魅力を7つのポイントにまとめました。

  • 5年間の一貫した専門教育

    大学受験を気にせず、中学卒業から5年間、自分の好きな専門分野を深く、じっくりと探求できます。

  • 圧倒的な就職実績

    実践的なスキルを身につけた卒業生は産業界からの評価が非常に高く、大手・優良企業への就職に強いです。

  • 有名大学への「3年次編入」という選択肢

    高専卒業後、国公立大学をはじめとする有名大学の3年生として編入できるユニークな制度があり、進学の道も大きく開かれています。

  • 大学レベルの自由と責任

    校則は比較的緩やかで、学生の自主性を尊重する大学のような雰囲気です。自由な環境の中で自己管理能力を養うことができます。

  • 充実した実験・実習設備

    各学科に大学レベルの専門的な実験・実習設備が整っており、「本物」に触れながら実践的に学ぶことができます。

  • 学内で大学卒業資格を得られる「専攻科」

    キャンパス内に設置された2年間の専攻科に進学すれば、4年制大学卒業と同じ「学士」の資格を取得できます。

  • 専門性を高めるユニークな部活動と行事

    高専ロボコンを目指す部活動や、学科対抗の体育祭など、学校生活のあらゆる場面で専門性を高め、仲間との絆を深めることができます。

福島工業高等専門学校の口コミ・評判のまとめ

在校生や卒業生の声は、学校の本当の姿を知るための貴重な情報源です。ここでは、様々な口コミを公平にまとめました。

  • 良い点

    「将来の目標が技術者や研究者など明確に決まっている人にとっては、これ以上ない最高の環境」という声が最も多く聞かれます。また、「就職にも大学編入にも強く、卒業後の選択肢が広いのが魅力」「先生との距離が近く、専門的な内容について質問しやすい」「校則が厳しくなく、自由な雰囲気で過ごせる」といった点も高く評価されています。厳しい課題を共に乗り越える中で、「同じ目標を持つ仲間と深く繋がれる」という意見も多く見られました。

  • 気になる点

    一方で、注意すべき点も指摘されています。「課題やレポートの量がとにかく多く、生半可な気持ちではついていけない」「留年する人もいるため、徹底した自己管理能力が求められる」といった、学業の厳しさに関する声が多数あります。最も重要な指摘として、「興味のない分野の学科に間違って入ってしまうと、5年間が非常に苦しいものになる」という意見は、学科選びの重要性を物語っています。また、「授業の質は先生によって差がある」と感じる学生も一部いるようです。

アクセス・通学

福島高専への通学方法についてまとめました。JRいわき駅が主な交通の拠点となります。

出発地 手段 所要時間 備考
JRいわき駅 新常磐交通バス 約15~20分 「高専前」バス停下車、徒歩2分。平日の朝には学生向けの直行バスも運行されています(学休日は運休)。
JRいわき駅 タクシー 約10分
JRいわき駅 徒歩 約35分

通学している生徒は、いわき市内全域からが中心ですが、JR常磐線や磐越東線を利用して、市外の広いエリアから通学している学生もいます。

福島工業高等専門学校受験生へのワンポイントアドバイス

ここまで読んでくれてありがとう。最後に、進学アドバイザーとして、福島高専を目指す君にエールを送ります。

福島工業高等専門学校は、「モノづくりが好き」「科学のナゾを解き明かしたい」という強い探求心を持ち、自ら学ぶ意欲のある生徒に心からおすすめできる学校です。もし君が、受け身の勉強ではなく、自分の手と頭で何かを創り出すことにワクワクするタイプなら、ここは最高の場所になるでしょう。5年後、社会から求められる技術者として、あるいは大学でさらに高度な研究を続ける学生として、大きく羽ばたいているはずです。

受験勉強では、まず全国の高専で共通して出題される学力検査の過去問に徹底的に取り組んでください。そして、推薦入試を考えているなら、面接対策が鍵を握ります。志望理由はもちろん、「なぜその学科を選んだのか」「その分野で何を学び、将来どうなりたいのか」を自分の言葉で熱く語れるように準備しましょう。教科書の内容だけでなく、興味のある分野の最新ニュースを調べてみるなど、一歩踏み込んだ探求心を見せることが、君を合格へと導く大きな力になります。君の挑戦を応援しています!

※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。