秋田工業高等専門学校は、科学技術や「ものづくり」の世界に心を躍らせる中学生にとって、夢への扉を開く特別な場所です。ここは、一般的な高校とは異なり、5年間という時間をかけてじっくりと専門知識と技術を学び、社会で活躍するエンジニアや研究者を目指すための高等教育機関です。中学を卒業してすぐに、大学レベルの専門的な学びに触れられる、刺激に満ちた環境が待っています。
この学校の最大の魅力は、大学のような自由な雰囲気の中で、自分の興味をとことん追求できる点にあります。この記事では、そんな秋田工業高等専門学校がどのような場所なのか、その偏差値や難易度から、具体的な学習内容、学生生活の様子まで、皆さんが本当に知りたい情報を詳しく、そして分かりやすく解説していきます。この記事を読めば、学校の輪郭がはっきりと見えてくるはずです。
「ここでは一体どんなことが学べるの?」「どんな人がこの学校に向いているんだろう?」「卒業した後の未来は、どう広がっているの?」そんな疑問に一つひとつ答えていきます。秋田高専というユニークな選択肢が、あなたの夢や目標とどう重なるのか、じっくりと確かめながら読み進めてみてください。
秋田工業高等専門学校の基本情報
まずは、学校の基本的な情報を確認しましょう。進路を考える上での基礎となる大切なデータです。
項目 | 内容 |
正式名称 | 秋田工業高等専門学校 (National Institute of Technology, Akita College) |
公立/私立の別 | 国立 |
共学/男子校/女子校の別 | 男女共学 |
所在地 | 〒011-8511 秋田県秋田市飯島文京町1番1号 |
代表電話番号 | 018-847-6005 |
公式サイトのURL | https://www.akita-nct.ac.jp/ |
秋田工業高等専門学校の偏差値・難易度・併願校
秋田工業高等専門学校への進学を考える上で、最も気になるのがその難易度でしょう。偏差値は、自分の学力と照らし合わせるための重要な目安になります。
偏差値は、学科全体で「60」から「62」とされており、秋田県内でもトップクラスの学力が求められる難関校の一つです。この数値は、秋田県内の多くの進学校と肩を並べるか、それ以上のレベルであり、合格するためにはしっかりとした学力が必要です。同じくらいの偏差値の高校としては、大館鳳鳴高等学校(普通科・理数科 偏差値58)や本荘高等学校(普通科 偏差値58)などが挙げられます。
また、高専の入試では、当日の学力試験の点数だけでなく、中学校での成績、つまり「内申点」も重視される傾向があります。特に推薦選抜での合格を目指す場合、秋田高専では「中学1年生から3年生までの9科目の評定合計が100以上、かつ中学2・3年生の理科と数学の成績が4以上」という明確な出願資格が設けられています。学力選抜の場合でも、内申点は合否判定の重要な資料となるため、日々の授業に真剣に取り組み、定期テストで高得点を目指すことが合格への近道と言えるでしょう。
国立の学校である秋田高専は、秋田県立高校との併願ができないため、万が一に備えて私立高校を併願校として選ぶのが一般的です。学力レベルに合わせて、以下のような私立高校が併願先として考えられます。
レベル | 学校名(コース名) | 偏差値目安 |
チャレンジ校 | 明桜高等学校(特別進学コースα・β) | 60 |
実力相応校 | 明桜高等学校(文理コース) | 56 |
聖霊女子短期大学付属高等学校(特別進学コース) | 57 | |
安全校 | 明桜高等学校(総合研究コース) | 50 |
聖霊女子短期大学付属高等学校(国際/総合進学コース) | 51-54 | |
国学館高等学校(大学進学/総合実践コース) | 43-47 |
秋田工業高等専門学校に設置されている学科・コース
秋田工業高等専門学校の大きな特徴の一つが、入学時の学科の仕組みです。新入生は全員、まず「創造システム工学科」という一つの大きな学科に入学します。これは「くくり募集」と呼ばれるシステムで、入学後すぐに専門分野を一つに絞る必要がないのが利点です。
1年生の1年間は、工学の様々な分野の基礎を共通して学びます。機械、電気、化学、土木といった各分野の面白さや奥深さに実際に触れてから、2年生に進級する際に自分の興味や適性に合わせて専門の「系」を選択します。これは、15歳という早い段階で将来を決めなければならないというプレッシャーを和らげ、本当に自分が学びたいことを見つけるための、非常によく考えられた仕組みです。
さらに、4年生に進級する際には、それぞれの系の中でより専門的な「コース」に分かれ、学びを深めていきます。
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機械系 – ロボットや自動車など、あらゆる「動くモノ」の仕組みを学び、創造したい人におすすめ!
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機械システムコース:機械の設計や製作、加工技術など、ものづくりの根幹を学びます。
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知能機械コース:ロボット制御やAIなど、機械に知能を持たせる最先端技術を探求します。
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電気・電子・情報系 – エネルギー問題からインターネットまで、現代社会を支える電気と情報のプロを目指す人におすすめ!
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電気エネルギーシステムコース:発電や送電の仕組み、クリーンエネルギー技術などを学びます。
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情報・通信ネットワークコース:プログラミングやネットワーク、通信技術の専門家を目指します。
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物質・生物系 – 新素材開発や環境問題、バイオテクノロジーなど、物質と生命の謎に挑みたい人におすすめ!
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マテリアル・プロセス工学コース:金属からプラスチックまで、新しい機能を持つ素材の開発を学びます。
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バイオ・アグリ工学コース:食品や医薬品、環境浄化などに応用される生命科学技術を探求します。
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土木・建築系 – 橋やダム、快適な街や美しい建物など、人々の暮らしを支える空間を創りたい人におすすめ!
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国土防災システムコース:災害に強い社会基盤の整備や、防災・減災技術を学びます。
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空間デザインコース:建築デザインや都市計画など、機能的で美しい空間の創造を目指します。
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また、5年間の本科を卒業した後には、さらに2年間学ぶ「専攻科(グローバル地域創生工学専攻)」への道も開かれています。ここで学ぶことで、大学卒業と同等の「学士」の学位を取得でき、大学院への進学も可能になります。
秋田工業高等専門学校の特色・校風
秋田工業高等専門学校の雰囲気をキーワードで表すなら、「自由と自主性」「大学のような環境」「専門性の追求」そして「人を選ぶ学校」といった言葉がぴったりです。
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宿題の量
宿題の量は、一般的な高校と比べて「非常に多い」という声が多数です。特に、実験や実習の後には詳細な「レポート」の提出が求められ、その作成には多くの時間と労力が必要です。この課題をこなす中で、論理的な思考力や文章作成能力が自然と鍛えられますが、自己管理能力がなければ厳しいと感じるかもしれません。
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校則(スマホ、服装など)
校則は「非常に緩やか」で、大学に近い自由な雰囲気が特徴です。法律や社会のルールを守ることを前提に、学生の自主性が尊重されています。
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スマホ:校内での使用は基本的に認められていますが、授業中や歩きながらの使用は禁止されるなど、マナーを守ることが求められます。
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服装:1年生から3年生までは制服がありますが、制服に準じた清楚な私服での登校も認められています。4年生以上になると服装の規定はなくなり、多くの学生が私服で過ごしています。
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生徒たちの雰囲気
「自分の好きなことに熱中する、真面目で探究心旺盛な生徒」が多いようです。明確な目標を持ち、専門分野の勉強に打ち込みたい学生にとっては最高の環境です。一方で、「ゲームが好きだから」「車が好きだから」といった漠然とした理由で入学すると、授業の高度な内容についていけず、後悔するケースもあるようです。自由な環境だからこそ、自分を律する強い意志が求められます。
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アルバイト・制服・土曜授業
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アルバイト:許可されており、実際に多くの学生が学業と両立しながらアルバイトをしています。
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制服の評判:制服のデザインに関する口コミは特に多くは見られませんが、4年生からは私服になるため、服装の自由度は高いと言えます。
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土曜授業:年間行事予定を見る限り、定例の土曜授業は設定されていないようです。
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この学校の文化は、「自由」と「責任」が表裏一体となっている点に集約されます。学校は学生を大人として扱い、多くの自由を与えます。その代わり、学生は高いレベルの学業に対する責任を自ら果たさなければなりません。この環境は、強い自己管理能力と学習意欲を持つ学生を育て、そうした学生にとっては非常に魅力的なものとなっています。
秋田工業高等専門学校の部活動・イベント
部活動
秋田高専では、勉強だけでなく部活動も非常に盛んで、運動部と文化部がバランス良く充実しています。専門知識を活かせるユニークな部活があるのも高専ならではの魅力です。
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実績豊富な運動部
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柔道部:県大会や東北地区大会で常に上位の成績を収める強豪です。優勝経験も豊富で、個人で県のスポーツ賞を受賞する選手も輩出しています。
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男子バスケットボール部:こちらも東北地区大会で優勝し、全国大会への出場を決めるなど、高い実力を誇ります。
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高専ならではのユニークな部活動
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電気自動車競技部:学生たちが自ら電気自動車を設計・製作し、レースに出場します。まさに「ものづくり」の楽しさを体感できる部活動です。
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航空宇宙研究会:飛行機やロケットなど、空や宇宙への憧れを形にする研究活動を行っています。
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その他にも、「eスポーツ同好会」や土木をテーマにした「ドボ研」など、現代的で専門的なクラブや同好会が存在し、自分の興味に合わせて活動できます。
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運動部、文化部ともに多くの選択肢があり、学生たちは自分の専門分野の勉強と両立させながら、充実した時間を過ごしています。
イベント
学生生活を彩るイベントも、高専ならではの特色があります。
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高専祭
毎年10月下旬に2日間にわたって開催される最大のイベントです。企画から運営まで、そのほとんどを学生が主体となって行い、自主性と創造性が存分に発揮されます。各研究室による専門的な展示や体験コーナー、学生によるバンド演奏やコスプレ、さらには打ち上げ花火など、内容は非常に多彩で、地域住民も多く訪れる一大イベントとなっています。
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スポーツ大会
5月に2日間の日程で行われる全校規模の球技大会です。学科や学年の垣根を越えてチームを組み、様々なスポーツで汗を流すことで、学生同士の交流と団結を深める良い機会となっています。
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4年工場見学旅行
4年生の秋に行われるこの旅行は、一般的な高校の修学旅行とは一味違います。数日間にわたり、日本を代表する企業の工場や最先端の研究施設を訪問し、自分たちが学んできた技術が実際の現場でどのように活かされているのかを目の当たりにします。これは、将来のキャリアを具体的に考える上で、非常に貴重な体験となります。
秋田工業高等専門学校の進学実績
秋田工業高等専門学校の卒業生が持つ大きな強みは、その多様で確かな進路です。卒業後の選択肢は大きく分けて「就職」と「進学」の二つがあり、どちらの道を選んでも非常に有利な状況が待っています。
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就職:企業が求める即戦力へ
就職率は驚異的な高さを誇り、ほぼ100%です。学生一人あたりに多数の企業から求人が来る「売り手市場」で、自分の希望に合った企業を選べる環境にあります。高専で培った高度な専門知識と実践的な技術力は、産業界から非常に高く評価されており、多くの卒業生が大手優良企業や官公庁で技術者として活躍しています。就職先は、トヨタ自動車、日立製作所、TDK、旭化成、JR東日本といった日本を代表する企業が名を連ねています。卒業生の約6割が就職の道を選び、秋田県内の優良企業に就職する学生も多いです。
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進学:さらなる高みを目指して
卒業生の約3割から4割は、さらに学びを深めるために大学へ進学します。主な進学方法は、大学の3年次に編入する「大学編入学」です。これにより、5年間の高専での学びを活かし、大学の最初の2年間をスキップして専門分野の研究を続けることができます。
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国公立大学:編入学者の多くは国公立大学へ進みます。特に、高専からの編入生を積極的に受け入れている長岡技術科学大学や豊橋技術科学大学への進学者が多いのが特徴です。また、東北大学(5名)、北海道大学(2名)、筑波大学(3名)といった旧帝国大学をはじめとする難関国立大学や、地元の秋田大学への編入実績も豊富です。
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大学院:キャンパス内にある2年間の「専攻科」を修了すれば、東京大学や東京工業大学といった国内トップクラスの大学院へ進学する道も開かれています。
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このように、秋田高専の卒業生は20歳という若さで、「社会で即戦力として活躍する」か、「難関大学でさらに研究を深める」かという、二つの質の高い選択肢を手にすることができます。これは、一般的な高校の進路とは一線を画す、非常に大きな魅力と言えるでしょう。
秋田工業高等専門学校の特長・アピールポイント
他の高校にはない、秋田工業高等専門学校ならではの強みやユニークな取り組みをまとめました。
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5年一貫の実践的専門教育
中学卒業後すぐに、大学レベルの高度な専門教育を5年間一貫して受けられます。卒業時には、実践力と専門知識を兼ね備えた技術者「準学士」として社会に出ることができます。
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入学時は1学科!じっくり選べる専門分野
入学後1年間は、全員が同じ「創造システム工学科」で工学の基礎を幅広く学びます。自分の適性や興味をじっくり見極めてから専門分野を選べるため、ミスマッチが少ないのが特長です。
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大学レベルの充実した施設・設備
各専門分野に対応した実験棟、9万冊以上の蔵書を誇る図書館、高度な情報処理演習が可能なコンピュータセンターなど、探究心を刺激する学習環境が整っています。
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ほぼ100%の就職率と難関大学への編入実績
卒業生は日本のリーディングカンパニーから引く手あまたで、就職率はほぼ100%を維持しています。また、東北大学や北海道大学など、難関国立大学への3年次編入の道も開かれています。
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大学のような自由な校風
服装やアルバイトに関する校則が緩やかで、学生は大人として扱われます。この自由な環境が、自主性と自己管理能力を育みます。
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「専攻科」で学士の学位取得も可能
本科卒業後、キャンパス内にある2年間の「専攻科」に進学すれば、4年制大学卒業と同等の「学士」の学位を取得できます。大学院進学へのスムーズなステップとなります。
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地域や企業との強いつながり
地域の企業と共同で研究を行ったり、卒業生技術者による講演会を開催したりと、社会との連携を重視した教育が行われています。これにより、学生は生きた技術に触れることができます。
秋田工業高等専門学校の口コミ・評判のまとめ
実際に通っている在校生や卒業生の声は、学校の本当の姿を知るための貴重な情報源です。ここでは、寄せられた口コミを公平にまとめました。
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良い点
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「大学のように自由なのが最高。大人扱いしてもらえるし、アルバイトもできるのが嬉しい。」
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「本当にやりたいことが決まっている人なら、先生や設備が全力でサポートしてくれる。専門分野を深く掘り下げられる環境がある。」
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「就職サポートが手厚い。真面目に勉強していれば、誰もが知っているような優良企業への就職が期待できる。」
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「在学中に専門的な資格を取れるので、就職や進学の際に大きな武器になる。」
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「実験室や図書館などの施設は、下手な大学よりずっと充実していると思う。」
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「同じ趣味や目標を持つ仲間と出会える。5年間一緒に過ごすので、一生の友達ができる。」
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気になる点
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「レポートなどの課題がとにかく多い。自分の時間をしっかり管理して、計画的に勉強しないとついていけない。」
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「この学校は万能ではない。明確な目標がなく、自分で勉強する習慣がない人には厳しい環境。留年する人も少なくない。」
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「最寄り駅から歩くと少し遠いので、通学が少し大変だと感じる人もいる。」
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「先生方は自身の研究で忙しいことも多いので、分からないことは自分から積極的に質問しに行く姿勢が必要。」
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「一般的な高校に比べて、学校祭以外の大きな学校行事は少ないかもしれない。勉強や研究に集中する雰囲気がある。」
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アクセス・通学
秋田工業高等専門学校への通学方法について説明します。キャンパスは秋田市の北部に位置しています。
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最寄り駅
JR奥羽本線の「上飯島駅」が最も近い駅ですが、駅からキャンパスまでは徒歩で約25分かかります。
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バスでのアクセス(主な通学手段)
多くの学生がバスを利用して通学しています。
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JR秋田駅から:秋田中央交通バスの「土崎線」または「追分線」などに乗車し、約30分。「秋田高専前」または「飯島コミュニティセンター入口」バス停で下車し、そこから徒歩5分から10分です。
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通学エリア
通学している生徒は秋田市内を中心に、県内全域から集まっています。また、遠方からの学生のために「学生寮」が完備されており、県外から入学する学生も安心して学ぶことができます。キャンパスが中心部から少し離れていることは、見方を変えれば、静かで落ち着いた環境で研究や学習に集中できるという利点にもなっています。
秋田工業高等専門学校受験生へのワンポイントアドバイス
最後に、進学アドバイザーとして、秋田工業高等専門学校を目指す皆さんへ応援メッセージを送ります。
もしあなたが、理科や数学の授業が好きで、機械を分解して仕組みを調べることにワクワクしたり、ロボットや新しいアプリを作ることを夢見たりするような人なら、そして、自分の好きなことを誰にも邪魔されずに深く学びたいと願うなら、秋田高専は最高の場所になるはずです。ここは、探究心と創造力にあふれ、自ら道を切り拓く力を持った人のための学校です。
受験勉強では、特に数学と理科の基礎を徹底的に固めてください。秋田工業高等専門学校の入試では、これらの科目が重視される傾向があります。しかし、それ以上に大切なのは「なぜこの学校で学びたいのか」という熱い想いです。面接や提出書類では、あなたのものづくりや科学技術への情熱を、ぜひ自分の言葉で伝えてください。あなたの挑戦を心から応援しています!
※最新かつ正確な情報は、必ず高校の公式サイトや学校説明会で確認してください。