和歌山工業高等専門学校、通称「和歌山高専」は、中学を卒業した皆さんが、未来の技術者・研究者としての一歩を踏み出すための特別な5年制の学校です。一般的な高校とは異なり、15歳から大学レベルの専門知識と技術を深く学べる、刺激的でユニークな環境がここにはあります。
「専門的な勉強は難しそう…」「大学みたいな自由って本当?」「卒業後の進路はどうなるの?」そんな期待や不安を抱えている人も多いでしょう。この場所は、早くから自分の「好き」を追求したいと願う君にとって、夢への最短ルートになるかもしれません。和歌山工業高等専門学校が持つ独特の魅力と、そこで待っている充実した学生生活のリアルな姿を、これからじっくりと解き明かしていきます。
この記事を読めば、学校の雰囲気から勉強の難易度、学生たちの本音まで、あなたが本当に知りたい情報がきっと見つかるはずです。自分にぴったりの進路かどうか、一緒に確かめていきましょう。
和歌山工業高等専門学校の基本情報
まずは、学校の基本的な情報を確認しておきましょう。オープンキャンパスや学校説明会に参加する際の参考にしてください。
項目 | 内容 |
正式名称 | 和歌山工業高等専門学校 |
公立/私立の別 | 国立 |
共学/男子校/女子校の別 | 男女共学 |
所在地 | 〒644-0023 和歌山県御坊市名田町野島77 |
代表電話番号 | 0738-29-2301 |
公式サイトのURL | http://www.wakayama-nct.ac.jp/ |
和歌山工業高等専門学校の偏差値・難易度・併願校
和歌山工業高等専門学校への進学を考える上で、最も気になるのが学力的な難易度でしょう。偏差値だけでなく、合格に必要な力の目安や、併願校の選び方についても詳しく解説します。
最新の偏差値は、設置されている4つの学科すべてで「67」とされています。この数値は和歌山県内でもトップクラスであり、県立の進学校である桐蔭高校(普通科 68)や向陽高校(普通科 66)に匹敵する高い学力が求められることを示しています。
ただし、和歌山工業高等専門学校の本当の難しさは、入学試験だけではありません。入学後の授業は進度が非常に速く、1年生のうちから大学で学ぶような数学(数学IIIなど)が始まることもあります。また、赤点が60点と高く設定されており、学習を怠ると進級が難しくなるという厳しい側面もあります。合格はゴールではなく、専門知識を意欲的に学び続ける強い意志を持った学生のためのスタートラインと言えるでしょう。
内申点については、学力検査の点数と調査書の比率が4:1程度と、当日の試験結果が重視される傾向にあります。しかし、推薦選抜を狙う場合は、中学2年生と3年生の9教科の評定合計がそれぞれ「32以上」であることが一つの目安とされており、高い内申点が求められます。
併願校としては、国立であるため公立高校との併願は制度上可能ですが、万が一のことを考えて私立高校を併願する受験生がほとんどです。偏差値が近い学校として、開智高校(I類コース)や近畿大学付属新宮高校(アグレッシブコース)などがよく候補に挙がります。
和歌山工業高等専門学校に設置されている学科・コース
和歌山工業高等専門学校の最大の特長は、1年生から専門分野に特化した4つの学科で学べることです。自分の興味や将来の夢に合わせて、最適な学科を選びましょう。
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知能機械工学科 (Intelligent Mechanical Engineering)
ロボットやAI(人工知能)など、賢い機械を創り出すための技術を学びます。ものづくりや機械いじりが好きで、未来のテクノロジーを自分の手で生み出したい人におすすめです。
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電気情報工学科 (Electrical and Computer Engineering)
電気・電子回路からプログラミング、情報通信まで、現代社会を支えるIT技術の根幹を学びます。パソコンの仕組みやアプリ開発に興味がある人にぴったりの学科です。
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生物応用化学科 (Applied Chemistry and Biochemistry)
化学と生物学を融合させ、医薬品や食品、環境に優しい新素材などを開発する知識を身につけます。理科の実験が好きで、科学の力で社会問題を解決したい人に向いています。
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環境都市工学科 (Civil and Environmental Engineering)
人々が安全で快適に暮らせる社会の土台をつくる学問です。橋や道路の設計、災害に強い街づくり、環境保全など、大きなスケールで社会に貢献したい人におすすめです。
和歌山工業高等専門学校の特色・校風
和歌山工業高等専門学校の校風は、キーワードで表すなら「自由闊達」「自主性を重んじる」「学生主体」です。高校生ではなく「学生」として扱われ、個人の責任において自由な学校生活を送ることが期待されます。
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宿題の量
全体的な宿題の量は「少ない」と感じる生徒が多いようですが、「機械設計製図」のような専門科目では、かなり多くの課題が出されることもあるようです。日々の予習・復習が欠かせません。
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校則(スマホ、服装など)
校則は非常に緩やかで、生徒の自主性に任されています。制服はなく、服装や髪型は自由です。スマートフォンも校内での所持が認められており、授業中に教員の許可なく使用することが禁じられている程度で、休み時間などは自由に使えます。
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生徒たちの雰囲気
専門分野を学びたいという明確な目的意識を持った、真面目で落ち着いた学生が多いようです。寮生活を送る学生が多いため、学年や学科を超えた交流が活発で、和気あいあいとした雰囲気があります。
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アルバイト
勉学への支障が懸念されるため、学校としては推奨していません。禁止ではありませんが、許可証の発行などは行っておらず、学業との両立は自己責任となります。
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制服の評判
制服がないため、この点を魅力に感じて入学する生徒も少なくありません。毎日私服で通学できるのは、大きな特長の一つです。
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土曜授業
基本的に土曜授業はありません。大学と同様の学年暦に近いため、週末は自分の研究や部活動、休息に充てることができます。
和歌山工業高等専門学校の部活動・イベント
部活動
和歌山工業高等専門学校では、専門分野の勉強に打ち込みながら、多くの学生が部活動にも熱心に取り組んでいます。運動部、文化部ともに充実しており、全国レベルで活躍するクラブも少なくありません。
特に有名なのが、技術系のコンテストで輝かしい実績を誇るクラブです。
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ロボコン部
NHKの「高専ロボコン」の常連校として全国的に知られています。独創的なアイデアと高い技術力で、激戦区の近畿地区大会で優勝を重ね、全国大会でもベスト4に入るなど、素晴らしい成績を収めています。ものづくりが好きな学生にとって、最高の舞台と言えるでしょう。
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プログラミングコンテスト(プロコン)関連
プログラミング技術を競う「高専プロコン」でも、学生たちが開発したシステムが企業賞を受賞するなど、高い評価を得ています。
運動部も非常に活発です。
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柔道部
近畿地区高専大会で団体戦5連覇を達成するなど、圧倒的な強さを誇る名門です。全国大会でも個人戦で優勝者や入賞者を輩出しています。
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女子バレーボール部
こちらも近畿地区大会で連覇を果たす強豪です。
この他にも、剣道部や卓球部などが近畿地区大会で優勝や上位入賞を果たしており、文武両道を実践する環境が整っています。
イベント
学生たちが主体となって運営するイベントが多いのも、和歌山高専の大きな魅力です。仲間との絆を深め、学校生活を彩る行事が一年を通して開催されます。
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高専祭(こうせんさい)
11月に行われる文化祭で、学校が最も盛り上がるイベントの一つです。各学科の特色を活かした専門的な展示や、学生が開発したゲームの体験コーナーなど、高専ならではの企画が満載です。2年生から5年生はクラスごとに出店し、1年生はクラス対抗で劇を上演するのが伝統で、そのクオリティの高さには定評があります。
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球技大会
5月にクラス対抗で行われるスポーツイベントです。新学期が始まって間もない時期に開催されるため、クラスの団結力を高める絶好の機会となっています。
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寮祭(りょうさい)
多くの学生が生活する学生寮「柑紀寮」で、寮生会が主催するお祭りです。バレーボール大会やミニゲーム大会などが企画され、寮生同士の交流を深める大切なイベントとなっています。
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修学旅行
本科では、学年ごとに研修旅行や工場見学などがカリキュラムに組み込まれており、実践的な学びの機会となっています。
和歌山工業高等専門学校の進学実績
和歌山工業高等専門学校の卒業生は、5年間で培った高い専門性を武器に、非常に優れた進路を実現しています。就職率・進学率ともに極めて高く、ほぼ100%の学生が希望の道へと進んでいます。卒業後の選択肢は大きく分けて「大学編入」と「就職」の2つです。
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大学への編入学
多くの学生が、5年間の準学士課程を修了後、さらに学びを深めるために国公立大学の3年次へ編入します。これは、高専での5年間の学びが大学の1・2年次に相当すると認められているためです。
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主な国公立大学進学先:東京工業大学、大阪大学、神戸大学、筑波大学、東北大学、九州大学、京都工芸繊維大学、電気通信大学、豊橋技術科学大学、長岡技術科学大学、和歌山大学など、全国の難関大学へ多数の合格者を輩出しています。
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また、和歌山高専に設置されている「専攻科」へ進学し、さらに2年間学ぶことで、4年制大学卒業と同等の「学士」の学位を取得する道もあります。
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企業への就職
高専卒業生に対する企業からの評価は非常に高く、毎年多くの大手優良企業から求人が寄せられます。実践的な知識と技術を身につけた20歳のエンジニアは、即戦力として高く期待されています。
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主な就職先企業(一部抜粋):
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製造業:パナソニック、京セラ、ダイキン工業、クボタ、サントリー、花王、SUBARU、三菱電機など。
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情報通信業:NTT西日本、ソフトバンク、U-NEXT HOLDINGSなど。
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インフラ・運輸業:関西電力、大阪ガス、JR東海、JR西日本、南海電気鉄道など。
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建設業:鹿島建設、大林組、五洋建設など。
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このような優れた進路実績は、専門分野のエキスパートである教員が研究室などで親身に相談に乗ってくれる手厚いサポート体制によって支えられています。
和歌山工業高等専門学校の特長・アピールポイント
他の高校にはない、和歌山工業高等専門学校ならではの強みや魅力をまとめました。
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5年一貫の早期専門教育
中学卒業後すぐに、大学レベルの工学・科学分野の専門教育をスタートできます。興味のある分野を誰よりも早く、深く探究できる環境は、将来の夢が明確な君にとって大きなアドバンテージになります。
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実験・実習を重視した実践的カリキュラム
座学だけでなく、1年生から実験や実習、設計製図といった「手を動かす」授業が豊富に用意されています。理論を実践で確かめながら、本物の技術力を着実に身につけることができます。
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抜群の進路実績と社会からの高い評価
卒業生の進路は、有名企業への就職から難関国公立大学への編入まで、非常に幅広く、かつ高いレベルを誇ります。「高専卒」というブランドは、社会で活躍するための強力なパスポートです。
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大学のような自由と自主性を育む校風
制服なし、校則も最小限。学生一人ひとりが大人として尊重され、自主性が重んじられます。この自由な環境の中で、自らを律し、責任感を持って行動する力が自然と養われます。
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人間的成長を促す「柑紀寮」での寮生活
多くの学生が生活を共にする学生寮は、単なる宿舎ではありません。集団生活を通じて協調性や自立心を学び、一生涯の友人を得る、かけがえのない人間教育の場となっています。
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全国レベルで戦えるハイレベルな部活動
「高専ロボコン」で全国に名を馳せるロボコン部や、圧倒的な強さを誇る柔道部など、全国の舞台で活躍する部活動が多数存在します。勉強だけでなく、好きなことに全力で打ち込める環境があります。
和歌山工業高等専門学校の口コミ・評判のまとめ
在校生や卒業生から寄せられる声を、良い点と気になる点に分けて公平にご紹介します。学校選びの参考にしてください。
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良い点
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「大学のように自由で、生徒ではなく学生として扱われるのが良い。自主性が身につく」という声が非常に多いです。
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「自分の好きな専門分野を深く学べるので、知的好奇心が満たされる。目標がある人には最高の環境」と、カリキュラムへの満足度が高いようです。
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「寮生活がとにかく楽しい。学科や学年を超えて、一生付き合える友達ができる」といった、寮生活を評価する意見が目立ちます。
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「就職にも大学編入にも強く、将来の選択肢が広がる。先生方のサポートも手厚い」と、進路への安心感を挙げる声も多数あります。
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「高専祭などの行事は学生が主体で作り上げるので、とても盛り上がるし達成感がある」という口コミも見られます。
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気になる点
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「授業の進度が速く、内容も難しい。毎日しっかり勉強しないとすぐについていけなくなる」という、学業面での厳しさを指摘する声があります。
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「赤点が60点と高く、留年する可能性も普通にある。楽な高校生活を送りたい人には向かない」という注意喚起もされています。
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「最寄り駅からバスに乗る必要があり、立地は少し不便。寮に入らないと通学が大変かもしれない」という、アクセスに関する意見があります。
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「入学時に学科を決めるので、後から興味の対象が変わった場合に進路変更が難しい」という、早期専門教育ならではの悩みも聞かれます。
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アクセス・通学
和歌山工業高等専門学校のキャンパスは御坊市にあり、通学には電車とバスを利用するのが一般的です。
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和歌山市方面から
JRきのくに線(紀勢本線)「御坊駅」で下車。駅前から出ている御坊南海バス(印南線 印南駅行き)に乗車し、約18分。「学園前」バス停で下車すると、学校は目の前です。
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田辺市・白浜町方面から
JRきのくに線(紀勢本線)「印南駅」で下車。駅前のバス停から御坊南海バス(印南線 御坊駅行き)に乗車し、約8分。「学園前」バス停で下車します。
多くの学生、特に低学年の男子学生は原則として校内にある学生寮「柑紀寮」で生活しています。和歌山県内全域はもちろん、県外からも学生が集まるため、寮生活が通学の基本スタイルとなっており、これが和歌山高専の学校文化を形成する大きな要素にもなっています。
和歌山工業高等専門学校受験生へのワンポイントアドバイス
ここまで読んでくれてありがとう。もし君が「ものの仕組みを知るのが好き」「自分の手で何かを創り出してみたい」という強い探求心を持っているなら、和歌山工業高等専門学校は君の可能性を最大限に引き出してくれる場所になるでしょう。自由な環境で、自ら考え行動できる自立した人に特におすすめです。
受験勉強では、特に数学と理科の基礎を徹底的に固めてください。なぜその公式が成り立つのか、なぜその現象が起きるのか、という「なぜ?」を大切にする学習が、入学後の学びで必ず生きてきます。和歌山工業高等専門学校で待っているのは、挑戦に満ちた刺激的な5年間です。その先には、素晴らしい仲間と、社会で活躍できる確かな力が待っています。応援しています!
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。