埼玉県立松山高等学校、通称「松高(まつこう)」は、100年以上の歴史を誇る県北の伝統的な男子校です。勉強と部活動のいずれにも分け隔てなく全力で取り組むことを意味する「文武不岐」を建学の精神に掲げ、これまで多くの卒業生を社会に送り出してきました。男子校ならではの伸び伸びとした雰囲気の中で、生徒たちは互いに切磋琢磨し、強い絆を育んでいます。
しかし、その伝統的な側面に留まらないのが、現代の埼玉県立松山高等学校の大きな魅力です。文部科学省から「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」の指定を受け、大学や研究機関と連携した最先端の科学技術に触れる機会が豊富に用意されています。伝統が育む人間力と、革新的な教育プログラムが融合するユニークな環境が、ここにはあります。
勉強も、部活も、学校行事も、すべてに本気で打ち込みたい。仲間と共に過ごす3年間で、人間として大きく成長したい。もし君がそう考えているなら、この松山高校での日々は、きっとかけがえのない宝物になるはずです。この記事では、そんな松山のリアルな姿を、様々な角度から詳しく紹介していきます。君にとって最高の高校選びの助けになれば幸いです。
埼玉県立松山高等学校の基本情報
まずは、学校の基本的な情報を確認しておきましょう。
項目 | 内容 |
正式名称 | 埼玉県立松山高等学校 |
公立/私立の別 | 公立 |
共学/男子校/女子校の別 | 男子校 |
所在地 | 〒355-0018 埼玉県東松山市松山町1丁目6-10 |
代表電話番号 | 0493-22-0075 |
公式サイトURL | http://www.matsuyama-h.spec.ed.jp/ |
埼玉県立松山高等学校の偏差値・難易度・併願校
高校選びで気になるのが、やはり偏差値や難易度。埼玉県立松山高等学校は、自分の学力で目指せるのか、具体的なデータを見ていきましょう。
学科・コースごとの最新の偏差値の目安は以下の通りです。
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理数科:
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普通科:
この偏差値は、中堅レベルに位置づけられます。同じくらいの偏差値の高校としては、普通科であれば坂戸高校や川越南高校などが挙げられます。理数科は、より専門的な学習内容となるため、普通科よりも少し高い学力が求められる傾向があります。
合格に必要な内申点の目安は、中学3年間・9教科合計で、普通科が「29〜41」、理数科が「30〜41」あたりが一つの基準となるようです。ただし、これはあくまで目安であり、当日の学力検査の得点が非常に重要になります。特に注目すべきは、理数科の入試では数学と理科の配点が200点満点(他の教科は100点満点)となる「傾斜配点」が採用されている点です。これは、理数科が特に数学と理科の能力が高い生徒を求めていることの表れです。理数科を目指す場合は、この2教科で高得点を取ることが合格への鍵となります。
埼玉県では公立高校は原則として1校しか受験できないため、多くの受験生が私立高校を併願します。松山高校の受験生がよく併願する私立高校としては、以下のような学校が挙げられます。
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東京農業大学第三高等学校
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山村学園高等学校
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西武台高等学校
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本庄第一高等学校
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埼玉栄高等学校
これらの併願校は、松山高校の偏差値に近い学校や、特進コースなどでさらに高いレベルを目指せる学校が選ばれることが多いようです。
埼玉県立松山高等学校に設置されている学科・コース
埼玉県立松山高等学校には、生徒一人ひとりの興味や進路希望に応えるための特色ある学科・コースが設置されています。
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普通科
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幅広い教養を身につけ、文系・理系を問わず多様な進路に対応するコースです。2年生から文系・理系に分かれ、それぞれの希望進路に合わせた学習を深めていきます。将来の夢がまだ具体的に決まっていない人や、様々な可能性の中から進路を選びたい人におすすめです。
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普通科 特進クラス
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普通科の中に1クラス設置されている、国公立大学や難関私立大学への進学を特に強く目指すクラスです。授業の進度が速く、よりハイレベルな内容を学びます。口コミによれば、3年間クラス替えがないため、クラスの団結力が非常に強くなるという特徴もあるようです。高い目標を持つ仲間と切磋琢磨したい人に最適です。
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理数科
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スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の中核を担う、理数系のスペシャリストを育成するコースです。大学や研究機関と連携した高度な実験・実習や、課題研究など、探究的な学びが豊富に用意されています。将来、理工系や医薬系の分野で活躍したい、科学の面白さをとことん追求したいという強い意志を持つ生徒におすすめです。
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埼玉県立松山高等学校の特色・校風
松山高校の雰囲気を知る上で、キーワードとなるのが「文武不岐」「質実剛健」「伝統男子校」です。勉強にも部活動にも真剣に取り組み、飾り気がなく心身ともにたくましい生徒を育むという、100年以上の歴史の中で培われてきた文化が根付いています。
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宿題の量
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宿題の量は「多い」と感じる生徒が多いようです。特に、日々の予習・復習が重視される傾向があります。また、放課後や長期休暇中には「松高塾」と呼ばれる進学補講が数多く開講されており、自主的に参加する生徒も多いため、全体的な学習時間は長くなる傾向があります。夏休みには勉強合宿が実施されることもあり、学習意欲の高い環境と言えるでしょう。
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校則(スマホ、服装、アルバイト)
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校則については、「厳しい」という声と「男子校なのである程度は自由」という声の両方があり、感じ方には個人差があるようです。
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スマホ:校内での使用は原則として禁止されているようですが、実際には休み時間などに黙認されている場面もある、という口コミが見られます。ただし、授業中の使用は厳しく注意されます。
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服装:伝統的な黒の学ランです。制服の着こなしに関する細かい規定はあるものの、他校に比べると細かく指導されることは少ないという意見もあります。
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アルバイト:原則として禁止されているようです。家庭の事情など、やむを得ない場合は学校に申請し、許可を得る必要があります。
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生徒たちの雰囲気
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「男子校ならではのノリが最高に楽しい」「女子の目を気にせず、素の自分でいられる」といったポジティブな声が非常に多いのが特徴です。いじめはほとんど聞いたことがないという口コミも多く、生徒同士の仲は良好なようです。学校行事ではクラスの団結力が非常に強く、一体となって盛り上がります。一方で、一部の生徒からは「自称進学校」的な雰囲気があり、先生からの学習面でのプレッシャーが強いと感じるという意見も見られます。
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制服の評判
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昔ながらの黒の学ランです。デザインについて特に良い・悪いといった評判は少ないですが、伝統校の象徴として受け入れられているようです。
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土曜授業
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土曜授業は「たまにある」「隔週である」という声があり、定期的に実施されています。他の高校が休みの日に授業があることも多く、学習時間を確保しようとする学校の方針がうかがえます。
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埼玉県立松山高等学校の部活動・イベント
「文武不岐」を掲げる松山高校では、部活動や学校行事も学校生活の重要な柱です。
部活動
運動部16、文化部13と、非常に多くの部活動があり、多くの生徒が加入して活発に活動しています。部によっては半強制的に参加する雰囲気があると感じる生徒もいるようですが、それだけ学校全体で部活動に力を入れている証拠とも言えます。
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特に実績豊富な部活動
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ソフトテニス部:インターハイ出場の常連校として知られ、県内でもトップレベルの実力を誇ります。
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陸上競技部:関東大会や全国大会へ出場する選手を数多く輩出しています。特に長距離は、後述する「比企一周駅伝」もあり、伝統的に強いです。
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新聞部:全国高校新聞年間紙面審査賞で何度も優良賞を受賞するなど、全国的に高い評価を受けています。質の高い記事を作成する本格的な活動を行っています。
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映像制作部:全国大会で活躍するなど、文化部の中でも特に注目されています。クリエイティブな活動に興味がある生徒には魅力的です。
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生物部:SSHの活動とも連携し、高校生の科学技術チャレンジで優秀賞を受賞するなど、探究的な活動で高い実績を上げています。
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イベント
松山高校の学校行事は、生徒たちが主体となって創り上げるものが多く、特に男子校ならではの熱気と団結力が魅力です。
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松高祭(文化祭)
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毎年9月に行われる最大のイベントの一つ。文化部の研究発表や作品展示はもちろん、各クラスが趣向を凝らした企画や模擬店を出店し、大変な盛り上がりを見せます。後夜祭も名物で、應援團(応援団)の演舞などは圧巻です。
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体育祭
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10月に近隣の陸上競技場を貸し切って本格的に開催されます。クラス対抗で様々な競技に臨み、応援にも熱が入ります。男子校ならではの迫力と一体感を味わえるイベントです。
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比企一周駅伝
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11月に行われる、松山高校を象徴する伝統行事です。学校周辺の比企地域約60kmのコースを、クラス対抗でタスキを繋いで走ります。クラス全員で選手をサポートし、ゴールを目指す中で生まれる一体感や達成感は、他では味わえない特別な経験となるでしょう。
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修学旅行
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例年、関西方面などを訪れることが多いようです。仲間との共同生活を通して、一生の思い出を作ることができます。
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埼玉県立松山高等学校の進学実績
伝統的に国公立大学への進学に力を入れており、安定した合格実績を誇っています。近年も、地元の埼玉大学をはじめ、多くの国公立大学や難関私立大学に合格者を輩出しています。
以下は、近年の主な大学進学実績です。(合格者数は延べ人数)
進路分類 | 主な大学名と合格者数 |
国公立大学 | 合計 約35名(2024年度実績)。主な合格先:埼玉大学(7)、群馬大学(4)、北海道大学(1)、筑波大学(2)、東京農工大学(1)など |
難関私立大学 | 早稲田大学(2)、上智大学(2)、東京理科大学(3) GMARCH(学習院・明治・青山学院・立教・中央・法政)合計 約50名:明治大学(15)、中央大学(13)、法政大学(10)、学習院大学(8)、立教大学(6)、青山学院大学(5)など |
主な私立大学 | 東洋大学(64)、大東文化大学(66)、日本大学(40)、東京電機大学(38)など多数 |
医・薬・看護系 | 明治薬科大学(6)、東京薬科大学(2)、埼玉医科大学(1)など |
これらの進学実績を支えているのが、手厚い進路指導体制と独自の学習サポートです。特に「松高塾」と呼ばれる取り組みは、松山高校の大きな特徴です。これは、教員が担当する放課後や長期休暇中の進学補講で、大学入学共通テスト対策から難関大学の二次試験対策、英検対策まで、非常に多彩な講座が用意されています。生徒は自分の希望に応じて自主的に参加でき、中には100人以上が参加する人気講座もあるなど、生徒たちの学習意欲に応える環境が整っています。
埼玉県立松山高等学校の特長・アピールポイント
他の高校にはない、松山高校ならではの強みやユニークな取り組みをまとめました。
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スーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校
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理数科を中心に、学校全体で高度な理数教育を実践しています。大学の研究室を訪問したり、最先端の実験器具を使ったりと、高校の枠を超えた本格的な研究活動に取り組むことができます。科学に興味がある生徒にとっては、これ以上ない刺激的な環境です。
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独自の進学補講「松高塾」
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塾や予備校に通わなくても、学校内で質の高い受験対策が受けられる手厚いサポート体制です。通常の授業では扱いきれない発展的な内容や、ブタの頭の解剖といったユニークな実験など、知的好奇心を満たす講座も多く、生徒の「学びたい」という気持ちを力強く後押ししてくれます。
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心身を鍛える伝統行事「比企一周駅伝」
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約60kmもの距離をクラスでタスキを繋ぐこの行事は、単なるスポーツイベントではありません。苦しい練習を共に乗り越え、本番で声を枯らして仲間を応援する経験は、忍耐力や協調性、そして一生ものの友情を育む、松山高校の人間教育の象徴です。
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全国レベルで活躍する活発な部活動
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「文武不岐」の精神は単なるお題目ではなく、ソフトテニス部や新聞部をはじめ、多くの部活動が全国の舞台で活躍していることからも証明されています。何かに本気で打ち込み、高いレベルを目指したい生徒にとって、最高の環境が用意されています。
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100年以上の歴史を持つ男子校ならではの強い絆
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異性の目を気にすることなく、ありのままの自分でいられる3年間は、かけがえのない時間です。多くの卒業生が「松高で得た一番の財産は友人」と語るように、ここで育まれる友情は非常に強く、一生涯の付き合いになることも少なくありません。
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卒業生との強いネットワーク
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社会の様々な分野で活躍する卒業生を招いた「立志講演会」などが定期的に開催されます。身近な先輩の体験談を聞くことは、自分の将来を考える上で大きな刺激となり、松高生であることへの誇りにも繋がります。
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埼玉県立松山高等学校の口コミ・評判のまとめ
在校生や卒業生からのリアルな声は、学校選びの重要な参考になります。ここでは、様々な口コミを公平にまとめました。
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良い点
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「男子校はとにかく楽しい。一生の友達ができた」という声が圧倒的に多いです。気を使わない仲間とのびのび過ごせる環境は、最大の魅力のようです。
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「行事が本気で盛り上がる。特に比企一周駅伝の達成感は忘れられない」など、学校行事への満足度は非常に高いです。
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「先生が進路相談に親身になってくれる」「面倒見が良い」といった、手厚いサポートを評価する声も多くあります。
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「いじめを見たことも聞いたこともない」という意見が複数あり、安心して学校生活を送れる環境であることがうかがえます。
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「部活動に打ち込める環境がある」と、文武不岐を実践できる点を評価する声も多いです。
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気になる点
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「自称進学校で、とにかく勉強の圧が強い」「自由が少ない」といった、学校の進学実績へのこだわりに窮屈さを感じるという意見があります。
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「先生の当たり外れが大きい」という声も散見されます。熱心な先生がいる一方で、授業が分かりにくい、考え方が古いと感じる先生もいるようです。
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「校則が時代に合っていない」「もっと自由にしてほしい」など、校則の厳しさに対する不満の声もあります。
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「最近は定員割れすることもあり、レベルが下がっているのでは」と、学校の現状を心配する卒業生からの声も見られました。
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「松高塾は先生の自己満足に感じるものもある」と、学校のサポートが必ずしも全員に合っているわけではない、という意見もあります。
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アクセス・通学
松山高校への通学方法についてです。
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最寄り駅は、東武東上線の「東松山駅」です。
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東松山駅の東口から、徒歩で約15分です。平坦な道なので、歩きやすい道のりです。
また、少し離れたエリアから通学する生徒も多く、JR線からのアクセスも可能です。
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JR高崎線「熊谷駅」からバスを利用し、「加美町」バス停で下車。バス停から学校までは徒歩圏内です。全体の所要時間は約45分です。
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JR高崎線「鴻巣駅」からバスで東松山駅まで行き、そこから徒歩。全体の所要時間は約50分です。
通学している生徒は、東松山市内はもちろん、熊谷市、坂戸市、川越市、比企郡の各町など、比較的広い範囲から集まっているようです。
埼玉県立松山高等学校受験生へのワンポイントアドバイス
ここまで読んでくれてありがとう。進学アドバイザーとして、最後に君にメッセージを送ります。
埼玉県立松山高等学校は、「楽な高校生活」を求めている人には、もしかしたら合わないかもしれません。ですが、「何かに夢中になりたい」「どうせやるなら本気でやりたい」「最高の仲間と忘れられない3年間を過ごしたい」と願う君にとって、これほど刺激的で成長できる場所は他にないでしょう。伝統の男子校の熱気の中で、勉強にも部活にも全力で打ち込む。松山高校は、そんな熱い思いを持った生徒を待っています。
受験勉強においては、まず自分の目標を明確にすることが大切です。普通科を目指すなら、5教科をバランスよく、苦手を作らないように基礎を固めましょう。そして、もし君が理数系の探究に心惹かれるなら、ぜひ理数科に挑戦してください。そのためには、中学レベルを完全にマスターした上で、応用問題にも対応できる思考力を、特に数学と理科で徹底的に鍛え上げる必要があります。君の挑戦を心から応援しています!
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。