愛光高等学校は、愛媛県松山市に位置し、全国にその名を知られる屈指の進学校です。カトリックの精神に基づき、「われらの信条」として掲げる「Amor et Lumen(愛と光)」の理念のもと、世界に貢献できる「世界的教養人」の育成を目指しています。単に学力が高いだけでなく、深い知性と豊かな人間性を育む教育が、ここ愛光高等学校の最大の魅力と言えるでしょう。

かつては灘、ラ・サールと共に「西の御三家」と称された歴史を持ち、現在も四国トップ、全国でも最難関レベルの学力を誇ります。その高いレベルから、遠い存在に感じてしまう中学生や保護者の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この学校の本質は、高い目標に向かって仲間と切磋琢磨し、自分を大きく成長させたいと願う生徒一人ひとりを温かく、そして力強くサポートする環境にあります。

このページでは、そんな愛光高等学校について、偏差値や進学実績といったデータはもちろん、学校生活のリアルな雰囲気、在校生や卒業生の声、そして他の学校にはないユニークな特長まで、進学アドバイザーの視点から詳しく、そして分かりやすく解説していきます。皆さんの高校選びにとって、有益な情報が見つかることを願っています。

愛光高等学校の基本情報

まずは、学校の基本的な情報を確認しておきましょう。正式名称や所在地、連絡先などを一覧にまとめました。学校見学や資料請求の際に役立ててください。

項目 内容
正式名称 愛光高等学校
公立/私立の別 私立
共学/男子校/女子校の別 男女共学
所在地 〒791-8501 愛媛県松山市衣山5-1610-1
代表電話番号 089-922-8980
公式サイトURL https://www.aiko.ed.jp/

愛光高等学校の偏差値・難易度・併願校

愛光高等学校の偏差値は76と、愛媛県内ではトップ、全国的に見ても最難関レベルに位置します。この数字は、単に学力試験の難しさを示すだけでなく、受験者層のレベルの高さを物語っています。

この学校の難易度を理解する上で重要なのは、その入試が「全国区」であるという点です。愛媛県の本校だけでなく、東京、大阪、福岡にも試験会場が設けられており、全国のトップレベルの学力を持つ中学生が受験します。特に、首都圏や関西圏の最難関校(灘、開成、桜蔭など)を目指す受験生が、力試しや併願校として受験する「前受け」の場としても知られています。つまり、愛光高等学校の合格を目指すということは、地元のライバルだけでなく、全国の優秀な受験生たちと競い合うことを意味します。この全国規模の競争が、偏差値の数字以上に高いレベルでの挑戦を求めているのです。

合格に必要な内申点の明確な基準は公表されていませんが、これほどの難関校ですから、中学校での成績が優秀であることは大前提となります。入試は学力試験の結果が重視される傾向にあります。

主な併願校としては、以下のような学校が挙げられます。

  • 愛媛県内の受験生の場合、公立高校では県内トップ校である松山東高等学校を併願するケースが非常に多いです。私立高校では、新田高等学校や済美高等学校の特進コースなどが併願先として考えられます。

  • 県外からの受験生の場合、前述の通り、各地域の最難関校と併願されることが一般的です。愛光高等学校への合格は、全国レベルでの学力が備わっていることの証明とも言えるでしょう。

愛光高等学校に設置されている学科・コース

愛光高等学校には、多様なコースがあるわけではなく、学業に集中するためのシンプルな構成になっています。

  • 普通科:設置されているのは普通科のみです。全ての生徒が同じスタートラインから、高いレベルの学問を追求していきます。将来の目標に応じて、きめ細やかな指導が受けられるのが特長です。

愛光高等学校は中高一貫校ですが、高校からも多くの生徒が入学します。ここで特筆すべきは、高校からの入学生(編入組)への手厚いサポート体制です。中学からの内部進学生とは学習進度に差があるため、高校1年生の1年間は、編入生だけの特別クラスが編成されます。このクラスでは、特に差がつきやすい英語と数学を中心に、内部進学生に追いつくための特別なカリキュラムが組まれ、集中的な学習が行われます。在校生からは「ものすごく大変」という声も聞かれるほど密度の濃い1年間ですが、この「ブリッジ(橋渡し)」期間があるからこそ、2年生から内部生と合流した後も、対等に学びを深めていくことができるのです。この制度は、高校から入学する生徒の不安を解消し、誰もが最高のスタートを切れるようにという学校側の配慮の表れです。

そして、高校2年生からは、生徒一人ひとりの進路希望に合わせて「文系」と「理系」のコースに分かれます。例年、全体の約3分の2が理系を選択する傾向があり、特に医学部を目指す生徒が多いことが、愛光高等学校の大きな特徴です。

愛光高等学校の特色・校風

愛光高等学校の魅力を語る上で欠かせないのが、その独特の校風と生徒たちが過ごす日常の様子です。キーワードは「自由闊達」「文武両道」「切磋琢磨」といった言葉で表現されます。

  • 校風・生徒の雰囲気:カトリックの精神に基づき、生徒の自主性を尊重する自由な校風が根付いています。生徒たちは非常に勉強熱心で、知的好奇心が旺盛です。周りのレベルが高いため、自然と「自分も頑張ろう」という気持ちになり、互いに良い刺激を与え合いながら成長できる環境です。勉強するときは徹底的に集中し、遊ぶときは思い切り楽しむ、といったメリハリのある生徒が多いようです。

  • 宿題の量:宿題は「多い」という声が多数です。日々の授業内容を定着させ、高い学力を維持するためには、家庭での自学自習が不可欠です。自主的に学習計画を立てて進められる自己管理能力が求められます。

  • 校則:全体的には、生徒の自主性を信頼しているため、比較的緩やかだと言われています。ただし、スマートフォンや携帯電話の校内への持ち込みは原則禁止されており、この点は厳しいという声もあります。その代わり、学習用として高校生にはChromebookが1台ずつ配布され、授業や課題で活用されています。

  • 制服:制服は定められています。特に女子の夏服はセーラー服で、長袖と半袖が選べるなど、着こなしの幅があると評判です。

  • アルバイト:学業や部活動が非常に忙しいため、アルバイトをしている生徒はほとんどいないようです。

  • 土曜授業:第4土曜日を除き、基本的に土曜日も午前中の授業があります。豊富な授業時間数が、高い学力を支える基盤の一つとなっています。

  • 寮生活:愛光高等学校の大きな特色の一つが、全国から生徒が集まる寮「聖トマス寮(男子)」「ヴィラ・サンタ・ロサ(女子)」の存在です。全校生徒の約4割が寮で生活しています。

    • 男子寮は、起床から食事、学習、就寝まで、規則正しい生活リズムが徹底されています。親元を離れ、仲間と共に過ごす6年間(または3年間)は、学力だけでなく、自立心や協調性を育む貴重な時間となります。

    • 2025年度からは、待望の女子寮が新設されました。これは、全国の優秀な女子生徒にも門戸を広げるための学校の戦略的な一手と言えます。最新の設備を備えた快適な環境が用意されていますが、男子寮に比べて寮費が割高であることや、シャワーのみで浴槽がない、寮内に療養室がなく体調不良の際は保護者の迎えが必要になる場合がある、といった点は事前に確認しておくべきポイントです。この女子寮の誕生は、愛光高等学校が真の全国区の共学校として、さらに発展していくための重要なステップです。

愛光高等学校の部活動・イベント

「文武両道」を掲げる愛光高等学校では、勉強だけでなく部活動や学校行事も非常に盛んです。

部活動

運動部12、文化部15と、多彩なクラブが活動しています。活動時間は放課後6時まで(冬場は5時半)と限られていますが、その分、どの部も密度の濃い、効率的な練習や活動を工夫しているのが特徴です。

  • 運動部:部員数が100名を超えるサッカー部をはじめ、「激しく・楽しく・真面目に」をモットーとするラグビー部、全国大会の出場経験を持つソフトボール部など、多くの部が活発に活動しています。限られた時間の中で、チームワークと戦術を磨き、県大会上位を目指しています。

  • 文化部:特に有名なのが、ほぼ毎年全国大会に出場する強豪の棋道部(囲碁・将棋)です。また、俳句の聖地・松山らしく、全国高校俳句選手権「俳句甲子園」で活躍する俳句部や、本格的なジオラマ制作を行う鉄道研究部など、ユニークでレベルの高い部活動が揃っています。

イベント

生徒たちの手で作り上げる学校行事は、学校生活を彩る大切な思い出となります。

  • 文化祭:9月に行われる学校最大のイベントです。各クラスや部活動が、工夫を凝らした展示や発表、ゲームコーナーなどを企画・運営します。生徒全員が何らかの形で参加し、学校中が一体となって盛り上がります。

  • 体育大会:5月に開催されるクラス対抗のスポーツの祭典です。学年やクラスの垣根を越えて、全力で競技に挑む姿が見られます。

  • 修学旅行:高校2年生の6月には、北海道へ修学旅行に行きます。仲間と共に過ごす時間は、一生の宝物になるでしょう。

  • 国際交流:台湾の姉妹校との交換留学プログラムや、希望者対象のアメリカ語学研修、ヨーロッパ研修など、国際的な視野を広げる機会も豊富に用意されています。

愛光高等学校の進学実績

愛光高等学校を選ぶ最大の理由の一つが、その圧倒的な大学進学実績です。全国の最難関大学へ、毎年多くの卒業生を送り出しています。

特筆すべきは、医学部医学科への驚異的な合格実績です。公式サイトによると、在校生の約3分の1が医学部を目指しており、その期待に応えるかのように、国公立・私立を合わせて毎年100名を超える医学科合格者を輩出しています。これは、卒業生が約220名であることを考えると、驚異的な数字です。この実績から、愛光高等学校は単なる進学校ではなく、「医学部への最短ルート」を提供する専門的な教育機関としての側面も持っていることがわかります。この医学部志向の強さが、理系クラスの比率の高さや、校内の学習環境に大きな影響を与えています。

2024年の主な大学合格実績は以下の通りです。

大学分類 主な大学名と合格者数
国公立大学 東京大学 12名、京都大学 3名、大阪大学 15名、九州大学 8名、北海道大学 3名、東北大学 4名、愛媛大学 25名など、合計 141名
国公立大学医学部医学科 合計 47名(防衛医科大学校 2名含む)
難関私立大学 早稲田大学 約18名、慶應義塾大学 約11名、上智大学 約6名、東京理科大学 約9名、同志社・立命館など関西の難関私立大学にも多数合格
私立大学医学部医学科 合計 65名

この輝かしい実績を支えているのが、手厚い進路指導体制です。

  • 放課後特別補習:高校2年の3学期から、大学受験に直結するハイレベルな補習授業が希望者向けに開講されます。生徒は自分の志望校のレベルや入試傾向に合わせて講座を選択し、実践力を鍛えます。

  • 進学のしおり:卒業生の合否データだけでなく、合格した先輩たちが後輩のために書き残した勉強法や高校生活のアドバイスが詰まった、門外不出の貴重な資料「進学のしおり」が中3以上の生徒に配布されます。

  • LOB BANK:社会の第一線で活躍する卒業生(O.B.)を学校に招き、在校生に仕事や研究の面白さ、やりがいを語ってもらう独自のキャリア教育プログラムです。医師や研究者、起業家など、多様な分野の先輩から直接話を聞く機会は、将来の夢を具体的に描く上で大きな刺激となります。

愛光高等学校の特長・アピールポイント

他の高校にはない、愛光高等学校ならではの強みやユニークな取り組みをまとめました。

  • 建築家が設計した「学びの村」のような新校舎

    2023年に完成した新校舎は、「愛・光・緑」をコンセプトに設計された芸術的な空間です。生徒同士の交流を促すリング状の廊下や、自然光が豊かに差し込む大きな窓、緑あふれる中庭など、生徒の知的好奇心と豊かな感性を育むための工夫が随所に凝らされています。

  • 日本トップクラスの「医学部への登竜門」

    在校生の約3分の1が医学部を目指し、国公立・私立合わせて毎年100名以上の医学科合格者を出す実績は、全国でも類を見ません。医師を目指す仲間と切磋琢磨できる環境は、最高のモチベーションになります。

  • 自立心を育む全国規模の寮制度

    全校生徒の約4割が生活する寮は、愛光の教育の核の一つです。規則正しい生活を通じて自己管理能力を養い、全国から集まった仲間との共同生活は、一生涯の友情を育みます。2025年からの女子寮新設により、すべての生徒にその門戸が開かれました。

  • 卒業生が後輩を導く独自のキャリア教育「LOB BANK」

    様々な分野で活躍する卒業生が母校に戻り、自らの経験を語る「LOB BANK」は、生徒たちが将来のビジョンを具体的に描くための貴重な機会です。教科書からは学べない「生きた学び」がここにあります。

  • 「朝の読書」から始まる、知性を育む学習習慣

    毎朝10分間、全校生徒が静かに読書に集中する「朝の読書」タイムが設けられています。この習慣が、落ち着いた学習環境と、物事を深く考える力を育んでいます。また、カリキュラムは英語・数学・国語の基礎教科を徹底的に重視しています。

  • 高校からの入学生を万全にサポートする「ブリッジ・カリキュラム」

    高校から入学する生徒のために、1年次に特別クラスを編成し、内部進学生との学力差を埋めるための集中学習を実施します。この手厚いサポートにより、誰もが安心して高校生活をスタートできます。

  • 世界へ視野を広げる多彩な国際交流プログラム

    台湾の姉妹校との交換留学や、希望者向けのアメリカ・ヨーロッパ研修など、異文化に触れ、グローバルな視点を養う機会が豊富に用意されています。これらの経験は、生徒たちを「世界的教養人」へと成長させます。

愛光高等学校の口コミ・評判のまとめ

実際に通う生徒や卒業生たちは、学校をどのように感じているのでしょうか。良い点と気になる点を公平にまとめました。

良い点

  • 知的に刺激的な環境:「周りの生徒のレベルが高く、自然と勉強する雰囲気になる」「先生方の授業が面白く、知的好奇心が満たされる」といった、学習環境への満足度が非常に高いです。

  • 先生方の熱心なサポート:「質問に行くと丁寧に教えてくれる」「個性的で面白い先生が多い」など、教師陣への信頼が厚いことがうかがえます。

  • 充実した施設:2023年に完成したばかりの新校舎や、蔵書が豊富な図書館、人工芝のグラウンドなど、学習環境の素晴らしさを挙げる声が多いです。

  • 一生の友人との出会い:「寮生活や厳しい勉強を共に乗り越えた仲間は、一生の宝物」「多様な個性を持つ友人と出会えて視野が広がった」という声が多数あります。

  • 自由な校風:生徒の自主性を重んじる自由な校風を評価する声も多く聞かれます。

気になる点

  • 学業のプレッシャー:「一度勉強でつまずくと、追いつくのが大変」「常に高いレベルを求められるので、プレッシャーを感じることもある」といった、ハイレベルな環境ゆえの厳しさを指摘する声もあります。

  • 塾通いの実態:学校は「塾は不要」というスタンスですが、実際には多くの通学生が塾に通っているようです。寮生は塾に通いにくいため、その点で差を感じるという意見も見られます。

  • 坂の上の立地:最寄り駅から学校までが坂道になっており、「毎日の通学が体力的にきつい」というのは、多くの生徒が挙げる現実的な悩みです。

  • 寮に関する懸念:過去には男子寮の設備の古さが指摘されていました。また、新設された女子寮については、男子寮より費用が高い点や、設備面(浴槽がない等)を気にする声が保護者から上がっています。

  • 多忙な毎日:7時間授業や土曜授業、大量の宿題など、日々のスケジュールが非常にタイトで、自分の時間を確保するのが難しいと感じる生徒もいるようです。

アクセス・通学

学校へのアクセス方法と、生徒たちの通学エリアについてです。

  • 最寄り駅:伊予鉄道高浜線「西衣山駅」

  • 駅からのアクセス:駅から学校までは徒歩約7分です。ただし、口コミで多く指摘されているように、急な坂道を上る必要があります。

  • その他のアクセス:JR松山駅や松山空港からは、タクシーで約10分の距離です。

  • 通学エリアの傾向:生徒の構成は大きく二つに分かれます。一つは、松山市内を中心に、東予や南予といった愛媛県内からバスなどで通う自宅通学生です。もう一つは、全校生徒の約4割を占める寮生で、関西圏や首都圏をはじめ、日本全国から集まっています。この多様性が、愛光高等学校の大きな魅力の一つとなっています。

愛光高等学校受験生へのワンポイントアドバイス

最後に、進学アドバイザーとして、愛光高等学校を目指す皆さんへメッセージを送ります。

愛光高等学校は、「学ぶことが好きで、高い目標に向かって努力を惜しまない」生徒にとって、最高の環境が整っている学校です。ただ難関大学に合格するためだけでなく、知的好奇心を満たし、同じ志を持つ仲間と深く学び合いたいと願う君にこそ、挑戦してほしい場所です。厳しいけれど、それ以上に得られるものが大きい、そんな3年間が待っています。

受験勉強においては、全教科で高いレベルが求められますが、特に合格者の声を聞くと、高校の授業でも重要となる「数学」と「英語」でいかに得点できるかが鍵となるようです。付け焼き刃の知識ではなく、基礎から応用までをじっくりと固める計画的な学習を心がけてください。愛光高等学校への道は決して平坦ではありませんが、その挑戦自体が君を大きく成長させてくれるはずです。愛と光の使徒となるべく、高い理想を掲げて努力する皆さんを、心から応援しています。

※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。