浦和第一女子高等学校、通称「一女(いちじょ)」。この名前を聞いて、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。埼玉県内トップクラスの学力、輝かしい大学進学実績、それとも活気あふれる部活動でしょうか。そのどれもが正解ですが、この学校の本当の魅力は、それらが一体となった密度の濃い3年間にあります。
「日本一忙しい女子高生」と称されることもあるほど、生徒たちは勉強、部活動、学校行事のすべてに全力で打ち込みます。それは決して大変なだけではなく、同じ目標に向かって切磋琢磨する仲間たちとのかけがえのない時間であり、生涯続く友情を育む土壌となっています。
この記事では、そんな浦和第一女子高等学校のリアルな姿を、進学アドバイザーの視点から、中学生の皆さんにも分かりやすく、その魅力が伝わるように詳しく解説していきます。
浦和第一女子高等学校の基本情報
まずは、学校の基本的な情報を確認しましょう。学校選びの第一歩は、正確な情報を知ることから始まります。
項目 | 内容 |
正式名称 | 埼玉県立浦和第一女子高等学校 |
公立/私立の別 | 公立 |
共学/女子校の別 | 女子校 |
所在地 | 〒330-0064 埼玉県さいたま市浦和区岸町3-8-45 |
代表電話番号 | 048-829-2031 |
公式サイトURL | https://urawaichijo-h.spec.ed.jp/ichijo/ |
浦和第一女子高等学校の偏差値・難易度・併願校
浦和第一女子高等学校は、埼玉県内の女子校で最難関に位置づけられており、合格には高い学力が求められます。
最新の偏差値は普通科で「72」とされており、これは県内でもトップレベルの数値です。この偏差値は、大宮高校(普通科)と並び、浦和高校(男子校)とともに「埼玉県立御三家」と称される一角を担っていることの証です。
この高い難易度を理解するためには、単に偏差値の数字を見るだけでは不十分です。入試では、英語と数学の2教科で、基礎的な問題を中心とした「学力検査問題」よりも難易度の高い「学校選択問題」が採用されています。これは、応用力や思考力を深く問う問題が出題されることを意味しており、付け焼き刃の知識では太刀打ちできません。合格を勝ち取るためには、この2教科で高難度の問題に対応できる力を養うと同時に、他の3教科(国語・理科・社会)では満点に近い点数を取るという戦略が重要になります。
また、内申点(調査書点)も合否を左右する大切な要素です。中学1年生、2年生、3年生の成績が「1:1:2」の比率で評価されるため、特に中学3年生の成績が重要視されます。オール5を目指すくらいの気持ちで、日々の授業や定期テストに真剣に取り組む姿勢が求められます。
これだけ高いレベルの学校ですから、併願校選びも非常に重要です。多くの受験生は、万が一に備えて、同等レベルの学力を持つ私立高校を併願します。浦和第一女子高等学校を目指す生徒がよく選ぶ主な併願校は以下の通りです。
併願校名 | コース名 | 参考偏差値 |
淑徳与野高等学校 | T類 | 69.6 |
開智高等学校 | Tコース | 69.3 |
大宮開成高等学校 | 先進コース | 68.7 |
栄東高等学校 | αコース | 67.7 |
これらの併願校の偏差値を見ても分かる通り、浦和第一女子高等学校の受験は、非常にレベルの高い生徒たちとの競争になることを覚悟しておく必要があります。
浦和第一女子高等学校に設置されている学科・コース
浦和第一女子高等学校に設置されているのは、以下の学科のみです。
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普通科
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文系・理系を問わず、幅広い教養と深い学力を身につけることを目指します。将来、難関大学への進学を希望し、自分の可能性をじっくり探求したい生徒におすすめです。
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学科が一つしかないと聞いて、選択肢が少ないと感じるかもしれません。しかし、これは学校の教育方針の表れです。特定のコースに早くから分かれるのではなく、まずは全員が同じ高いレベルの教育を受けることで、強固な学力の土台を築きます。その上で、後述するSSH(スーパーサイエンスハイスクール)やSGH(スーパーグローバルハイスクール)といった探究活動を通じて、生徒一人ひとりが自分の興味や関心をとことん追求できる環境が整えられています。全員で同じスタートラインに立ち、そこから自分の色を出していく。これが浦和第一女子高等学校のスタイルなのです。
浦和第一女子高等学校の特色・校風
学校の雰囲気を表すキーワードは、「自由闊達」「文武両道」「自主自立」です。生徒一人ひとりの個性が尊重され、非常に自由な空気が流れています。
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宿題の量と学習のペース
口コミでは「とにかく忙しい」「常に勉強に追われる」といった声が多く見られます。授業の進度は非常に速く、予習・復習は必須です。特に、論文といった課題も多く、高いレベルでの学習が求められます。この忙しさは、生徒たちの時間管理能力や自己管理能力を自然と鍛え上げ、「日本一忙しい女子高生」という言葉の裏には、それを乗り越えた先にある充実感と成長があります。
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校則(スマホ、服装など)
校則は「公立高校としてはかなり緩やか」というのが共通した評判です。スマートフォンの持ち込みや使用についても厳しい制限はなく、お菓子の持ち込みも自由です。これは、生徒たちが高い自律心を持っているという学校からの信頼の証です。「賢い生徒たちだから、細かく縛る必要がない」という考えが根底にあり、生徒たちはその信頼に応える形で、自由を責任をもって享受しています。
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生徒たちの雰囲気
「女子特有の陰湿さがない」「それぞれの個性を尊重できる」といった声が象徴するように、非常に風通しの良い人間関係が築かれています。明るく、賢く、優しい生徒が多く、お互いを高め合える環境です。女子校ならではの解放感から「男子の目を気にせず、思いっきり学校生活を楽しめる」という点も、多くの在校生が挙げる魅力の一つです。
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アルバイトと制服
アルバイトは原則として認められていません。学業と学校活動に集中することが求められます。制服については「デザインは普通」という意見もありますが、スカートだけでなくスラックスも選択できるなど、現代のニーズにも対応しています。
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土曜授業
土曜授業はあります。希望制の実力養成講座や、SSH・SGH関連の活動が行われることが多く、土曜日も学びの機会として活用されています。
浦和第一女子高等学校の部活動・イベント
部活動
浦和第一女子高等学校の生徒にとって、部活動は学校生活の核となる部分です。生徒の加入率は95%を超え、ほとんどの生徒が3年間、学業と両立させながら活動に打ち込んでいます。
運動部、文化部ともに非常に充実しており、全国レベルで活躍する部が数多く存在します。
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特に有名な強豪部
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ボート部:高校から競技を始める初心者がほとんどにもかかわらず、毎年のように全国大会で上位入賞を果たす強豪です。まさに「一女の奇跡」とも言える存在で、努力と指導次第で頂点を目指せることを証明しています。
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音楽部:全日本合唱コンクールの常連で、全国大会で金賞を受賞するなど、その実力は折り紙付きです。
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アナウンス部:NHK杯全国高校放送コンテストで毎年入選者を出すなど、全国にその名を知られています。
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競技かるた部:全国大会の常連であり、個人でも優秀な成績を収める選手を輩出しています。
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珍しい部活動
能楽部、長唄部、琴部といった日本の伝統芸能に触れられる部活動があるのも大きな特徴です。多様な文化に触れる機会が学校内に用意されています。
部活動の特色として、「セカンド」と呼ばれる文化があります。これは、新入部員に先輩がニックネーム(セカンドネーム)をつけるという伝統で、学年に関係なくフランクに呼び合うことで、部内の強い一体感を生み出しています。
イベント
一女の学校行事は、生徒が主体となって企画・運営されるのが最大の特長です。
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一女祭(文化祭・体育祭):学校最大のイベントで、その熱気は圧巻です。特に文化祭の門は生徒たちの手作りで、そのクオリティの高さは有名です。体育祭では、3年生による伝統の「仮装行列」が大きな見どころとなっています。これらの行事を通じて、生徒たちは企画力、協調性、リーダーシップを実践的に学びます。
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修学旅行:近年では九州方面を訪れており、福岡の太宰府天満宮で学業成就を祈願するなど、仲間との楽しい思い出を作る貴重な機会となっています。
その他にも、スポーツ大会や全校討論会など、年間を通じて多彩なイベントが目白押しで、生徒たちの学校生活を彩っています。
浦和第一女子高等学校の進学実績
浦和第一女子高等学校の生徒たちは、その充実した3年間の学びを経て、非常に優れた大学進学実績を残しています。ほとんどの生徒が4年制大学へ進学し、国公立大学や難関私立大学へ多数の合格者を輩出しています。
以下に、2025年度の主な大学合格実績をまとめました(人数は既卒生を含む場合があります)。
大学分類 | 主な大学名と合格者数 |
国公立大学 | 合計160名。主な内訳は、東京大学 2名、京都大学 2名、東北大学 12名、お茶の水女子大学 9名、一橋大学 2名、北海道大学 5名、千葉大学 9名、筑波大学 7名、埼玉大学 23名など。 |
難関私立大学 | 早稲田大学 62名、慶應義塾大学 14名、上智大学 43名、東京理科大学 59名。GMARCH(学習院・明治・青山学院・立教・中央・法政)には合計で411名が合格しています。 |
その他 | 医学部医学科には国公立・私立合わせて12名が合格しています。また、お茶の水女子大学、津田塾大学、東京女子大学、日本女子大学といった難関女子大学への進学者も多いのが特徴です。 |
この輝かしい実績を支えているのが、学校の充実した進学サポート体制です。特に「実力養成講座」と呼ばれる希望制の補習・講習は、平日の早朝や放課後、長期休暇中に開講され、生徒たちが自分の苦手分野を克服したり、得意分野をさらに伸ばしたりするために活用されています。これは、学校側から一方的に与えられるものではなく、生徒が自らの意志で学びたい講座を選んで参加するスタイルです。この「自主性」を重んじるサポート体制が、生徒一人ひとりの学力を最大限に引き出し、高い進学実績へと繋がっているのです。
浦和第一女子高等学校の特長・アピールポイント
他の高校にはない、浦和第一女子高等学校ならではの強みやユニークな取り組みをまとめました。
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SSHとSGHのダブル指定
先進的な理数系教育を行う「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」と、国際的なリーダーを育成する「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」の両方に指定されているのは全国的にも稀です。これにより、文系・理系を問わず、大学レベルの探究活動に挑戦できます。
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信頼に基づく「自由な校風」
校則が緩やかで、生徒の自主性が最大限に尊重される校風は、生徒たちの高い自律心と、それに対する学校の信頼関係の賜物です。この環境が、生徒を精神的に大きく成長させます。
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生徒が創り上げる学校行事
文化祭や体育祭といった主要な行事が、企画から運営まで生徒主体で行われます。これは、実践的なリーダーシップやチームワークを学ぶ絶好の機会です。
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初心者から日本一を目指せる部活動
部活動加入率95%以上という活気の中で、ボート部のように高校から始めた初心者が全国の頂点を目指せる環境があります。努力が結果に結びつくことを体感できます。
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思考力を鍛える独自の学習プログラム
英語の多読、数学の別解探しなど、単なる暗記にとどまらない、本質的な思考力を養うユニークな授業が展開されています。
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「一生の友」と出会える強い絆
忙しい学校生活を共に乗り越え、セカンドネームで呼び合う文化などを通じて育まれる仲間との絆は非常に強く、卒業後も続くかけがえのない財産となります。
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多様な進路を実現する高い進学力
最難関国公立大学から、医学部、難関私立大学、名門女子大学まで、生徒一人ひとりの希望進路を実現する確かな指導力と実績があります。
浦和第一女子高等学校の口コミ・評判のまとめ
在校生や卒業生からの声をまとめると、学校のリアルな姿がより鮮明になります。良い点と気になる点を公平にご紹介します。
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良い点
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「とにかく毎日が楽しくて充実している。最高の高校生活だった」という声が圧倒的に多いです。
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「一生付き合える、尊敬できる友達がたくさんできた」と、人間関係の質の高さを挙げる声が目立ちます。
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「自由な校風のおかげで、自分らしくのびのびと過ごせた」という意見も多数あります。
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「勉強も部活も行事も、何事にも全力で取り組む仲間たちに刺激を受けた」と、文武両道を体現できる環境が高く評価されています。
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「先生方の授業は質が高く、知的好奇心を満たしてくれる」という学業面での満足度も高いです。
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気になる点
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「とにかく忙しく、課題の量が多い。睡眠時間を確保するのが大変だった」という声は、ほぼすべての生徒が感じることのようです。
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「授業の進度が速いため、少しでも油断するとついていけなくなる」というプレッシャーを感じる生徒もいます。
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「先生から国公立大学を目指すようにというプレッシャーを強く感じることがある」という意見も見られます。
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「施設は改修されているが、歴史ある学校なので一部に古さを感じる」という声もあります。
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「制服のデザインは、もっと可愛いと嬉しい」という声は、昔からあるようです。
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アクセス・通学
浦和第一女子高等学校は、複数の駅から徒歩圏内にあり、非常に交通の便が良い場所にあります。
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JR京浜東北線「浦和駅」西口より 徒歩8分
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JR京浜東北線・武蔵野線「南浦和駅」西口より 徒歩12分
埼玉県立高校なので特定の通学区域は設けられていません。そのため、さいたま市内だけでなく、県内の広範囲から多くの生徒が通学しています。様々な地域から生徒が集まることも、学校の多様性につながっています。
浦和第一女子高等学校受験生へのワンポイントアドバイス
ここまで読んで、浦和第一女子高等学校の魅力と大変さの両方を感じていただけたでしょうか。最後に、アドバイザーとして皆さんへの応援メッセージをお伝えします。
この学校は、「知的好奇心が旺盛で、何事にも主体的に取り組みたい」「高いレベルの仲間と切磋琢磨しながら、自分を大きく成長させたい」と考える生徒に、心からおすすめします。勉強も、部活も、行事も、そのすべてに自分のエネルギーを注ぎ込み、充実した3年間を送りたいと願うなら、浦和第一女子高等学校は最高の舞台になるはずです。
その舞台に立つためには、まず入試という大きな壁を越えなければなりません。合格への鍵は、英語と数学の「学校選択問題」を制すること。そして、中学3年間の内申点を着実に積み上げることです。日々の努力を大切に、高い目標に向かって突き進んでください。浦和第一女子高等学校での挑戦は、きっとあなたを輝かせてくれるでしょう。健闘を祈っています!
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。