阿南工業高等専門学校、通称「阿南高専」は、単なる高校ではありません。ここは、中学校を卒業した皆さんが、5年間という時間を使って「未来の技術者(エンジニア)」になるための専門知識と技術をとことん追求できる、特別な学びの場です。一般的な高校とは少し違う、大学のような環境で、自分の「好き」や「得意」を未来の仕事に直結させるためのスタートを切ることができます。

「ものづくりが好き」「プログラミングに挑戦したい」「社会の役に立つ大きなものを作ってみたい」。そんな夢を持つ皆さんにとって、阿南工業高等専門学校は最高の環境を整えています。高い就職率や有名大学への進学実績は、この学校が提供する教育の質の高さを物語っています。しかし、その一方で「授業は難しい?」「どんな毎日を送るの?」といった不安や疑問もあることでしょう。

このページでは、進学アドバイザーとして、皆さんが抱えるそんな疑問や不安に一つひとつ丁寧にお答えしていきます。学校の基本情報から、気になる偏差値や校風、先輩たちのリアルな声まで、阿南工業高等専門学校の魅力を余すところなくお伝えします。この記事を読み終える頃には、この学校が自分にとって本当に「行きたい場所」なのか、きっと見えてくるはずです。

阿南工業高等専門学校の基本情報

まずは、学校の基本的な情報を確認しておきましょう。

項目 内容
正式名称 阿南工業高等専門学校
公立/私立の別 国立
共学/男子校/女子校の別 男女共学
所在地 〒774-0017 徳島県阿南市見能林町青木265
代表電話番号 0884-23-7100
公式サイトURL https://www.anan-nct.ac.jp/

阿南工業高等専門学校の偏差値・難易度・併願校

将来の夢に近づくためにも、まずは学力的な難易度をしっかり把握しておくことが大切です。

阿南工業高等専門学校の偏差値は「64」とされています。これは徳島県内ではトップクラスの難易度です。同じくらいの偏差値の高校としては、徳島県立城東高等学校(偏差値64)、徳島県立城南高等学校(偏差値64)、徳島県立富岡東高等学校(偏差値63)などがあり、県内の優秀な生徒が集まる学校であることが分かります。

ただし、高専の入試は一般的な高校入試とは少し評価の仕方が異なります。特に重要になるのが「内申点」です。推薦入試を考えている場合、中学校2年生と3年生の成績が評価対象となり、特に「数学」「理科」「英語」の成績が重視される傾向にあります。具体的な目安としては、5段階評価で平均4.0〜4.4、できれば4.5以上あると安心できるラインと言えるでしょう。

学力検査入試(一般入試)の場合でも、内申点はもちろん大切ですが、それ以上に当日の学力試験の得点が合否を大きく左右します。内申点が少し足りないと感じる場合でも、試験で高得点を取ることで十分に合格の可能性があります。阿南工業高等専門学校が求めているのは、単に成績が良い生徒ではなく、理数系の科目に強い関心と適性を持った生徒なのです。

主な併願校としては、国立である阿南工業高等専門学校は公立高校との併願も制度上は可能ですが、実際には私立高校を併願するケースがほとんどです。学力レベルが近い受験生は、徳島文理高等学校(偏差値69)や生光学園高等学校の特別進学コース(偏差値61)などを併願校として選ぶことが多いようです。

阿南工業高等専門学校に設置されている学科・コース

阿南工業高等専門学校の大きな魅力の一つが、そのユニークな学科・コース制度です。入学時には全員が「創造技術工学科」という一つの学科に所属します。そして、1年生の間は各専門分野の基礎を共通して学びながら、自分の興味や適性をじっくりと見極める時間があります。専門コースの選択は2年生に進級する時なので、焦らずに自分の進むべき道を探せるのは、中学生の皆さんにとって大きな安心材料と言えるでしょう。

2年生から分かれるコースは以下の5つです。

  • 創造技術工学科

    • 機械コース – ロボットや自動車、航空宇宙分野など、あらゆる「ものづくり」の根幹となる機械の設計や製造技術を学びます。機械の仕組みを考えたり、分解したり組み立てたりするのが好きな人におすすめです。

    • 電気コース – 社会を支える電気エネルギーや、スマートフォンにも使われる半導体、情報通信技術について幅広く学びます。目に見えないけれど暮らしに不可欠な電気の世界を探求したい人にぴったりです。

    • 情報コース – プログラミングやネットワーク、AI(人工知能)といった最先端のソフトウェア技術からハードウェアまでを学びます。将来、アプリ開発者やIT技術者として世界で活躍したい人におすすめのコースです。

    • 建設コース – 人々が安全で快適に暮らすための街づくりや、災害に強い社会インフラ、環境に配慮した建築などを学びます。地図に残るような大きな仕事をしてみたい、社会基盤を支えたいという人に向いています。

    • 化学コース – 新しい材料の開発や、医薬品、環境技術などに関わる化学の知識と技術を学びます。物質の変化に興味があり、未来の暮らしを豊かにする新素材や新技術を生み出したい人に最適です。

阿南工業高等専門学校の特色・校風

阿南工業高等専門学校の雰囲気をキーワードで表すなら、「専門的」「自主的」「大学に近い」「文武両道」といった言葉が当てはまるでしょう。

学校生活は、一般的な高校とは大きく異なります。まず、授業は1コマ90分が基本です。これは大学と同じスタイルで、一つのテーマにじっくりと集中して取り組むことができます。もちろん、途中で休憩が入ることも多く、メリハリをつけて学べるように工夫されています。学習内容は高度で専門的なため、日々の予習・復習や自主的な学習が不可欠です。口コミでは「明確な目的意識がないと勉強についていくのが大変」という声もあり、受け身ではなく自ら学ぶ姿勢が強く求められます。その分、学習意欲の高い生徒にとっては、これ以上ないほど充実した環境と言えます。万が一、必要な単位を修得できない場合は「留年(同じ学年を繰り返すこと)」する可能性もあり、自己管理能力が試される厳しい側面もあります。

校則は、学年が上がるにつれて自由度が増していくのが特徴です。1年生から3年生までは制服の着用が義務付けられていますが、4年生、5年生になると私服での通学が認められます。これは、学生を徐々に一人の大人として扱い、自主性を尊重する学校の方針の表れです。スマートフォンは校内に持ち込めますが、授業中や式典での使用は教員の許可がない限り禁止されており、学ぶべき時と自由な時間の区別はしっかりしています。アルバイトは、学業への専念を理由に原則として自粛を求められています。

生徒たちの雰囲気は、真面目で探究心が旺盛な学生が多いようです。特に、全学生の約半数が入寮する「明正寮」での生活は、阿南高専の校風を象徴しています。寮では、学年を超えた先輩や後輩、留学生との共同生活を通して、協調性や自立心が育まれます。試験前には仲間と教え合ったり、時には将来について語り合ったりと、一生涯の友人に出会える貴重な場となっています。ただし、食事や入浴、自習時間などが決められた寮生活に慣れるまでは、少し大変だと感じる人もいるようです。

土曜日に正規の授業はありませんが、多くの部活動が土曜日にも活動しており、平日は勉強、休日は部活動と、充実した日々を送る学生が多いようです。

阿南工業高等専門学校の部活動・イベント

部活動

阿南工業高等専門学校では、勉強だけでなく部活動も非常に盛んで、「文武両道」を実践する学生がたくさんいます。運動部、文化部ともに充実しており、多くの学生が部活動に加入して、専門分野の学習と両立させながら青春を謳歌しています。

特に全国的に有名なのが、ロボット製作に情熱を燃やす部活動です。毎年開催される「高専ロボコン」の常連校であり、地区大会や全国大会で優秀な成績を収めています。機械、電気、情報といった各コースで学んだ知識と技術を結集させ、アイデアを形にしていくこの活動は、まさに阿南高専での学びの集大成。ものづくりが好きな生徒にとっては、最高の舞台と言えるでしょう。

このほかにも、運動部では野球、サッカー、バスケットボール、陸上競技など、文化部ではプログラミング、写真、吹奏楽など、多種多様なクラブがあり、自分の興味に合わせて活動を選ぶことができます。

イベント

阿南工業高等専門学校の学校生活は、日々の学習や部活動だけでなく、多彩なイベントによって彩られています。

最大のイベントは、秋に開催される学校祭「蒼阿祭(そうあさい)」です。各クラスや部活動が、研究成果の発表、ユニークな展示、模擬店など、趣向を凝らした企画で来場者を楽しませます。学生たちが日頃の学びを活かして創り上げる展示物は非常にレベルが高く、地域住民も多く訪れる一大イベントとなっています。

また、クラスの団結力が試される「体育祭」も大きな盛り上がりを見せます。学年やコースの垣根を越えて、全力で競技に打ち込む姿は、高専生活の忘れられない思い出の一つになるでしょう。

その他にも、中学生を対象とした「一日体験入学」や、地域住民向けの公開講座、プログラミングコンテストなど、学校が地域社会と積極的に関わるイベントも数多く開催されており、開かれた学校の雰囲気が感じられます。

阿南工業高等専門学校の進学実績

阿南工業高等専門学校の卒業後の進路は、大きく分けて「就職」「大学編入」「専攻科進学」の3つがあり、そのいずれもが非常に有望であることが最大の強みです。卒業生の約6割が就職、約4割が進学を選んでおり、自分の将来設計に合わせて柔軟にキャリアを選択できます。

就職

就職希望者の就職率は例年ほぼ100%を誇り、産業界からの評価が非常に高いことを示しています。毎年、県内外の優良企業から2,000社以上の求人が寄せられ、学生一人あたり平均20社以上の中から就職先を選ぶことができるという、まさに「引く手あまた」の状態です。

進学(大学編入)

進学を希望する学生の多くは、4年制大学の3年次に編入するという道を選びます。これは、5年間で大学2年生修了レベルまでの知識を身につける高専ならではのユニークな制度です。特に国公立大学への進学実績は目覚ましく、多くの卒業生が難関大学への進学を果たしています。大学進学希望者向けには「特進セミナー」といったサポート体制も整えられています。

専攻科進学

さらに専門性を高めたい学生は、阿南高専に設置されている2年制の「専攻科」へ進学することもできます。専攻科を修了すると、大学工学部卒業者と同じ「学士(工学)」の学位を取得でき、さらに大学院へ進学する道も開かれています。

以下に、令和6年度(2024年)の主な進路実績をまとめました。

主な就職先 主な大学編入先 専攻科とその先の進路
ダイキン工業、村田製作所、日亜化学工業、本田技研工業、四国電力、大塚製薬、カネカ、GSユアサ、京セラコミュニケーションシステム、サントリーグループ、富士電機、Daigasグループ など 国公立大学: 東京工業大学、神戸大学、広島大学、岡山大学、九州大学、千葉大学、大阪公立大学、東京都立大学、徳島大学、豊橋技術科学大学、長岡技術科学大学、京都工芸繊維大学、熊本大学、北海道大学、愛媛大学 など 阿南高専専攻科へ進学後、九州工業大学大学院、早稲田大学大学院などの大学院へ進学する修了生もいます。
私立大学: 早稲田大学、同志社大学 など

阿南工業高等専門学校の特長・アピールポイント

他の高校にはない、阿南工業高等専門学校ならではの強みやユニークな取り組みを7つのポイントにまとめました。

  • 5年一貫の実践的専門教育

    中学校を卒業してすぐ、高校と大学の7年間に匹敵するレベルの専門知識と技術を5年間で集中的に学べます。これにより、社会で即戦力となる実践力を身につけることができます。

  • 驚異的な就職実績と大手企業への道

    就職率はほぼ100%で、多くの卒業生が日本を代表する大手企業や優良企業に就職しています。学校推薦制度が充実しており、有利な条件で就職活動を進められるのが大きな魅力です。

  • 国公立大学3年次への編入という選択肢

    高専卒業後、多くの国公立大学の工学部3年次に編入することが可能です。一般的な高校から大学を目指すよりも効率的に、かつ高いレベルで専門性を追求できるユニークな進路です。

  • 1年間じっくり専門分野を選べるカリキュラム

    入学後1年間は、専門分野の基礎を幅広く学びます。その上で自分の適性や興味を見極めてから2年次に専門コースを選択できるため、ミスマッチが少なく、安心して自分の道を選べます。

  • 大学のような自由と自主性を重んじる校風

    上級生は私服通学が認められるなど、校則は比較的自由です。学生を大人として扱い、自主性を尊重する校風の中で、自己管理能力や主体的に学ぶ力が自然と身につきます。

  • 「高専ロボコン」に代表される本格的なものづくり体験

    全国的に有名な「高専ロボコン」への出場をはじめ、授業で学んだ知識を実践する機会が豊富にあります。教科書だけでは得られない、本物の「ものづくり」の楽しさと難しさを体感できます。

  • 仲間と成長できる寮生活

    全校生徒の約半数が生活する学生寮は、単なる寄宿舎ではありません。学年を超えた仲間たちと切磋琢磨し、協調性や自立心を育む、もう一つの「学びの場」です。

阿南工業高等専門学校の口コミ・評判のまとめ

在校生や卒業生から寄せられる声には、この学校のリアルな姿が映し出されています。良い点と気になる点の両方を知ることで、より深く学校を理解しましょう。

良い点

  • 「将来の選択肢が広く、就職にも大学編入にも圧倒的に有利。自分の努力次第でどんな道にも進める」という声が非常に多いです。恵まれた進路は、学生にとって大きな安心感とモチベーションにつながっているようです。

  • 「専門的なことを深く学べるので、本当に興味がある人にとっては最高の環境。先生方も専門家なので、質問すれば何でも答えてくれる」といった、教育内容の質の高さを評価する声も目立ちます。

  • 「大学のようで自由な校風が魅力。自分で考えて行動する力が身についた」と、自主性を重んじる環境で人間的に成長できたと感じる卒業生が多いようです。

  • 「寮生活を通して、一生付き合える親友ができた。勉強でつらい時も、仲間がいたから乗り越えられた」など、寮での共同生活がかけがえのない経験になったという声も多数あります。

  • 「実験設備などが充実している。県内屈指の環境で学べる」と、施設の素晴らしさを挙げる声もあります。

気になる点

  • 「授業のレベルが高く、勉強はかなり大変。明確な目的がないと、途中でつらくなってしまうかもしれない」という意見は、多くの学生が感じることのようです。入学には強い意志が必要です。

  • 「自主性が求められる分、自己管理ができないと厳しい。実際に留年してしまう人もいるので、日々の努力が欠かせない」という厳しい現実を指摘する声もあります。

  • 「寮のルールは厳しく、集団生活に慣れるまでは大変だった」という声もあります。特に1年生のうちは、決められた日課に窮屈さを感じることもあるようです。

  • 「5年間という期間は長い。もし途中で工学以外の道に進みたくなった場合、普通高校に比べて進路変更が難しいかもしれない」という点は、入学前によく考えておくべき注意点と言えるでしょう。

アクセス・通学

阿南工業高等専門学校への主なアクセス方法は以下の通りです。

  • 鉄道を利用する場合

    • JR牟岐線「見能林駅」で下車し、徒歩約10分です。ただし、列車の本数が少ない時間帯もあるため、事前に時刻表を確認することをおすすめします。

    • JR牟岐線「阿南駅」で下車する場合、徒歩で約30分、自転車を利用すると約10分です。

  • バスを利用する場合

    • 徳島バスの橘線に乗車し、「阿南工専前」バス停で下車すると、学校は目の前です。

通学している生徒は、阿南市内やその周辺地域からが多いですが、特筆すべきは学生寮(明正寮)の存在です。徳島県内の遠隔地や、県外から進学してくる生徒も多く、その多くが寮生活を送っています。これにより、阿南工業高等専門学校は通学圏に縛られず、広いエリアから意欲のある生徒を受け入れています。

阿南工業高等専門学校受験生へのワンポイントアドバイス

ここまで読んでくれて、ありがとうございます。最後に、進学アドバイザーとして、阿南工業高等専門学校を目指す皆さんへ応援メッセージを送ります。

もし君が、「数学や理科の問題を解くのが好き」「機械の仕組みを考えたり、プログラミングをしたりするのが楽しい」「自分の手で何かを創り出してみたい」と心から思えるなら、阿南工業高等専門学校は君にとって最高の場所になる可能性を秘めています。ここは、5年間という長い時間をかけて、君の「好き」を「プロの技術」へと育て上げてくれる学校です。

受験勉強では、何よりも「数学」と「理科」に力を入れてください。この2教科は、入学試験で重要であることはもちろん、入学後のすべての学びの土台となります。なぜ阿南工業高等専門学校で学びたいのか、どんな技術者になりたいのか、自分なりの目標をしっかり持つことが、大変な勉強を乗り越える一番の力になります。君の情熱と挑戦を、学校は待っています。頑張ってください!

※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。